先週末の金曜日は私が所属する行政書士会の有志による勉強会でした。昨年から2か月置き位に実施しています。私のように交通事故といった一部門に特化した書士にとって、他分野の先生方から教えを頂く貴重な研修です。

 テーマは「成年後見人」についてでした。埼玉の行政書士会としても複数のNPO法人を立ち上げ、多くの先生が参加しています。交通事故と関わってくるケース・・・高次脳機能障害で自らの判断能力が不十分となってしまった方にいち早く手続きをする必要があります。後見制度について整理します。

 
■ 後見人の種類

1、法定後見人(法的根拠=民法)

判断能力が衰えて支援が必要になってから、後見人を家庭裁判所に選んでもらう制度。この判断能力は医師の診断によります。「日常生活に関する行為」以外のすべての法律行為を本人に代わって被成年後見人が行うことになります。

※ 日常生活に関すること・・・少量の食料品や日用品を買ったり、電車・バス等自らの交通費や医療費の支払など

※ 法律行為・・・代理権、同意権、取消権、追認権

 保佐人は同意権に、補助人は4つすべてについてそのつど裁判所の許可が必要。
 

2、任意後見人(法的根拠=任意後見人に関する法律)

 元気な(判断能力のある)うちに、自分で認知症等で判断能力が衰えた時に備えて、「誰に」「どんなこと」を頼むか事前に決めておく制度。当事者(委任者と受任者)間で行う「契約」の一種で、契約書には必ず「公正証書」とする必要があります。

※ 公正証書・・・公証人役場で公証人立会・認定のもとで交わす契約書。法的な強い認証力をもちます。
 

■ 成年後見審判の手続き(法定後見人の場合)

1、申立人調査 
面接にて、申立の目的・経緯、本人の病歴・診断書、本人の財産・経済状況等を聴取されます。

2、親族調査
電話や書面照会で申立人、親族間の意見を聴取します。親族間の紛争の可能性をはらんでいるからです。

3、精神鑑定
家族暦・生活暦、生活状態・心身の状態、精神の状態、判断能力を調べます。鑑定には医師の診断が必要で、費用は5~10万円です。本人が植物状態のときは省略されることもあります。

4、本人調査
 本人と面談します。入院している場合、調査官が出張してくれます。やはり意思疎通が完全に不可能の場合、省略されることもあります。

5、審判
家庭裁判所で裁判官が誰を後見人に選任するかを決めます。

6、登記
審判決定後2週間以内にだれも不服申し立てをしなければ確定し、法務局にて登記の依頼をする。選任された後見人は1か月以内の本人の財産目録、収支報告書を裁判所に提出しなければならない。

7、後見開始
 家庭裁判所から照会・指示があれば必ず従い、報告する必要がある。
 

 この手続きは行政書士が完全に代理として行うことはできませんが、十分お役にたてますし、得意とする分野です。他にも身体障害者手帳、精神障害者健康福祉手帳、障害者年金、介護認定・・・など必要となるかもしれません。高次脳機能障害の被害者を担当する場合、障害の立証以外にやることがたくさんあるのです。その対応ができるからこそ、この分野での名乗りをあげているのです。