セカンドシーズンの放送が始まりました。遅ればせながら、録画にて視聴しました。第1回は主人公の五十嵐放射線技師がアメリから帰り、甘春病院に復院から始まります。しかし、病院の院長は灰島院長に代わっており、その経営合理化路線から、遠隔読影(※)に切り替えた為、放射線科医の甘春先生はじめ、かつての技師チームのほとんどが他院へ異動していた状態でした。

※ 遠隔読影・・・CTやMRIなどの医療画像を、通信ネットワークを利用して専門医がいる施設へ送信し、読影・画像診断を行うシステムです。 遠隔読影の導入により、放射線科常勤医がいない病院に、専門医による精度の高い検査結果を迅速に取得できます。アメリカではかなり一般的で、日本では医療過疎地域で拡大しています。

 前院長の大森先生も甘春病院に医師として復帰、その圧力(何故か灰島院長は大森先生に弱い)?により、かつてのチームが再結集することで1話が終了しました。注目は2話です。

 今回の患者はてんかんで苦しむ陸上選手の少年(走太)です。投薬でてんかん発作に対処していましたが、発作の頻度増加から、例によって五十嵐技師が検査を強く訴えます。そこで、2つの検査が実施されます。SPECT検査とファンクショナルMRI(fMRI)です。
 
スペクト・・・高次脳機能障害の立証 10 ~ 画像:スペクト

fMRI・・・高次脳機能障害の立証 13 <新認定システム> 4
 
 その2つの画像を照らし合わせる五十嵐技師と読影の甘春先生、脳の原因部位が右足全体の運動野の広範囲に及んでいると判断しました。ただし、その部位を除去すればてんかんの症状が治まる可能性はあるが、同時に走太少年は右足の機能を失ってしまう懸念が・・。それを知った父の一郎(陸上コーチでもある)は、陸上選手としての未来を断念することになる手術を拒否、余計な期待をさせたと言葉を荒げてしまうのです。

 家族の葛藤の中、結局、少年本人の希望から手術となって、しかも、脚への麻痺はなく成功したことで大団円でした。
 
 秋葉事務所でもかつてのご依頼者さんで、このfMRIを実施した少年がおりました。その少年は頭部外傷により、重度の言語障害となっていました。通常、言葉が発せなくなる障害は大きく2分、ブローカ型と(どもったりつっかえたり、流暢にしゃべれない)、ウェルニッケ型(意味不明なことを言ったり、言い間違いが多い)となります。
 
詳しくは・・・失語症の分類
 
 この少年の言語障害は重度で、全失語に分類されます、言われた言葉をかろうじてオウム返しに発するだけで、会話の意味自体を解っていないようでした。その原因病巣を探り、治療に活かす為にfMRIの検査と専門医の診断にお連れしたのです。ただし、ドラマのように上手くいきません。検査結果から外科的手術での回復は断念、現在も障害を抱えたままの生活です。
 
 現在、脳の画像所見が不明瞭で、自賠責保険における高次脳機能障害の立証に難儀している被害者さんにとって、これらの検査は一筋の光明になりえるか?ですが・・。スペクトやfMRIはいずれも病巣の特定に有用ながら、”脳の現在の状態”を明らかにするに留まると思います。自賠責保険は何と言っても、事故外傷による脳の器質的変化や物理的な破壊を証明する必要があります。つまり、事故外傷との因果関係が問われます。現状の脳の状態だけでは、その時の事故による破壊か否か、決定的な証拠になり得ないことが実状です。

 医療の進歩で、「遡って脳外傷」を明らかにできるようなれば良いのですが・・まだ、時間はかかりそうです。
 
 つづく