5回にわたって交通事故業務に関わる、弁護士、行政書士、保険会社について解説してきました。自分をアジテーターとは思っていませんが、それぞれの深部に踏み込む意見になったと思います。

 そろそろまとめに入らなければなりません。やはり語りたいのは交通事故業務に取り組む者の矜持です。

 交通事故を生業とする者にとっても、まず自身・家族の生活や事務所経営、営利追求が仕事のベースであることは言うまでもありません。しかしある日突然事故に遭い、理不尽な生活を強いられた被害者にとっては弁護士も行政書士も、そして保険会社も頼るべき・すがるべき存在です。その被害者にとって最適な方策でそれに答えることこそ、フェアな取引であり、誠実な契約であると思います。(それができないのなら他へ紹介しましょう。だから連携体制やネットワークが重要なのです。)

 昨日も書いたように、「皆それぞれの立場、それぞれの都合」を優先させてしまったら被害者は浮かばれません。

 例えば行政書士が、なんとしてでも賠償交渉を業務の中心として取組たいのなら、司法試験をパスして弁護士になればいいのです。代理交渉ができない行政書士が代理権獲得や業務拡張を大義名分に、業務のグレーゾーンに勇み足をするべきではありません。業務拡大や他士業との業界調整は行政書士会(団体)で運動するべきテーマであって、実際の業務上で被害者を弁護士との業界争いに巻き込む道理はないはずです。

 そして藁をもつかむ思いの被害者のみなさんにも警鐘します。盲目的に誰彼かまわず相談することで安心するのではなく、厳しく相談者を見極めていただきたいと思います。まったく自分に非のない事故に遭った悲劇の被害者だからと言って、自動的には誰も助けてくれません。事故と向き合って克服していくのは自らの行動からです。誰が一番自分に合った解決方法を提示してくれるのか?誰がパートナーとして一緒に戦えるのか?これを決めるのは被害者自身です。

 そして私たちが目指すところは・・・

 あらゆる交通事故解決の総合コーディネイトです。

 昨日までの考察で示す通り、弁護士も行政書士も部分の専門家であり、その部分での活躍を生かすべきです。そして保険会社は敵対する壁ではなく、加害者に代わり、急場の助けと最低限の補償をしてくれる大事な存在です。
 それらを有機的に結び付け、被害者にとって間違いのない道順を示すことが総合コーディネートです。

 具体的には、

1、事故直後、治療費、休業損害について相手保険会社との調整を図り、最適の治療環境に落ち着かせること。

2、事故状況、警察の届け出内容のチェック。物損事故扱いの場合で通院が長期にわたるなら人身事故扱いへ切替え。

3、労災や健康保険等、公的保険、その他加入保険や救済制度の吟味。

4、物の損害やその他被害の確認と請求。過失割合に争いがあるなら刑事記録や証拠、資料の取り寄せ。

5、病院の治療内容や検査内容が合わなければ転院を考慮する。

6、後遺障害診断に向けての検査計画の立案。間違いのない診断書の作成に漕ぎ着けさせる。

7、自賠責保険に被害者請求を行い、後遺障害等級を確定させる。

8、最適な賠償交渉について手段選定 → 直接交渉か代理人交渉か?示談か紛争センターの斡旋か裁判か?

これらについて道順を示し、適時修正するコーディネーターたることが必要と思います。この過程で弁護士や行政書士、病院、専門医、保険会社、お役所がそれぞれの役割を果たしてくれればOKです。多くの弁護士は1~7、行政書士は1~6までは場当たり的なアドバイスのみで何もしないのが現状です。

——————————————————————————

 昔おばあちゃんに言われた言葉・・・「人のふり見て我がふり直せ」。私自身が昨日まで語ったような問題のある業務をしていないか?常に自問自答しながら業務にあたっています。自分の立場や都合優先で業務をしないよう、より勉強、経験を積む事はもちろん、上記のような総合コーディネートが可能なネットワーク作りに勤しむ毎日です。

 
 来週は都内で行われる弁護士勉強会に参加します。最近は研修、講習の機会が増えています。きっと志を同じくする先生に出会えると思います。