JCOAの自賠・労災委員会の山下仁司委員長は、医療機関と柔道整復の受診(受療)形態について、4パターンに分類しています(少し補足を加えてあります)。

(1)柔道整復にかかった後、医療機関にかかる「経過後受診」

事故と後遺症の関連性が不明なままに、患者が後遺障害診断書の依頼のために病院に再診に来るケースが「悪質」と指摘し、「施術証明書を、診断書と同様に扱う警察があるのが問題を大きくしている」と指摘。

(2)柔道整復の前後に医療機関にかかる「なか飛ばし」

 損害保険会社が推奨しているケースもあると言い、「診断書に『医業類似行為での施術には同意していない』旨を明記すればトラブルは避けられる」とした。

(3)医療機関と柔道整復の「並行受診」

 整形外科で定期的に診断を受けつつ、治療・リハビリなどを整骨院・接骨院等で行うこと。

(4)医療機関の後に柔道整復にかかる「中止後受療」
 完治しただけでなく、症状が固定した場合、医療機関受診後、自賠責保険を使って柔道整復に通うことを避けるために、「中止」でなく「治癒」と診断する必要があることを指摘。「後遺症が残った場合、患者が『治癒』とすると怒るケースが想定されるが、健康保険で治療が続けられることを伝えれば問題ない」と話した。  その上で山下氏は「医学的な知見がないのに診断書を出すと、裁判などで問題になることが考えられる。安易に症状と事故の関連性を認めるのは問題で、関連性が不明なら『自賠責での診断書は出せない』としっかりと伝えるべきだ」と会員に呼びかけた。

<解説>
 
4分類それぞれよく見かけますが、やはり医療行為(病院での治療)と医療類似行為(柔整師の施術)の区分けが不明瞭であることは共通します。問題はこの区分けを患者がほとんど理解していないことです。
 どのような治療を望むかは患者の自由であること、これを前提とするならばこの自由は保障されるべきですが、それが、後の保険支払、とくに後遺障害認定に関わる重大な条件として患者自身に降りかかってきます。つまり(1)~(3)のパターンで治療日数が整骨院・接骨院に偏重した結果、後遺障害が非該当となったケースを多数経験しています。

 以上、様々な問題がありますが、交通事故受傷者にとって大事なことを2つ

「柔整師による施術は治療行為ではない」 

→ でも保険会社は施術料を支払ってくれますし、健康保険も適用できます。

「後遺障害を残すような重篤な患者の治療をするところではない」

→ 整骨院・接骨院での治療を続けた場合、後遺障害の認定は非常に厳しい。