事故後こんな症状に悩まされる患者さんがいます。
 頭痛、だるい、めまいや吐き気、不眠、耳鳴り、手のしびれ・震え、無気力、ぼーっした状態・・・不定愁訴です。これらは自律神経失調症の症状と重なります。交通事故のムチ打ちでたまにこのような症状を示す方がいます。整形外科での治療に加え、バレ・リュー症候群の治療を併用する必要があります。神経ブロックを試み、交感神経の暴走を抑えることにより快方へ向かわせます。

 しかし、これらの不定愁訴を訴えても、医師の診断によってはあらぬ方向へ行ってしまう患者もおります。例えばXP画像上、骨に異常がないと・・・「気のせいです」と言って、神経学的検査、MRI検査をしません。そしてしつこく症状を訴え続けると・・・「心療内科、精神科への紹介状を書きましょう」となります。精神病患者の出来上がりです。
 また、大学病院で精密検査を行い、脳神経科、眼科、循環器科とどんどん検査を進めていきますが、決定的な傷病名が見つかりません。そしてめったにない奇病・珍病へ・・・MTBI、脳脊髄液減少症、RSD、重症筋無力症・・・なんで単なるムチ打ちでなんでこんな重傷・奇病になってしまうの?

 これら病院巡りしている患者さんが本当に多いのです。昨日もご指導いただいているY整形外科医とこの話題になりました。被害者をお連れしたのですが、Y医師は流れるように神経学的検査を行い、こう診断しました。「頚部から上肢にかけての過緊張がもたらすもの、そして薬の大量投与の影響」。そしてK点ブロック(硬膜外ブロック)を試み、後日ペインクリニックの専門医の診断、MRI検査の指示をしました。そして強い薬、飲んでも改善のない薬は一切やめるように言いました。極めて穏当な処置と思います。今後、K点ブロックもしくは星状神経節ブロック、K点マッサージ、指圧などの緩和処置の効果が出てくるはずです。

 患者が自らの不安で訴える症状に過度の診断名をつけてしてしまう医師がおります。もちろんこれらの医師が言う診断は「〇〇の疑い」に過ぎないのですが、患者も精神的に弱っていますので、変な傷病名にすがりついてしまうのですね。

 私も立場上、患者の自覚を指摘することが多いのですが、今日は医師についても言いたいです。「〇〇の疑い」程度で変な診断をしないでほしいと思います。その傷病名で患者の頭が一杯になり、薬の大量投与はもちろん、病名に精神的に執着してしまいます。結果、保険会社からは精神病・詐病扱い、職場での信用失墜、家族ともうまくいかなくなり、気落ちして症状も改善が進まない・・・悪い方向へ一直線です。

 Y医師のように正しい判断、処置をしてもらわないと困るのです。ペインや神経学について、より整形外科医の理解が進むことを願うばかりです。