長年、自賠責保険の申請をしていますと、実感することですが・・後遺障害の審査機関である調査事務所は、診断書に書かれている事より、画像を重んじています。

 医師の書く診断書、あってはならないことですが、よく間違っています。間違いとまでは言えずとも、画像の読影については、医師の見解が分かれることは珍しくありません。骨折状態や変形癒合の判定については、1次的には主治医の書く診断書になりますが、自賠責はその診断名や診断内容に左右されず、改めて独自の読影をします。自賠責においても、顧問医に画像を診せて審査しているはずです。

 後遺障害を追うものとしては、画像を観ることがいかに重要かを思い知らされます。
 

ご本人は若く、回復が良かった事がなによりでした。
 

併合10級:頚椎・胸椎椎体骨折(20代男性・千葉県)

【事案】

自動車で信号待ち停止中、後続の大型車に追突された。前席まで潰れるような酷い損傷で、助手席に座っていれば死亡となったはず。

【問題点】

救急病院で第7頚椎 椎体骨折の診断名がついていたが、事故直後のCTやMRIでは判然としなかった。また、事故から1か月後に転院したリハビリ先のクリニックにて、第1胸椎椎体骨折の診断名が追加されたが、こちらも画像上明確とは言い難い。
 
【立証ポイント】

第5・6頚椎棘突起骨折は明らかであったが、椎体の骨折は判然としないため、椎体の変形障害を追いつつ、最悪、症状の一貫性による14級9号を睨み、治療実績を積んでいった。

症状固定前に再度CT検査を経てから、後遺障害診断書を依頼した。棘突起が遊離骨片化していることが分かったため、その状態を診断書に落とし込んで頂いた。自覚症状を丁寧に記載してもらい、事故車写真を添付し、いかに身体にダメージを受けたかを主張した。

診断書上、「第7頚椎と第1胸椎骨折は判然とせず」との記載に留まり、かつ ⑧脊柱の障害欄も未記載であるにも関わらず、なんと頚椎、胸椎それぞれ11級7号の判定。やはり、自賠責は診断書の内容より、画像から判断している。なお、遊離骨片化した第5・6棘突起骨折についての認定はなく、理由書にも記載がなかった。仮に14級が認定されたとしても、併合等級は変わらないので問題ないが、審査の対象外とは・・。
 
本件は、一歩間違えれば死亡事故になっていてもおかしくない衝突事案だったため、このような結果が出ても不思議ではないが、弊所では久々のサプライズ認定となった。