5、味覚・嗅覚・めまい・ふらつき

 
☐ 味がついているのに大量に醤油をかけて食べる

☐ 事故後、苦手で食べられなかった魚介類が食べられるようになった

☐ 足元にガソリンがこぼれているのに煙草を吸おうとしてライターを点火した

☐ 腐った果物を平気で食べている
 

 これらは実際に担当した被害者さんの例です。ガソリンの強烈な臭いがしない、痛んでいる果物の腐臭や腐った味がわからない・・・大変危険な障害と言えます。多くの場合、味覚と臭覚の異常は併発します。

 味覚・臭覚は前頭葉に損傷を受けた場合に失われる感覚です。また頭蓋底骨折から嗅覚、味覚、視覚、聴覚に障害を起こすケースがあります。機械で例えるなら脳そのものの損傷の場合、それらの感覚を認識する「回路の故障」です。神経の損傷の場合は神経の伝達が絶たれる事を原因とします。これは「ケーブルの断線」ですね。
 
 高次脳機能障害でこれらを多数経験しています。五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)が正常か、すべてチェックする必要があります。該当する障害について眼科、耳鼻咽喉科、神経科にて受診し検査をします。回路の故障かケーブルの断線か、原因の特定は脳外科ですが、臭いがしない、味がわからないといった障害の有無、程度の検査はそれぞれの専門科になります。
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☐ まっすぐ歩けず、蛇行している

☐ めまいを訴える。なんでもないところで転倒する

☐ 頭痛に悩まされている

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ジョーはパンチドランカー(ボクサー特有の外傷性脳障害疾患)で蛇行歩行を・・
 

 脳幹出血の被害者でめまい・ふらつき等、運動機能の障害となった例を経験しています。また後頭部、小脳の損傷では平衡感覚の喪失、運動神経の低下が現れます。
 頭痛は損傷の部位に関わらず、多くの高次脳機能障害の被害者にみられる自覚症状です。
 

※ ちなみに等級認定の際、記憶障害や注意機能障害の評価にこれらの症状を含めて総合的に等級判断する場合と、嗅覚・味覚障害、めまい・ふらつきを「12級相当」として高次脳機能障害等級に併合するケースがあります。これは前述のとおり、脳の損傷の一環か、別部位の受傷かで併合適用の判断となります。実際は併合とするか否かは総合的に症状の程度から判断しているようです。