顔面の骨折はルフォーのⅠ~Ⅲで類別されます。顔面ですから目や鼻、口、耳の機能に影響する神経が集中しています。単に骨折の癒合・整復状況だけではなく、これら5感に通じる障害を追う作業になります。昨年の実例から。

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併合11級:嗅覚障害・視野障害(30代男性・千葉県)

 
【事案】

 バイクで直進中、対向右折自動車と衝突、前方へ飛ばされ顔面から路面に着地したもの。頭蓋底、前頭骨、上顎骨、鼻骨、頬骨、下顎骨を骨折する。他には歯牙2本欠損、つまり顔面が砕けてしまった。医学的にはルフォーⅠⅡⅢの複合型。顔面の修復にまずチタンで5か所の固定を施し、以後数度の形成手術を行った。
 

【問題点】

 受傷2年後に受任する。本人の治療努力もあり、幸い顔面に醜状痕は残らず整復もまずまず。しかしこれだけ損傷があればいくつもの障害が予想される。5感(視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚)すべてをチェックしたところ、「視野のゆがみ」、「匂いがしないこと」、「味が一部おかしい」、「顔面の麻痺」、「めまい、ふらつき」を確認、それぞれ検査を進める。
 

【立証ポイント】

 ヘスチャートで視野の狭窄、複視から13級2号、T&Tオルファクトメーターにより嗅覚脱失を確認し12級相当を確保する。ろ紙ディスク法による味覚検査は基準以下、その他いずれも微妙な数値しか得られず、結果として併合11級。仮に顔面の多発骨折でその他の症状を追っても神経症状の12級13号となり、併合等級には影響ない。後の賠償交渉における逸失利益期間の確保からも神経症状の13号より、視野、嗅覚での等級が有利となるのでまずまずの結果。
 ケガの割には回復がよく、私としては11級では物足りないが、もちろんこれは障害が比較的少なくて済んだということです。