経験を積むと、ほとんどの依頼者について後遺障害等級を見切ることができます。これが、一つの実力であることには変わりません。だからこそ私達は、「後遺障害の申請業務=想定等級にすべき医証を収集・資料を作成する作業」と標榜しているわけです。しかし、自信は時に慢心を生むことがあります。本件は、当初、高次脳機能障害までは至らないと思ってご依頼を受けました。しかし、遂行能力・注意機能の低下を示す、医師の見解から高次脳9級となりました。一見、9級ほどの障害とは見えません。それでも、些細な情報を逃さずに申請しなければプロの名折れです。また一つ、年初から戒めをもった次第です。

 経験を積むほど、謙虚にならなければいけません
 

9級10号:高次脳機能障害(60代女性・埼玉県)

【事案】

自転車で横断歩道を走行中、右折車に衝突される。わずかながら、CTで頭蓋骨骨折とくも膜下出血が発見された。
 
【問題点】

事故から既に5ヶ月経過していたが、病院・保険会社・労災とのやりとりで疲弊しており、検査が不十分であった。何より、依頼者さんは耳鳴りの立証を強く希望しており、頭部外傷後の諸症状について、ご家族も深刻な認識を持っていなかった。弊所としても、当初から高次脳機能障害の認識は乏しく、主訴とは考えていなかった。

【立証ポイント】

ただちに高次脳機能障害とは思えなかったが、基本通り病院同行し、MRI検査(T2スター)と「意識障害についての所見」を依頼し、初動はひとまず完了した。日常生活状況報告書を後送し、高次脳機能障害としても審査がなされた。

申請から約4ヶ月で9級10号が認定された。予想外の高次脳認定となった。いくら症状が軽度であっても、高次脳機能障害の3要件が揃っていれば、厳しく症状を追求すべきである。今後、反省すべき案件となった。