脳外傷後、ケガの回復が進むにつれ、記憶・知能や言語の障害、注意機能・遂行能力の低下、性格変化や易疲労性、感情失禁などの情動障害・・様々な症状が目立ってきます。もちろん、体力は徐々に戻ってきますので、3級ほどの重度障害者とて、健康面では健常者とほとんど変わらないものです。

 しかし、本件は易疲労性がひどく、相当に深刻な状態が続きました。精神・肉体的共に、非常に疲れやすくなり、食は細く、活動も少なく、寝てばかり、頭痛もあり、体力はどんどん落ちていく一方なのです。主治医含め、あらゆる医師も打つ手なしなのです。立証面でも、諸々の神経心理学検査はほとんど実行できません。

 ここまで極端なケースは弊所でも未経験でした。高次脳機能障害の症状は典型例に漏れて、まれに独特の症状を示すことがあります。多くの脳外科医も述懐していますが、脳神経外科の分野はまだまだ未解明のことが多いようです。

とにかく、障害認定を急ぎ、解決に向けて進めました。
 

3級3号:高次脳機能障害(70代女性・静岡県)

【事案】

自転車で交差点を横断の際、バイクと出会い頭衝突・転倒し、頭部を強打した。意識不明のまま救急搬送され、診断名は急性硬膜下血腫、くも膜下出血となった。緊急開頭手術で側頭葉の血腫を除去、命は取り留めた。
(参考画像)

【問題点】

本件は加害者側が自賠責保険のみであり、自身契約の人身傷害を頼るしかなかった。また、ご家族の回復への執念から、症状固定が延びた。

その後、外傷の回復は進んだが、記憶、注意機能に低下が見られた。なかでも易疲労性が顕著で、食が極端に細くなったことから体力の低下が進んだ。これには主治医もお手上げで、私達もこのように極端な症状は初めてである。セカンドオピニオン、漢方薬の服用等を併用したが、改善は見られなかった。

【立証ポイント】

体力低下が深刻であることから、私達は障害認定へ進めるよう促した。医師の診断書記載を急かし、受傷からおよそ3年後に症状固定となった。

3級の決め手になったのは、易疲労性・意欲低下に連なる摂食障害による、体力低下であった。脳損傷後の精神障害・神経症状は多肢に渡るが、本件の症状は命を縮める実に重いものである。