秋葉事務所では早期の症状固定を推奨しています。

 正確に言うなら、適切な時期での症状固定を逃さないよう、呼びかけています。もちろん、無理に治療途上で症状固定をすれば、後の治療費の目処が建たず、被害者に不利益が生じます。当然ですが、まず、医師の判断を土台に医学的見地から検討すべきでしょう。私達は不当に後遺障害等級を重くしようと画策しているわけではありません。つまり、すべての要素を総合して、適切な時期を被害者自ら決めるべきと思っています。

 周囲から誤解の声が生じないよう、以前から説明する必要があると思っていました。これを今年最後の投稿にします。
 
 とくに機能障害(関節の可動域制限の場合)では・・ 

 症状・回復程度がプラトー、つまり言葉上、回復の限界を指しますが、より実情的には、症状が一進一退になった状態です。関節可動域でですと、骨折の場合は骨癒合後の機能回復訓練(つまり、リハビリ)を経たレベルでしょうか。この時点で症状固定を検討します。被害者はこれを漫然と徒過することなく、後遺障害の申請をすべきです。すみやかな症状固定は、自身の利益に叶うだけではなく、周囲から歓迎されるからです。
 
① 回復期の適切な時期、それも早ければ、明瞭な画像や数値が出やすく、審査側は判定がしやすくなります。時間が長いほど症状がぼやけます。中途半端な回復の懸念だけではなく、既往症や新たな病気やケガ、加齢が影響するからです。

② 対応している保険会社も症状固定・等級申請→早期解決を歓迎します。よく誤解されますが、保険会社は後遺障害の軽重による支払い保険金の大小より、解決スピードを重んじます。後遺障害等級が重いことなど担当者の責任ではないからです。サラリーマンである彼らの評価は、後遺障害等級の程度より、案件の処理速度なのです。

③ なにより、被害者は後遺障害等級が下がれば賠償金が減ります。「治るまで治療費を払わせるんだ!」との気持ちはわかりますが、大抵、後遺障害の賠償金額より、その間の治療費が(一部の例外を除き)はるかに安いのです。賠償金を得た後、健康保険を使ってじっくり回復努力を続ける方が明らかに得です。
 
 症状固定日を定めることは、最終的には「被害者の権利」と、私は考えています。
 
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 近時に再手術が必要なケース、治療方針が大きく変更、新たな治療を試みるケース等、例外はあくまで例外です。慢性的な症状改善のための長期リハビリや東洋医学の施行、なんとなく経過観察、ましてや完全回復を目指す・・これらのために、症状固定日を先延ばしする必要はないと断じます。

 とくに、可動域制限は症状固定後も多くのケースで回復が進みます。逆に、リハビリをサボれば改善は逆戻りします。回復努力を怠れば廃用性拘縮(動かさないので曲がらなくなる)まっしぐらです。また将来、加齢と共に制限がぶり返すこともあります。将来の回復・悪化はあくまで予想に過ぎません。また、関節角度の計測ですらその時の調子の良し悪しで上下します。なぜか計測者の力の入れ具合?にも左右されます。この通り、可動域制限の計測数値自体、曖昧なものです。(等級の判定は計測された数値に見合った変形や転位、器質的損傷の残存等、画像所見が前提です。)

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 それでは、一体、いつが障害判定(可動域計測)のタイミングなのでしょうか?
 
 一般的には、受傷初期(急性期)→手術・治療期間(亜急性期)→機能回復期(リハビリ期)を経て安定した時期です。リハビリで一定の機能回復を果たしたら、すみやかに症状固定・後遺障害診断に進めて、事故を解決させる。その後の改善や増悪など・・誰もわかりません。医師も保険会社も将来のことなど何の保障もできないのです。だからこそ、治療上の事情なくば、速やかに後遺障害を確定させるべきです。その決断は被害者の権利であり、務めでもあるのです。