春の重傷認定シリーズの③から⑤は同一案件です。この記事3つを書くことも大変ですが、実際の立証作業も、期間にして6ヶ月、病院同行8回、大変なボリュームでした。通常の3人分どころか、特殊性から5人分の作業に感じました。

 重傷と言うには12級は低目かもしれませんが、本件被害者さんは、事故と手術でずたずたになった腹部の形成のため、背中とお尻から広範囲に皮膚を採取しました。これだけも、被害者の苦しみがうかがわれます。

 本件は併合4級となり、後は十分な賠償金の獲得を連携弁護士に引き継ぎました。相手保険会社の反論はもちろん、裁判になっても、私が集めた医証で一蹴できると思います。


 

12級相当:背部+臀部の瘢痕(20代男性・東京都)

【事案】

歩行中、自動車の衝突を受け、骨盤を骨折した。自動車は逃走したが、後に逮捕され、幸い任意保険の存在を確認できた。

内臓損傷は数箇所に及び、大腸・小腸の切除と一時的な人工肛門の増設を含め、腹部に数度の手術を施行した。胸腹部の手術瘢に加えて、植皮のために背部・臀部の広範囲から皮膚採取を行った。

【問題点】

後遺障害診断書には書ききれないので、別紙記載が望まれる。


「日常露出しない部位(胸部+腹部、背部+臀部)の表面積の2分一以上の面積に醜いあとを残すもの」

【立証ポイント】

生殖機能障害、排尿障害、神経系統の障害の立証を進める中で、最後に形成外科で後遺障害診断書をお願いした。特に、別紙の図表に細かく計測値を書き込んで頂いた。その際、写真を数十枚撮影、編集したものを添付した。

胸腹部の手術痕は、瘢痕としての基準(1/4、1/2の面積)に至らなかったが、背部・臀部について、「全面積の1/2程度以上の範囲に瘢痕を残すもの」として12級相当の認定を得た。

臓器で6級、神経系統で7級、これらが併合され、2級上位である併合4級となった。結果として、醜状痕の認定があってもこれ以上、上位等級にはならないが、後の賠償交渉の材料としたい。