昨日に続き、MTBIについて。

 先月の弁護士研修会において、「MTBIと高次脳機能障害の区別」を解説しました。限られた時間、30分でこれを解説するのは少し無理がありました。ざっくりとした内容になってしまい、頂いた質問にも完全にお答えできませんでした。

 MTBIの医学的な考察は専門書がいくつか出版されていますのでそちらを参考にしていただくとして、「交通事故相談」「後遺障害立証」という立場から、もう少し踏み込んでお話する必要があります。

 以前、「平成23年4月新認定システム」シリーズで集中掲載したものに加筆修正し、現在執筆中の立証マニュアルに織り込む予定です。先んじて今週末の弁護士研修会において追補版レジュメを配布します。その一文をUPします。

 ご参加の弁護士先生の皆さん、交通事故110番と協力行政書士は責任回答をモットーにしています。十分にお答えできなかったことについては誠実に追加・修正をします。不十分な回答、間違った回答のままにしません。つまりリコールは積極的に開示します!

 

 <追補版から抜粋>

MTBIって言葉をご存知でしょうか?これは Mild traumatic brain injury=軽傷頭部外傷 の略語です。
 外傷性のない、もしくは希薄な頭部の受傷により、脳障害を残すものとしておおむね認識されています。
 症状の臨床実績は比較的新しく、90年代湾岸戦争で爆風にさらされた帰還兵で一定の認知・記憶・情動障害を残す例があり、TBI(外傷性脳損傷)の診断名がクローズアップされました。そして必ずしも脳損傷、脳外傷がないケースも多数含まれ、M(マイルド)をつけてMTBIという呼び方が一般化されました。
 これはベトナム戦争の帰還兵がPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断され、傷病名が一般化された経緯によく似ています。
 
 高次脳機能障害は「脳の器質的損傷」が前提である以上、MTBIは高次脳機能障害とは認められていません。したがって高次脳機能障害が疑われる障害を残しながら脳外傷がない=MTBI、と位置づけられる患者が少なからず存在します。
 
 当然自賠責や労災の基準に満たないこれらMTBI患者は障害認定されません。平成22年9月の高裁判決で障害を認める判決がでたとされましたが、判旨をみるとMTBIが障害認定されたとは読み取れません。この判決も周囲の誤解・曲解を呼び、依然として灰色的な存在が続いています。高次脳機能障害に携わる者にとって、まさに奥歯に刺さったとげです。
  戦地からの帰還兵にはなにかと障害がつきものです・・・