関節の機能障害で等級が認定される場合、関節の可動域制限を計測した数値で等級が決まるわけではありません。
 
 これは、事務所開設以来、ずっと言い続けています。自賠責は、”曲がらなくなった理由”を画像から求めているからです。まず、① 骨折時の折れ方、② 手術適用の有無と術式、そして、③ 症状固定時の癒合状態です。これら、経過的に画像を確認、可動域制限の理由に納得した上で等級を決めます。この時点で等級は想定されているのです。物理的に可動域を阻害するような変形や転位、関節面の不整もなく、きれいに癒合を果たしていれば、曲がらない理由がなくなります。神経麻痺で曲がらないなどの例外はありますが、痛くて曲がらない程度は理由として弱くなります。

 最後に後遺障害診断書の計測値から、その想定された等級に合致する数値であるかを確認します。ここで、「そんなに曲がりが悪くなるわけはない!」と判断されれば、等級は否定されます。つまり、可動域制限の等級認定も画像次第です。可動域の計測は患者自らの意志で演技ができるからでしょうか・・その懸念が常に自賠責の頭にあるのかもしれません。

 さらに、可動域の計測値はある意味、いい加減です。患者のその時の調子や測定者に左右されます。例えば、関節を曲げるリハビリを十分に実施した後の計測か、冬の寒い時期にいきなり計測したか・・当然に差が出ます。また、測定者が日本整形外科学会の測定法を熟知しているか否かで数値が違ってきます。自己流の計測をする医師を何人もみてきました。理学療法士さんはさすがに専門なので、方法は確かですが、測定者の力加減に差がでます。他動値(測定者が手を添えて計測)の計測で、まるで親の敵のように強く曲げたのか、痛感点で止めたのか・・やはり、測定者によって誤差が生じます。
 これらの問題をはらんでいる以上、やはり、画像が確かな証拠となるのでしょう。
 本件は、医師の思惑とは別に、佐藤が画像の確保と所見の強調を提出までこだわり続けました。
 
画像にこだわる毎日です!

12級6号:橈骨遠位端骨折(30代男性・東京都)

【事案】

自転車搭乗中、前方から右折してきた自動車に衝突され受傷。手首に骨折があり、曲がりも悪くなった。

【問題点】

相談に来られたのが受傷初期で、現在までの治療経過を確認したころ、骨折が確認できる程度の初期XP画像のみで、立証に必要な検査も未実施であった。その他、顔面に線状痕もあったが、3㎝にギリギリ届かなかった。

【立証ポイント】

まず、自宅近くの整形外科に転院し、手首のCT、両手のXPの撮影依頼。その後、順調にリハビリを半年間継続して、症状固定とする予定だったが、医師の希望で9カ月まで延びてしまった。それでも可動域の計測は、なんとか12級の数値に収まった。その12級を確定させるためには画像所見を固める必要があった。後遺障害診断時に癒合状態を確認しない医師で、転院時の画像しかなかったためである。そこで、骨折部の画像打出しを作成・添付するなど、骨折の癒合状態や可動域制限の信憑性を高めて申請をする。

最近は、骨折事案でも厳しい等級認定が行われるため、本件の等級結果が出るまでは不安であったが、可動域制限の等級がつく最高の結果となった。