【質問】

 むち打ちから3ヵ月、痛みは相変わらずで、頭痛や耳鳴り、だるさも収まりません。色々調べると「バレ・リュー症候群」の可能性があると思います。そこで、主治医の先生にその旨お伝えしたところ、「そこまでの所見はない。このままの治療でよい。」と言われてしまいました。私としては毎日辛く、相手の保険会社や周囲からも「むち打ち程度で・・」とみられているようで、この先が心配です。 どうしたら良いでしょうか?
 

【回答】

 バレリューは副交感神経の異常亢進で、一過性のものです。後遺障害の対象ではありません。しかし不定愁訴が続くと体力が奪われ回復が長引きます。めまい、頭痛、耳鳴り、その他不調が続くようなら、麻酔科、もしくはペインクリニックで神経ブロックを試すのがよいです。神経ブロックも病院によって、または症状・段階によって以下3つに分岐します。

1、星状神経節ブロック

 C7とT1の間(正面、首と鎖骨の間の位置)にある、副交感神経をつかさどる神経に直接麻酔注射をして、神経の暴走を一時的に麻痺(遮断)します。注射の中身はキシロカイン(リドカイン)、カルボカインなどです。

詳しくは → https://www.jiko110-akb.com/diary/2795.html

2、硬膜外ブロック 

 麻酔薬を背中側から首と肩の間あたり注射、硬膜の外側に注射します。主に受傷後の過緊張(筋肉のこわばりがひどい)による神経症状のケースに用いられます。

最近ではK点ブロックと言って首の裏にあるポイントに行う手法が広がっています。

3、 レーザーSGB

レーザーを星状神経節にレーザーを照射し、神経ブロックの疑似効果を促します。効き目は弱いです。注射が怖い人、症状が軽い人向けです。

 さて本題ですが、整形外科の医師でも神経学への理解の差があります。神経ブロックを推奨する医師と、必要ないという医師がおります。後者の場合、医師の紹介が得られないので(それを理由に)相手保険会社が払渋り、トラブルの可能性があります。 しかしながら必要性の判断は現在の主治医の診断だけではなく、セカンドオピニオン(他の医師の診断も受けてみる)や患者本人の自己判断もあってしかるべきです。幸い神経ブロックに深刻な副作用は少ないので、自己責任で受診するのも一考です。ただしリリカが服用されている場合、めまいがひどくなるので、気を付ける必要があります。

<進め方>

 相手の保険会社にペインの並行受診・一括払いの対応を取り付けます。この時、「主治医の指示で」と言うのが一番です。しかし今回それがかないませんので、「転院ではなく医師の勧めもあり、治療を併用したいのでお願いします」と言います。保険会社は受傷3か月以内なら割とあっさりOKしてくれます。ちなみにこの医師は本やHPで意見を言っている医師をさします。主治医には気を悪くしないよう、保険会社がいいというのでちょっと試しにやってみました程度に軽く伝えておきます。仮にそれで激怒するような医師なら、先の後遺障害診断のために転院を検討するべきです。

 つまり医師には「保険会社がOKと言ったよ」といい、保険会社には「医師の指示で」と両者をうまく取り成すことです。何事ももめずに円満に進めるべきです。患者にもこのような交渉力・調整力が求められます。