さて、「自身の過失分まで全額補償されるのが人身傷害特約ではないか!」と訴えた矢口さん、加護火災と法廷で争いました。前日に続き「差額説」を説明しましょう。(前日の「絶対説」と連続で読まないとわからないですよ)
 

保険会社 加護 「約款に書いてある通り、人身傷害特約の保険金は相手から受け取る賠償金を差し引くものですから、先に支払った保険金は全額返してもらいます!」

20140507
  「えーっ!それだと全額補償にならないじゃない?」
 

 

 

「差額説」に決着

 
 裁判官は約款に書かれているように、先に人身傷害特約を支払った加護火災がその全額を求償した場合、矢口さんが全額の損害賠償金を受け取れないことについて、「そりゃ、矢口さんがかわいそうだ」と思ったのでしょうか・・・以下のように整理・結論しました。

saibannkan 「加護火災は保険金を支払う場合、先に矢口さんが相手から受け取った賠償金を全額差し引いて払う、これは約款に書かれている通りOKです。でも、求償の場合はこの支払いルールとは別にしましょう。」 そして、
 
 「売りは”全額補償する保険”なのだから、後から矢口さんに賠償金が入ることになったら、加護火災は矢口さんの過失分を含めた賠償額1000万円の総額を超えた分だけ、返してもらいなさい」と判断しました。つまり、保険金支払いルールと切り離して、「求償額は契約者の権利を害さない範囲まで」と判決しました。
 
・・・これが「差額説」です。
 

c_s_t_320saibannkann
「加護火災さんは矢口さんの賠償金1000万円を超える分である300万円を返してもらってね」

 
保険会社 辻   保険会社 加護   banzai 
 ⇒
800万   300万   =  500万(+人身傷害500万で)1000万円!
「判決額を払います(泣)」「既払い500万のうち300万だけ‥(泣)」  「合計1000万 全額ゲット!」

 
 
 裁判官の判断の根拠は約款に書かれた「求償」の条項です。「あくまで支払いルールと求償ルールは別」と判断したわけです。この考え方は平成19年2月他いくつかの地裁判決を経て、平成24年2月最高裁判決にて決着したと言えます。この争いの最中、主要国内損保は人身傷害特約の求償のルールについて約款の改定を進めました。現在、ほぼ全社「差額説」に即した約款になっています。

 しかし、これで約款の問題がすべて解決とはなりませんでした。裁判官も「まだ問題が残っているので保険会社さんはもっと工夫して」と言い残しています。

 つづく
 
 

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