交通事故外傷で悩ましいのは、骨折など器質的損傷がないが、神経症状が重篤なケースです。相手保険会社は「捻挫ごときでなんで半年も通うのか?」との目で被害者を心因性患者とみなし、治療費を打ち切ってきます。

 確かに心因性の疑いも捨て切れません。しかし、一定数の被害者さんは、事故を契機に頚部痛や上肢の痺れだけではなく、頭痛やめまい、自律神経失調症のようにあらゆる不調が起きます。そして、自身の症状が回復しない被害者さんは、色々な傷病名にすがる様に転院を繰り返し、心因性疾患の烙印を押されてしまいます。

 間違った方向へ行かないよう、しっかり被害者さんに寄り添います。時には症状固定をするよう説得し、後遺障害認定によって、今後の治療費の確保を図ります。「治るまで症状固定しない」では結局、金銭面だけではなく、精神面としても望ましくありません。
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14級9号:頚椎捻挫(50代女性・埼玉県)

【事案】

横断歩道を歩行横断中、対抗右折自動車の衝突を受けて受傷。直後から頭痛・めまい、左上肢の痺れを始め、様々な神経症状に悩まされる。

【問題点】

頭部外傷の懸念から脳神経外科、その他、複数の病院、接骨院に通うも回復は進まない。自覚症状は非常に重篤ながら、器質的損傷ははっきりしない。治療を出来るだけ続けることを希望するが、相手保険会社は1年で治療費を打ち切ってきた。

【立証ポイント】

打ち切られたらしょうがない。健保で納得のいくよう転院を重ねた。しかし、経験上、神経症状がある日ぴったり止むことは少ない。打切り後の半年間、治療先へ同行して丁寧に追いかけて行った。やはり、ドクターショッピング(転院を繰り返す)は望ましくない。

その後、被害者を説得する形で症状固定し、しっかり14級を確保させた