新年、最初の実績投稿とは言え、認定自体は3年前でした。その後、訴訟で解決が昨年の暮れまで伸びましので、ようやくUPする次第です。

 本件は、一人で高次脳、脊髄損傷、上腕神経麻痺の3大障害が重なりました。秋葉にとって、まさに腕の見せどころでした。もちろん、自賠責保険では完全勝利の認定を引き出しました。最終的に、訴訟では実態上の賠償額に留まりましたが、自賠責で先勝することのアドバンテージは発揮できたと思います。訴訟中も弁護士と共に2年半、大変な作業量となりました。

 受傷からおよそ5年、ようやく長く厳しい戦いを終えました。今後、被害者さんとご家族の平穏な日々を願って止みません。

裁判でも弁護士を強力にサポート!  

5級2号:高次脳機能障害+脊髄損傷(50代男性・宮城県)

【事案】

バイクで交差点を直進中、対抗自動車が右折急転回してきた為、衝突してバイクから投げ出された。診断名は、クモ膜下出血、硬膜下血腫、脊髄損傷、顔面骨折、肋骨骨折、血気胸、大腿骨転子部骨折、脛骨・腓骨骨折、さらに右上腕神経引き抜き損傷となった。

当然に高次脳機能障害の懸念があるが、それより、数日後に脳梗塞が頻発され、その原因として椎骨動脈解離を起していた。緊急にコイル塞栓術で動脈解離を防いだが、脳障害が重度化され、左半盲も生じた。また、徐々に体力が回復する中、とくに短期記憶障害と易怒性が目立った。 脊髄損傷は最終的に右半身に麻痺を残すことになった。それ以上に右上腕の神経損傷から、右上肢の可動は完全に失われた。その他は顔面に線状痕が残った。   続きを読む »

 鼻軟骨損傷(びなんこつそんしょう)    (1)病態

 鼻筋を指でつまむと、左右に動かすことができるのですが、それは、軟骨であるからです。鼻の根元、鼻骨は、しっかりとした骨であり、鼻軟骨の下に位置しています。

 鼻の軟骨々折でも、軽度なものは、出血もなく、薬だけで終わります。   (2)症状

 事故直後から、鼻筋が、大きく左右に曲がる、中央部が凹むことがありますが、鼻骨骨折を伴っていなければ、軟骨の弾力性で一時的な変形を来したものであり、それほど心配することもありません。しかし、現場で曲がった鼻を自分の手で矯正することはタブーで、絶対に行ってはなりません。   (3)治療

 大きく腫れてくるまでに、急いで、耳鼻咽喉科を受診します。尾骨骨折の有無を確認するために、XP検査が行われ、触診で、ズレや曲がりがチェックされます。

 骨折がなく、皮膚や粘膜の傷が開いていない、出血が止まっている、曲がりや陥没が少ないときは、ペンチ状の鉗子で整復し、鼻孔に詰め物をして固定します。   (4)後遺障害のポイント

 尾骨骨折を伴わない鼻軟骨の損傷であれば、通常、後遺障害を残すことなく治癒します。ケガ自体に過度な心配はいりません。ただし、痛みが受傷から半年も一貫して治療が続けば、神経症状の14級9号の余地を残すと思います。

 次回 ⇒ 鼻欠損  

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 鼻篩骨骨折(びしこつこっせつ)

 

(1)病態

 鼻骨々折に合併して、鼻骨の奥、裏側部分の両眼の間を骨折したときは、重症例となります。   (2)症状

 鼻篩骨には、瞼が付着している突起や涙を鼻に流している孔があり、先の鼻骨骨折の症状に加えて、

① 眼球陥没、目が窪む、 ② 眼角隔離、両目の距離が離れる、

③ 涙小管断裂、涙が止まらない、 ④ 鼻筋の強い凹みなどの症状が出現します。    (3)治療

 治療は、なるべく早期に骨折した骨を元の位置に戻し、必要なら骨を移植することです。

 しかし、頭蓋底骨折を合併していることも多く、個々のケースで形成術の時期や術式が異なります。   (4)後遺障害のポイント

 秋葉事務所では未経験の症例です。基本通り、諸症状を神経系統の障害で評価します。それと鼻に変形がないか、つまり醜状痕を確認します。

 交通事故110番では、原付を運転中に追突され、前方のトラックの荷台に鼻を打ちつけた事故で、鼻骨々折、および鼻篩骨々折の相談例がありました。

 眼球陥没、目が窪む、眼角隔離、両目の距離が離れる、涙小管断裂、涙が止まらない、鼻筋の強い凹みなどの症状が出現し、眼球陥没と眼角隔離は、なんとか目立たない程度に改善したのですが、右目の涙小管断裂と鞍鼻変形は改善が得られず、後遺障害を残したのです。

 涙小管断裂では14級相当、鞍鼻変形では、当初12級14号でした。未婚の女性であり、火の玉の異議申立を敢行、連携弁護士は自賠責・調査事務所の面接に立ち合い、7級12号に繰り上げ認定に成功、併合7級としました。    次回 ...

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 前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)

(1)病態

 めまいは内耳にある前庭、半規管、それらからの情報が伝わる前庭神経、脳幹、小脳のいずれかが障害されるものです。前庭神経炎の場合、内耳から脳へ情報を伝える前庭神経が、なんらかの原因で障害されてめまいを生じると考えられています。発症前に風邪症状がある人が多いため、ウイルス感染が原因と疑われていますが、それ以上は不明です。   (2)症状

 激しい回転性のめまいが急に起こり、普通それが数日〜1週間程度続きます。めまいの他、吐き気や嘔吐、冷や汗が生じます。この疾患は、難聴や耳鳴りなどの聴覚の症状を伴わないのが特徴です。安静にしてもなかなか収まりませんが、動くとさらに悪化する傾向です。

 めまいは発症から3週間くらいでほぼおさまりますが、体を動かした時や歩く時のふらつきは、しばらくは持続するのが一般的です。ときには、6カ月位経っても、ふらつきが持続することがあります。 続きを読む »

 めまいを訴える患者さんで、この診断名も多いものです。やはり、交通事故外傷と被ることが多く、中高年の場合は既往症の疑いが拭えません。事故からめまいを発症したのであれば、できるだけ早期に専門医の受診、検査をしなければなりません。その結果、この診断名がつくと後遺障害の認定は黄色信号です。     (1)病態・症状

 耳が原因で起こるめまいの中で、最も頻度の高いもので、

① 寝返りをうったとき、

② 寝ていて急に起き上がったとき、

③ 座っていて急に振り向いたとき、

④ 棚の上のものを取ろうとして急に上を向いたとき、

 このような時、急激に回転性の激しいめまいが起こる疾患で、内耳の変性、慢性中耳炎や結核でストレプトマイシンを使用した副作用などで発症するとされています。

 内耳の前庭器官は、頭が地面に対してどのような位置にあるかを感じるための機能を有しています。良性発作性頭位めまいは、前庭器官に異常が生じたために、頭の位置の変化を過敏に感じてしまう結果、発症する疾患と考えられており、交通事故との因果関係は通常ありません。

 前庭器官の耳石器の上には、炭酸カルシウムでできている耳石が多数のっていますが、この耳石が本来の位置から外れて、別の種類の前庭器官である半規管のクプラに付着したり、半規管のなかに遊離したりして、それが頭を動かした際に動いて半規管を刺激するのが原因であるという説が有力です。耳石へのダメージ・・この点、事故の衝撃による可能性を残しています。    何気なしに頭を動かしたり、朝起きようとして枕から頭を上げたりしたあとなどに、急激な回転性のめまいが起こり、このめまいは長くても数十秒で消失します。また、何回か同じ動作を繰り返していると、だんだん軽くなるのが特徴で、吐き気を伴うことがありますが、難聴や耳鳴りなどの聴覚の症状は起こりません。

 めまいが起こる頭の位置で眼振が現れ、次第に増強、減弱します。そして、聴力検査、温度眼振検査では異常を認めないことがほとんどです。良性といわれるように、一般的には、比較的早いうちにめまいはなくなります。めまいが少し軽くなってきたら、積極的にめまいが起こりやすい頭の位置をとるといったリハビリテーションをすることも治癒を早めます。

 最近では、頭位変換療法と呼ばれる、遊離した耳石を元にもどす方法が開発され、良好な成績を上げています。   (2)治療

 まずは症状の起こりやすい体(頭)位や活動を避けるなど、日常生活での動きに気をつけます。抗めまい薬の服用により症状を抑えることはできますが、BPPVを完治させる薬はありません。しかし通常の場合、最初の1か月を過ぎると徐々に症状が消えていきます。   (3)後遺障害?

 この診断名では、交通事故外傷との因果関係は薄れます。それでも、事故直後からの発症で、検査結果を伴っており、症状の一貫性もあり・・・現在、申請中が1件、結果を待っているところです。   結果が出ました! 👉 続きを読む »

 耳の障害・番外編になりますが、これから4回、耳の障害で代表的な「めまい」、「難聴」の一般的な傷病名を解説します。いずれも、事故外傷から離れる傷病名です。    常時、あるいは時々、めまいを訴える中高年は多く、耳鼻科での診断はメニエール病(症)が第一位です。慢性化する傾向で、耳鼻科の受診が欠かせません。

 交通事故外傷でも、むち打ち後にめまいを訴える被害者さんは少なくありません。秋葉事務所でも数件の認定例があります。中高年の場合、厄介なことにメニエール病と被って、事故との因果関係の立証に腐心することが多いのです。   (1)病態

 メニエール病の原因は、内リンパ水腫、内耳のリンパが増え、水腫、水ぶくれになっている状態です。ストレス、睡眠不足・疲労・気圧の変化、几帳面な性格などに原因があると考えられています。

 内耳には、①聞こえの細胞が詰まっている蝸牛と、②平衡機能を司る三半規管と耳石器があります。この両方、もしくはどちらかに水腫ができるかで症状は異なります。

 蝸牛の水腫では、めまいの症状はなく、難聴だけを自覚します。水腫が小さいときは、難聴を自覚せず、耳が詰まった感じや耳鳴り、音が響く感じを訴えます。

   (2)症状

 反対に三半規管・耳石器に水腫があれば、めまいの症状だけを訴えます。めまいの強さも、グルグル回転する激しいものから、フワフワ雲の上を歩いている感じのものまで様々で、めまいが持続する時間は、10分程度から数時間程度であることが多く、数秒~数十分程度の極めて短いめまいが主であるときは、メニエール病は否定的です。

 めまい=メニエール病と考えがちですが、メニエール病には厳密な診断基準があり、難聴、耳鳴り、耳が詰まる感じなどの聴覚症状を伴うめまい発作を繰り返す、反復することです。めまい発作や難聴発作が1回起きただけではメニエール病とは診断できません。この診断基準を満たし、かつ、類似の他の病気を除外できるものをメニエール病と診断します。    続きを読む »

 側頭骨骨折後の顔面神経麻痺を解説します。

側頭骨骨折ですから、耳の障害と言うより頭部外傷のカテゴリー、頭蓋骨骨折の一つとしてすでに解説済みです。    👉 頭部外傷 ⑥ 側頭骨骨折 Ⅰ     今回はその復習も兼ねます。秋葉事務所では、顔が歪む程の顔面神経麻痺の認定はありませんが、痛み・しびれ・無感覚・異常感覚での12級13号、14級9号の認定はいくつかあります。いずれも側頭骨骨折起因ではなく、頬骨(きょうこつ=ほほの骨)、眼窩底骨折によるものです。側頭骨骨折に限定すると、側頭葉の硬膜下血腫で高次脳機能障害はありました。    側頭骨骨折は、ターゲットCTで立証が完了している前提で話を進めます。

(1)病態

 顔面神経は、脳の顔面神経核から神経の枝を伸ばし、小脳橋角部を通って、側頭骨の細い骨のトンネル、顔面神経管の中を通り、耳たぶの奥の方の茎乳突孔から側頭骨を出て、さらに耳の前の耳下腺の間を貫いて顔面を動かす表情筋に分布しています。

 顔面神経核から表情筋の経路のどこかが障害されると、表情筋を動かす信号が入ってこなくなり、表情筋が動かなくなり、結果、顔面が動かなくなります。この状態を、顔面神経麻痺といいます。   (2)症状

 顔の表情筋は20以上もあり、顔面神経麻痺の程度と範囲とで、様々な症状があります。 続きを読む »

◆ めまい他に対する最新の検査機器

 基本的な眼振検査は町の耳鼻科でも備えるようになりましたが、大学病院などでは、最新の検査機器も登場しています。   ① ビデオ式眼振計測装置、VOG

 

 自発眼振検査、頭位眼振検査、頭位変換眼振検査、カロリック検査などに対応しており、前庭検査をPCにカメラを接続し起動するだけで、簡単に計測、解析ができて、精度も高いのです。

 ENGのように電極を貼り付けることや、校正を行う必要がなく、被験者の負担が少なく、簡易に検査を行うことができます。   ② エアーカロリック装置

 患者と検査員両方の負担を減らす新しいカロリックの検査方法です。

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(4)後遺障害のポイント

Ⅰ. 頭蓋底骨折と同じく、交通事故における側頭骨骨折、迷路骨折では、高次脳機能障害のような重篤な認知障害を残すことは、ほとんどありません。

 しかし、難聴、耳鳴り、めまい、ふらつき、顔面神経麻痺など、日常生活上、見過ごせない後遺障害を残すことになり、シッカリと立証して等級を獲得しなければなりません。   Ⅱ.

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  (1)病態

 側頭骨は、イラストの青色の部分、耳の周りにある骨で、脳を保護している頭蓋骨の一部です。側頭骨は、大きくは、上部の鱗状部(りんじょうぶ)と下部の錐体部(すいたいぶ)の2つに分類されています。

 交通事故による直接の打撃では、耳介の上の部分、鱗状部の縦方向の亀裂骨折が多く、この部位の縦骨折では、大きな障害を残すことはありません。しかし、後頭部からの衝撃により、錐体部を横方向に骨折すると、内耳や顔面神経を損傷することになり、オペが実施されたとしても、治癒は困難であり、確実に後遺障害を残します。

 側頭骨骨折の内、骨折線が迷路骨包を横切るものは、迷路骨折とも呼ばれています。   (2)症状

 錐体部は、頭蓋の内側に入りこんでいて、中耳や内耳、顔面神経などを保護しています。錐体内部には、内耳・内耳道が走行しており、この部位を骨折すると、確実に、感音性難聴やめまいの症状が出現し、また、錐体部を構成する鼓室骨、錐体骨、乳様突起に囲まれた形で中耳があり、外耳道と耳管で外へ通じており、耳小骨の離断や鼓膜の損傷・中耳腔ヘの出血により伝音性難聴をきたすことも十分に予想されるのです。

 聞こえが悪いとは、骨折が中耳におよんで、鼓膜が破れ、耳小骨が損傷していることが予想され、耳鳴り、めまいを合併していると、内耳も障害されていることを示唆しています。

 顔面神経は、脳を出てから側頭骨、耳骨の中を走行し、骨から外に出ると、耳下腺の中で眼、鼻、口と唇に向かう3つの枝に分かれて、それぞれの筋肉に分布しています。顔面神経麻痺は、通常、顔面のどちらか半分に起こります。

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 音響性外傷(おんきょうせいがいしょう)  

(1)病態

 これは、交通事故110番の相談例でも僅かな経験則ですが、交通事故でも発症しています。高速道路上で発生した20台以上のトラックや乗用車が巻き込まれた多重追突事故で、タンクローリー車が横転、爆発したときの、乗用車の運転者で経験しています。このときは、耳鳴りが主症状で、12級相当が認定されています。   (2)症状

 ロックコンサートなどの大音響や、爆発、銃声などを聞いた後で、聴こえが悪くなることがあります。短期間の強大音に晒されたことで、聴力が落ちるもので、音響外傷といわれています。音響性外傷では、音源に近い方の耳だけに、難聴、耳鳴りが起こります。軽いときは、1、2日で元に戻ることもありますが、そのまま難聴や耳鳴りを残すことがあります。

 実際、私のロック仲間でも難聴が多く、とくに爆音のハードロック野郎はスタジオで2時間もリハーサルすると、しばらく耳鳴りや難聴に陥るようです。   (3)治療

 難聴は、早期に治療を開始するほど効果が得られ、時間が経過するほど、治りにくくなります。なるべく早期に耳鼻咽喉科を受診することです。急性音響性外傷では、早期のステロイド治療が有効です。    ロック歌手の氷室京介さん、53歳は、両耳難聴により引退宣言をしていますが、25年の長きにわたり、大音量の中で歌ってきた積み重ねで、騒音性難聴を発症したようです。多くのロックミュージシャンにとって職業病ですが、しばらく静養すれば回復するはずです。多くのファンはボウイの再結成を夢見ています。    かつてのバンドメンバー:ジョニーは現在、ボウイのバンドを演っています。布袋役はエージさん、ロビー・マッキントッシュみたいだ。皆50歳を超えていますが、驚異的に若い!(昔のよしみで無断リンク!) ⇒ ホンキートンキークレイジー 続きを読む »

流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)     (1)病態

 ちょっと箸休めですが、本件は、交通事故による傷病名ではありません。流行性耳下腺炎とは、おたふく風邪のことで、多くは、4~5歳で発症しています。ムンプスウィルスが原因で、感染した人の咳やくしゃみから、ウィルスを吸い込むことで感染します。潜伏期間が2~3週間と長く、幼稚園などで流行りだすと、終息するまで時間がかかります。ただし、一度感染をすると、免疫を有することになり、再感染はありません。

 秋葉も幼稚園児の時にかかりました。もちろん、二度と罹患することはありませんでした。   (2)症状

 37~39度の発熱で、耳の下の耳下腺が腫れてきます。耳下腺は、唾液を作る唾液腺で、口を開ける、食事をすることで、唾液腺を刺激すると痛みが増強するので、食欲が低下します。しかし、熱は3日ほどで下がり、腫れや痛みも1週間前後で改善します。

 おたふく風邪で心配されるのは、合併症です。激しい頭痛や嘔吐があるときは、無菌性髄膜炎を合併していることが予想されます。重要な合併症の1つに、難聴があり、1000人に1人の割合で合併するといわれています。

 NHKの連続テレビ小説『半分、青い』のヒロイン、すずめちゃんも、おたふく風邪で、左耳の聴力を失ったとされています。    次回 ⇒ 騒音性難聴  

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(1)病態・症状

 文字通り、突然に発生する難聴で、通常、片耳に発生するのですが、稀に、両耳に発生することもあり、また、耳鳴りやめまいが難聴の発生と前後して発症することがあります。さらに、めまいには、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。

 外傷の場合、内耳の蝸牛が、なんらかの原因で障害を受けたと予想されるのですが、その原因は不明で、内耳の障害の原因としてウイルス感染説、循環障害説などが疑われています。

 他にも様々な原因が考えられますが、事故外傷と直接関係のない、慢性疾患を原因とすることも多いようです。

 やっかな原因はストレスで、これは、ほとんどすべての人間が抱えている現代病です。     (2)治療

 突然に難聴が発生したときは、難聴の原因がどこにあるかを診断する必要があります。そのためには、耳鼻咽喉科での診察、耳のX線検査、純音聴力検査が必要となります。症状により、精密な聴力検査や平衡機能検査、MRI検査も必要になります。

 難聴の発生直後の早期に治療を開始するほど、聴力が改善するといわれています。遅くとも発症から2週間以内に治療を開始するのが望ましく、1カ月を経過すると、予後は極めて不良になり、通常は著しい改善が望めなくなります。人口100万人あたり約275人と推測され、おおよそ3分の1は完治し、3分の1は回復するが難聴を残し、3分の1は治らないとされています。 以前、浜崎あゆみさん、キンキキッズの堂本剛さんが罹患したとニュースになりました。   (3)既往症としての難聴

 高齢者の場合、事故外傷と因果関係が認められない場合もあります。まず、病気や加齢による老化現象と判断されるからです。そもそも高齢者の多くは、事故前から「最近、耳が遠くなった」と自覚しています。それでも、被害者にしてみれば、事故前に難聴の症状がなく、事故後に発症したものであれば、本件事故によって発症したと考えます。高齢者にとって大変に不利ですが、受傷初期から専門科の受診と検査を続けて立証するしかありません。

 また、難聴を伴う病気として代表的な診断名はメニエール病(※)です。これが診断されたときは、外傷ではなく慢性的な病気ですから事故との因果関係は認められません。   ※ メニエール病  耳の奥=内耳器官にリンパ液がたまることによって生じる慢性疾患(病気)のことです。中高年の発症が多く、めまい、耳鳴りに付随して難聴が引き起こされます。経過と共に症状が治まっても、再発を繰り返すことが特徴です。    後遺障害が立証しきれず、否定されたときは、改善のための治療を健康保険適用で続けるしかありません。例えば、麻酔科の医師が運営するペインクリニックを受診することも一考です。頚部交感神経の損傷を原因とするバレ・リュー症候群と診断されたときは、整形外科と並行して通院を続け、交感神経ブロック療法を受けるのです。2週間に1回の星状神経節ブロックを2カ月も続ければ、ある程度、神経症状の改善は得られます。    次回 ⇒ 続きを読む »

 内耳器官の損傷から、難聴、耳鳴り他症状が発症しました。

 交通事故110番で相談を受けた3例です。      (4)中耳・内耳器官損傷の実例   【1】11歳女児童 ~ 右難聴、手術で回復の実例

 自転車を運転中に原付バイクと接触、転倒した際に、右側頭部を打撲しています。救急搬送時、意識消失があり、右耳出血が認められています。

 初診時の右側頭部の単純XP撮影では、骨折などの異常所見は認められていません。受傷1週間後より右難聴、耳閉感を自覚するようになり、40日後に神経耳鼻科を受診しています。

 右側頭部のターゲットCT撮影で、外耳道骨壁に骨折線を認め、キヌタ骨は前方に回転し、キヌタ・アブミ骨関節の離断が確認されたことから、鼓室形成術が選択されました。Ⅲ型の鼓室形成術により、聴力は40dBから24dBに改善しています。 難聴は、後遺障害を残すことなく治癒しました。   【2】50歳男性 ~ 左難聴は手術で回復も、耳鳴り・醜状痕での認定

 友人の運転する乗用車の助手席に同乗中、左方向から出合い頭で衝突を受けた。事故直後、意識消失と左耳出血があり、左聴力低下、耳鳴り、左顔面神経麻痺と診断されています。耳出血は治癒し、めまいはなく、難聴と耳鳴が持続するため1カ月後、神経耳鼻科を受診しています。

 CT撮影で、外耳道後壁に骨折線を認め、鼓室形成術が選択されました。術時の所見では、ツチ骨はやや後方に転位し、キヌタ骨は内後方に倒れ、キヌタ・アブミ骨関節は離断しており、Ⅲ型鼓室形成術が行われました。手術後の聴力は、66dBから39dBに改善しています。

 術後7カ月で症状固定とし、耳鳴りで12級相当、顔面神経麻痺は、醜状障害として12級14号、併合11級が認定されました。   【3】34歳女性 ~ 右難聴は手術で改善、耳鳴りを残し障害認定

 34歳、女性専業主婦ですが、原付で走行中、商店街の交差点で、左方向からの乗用車の衝突を受け、投げ出されて、右後頭部から側頭部を歩道の縁石で打撲しました。救急搬送時に意識障害があり、右耳の出血を認めています。

 右側頭部の単純XP撮影では、異常所見が認められていません。入院直後は、頭を動かすと、天井が時計回りに回転するなどのめまいと、右難聴、耳鳴り、耳閉感を自訴しましたが、3日後には、めまいは消失しています。右難聴、耳鳴、耳閉感が続くため、右側頭部のCT撮影を実施、右外耳道から上鼓室にかけて骨折線が確認できました。鼓室形成術時の所見では、キヌタ骨が内前方へ回転し、キヌタ・アブミ骨関節が離断しており、アブミ骨底板より外リンパ液の流出が認められました。

 Ⅲ型の鼓室形成術を実施、術後の聴力は、48dBから31dBに改善しています。術後6カ月で症状固定とし、耳鳴りで12級相当が認定されました。   <コメント>  上記の3例は、いずれも単純XP撮影では、側頭骨の骨折が確認されていません。傷病名は、3件とも、頭部外傷Ⅱ型、側頭部打撲となっています。しかし、事故後の意識障害や耳出血を重視し、神経耳鼻科を受診したことが功を奏しました。いずれも、ターゲットCTで微少な骨折線と耳小骨連鎖の離断が確認され、早期の鼓室形成術により、後遺障害を最小限に押さえ込むことができたのです。

 その他に、むち打ちうや側頭部打撲程度で、難聴・耳鳴り・耳閉感を訴える被害者はたくさんおられますが、ほとんどは一過性であり、症状を6カ月も残すことはありません。やはり、頭蓋骨骨折、意識障害を伴う脳損傷、耳出血を起こすほどの中耳・内耳器官の損傷、これら強い外力が働かないと、耳小骨の損傷には結びつかないと推測しているところです。  

※ 鼓膜 続きを読む »

 前回の外傷性鼓膜穿孔はじめ耳の中耳器官、内耳器官の損傷によって引き起こされた難聴、脳損傷による難聴、神経系統のダメージによるもの、原因不明や単に老化現象(加齢性難聴)によるもの・・実に様々な難聴を経験してきました。    頭部や耳に直接の損傷があれば、仮に検査が遅れても難聴は信用されます。ただし、むち打ち等、打撲・捻挫程度の診断名から難聴を訴える場合、その立証は困難を極めます。受傷初期からの訴えに加え、専門科の受診と検査の実施が必須です。

 耳鼻科の受診が初期からで、症状の一貫性があれば、それなりに信憑性は保ちますので、等級級認定の余地を残します。逆に、3カ月も過ぎてからの耳鼻科受診では赤信号です。総じて、相談の遅れから手遅れになることも多いのです。   (1) 難聴の種類

 難聴には「感音性」、「伝音性」、「混合性」、「機能性」があり、後遺障害診断書では、「機能性」以外の3つしか記載がありません。機能性は心因性と判断されます。そうでなければ、詐病も疑われます。   ○ 感音性難聴とは、内耳やそれよりも奥の中枢神経に障害がある場合に起こるとされています。特徴としては、高音域の音が聞こえにくくなったり、複数の音を一度に聞いたときに特定の音を聞き分けることが困難になります。主な原因としては先天性や老化、騒音によるもの、薬の副作用、頭部外傷、メニエール病などが考えられます。感音性難聴は治療によって回復することがあまりなく、補聴器を使用しても聴力を補うことは難しいとされています。   ○ 伝音性難聴とは、外耳や内耳が正常に機能しなくなり音が伝わりにくくなるものをいいます。中耳炎など主に内耳の疾患が原因とされていますが、耳小骨の奇形など先天的な原因も挙げられます。特徴としては、耳の閉塞感や通常の音が聞こえにくくなる(ただし、大きな音は聞こえることが多い)といった症状があります。伝音性難聴は手術や治療によって回復する可能性がありますし、補聴器などを使用すれば問題なく生活できるようです。   ○ この感音性と伝音性の要素を持ち合わせているのが混合性難聴です。   ○ 機能性難聴とは、器官に障害がないにもかかわらず、聞こえが悪くなるものをいいます。不安やストレス、自律神経の乱れなどが原因とされていますが、よく分かっていないのが現状です。一過性のものが多く、投薬などで経過をみることになります。自賠責の認定も遠くなります。   (2)難聴の後遺障害等級表

<難聴の後遺障害等級表>

 

<両耳の聴力レベルと最高明瞭度との組み合わせによる認定基準一覧表>

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 外傷性鼓膜穿孔(こまくせんこう) ・・・いわゆる「鼓膜が破れた」ことになります。  

 前回、③ 耳鳴りで音の流れと聞こえのメカニズムを解説しました。   1、ヒトが音を聞くとき、まず音が外耳から鼓膜に伝わります。   2、鼓膜は、音によって振動し、その振動は、つち骨・きぬた骨・あぶみ骨の耳小骨によって増幅され、   3、音は、内耳の蝸牛(かぎゅう)に届きます。   4、蝸牛は音を電気信号に変換し、聴神経を通じて脳に伝えることで、脳は音として認識するのです。   ※ 蝸牛  音を感じ取る蝸牛の中は、リンパ液で満たされています。中耳から伝えられた振動はここで液体の波に変化し、液体の波は、有毛細胞によって電気信号に変換され、聴神経から大脳へ伝えられています。衝撃波により、鼓膜だけでなく耳小骨まで損傷することがあります。 続きを読む »

(1)病態

 耳の後遺障害では、耳鳴りの訴えがダントツです。秋葉事務所でも脳損傷や顔面の骨折など、明らかに耳・聴覚にダメージが予想されるケースはもちろん、むち打ちなどでも耳鳴りを立証してきました。実績ページをご覧いただくと後者の苦労がお分かりかと思います。    まずは、どうして耳鳴りが起こるのか?について・・   1、ヒトが音を聞くとき、まず音が外耳から鼓膜に伝わります。   2、鼓膜は、音によって振動し、その振動は、つち骨・きぬた骨・あぶみ骨の耳小骨によって増幅され、   3、音は、内耳の蝸牛(かぎゅう)に届きます。   4、 蝸牛は音を電気信号に変換し、聴神経を通じて脳に伝えることで、脳は音として認識するのです。      そして、耳鳴りとは、実際に、ジンジン、キィーンの音が鳴っているのではなく、脳が音を感知できないことにイライラし、電気信号を増幅しているのです。つまり、ヒトは、脳が反応して送り出している電気信号を耳鳴りと感じているのです。したがって、耳鳴りの基礎には、「聞こえないこと=難聴」が存在しているのです。

 自賠責保険は難聴のない耳鳴りに原則、等級はつきません。    (2)症状

 被害者の多くは、昼間はなにも感じないが、夜、布団に入るとジンジン、ザワザワとして眠りにつけないと訴えています。    秋葉事務所では、最初に耳鳴りの具合を以下のように質問します。

 「耳鳴りは、”ざわざわ”ですか? それとも”キーン”でしょうか?」    ⇒ ざわざわの場合、事務所では「セミ系」と呼び、低周波域の耳鳴りと想定します。

 ⇒ キーンの場合、事務所では「金属系」と呼び、高周波域の耳鳴りと想定します。

 稀に双方、併存(時によって変わる)被害者さんもおりましたが、おおよそ、二つに大別しています。   (3)治療

 精神安定剤、ビタミン剤、血管拡張剤などの内服、内耳の神経細胞の異常興奮を静める目的で局所麻酔剤を静脈注射すること、95%の酸素に5%の炭酸ガスを混合したものを30分間吸入し、内耳の血流を改善する混合ガス治療、自律神経のバランスを取り戻し、血流を増加させる星状神経節ブロックなどが行われていますが、いずれも、対症療法であり、著効は期待できません。

 最近では、治すよりも馴れる方向で様々な療法が研究されており、TRT療法は、その最たるものです。   ※ TRT、耳鳴り順応療法  耳鳴りの音に順応、馴化させるように脳を訓練する療法で、TCI、耳鳴り制御機器を使用します。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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