仕事中、通勤中にケガをすれば労災で治療費や休業補償がなされます。当たり前のことですが現実にはそうならないケースを嫌というほどみてきました。

「労災が認定されない」と会社から言われました。

 まず、会社に労災の適用を断られるケースが多いようです。そもそも労災は会社の判断で適用するものではありません。基本は労働局へ「届出」することで労災の申請は完了します。もちろん業務中か通勤中かの判断があるにせよ、会社の許可などはなからありません。
 ただしやっかいなのが申請書に会社の署名と印が必要なことです。これが現実的にハードルとなっています。

そもそも未加入の会社の場合

 会社はたった一人でも人を雇えば労災へ加入する義務があります。加入していない状態で労働者がケガをした場合、罰則があり、近年罰則も強化されています。具体的には労災保険料の追加徴収と罰金です。

 事業主(会社・個人事業主)が故意または、重大な過失により労災保険の加入手続きをしていない期間中に労災事故が起き、労災保険から給付が行われた場合、事業主は最大2年間遡った労働保険料及び追徴金と以下の費用を徴収されます。

1、労働保険の加入手続きについて行政機関等から加入勧奨や指導を受けていた場合

→ 事業主が故意に手続きを行わなかったと認定され、保険給付額の100%を徴収

2、1以外で労働保険の適用事業所となってから1年を経過していた場合

→ 事業主が重大な過失により手続きを行わなかったと認定され、保険給付額の40%を徴収

 
 このようになっていますが、未だ一人親方企業や臨時雇用など会社規模が小さい、雇用形態が自由なところは未加入なケースがあります。さらに問題なのは「労災の使用を抑制する雰囲気」です。大きい企業ではそのようなことはないのですが、中小企業は体質的に労災の使用を敬遠します。

 もっとも悪質なのは通勤中のケガにもかかわらず、ケガをした従業員に「休日の交通事故です」と念書を書かせた企業です。この企業の場合、当然労災に加入しているはずですが、何故そのようなパワーハラスメント、虚偽申告を犯してまで労災を使わせないようにしているのか理解に苦しみます。おそらくは労災を頻繁に支払うことによって、些細なケガや労務外のケガまで不正請求してくる従業員が増えることを懸念しているのだと思います。昔から慣例的に「労災は使わせない」としている会社は多いのです。
 不正請求はいけませんが、正当な事由のケガでも一緒くたに使用制限をするようでは立派なブラック企業です。

従業員自ら遠慮してしまう

 ケガから復帰後の職場関係を考慮し、自ら使用を控える従業員も少なくありません。会社側が労災使用に対して難色を示せば、強く言えないのが使われている側の立場です。上手く会社側に話がつけられるか?・・・ご相談くだされば私がなんとかしますが、第三者など入れたらそれこそ労使間の関係は微妙なものとなります。
 ケガをした本人が遠慮してしまえば諦めるしかありません。

 このように労災の使用にはある種の闇が潜んでいるようです