たいてい、逃げます。 もちろん、ひき逃げは少数例ですが、「自賠責保険で勘弁して下さい」と泣き崩れるか、「お金はありません」と居直ります。

 道を走っている自動車の5台に1台は任意保険に入っていません。日本の任意保険付保率は世界で上位ながら、無保険車の数はかなり多いと感じます。毎回、相談会に1名はおりますので。多くの被害者は加害者からの補償を期待しますが、20%は報われないのです。すると、相手の強制保険である自賠責保険だけが頼りとなります。しかし、ご存知のように自賠責には限度額があり、ケガで120万、後遺障害・死亡で3000万(介護状態で4000万)までとなります。自賠責だけでは補償が足りず、また、慰謝料なども最低金額で、がっかりすることになります。

 したがって、あらゆる保険をフル動員しなければなりません。まず、通勤途上・業務中であれば労災を適用、治療費と休業給付を確保します。後の後遺障害の請求も視野に入れます。労災の適用外であれば、当然に健康保険を使って治療費を圧縮します。治療費が一定額を超えれば高額医療費の請求を、休業が長期化すれば傷病手当金を請求します。 

 そして被害事故で最も役に立つ保険は、ご自身が加入している自動車保険の人身傷害や無保険車傷害です。できれば、自身向けの補償もしっかり備えておきたいものです。交通事故の解決には、加害者や相手保険会社に期待せず、また、弁護士や業者を選ぶ以前に、まずは自ら保険にしっかり加入しておくことが大事です。

 最悪例は、相手が無自賠(車検切れで自賠責未加入の状態)で、さらに、ご自身も人身傷害・無保険車傷害などの自動車保険が未加入、弁護士費用特約なし、その他、傷害保険や共済の加入もないケースです。最後の砦として、政府の保障事業への請求が残るのみです。ここから自賠責保険と同等の補償を確保できますが、重度の障害を負った場合、焼け石に水です・・。    ここまで、様々な無保険車対策を挙げました。さて、本来責任を取るべき加害者はどこへ行ったのでしょう? 私の交通事故業務26年の歴史で、「私が悪うございました。きっちり賠償金を払います」などと言った、頼もしい?無保険の加害者に会った事がありません。冒頭で言いました通り、加害者の資力、支払い能力など、ほとんど期待できません。お金持ちで誠実な人なら、そもそも、しっかり賠償保険に加入しているものです。

 それでは、加害者に辛うじて支払い能力があった場合ですが・・これも当てになりません。裁判で勝って、月額○円で分割支払としても、大抵、3ヶ月目から入金が途絶えます。そして、本人との連絡も途絶えます。つまり、夜逃げか、行方をくらまします。加害者はこれからの人生、毎月○万円を支払うことなど真っ平ごめんなのでしょう。弁護士は一様に「裁判に勝っても回収が・・」と嘆きます。  ない袖は、  

 最後に、実際にあった例を一つ。

 ある保険未加入の加害者は、障害を負った被害者から3000万円もの請求を強いられ、自己破産しました。「びた一文払えん」と、ケツをまくったのです。この加害者は確か土地・建物を持っていたし、ベンツに乗って、それなりに現金も持っていたはずです。むしろ、羽振りのいい自営業者さんでした。

 その加害者の言い分ですが、「離婚して、女房に全財産を持っていかれた」とのことです。しかし、夫婦仲は悪いわけではなく、こっそり一緒に住んでいるようです。つまり、計画的な財産隠匿です。賠償の支払いを逃れるために財産を奥さん名義にした後、離婚し、自己破産したのです。ほとぼりが冷めれば、また籍を戻すのでしょう。

 このように、汚い人もおります。いえ、むしろ、人間は追い詰められたらこんなものです。性悪説を実感する瞬間です。

 最近は、このあからさまな債務逃れに鉄槌するような、厳しい司法判断も聞きます。それでも、周到な準備の上、夫婦が別居して、こっそり会っている程度では、回収は困難、手も足も出ません。    最後に本ケースにはオチがあります。この奥さん、自己名義となった財産をもって別の男に走りました。主人が主人なら奥さんも奥さん、皆、悪党です。もう、ぐちゃぐちゃ。  

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