骨折等がなく、診断名が打撲・捻挫の類で済んだ被害者さん、症状が長引いて後遺障害申請をした場合・・おなじみの14級9号「局部に神経症状を残すもの」としての判定を仰ぐことになります。

 このような審査では、画像所見や検査データなどの客観的な数値が無いわけですから、訴えの信憑性を判断するしかありません。例えば、診断名や訴える症状の一貫性、継続的な治療、受傷機転(どのような事故状況で、どのような衝撃を受けたのか)なども重視されます。

 患者さんごとに訴える症状の軽重はありますが、どうも、重い症状を訴えている方の認定が却って厳しいように感じます。症状の訴えはあくまで自己申告ですので、審査側は程度を計りようがありません。すると、不自然に重篤な主張、打撲捻挫とは思えないほどの大げさな治療過程を辿ると・・・疑われてしまうのかもしれません。

 例えば、頚椎捻挫で2週間入院する、仕事を1ヶ月休む、通院にタクシーを利用する、あちらこちら病院巡りをする・・・通常、捻挫の方がこのような重篤な状況に陥るでしょうか? 接骨院・整骨院に毎日通う、これも不自然に写ります。普通、医師は理学療法を毎日もさせません。そもそも、症状の重い人ほど、毎日病院通いするような体力はないはずです。

 もちろん、ケガのダメージは年齢や体力から個人差がありますので、念のため検査で1日だけ入院する、大事を取って仕事を3日休む、最初の3回だけタクシー通院するなど、これらは変に思われないでしょう。つまり、程度問題です。調子に乗って程度を超えれば、相手保険会社の担当者の怒りと共に、詐病の疑いを持たれてしまうのです。この情報は、後遺障害審査をする自賠責保険に当然に伝わります。

 だいたい、そのような被害者さんは、かつて、打撲や捻挫程度で何ヶ月も病院通いをしたことがあるのでしょうか? すり傷・打ち身で仕事を休むほど、めちゃくちゃ虚弱体質なのでしょうか? 胃がんで胃を全部とってしまった人でさえ、およそ6ヶ月以内で職場復帰します。胃潰瘍の手術程度では3日間の入院、1週間の休みで復帰する場合もあります。医療の進歩はもちろん、現代人はそんなに暇ではありません。交通事故被害者だけが、大げさに通院を重ねると言っても過言ではないのです。

 
 「私は被害者なのだから!」、被害者の心情はわかりますが、あまりにも常識外れの被害者の姿勢は、後の後遺障害審査で痛い目にあうと思います。