今度はスネの膝関節部です。スネには脛骨と腓骨、二つの長管骨があります。この骨の上部の関節ジョイント部は、顆部、近位端とも呼ばれます。診断書ではプラトー骨折、高原骨折とも書かれます。
膝の強打やタイヤで轢かれる、バイクの転倒で膝が下敷きになった等で受傷します。また周辺靭帯、半月板の損傷や膝蓋骨・大腿骨の骨折を伴うこともあります。さらに合併症は関節拘縮とならんで腓骨神経麻痺があげられます。そのような深刻な後遺障害を残さぬよう、医師の正確な診断と整復が望まれます。

診断もまず折れ方の分類から・・・


陥没型 分離・陥没型 分離型

 CTで陥没箇所が描出!

ついでに腓骨についても・・・

■ 腓骨顆上骨折

腓骨近位端骨折、もしくは腓骨頭骨折とも目にします。文字通り腓骨が脛骨とジョイントする部分です。脛骨と一緒に折れるケースが多く、深刻な可動域制限は少ないですが、腓骨神経麻痺の残存に注意が必要です。

★腓骨神経麻痺

脛骨、腓骨の骨折を原因として付近を通る神経にダメージを受け、足首や足指が自力で曲がらなくなる症状です。詳しくは実際のエピソードを参照して下さい。
腓骨神経麻痺と名医

 

<治療>

大腿骨顆部骨折に同じく、プレート固定術が一般的です。当然、癒合の経過観察と運動療法・リハビリが重要です。これは変形癒合と関節拘縮を出来るだけ防ぐ努力です。

← XP:プレート固定画像

↓ まさに大工仕事ですね

 

<後遺障害>

以下の項目ですが、同部位の場合、一番重い等級が認定されます。痛み、しびれ等の自覚症状も含みます。

〇 変形癒合    12級8号

まずXPで視認、その他数値的な判定は以下の通りです

1、変形・・・ 15°以上の屈曲変形。骨が前後に曲がってくっついた状態。

2、骨の欠損 ・・・ 欠損の大きさに関係ないようですが、程度によって短縮障害につながります。また骨頭部の再生不能の場合、人工関節の置換術となります。

3、回旋変形 ・・・ 外旋で15° 。 プレート固定術の進歩によりこの変形は起きなくなりました。

4、直径の減少・・・ 直径が3分の1に細くなった?状態。しかし骨頭部では考慮しません。

 

〇 人工関節

1、人工骨頭、人工関節の置換術を施したもの。  10級10号

2、それでも関節の可動域に2分の1以下の制限が残ったもの。  8級6号

 近年、素材も技術も向上中、病院も手術に積極的です。

 

 

〇 短縮障害

 レントゲンのロールフィルムを用いて計ります。これはレントゲンのパノラマ写真です。

1、5cm以上短縮    8級5号

2、3cm以上短縮   10級8号

3、1cm以上短縮   13級8号


 昨年13級の認定を受けた例では「関節拘縮」の診断名と計測値だけで、ロールフィルムまでは提出しませんでした。
しかし10級以上となると、証拠画像として重きをなすはずです。 

 

〇 可動域制限
 
1、健側(ケガしていない方の膝、正常値130°)に対して、ほぼ動かなくなった(15°以下)場合

  1下肢の3大関節の1関節の用を廃したもの=8級7号

2、同じく、2分の1以下に制限されたもの(65°以下)

  1下肢の3大関節の1関節の機能に著しい障害を残すもの=10級11号

3、同じく、4分の3以下に制限されたもの(100°以下)

  1下肢の3大関節の1関節の機能に障害を残すもの=12級7号


腓骨神経麻痺については足首、足指の可動域制限がおこるので、これは、また脛骨骨幹部、腓骨骨幹部骨折の解説で取り上げます。

★ 骨折の癒合不良、関節拘縮による可動域制限は他同値(医師が手を添えて計測)で判断します。しかし腓骨神経麻痺のような神経の不全となったものは、自動値(自分で動かす)で判断します。たまにこの判断を曖昧にしている医師に出くわし、困っています。