前シリーズもそうでしたが、マニアックな傷病名をどんどん採用、ドラマを盛り上げています。
 
 第3話の患者は、脳腫瘍による相貌失認を抱える女性教師です。相貌失認(そうぼうしつにん)は珍しい症例で、医師を含め脳障害に関わる者でなければ知らないと思います。先日の業務日誌「軽くバズった記事」で、「1冊のメモ帳と相貌失認」の記事へのアクセスが急上昇したことを書きました。その理由はこれっだたのですね。恐らく、多くの視聴者が放送後、検索をしたのでしょう。ドラマは録画して数日後に観ましたので、今になって気づきました。
  
 その記事 👉 1冊のメモ帳と相貌失認
  
 相貌失認については上の記事をご覧下さい。交通事故外傷による脳損傷でこの症状をはっきり示した被害者さんは、かつて1件だけでした。それ以外は兆候があるも、記憶障害の範疇でした。「失認」とは、物体を識別する能力が低下又は失われることです。失認の多くは行動において問題が生じます。簡単に言うと、日常使っていた道具の操作が出来なくなるなど、「失行」につながる症状になります。ひどいとズボンの履き方すら迷ってしまうようです。
 相貌とは人の顔や表情を指しますので、顔を識別できないことになります。その”程度”ですが、新しく会った人を覚えられない、知人の顔を忘れるなどは、記憶障害と重なります。失認との区別ですが、家族の顔すら忘れる、「怒っているか、笑っているか」相手の表情が読み取れなくなるなど、極端なケースは相貌失認を疑います。
   
 相貌失認を取り上げたドラマ、映画はいくつかあるようです。注目はその映像化で、障害者からどのように観えているのか、色々と工夫しています。先のキムタクのドラマでは、奥さんや実子の顔を含め、人の顔がすべて仮面に見えていました。実際、このように見えているのかどうか、障害者じゃないと分からないでしょう。ラジエーションハウスでは、顔全体、顔の一部にもやもやしたモザイクをかける映像処理でした。これですと、人の区別や表情の読み取りが困難で、視聴者にとって、障害者の視点がわかり易かったと思います。

 私達も常日頃、高次脳機能障害の被害者さんが示す諸症状について、どのように医師に伝えるか、そして、自賠責はじめ審査側にいかに、”わかり易く”症状を伝えるか、この作業に腐心しています。ご本人や家族からの聴き取りだけでは心もとなく、ビデオを駆使した映像化にも力を入れています。このようなドラマの映像処理など、まさに共感するところです。被害者さんから症状を聞き取り、あるいは観察し、「漏らさず、正確に把握すること」そして、それらを書面や画像・映像として「実体化すること」、これこそ後遺障害の調査・立証作業なのです。
 
 しかし、このドラマ、傷病名からして攻めるなぁ。 今後も期待です。
 
 つづく