1、実質臓器 腎臓の働き

 腎臓は、腰のやや上部、胃や肝臓の後ろ側に位置する2つが一対の臓器で、主に、血液中の老廃物をろ過し、尿を作る身体の排水処理工場の役目を担っています。 拳よりもやや大きめで、130gの重さがあり、脾臓と同じくソラマメの形をしています。

 腎臓には、心臓から血液が1分間に200ml程度送り込まれます。腎臓に送られた血液は、腎臓の糸球体でろ過され、原尿=尿のもとが作られています。腎臓でろ過される原尿は、1日あたりドラム缶1杯、150lですが、 糸球体でろ過された原尿は膀胱へ尿として貯められるまでに、 尿細管、集合管で必要な電解質やたんぱくなどが再吸収され、水分量の調整も行われています。原尿の99%は体内に再吸収され、最終的には約1.5リットルが尿として体外に排泄されています。 尿を生成する腎臓の部位は、糸球体と尿細管をあわせてネフロンと呼ばれます。1つの腎臓には約100万個のネフロンがあります。

 尿細管は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、重炭酸イオンなどの内、身体に必要なものを取り込み、また、不要なものを尿中へ分泌して排泄しています。これにより、体内のイオンバランスを一定に保ち、血液を弱アルカリ性に保っています。

 腎臓のろ過機能が円滑に働くには、血液の流れが一定に保たれている必要があるのですが、腎臓では血流の流れが悪くなるとそれを感知し、レニンという酵素が分泌されます。レニンが血液中のたんぱく質と反応して血管を収縮させて血圧を上昇させます。腎臓は、レニンの分泌量を増減させて血圧の調整もしているのです。

 腎臓は、エリスロポエチンというホルモンを分泌し、赤血球の数を調整しています。ビタミンDは肝臓で蓄積され、腎臓に移ると活性型に変化し、さまざまな働きをしています。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウムの吸収を促進し、利用を高める作用があります。
 
2、 腎挫傷、腎裂傷、腎破裂、腎茎断裂

 交通事故における腎臓損傷は、それなりの件数が発生しています。バイクの事故で、身体を壁、電柱、立木などに強く打ちつけることで、腎 臓が破裂することもあります。自動車VS自動車の事故では、シートベルトによる損傷も経験しています。

 腎外傷では、あざができる軽度な挫傷から、尿や血液が周辺組織に漏出する裂傷や破裂、腎動脈が切断される腎茎損傷まで、大雑把には1下の4つがあります。

 
   ①     ②      ③     ④

① 挫傷、打撲、被膜下血腫 、 ② 裂傷、亀裂、 ③ 断裂傷、破裂、 ④ 腎茎損傷、

 腎外傷では、上腹部、肋骨と股関節の間=脇腹の痛み、脇腹のあざ、血尿、シートベルトによる腎臓付近のあざ、 肋骨下部の骨折による痛みなどの症状を訴えます。 ほとんどの腎外傷で血尿がみられます。重度の腎外傷で、大量出血があるときは、急激な低血圧によるショック状態に陥ります。今では余り用いられませんがエコー検査、最近では造影CT検査が確定診断に有効です。

 腎挫傷、腎裂傷でも軽度なものは、エコー、CTで血腫の大きさを監視しつつ、増大傾向がなければ、安静下に、水分摂取量をコントロールし、止血薬と抗生物質の投与による保存療法が続けられます。腎破裂や腎茎部損傷の重度な外傷では、開腹による腎縫合術、腎部分摘出術、腎摘出術が選択されています。
 
3、腎機能のレベル

 腎損傷は、DIP=点滴静脈性腎盂造影の所見より、造影剤の排泄が良好で、腎杯、腎孟の全貌が描出されるものは、腎挫傷と診断されています。 造影剤の排泄が良好で、腎孟の全貌は描出されているが、腎杯の一部が欠損しているものは、軽度の腎破裂、造影剤の排泄が障害され、数個の腎杯欠損があり、しかも腎杯も充分に描出されていないものを中等度の腎破裂、造影剤の排泄がかなり障害され、僅かに数個の腎杯が描出されるのみで、腎孟の形態が不明なものは、高度の腎破裂、これらの3つを腎破裂と分類、造影剤の排泄がほとんど認められないものは、血管造影所見、および手術所見で、腎断裂、または腎茎部損傷に分類されています。覚えることではありません。

 腎機能が低下すると、吐気、嘔吐、不眠、頭痛、浮腫、易疲労性などを生じます。腎機能が低下するにつれ、その症状は増悪し、仕事には大きな支障をもたらすことになります。

※ 糸球体濾過値=GFR(しきゅうたいろかち)

 腎臓の能力、どれだけの老廃物をこしとって尿へ排泄することができるのか? つまり、腎臓の能力は、GFR値で判断されています。この値が低いほど、腎臓の働きが悪いということになります。以前の相談者さんも、片側の腎臓がダメになりましたが、その後順調に数値が回復も、やはり一定の数値で留まってしまいました。

 糸球体濾過値=GFRが30ml/分以下では、透析の準備が必要な状態であり、 腎機能の1つであるホルモンの産生機能の低下による種々の症状を発症するので治療の継続が不可欠となります。なお、糸球体濾過値=GFRが30ml/分を超えていても、ホルモンの産生機能の低下による高血圧が生じることがあります。さらに、腎機能の著しい低下により、尿毒症を発症したときは、昏迷、昏睡などの無力症、精神障害、高度の循環障害等が生じ、仕事をすることが全くできなくなります。