さすがにWaisⅢ(知能検査)、Wms(記憶検査)は掲載できません。表題にあるように検査用紙1枚でできる検査を紹介していきます。詳細を解説するより、検査項目を見た方が理解が早いと思うからです。

立証側の私が主張したいのは

× 「闇雲にマニュアルに沿って検査を実施」

〇 「患者の症状を観察し、必要な検査を想定、症状と検査結果を結び付ける」

これを提唱したいからです。

 2年前、高次脳機能障害の立証を手掛ける、ある弁護士と行政書士に教えを乞いたのですが、両者とも機械的に「検査はこれとこれをやる、以上。」でした。その検査の狙いや内容を質問をしたのですが、交通事故110番のマニュアルに記載されている検査表のコピーを見せてくれただけで、どうもよくわかっていないようです。これでは検査する医師、言語聴覚士と検査目的について共通認識が図れず、運任せ、他力本願の立証作業になってしまいます。
 障害に苦しむ被害者本人とご家族のために、血の通ったお手伝いをしたいものです。
 

三宅式記銘検査

 ある単語と単語のペアを聞かせ、それを覚えているかをみます。聴覚に特化した記憶検査です。ワーキングメモリー(一時的に言葉や番号を暗記する脳の働き)の状態が明らかになります。
 その単語のペアは関連する組みあわせ(有関連追語)とまったく無関連な組み合わせ(無関連対語)、それぞれ10組行います。

<有関連対語> ・・つまり連想ゲームです

 まず「煙草」→「マッチ」といったの関係するペアの単語を聞かせます。その後「煙草」と言ったら「マッチ」と答えられるか3回テストします。他に「家」→「庭」、「汽車」→「電車」 など10組で10点満点です。
 障害のない人は3回目まででほぼ正答となります。平均値は 1回目8.5点 – 2回目9.8点 – 3回目10点

<無関連対語> ・・暗記力が問われます

 「入浴」→「財産」、「水泳」→「銀行」、「ガラス」→「神社」・・・関係のない言葉の組み合わせに健常者でも苦戦しそうです。
 平均値は 1回目4.5点 - 2回目7.6点 - 3回目8.5点

 障害者は無関連追語で特に点数が悪くなります。1回目から3回目まで点数が上がらない、つまり短期記憶(ワーキングメモリー含む)、学習能力の低下を表します。 
 

<有関係対語試験>

1回目

2回目

3回目

時間

答え

時間

答え

時間

答え

煙草 – マッチ

空 – 星

命令 – 服従

汽車 – 電車

葬式 – 墓

相撲 – 行司

家 – 庭

心配 – 苦労

寿司 – 弁当

夕刊 – 号外

合 計

範 囲

6.6~9.9

9.3~10.0

10.0~10.0

平 均

8.5

9.8

10.0

<無関係対語試験>

1回目

2回目

3回目

時間

答え

時間

答え

時間

答え

少年 – 畳

蕾 – 虎

入浴 – 財産

兎 – 障子

水泳 – 銀行

地球 – 問題

嵐 – 病院

特別 – 衝突

ガラス – 神社

停車場 – 真綿

合 計

範 囲

3.2~7.0

6.6~10.0

7.7~10.0

平 均

4.5

7.6

8.5

 この検査の問題点は、単語に少々古いものが含まれていることでしょうか。また2回行う場合、かなりの間隔を明けないと、学習効果で内容を覚えてしまい正確な計測ができない(つまり点数が実情よりよくなる)場合があります。新しい単語を含めて数種類用意すべきと思っています。