まず一枚の画像から。左がMRI・T2画像、右が同じくT1画像です。C6/7(赤い矢印)の部分がそれぞれ病変部で、T2では白く(高信号)、T1では黒く(低信号)描写されています。これはバイクの自損事故で外傷性脊髄損傷を負った18才患者です。

 バイクで転倒した際、頚部を路面に打ち付け、そのまま救急車で搬送、入院となりました。首はまったく動かせず、両腕が無感覚で手指のしびれがひどく、足もだるくなり長時間の歩行は困難です。その後リハビリを続け、下半身の回復は進みましたが、両上肢の麻痺は残存し、トイレが異常に近くなる症状が残存しました。

1、脊髄損傷
 
 脊椎に軸圧、屈曲、回旋、伸展、剪断、伸延などの協力な外力が加わり、脊髄の神経伝導路が遮断され、運動麻痺、知覚麻痺、自律神経障害、排尿排便機能障害を起こします。原因としては交通事故が多く、次いで高所からの転落、転倒、スポーツ外傷です。実際に先月、3階のベランダから落下し、障害を負った方の相談がありました。
 
<受傷タイプ>

① 伸展損傷・・・最も多発するタイプ。X線所見では軽微でも、麻痺は重篤なケース
         もあります。
② 屈曲損傷・・・椎体圧迫骨折や亜脱臼、完全脱臼となります。
③ 伸展回旋損傷・・・外力が加わた方向と反対側の椎間関節に脱臼や骨折が生じる。
④ 屈曲回旋損傷・・・外力が加わった方向と同側の椎間関節に脱臼や骨折が生じる。
⑤ 側屈損傷・・・少数例。小さい子に稀にある。

<状態の分類>

■ 完全損傷

 脊髄が完全に脊椎や椎間板によって遮断されたり、脊髄そのものが引きちぎれるので、非可逆性で回復はしません。とくに環椎・軸椎部分の場合、呼吸困難で多くは死亡となります。奇跡的に全身麻痺で寝たきり状態です。

■ 不完全損傷  重篤度に分けて4つの症状に分類します。

① 前部脊髄損傷・・・運動麻痺はあるが、触覚、位置覚、振動覚は保ちます。
② 中心性脊髄損傷・・・下肢より上肢の運動障害がひどく、温覚と痛覚が麻痺、触覚は保ちます。
③ 後部脊髄損傷・・・少数例。触覚、位置覚は麻痺しますが、運動障害はありません。
④ ブラウン・セカール型損傷・・・脊髄の片側損傷、損傷側の運動麻痺と反対側の温覚、痛覚の障害。

<治療>

 初期は救急処置と全身管理、損傷脊椎の整復と固定を行います。徐々に関節可動域と筋力の維持を目的とした早期リハビリテーションを行います。
慢性期では座位立位の保持、移動動作、車椅子操作、歩行能力、日常生活活動動作の確保のために残存筋力の維持、増進を進めます。
 

 出かける時間になってしまいました。続きは明日に・・・