後遺障害立証の場面でやっかいなのが、自覚症状の代表「痛み」です。

 診断書では単に「疼痛」と書きますが、仮に「激痛」と書いたらより酷い痛み・・とは判断されません。痛みは客観的に程度を計り辛いのです。痛みやしびれ、異常感覚は神経症状の括りで12級13号と14級9号、2段階で評価されます。この二つの等級も、「すごく痛い」or「それなりに痛い」で判別されるわけではなく、画像や検査数値で客観的に判断できる12級と、自覚症状のみだが治療経過などから説明できる(信用できる)14級で分けられます。

 等級判断はもちろんですが、現代の医学は、痛みの程度を客観的に正確に数値化する技術に及んでいません。患部にあてるだけで痛みを数値化できるテスター・・・

 「はいっ、イタミハカール !」・・ドラえもんのポケットを期待するしかありません。
 

痛みのスケール

 痛みのレベルは、被害者の感受性に左右されやすく、言葉や文字による説明だけでは、主治医に対しても、客観的な理解が得られません。そこで、 3 種類の痛みのスケールを紹介しておきます。ガン患者と医療スタッフの間で、実際に使用されているものです。
 
( 1 ) NRS = Numerical Rating Scale 、数値的評価スケール、

「最大の痛みを 10 とした場合、今の痛みはどのあたりですか?」痛みが全くない状態を 0 、患者が想像できる最大の痛みを 10 で表します。

 
 
( 2 ) VRS = Verbal Rating Scale 、カテゴリースケール

「今の痛みは、どの程度ですか?」痛みを、なし、軽度、中程度、強度、最悪の 5 段階で表示します。

 
 
( 3 )フェイススケール

「今の痛みに、最も当てはまる顔はどれですか?」6 段階の顔の表情から選択します。

 
 
 これら、3 つのスケールで痛みを説明、痛みのレベルについて、より客観性を持たせます。 客観的な資料としてはこれが限界ですが、それでも立証努力を怠るわけにはいきません。とくにRSD、カウザルギーなどの異常性の疼痛の審査には必須の作業と思います。