切断肢では、その立証作業はありません。診断書に「下肢の切断」の記載で十分です。問われる点は、膝上か膝下かで、4級・5級に分かれます。それ以外は、その他の後遺障害を漏らさず、認定させることでしょうか。本件の場合、最終的に併合3級となりました。切断肢で4級になっている為、他部位の立証努力はそれ程重要ではなかったようです。   お気の毒なケガでしたが、救いはご本人が前向きなことでしょうか・・   4級相当:1下肢欠損 + 股関節機能障害   10級7号:第2中手骨 骨幹部骨折   12級6号:橈尺骨 粉砕骨折    

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 三角・月状骨間 解離 (さんかく・げつじょうこつかん かいり)

(1)病態

 ↑ 図の通り、三角・月状骨間の靭帯が断裂して発症します。

 手関節の疼痛、可動域制限などがあり、月状骨と三角骨のある尺側部分に圧痛点が見られます。XPの舟状・月状骨角は20°以下で手根掌屈変形が認められます。XP、手関節正面像では、月状骨三角骨間での両骨間に間隙が存在します。月状・三角骨 開離は、前回の舟状・月状骨 開離に次いで高頻度に発生するものです。両骨間の靭帯が過伸展、あるいは断裂した状態なので、手根靱帯損傷(LT靱帯開離)とも言われます。    (2)治療

 単独損傷の場合、発見が難しいもので、通常のXPでは見逃されることが多く、ジクジクした痛みが続くときは、専門医によるMRI、各種ストレス撮影や関節造影検査などで立証しなければなりません。

 初期には保存療法とし、ギプスや装具で外固定します。ただし、改善の無いまま放置すると、慢性の手関節痛となります。また、TFCC損傷を併発することもあり、次いで、尺骨突き上げ症候群となれば、TFCCの円盤部の摩耗や断裂が生じ、進行するとLT靱帯が断裂します。

 痛みどころか、手関節の可動域制限が生じたとなれば手術適用です。まず、関節鏡から術式の検討をします。損傷程度により、鏡視下デブリードマンを実施、開離2mm以上でピンニング固定します。簡単に言いますと、デブリードマンは、両骨の間隙にある離開の原因となる不要な組織を取り除く掃除です。ピンニングは、両骨を細い金属ピンでホチキス止めのようにくっつけます。   続きを読む »

 舟状・月状骨間 解離 (しゅうじょう げつじょうこつかん かいり)

(1)病態

 ↑ 図の通り、舟状・月状骨間靭帯が舟状骨の靭帯付着部で断裂して発症します。

 舟状・月状骨角は、正常では30~60°ですが、70°以上となると手根背屈変形、舟状・月状骨間解離となり、XP手関節正面像では、舟状骨と月状骨の間が2mm以上の間隙が認められます。   (2)治療

 治療は、受傷後の早期では、手根骨の配列を整復、Kワイヤーで6週間、その後装具を6週間装着することになり、このレベルでも、職場復帰には、6ヶ月を要します。受傷後かなり経過しているときは、舟状骨を周囲の手根骨と固定する手術が実施されます。   (3)後遺障害のポイント 

Ⅰ.

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 月状骨脱臼 (げつじょうこつだっきゅう)

(1)病態

 手首の付け根の骨は、8個の小さな手根骨で構成されています。これらの手根骨は2列に並んでおり、1列目は親指側から、舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨、2列目は、大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨と呼びます。これらの手根骨はお互いに関節を作って接しており、複雑な靭帯で結合されています。

 月状骨は、右手の背側では、舟状骨の右隣、有鈎骨の下部に位置しています。手根骨の脱臼では月状骨が圧倒的多数で、月状骨周囲脱臼と呼びます。手のひらをついて転倒した際に、月状骨が、有頭骨と橈骨の間に挟まれてはじき出されるように、手のひら側に転位・脱臼します。月状骨と橈骨の位置関係は正常ですが、月状骨とその他の手根骨との関係が異常となって背側に転位するもので、しばしば見逃されるので、注意しなければなりません。

 月状骨周辺の橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折を伴うこともあります。   (2)治療

 疼痛、運動制限、圧痛、腫脹を発症し、脱臼した月状骨が手根管圧迫や突出したときは、手根管症候群を生じることがあります。単純XPの側面画像で、月状骨が90°回転しているのが分かります。

 徒手整復が治療の中心ですが、整復できないケースや、再発予防・手根管症候群予防の必要から、手術を選択し、靭帯の縫合なども実施されています。近年、手根不安定症の発症を防止する観点から、手根骨間の徒手整復経皮的ピンニング(切開をしないで徒手で転位した手根骨を整復し、皮膚の外からワイヤーで固定する方法)や観血的靭帯縫合(切開手術で転位した手根骨を整復し、ワイヤーで固定、損傷した靭帯を縫合する方法)が積極的に実施されています。   (3)後遺障害のポイント 

Ⅰ.

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舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)

(1)病態

 舟状骨(しゅうじょうこつ)は親指のつけ根に存在しています。転んで手のひらを強くつくと、手関節を構成する手根骨の1つ、舟状骨が骨折することがあります。交通事故では、自転車とバイクの運転者に多く起こります。経験上、手根骨では一番骨折の多い骨と思っています。

 舟状骨骨折の症状は、手関節を動かすと痛みが強く、手のひらの親指側を押すと痛みが出現することで、握力は低下します。

 相談会では、被害者さんの訴えで予想を2分しています。親指のつけ根が痛んだら舟状骨骨折、小指のつけ根が痛んだらTFCC損傷を疑います。舟状骨は手関節にある8つの手根骨の1つで親指側にあり、手根骨の中でも重要なものの1つです。船底のような彎曲をしているので船のような形の骨ということで舟状骨と呼びます。舟状骨は、親指の列にあり、他の指の列とは45°傾斜して存在しています。そのため舟状骨の骨折は、通常のXPでは見えにくく、見逃されることが多いのです。やはり、他の手根骨同様、XPよりもCTが有用です。

 舟状骨は血液の流れが悪いため、骨が付きにくく、偽関節になりやすい特徴があります。骨折と骨の血行状態を知るには、MRIが役立ちます。骨癒合の経過観察に医師から指示されるはずです。と言うか、MRI検査をしてくれないと困ります。   続きを読む »

有頭骨骨折(ゆうとうこつこっせつ)

(1)病態

 有頭骨とは、中指の中手骨の真下にある手根骨の1つで、右手では有鈎骨の左横に位置しています。交通事故では、転倒した際に手をつく、あるいは、直接の打撲で骨折することが多く、自転車やバイクの事故で多く損傷する場所です。有頭骨の骨折では、手首の可動域制限と運動時の疼痛を残すことが予想されます。

 手根骨は8つの骨で構成されていますが、交通事故では、舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨、有鉤骨、有頭骨で骨折が多発しています。これらの複数が骨折・脱臼していることもあります。被害者の方から激痛の訴えがなされることは少なく、平面画像のXPでは確認しにくいことが特徴です。すべての手根骨に言えますが、立体的にぐるっと観る事ができるCTが有用です。出来るだけ早期にCT検査が望まれます。   (2)治療

 骨折部が亀裂程度では、保存的に癒合を待つことになります。骨折部が離開してしまうと、当然に癒合に時間がかかります。その場合、手術となりますが、2本のスクリュー(headless compression screwなど)にて固定します。骨の欠損部が大きい場合、自家骨移植を行った上で固定します。   (3)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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 有鈎骨骨折(ゆうこうこつこっせつ)

(1)病態

 鉤骨折(こうこっせつ)とも呼ばれ、右手では、薬指と小指の中間、下方にある手根骨の1つで、手のひら側に、突起=鉤が存在する特異な骨です。交通事故では、バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で、右手に多く発症しています。自転車、バイクから転倒する際に、手をつくことでも発症しています。交通事故以外では、ラケットやバット、ゴルフのグリップを振ることで、有鈎骨骨折が発生しています。

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(1)病態

 腱鞘炎は、タイピングなどの事務作業で、限度を超えて上肢を酷使した場合、発症する・・と広く知られています。交通事故のように一度の衝撃で発症することは、通常ありません。稀に、骨折や打撲・捻挫の予後、二次的な発症となるかもしれません。少し踏み込んで解説します。まず、前腕~手関節の構造から、

※ 腱鞘 腱が通るトンネル

※ 長母指外転筋腱 親指を伸ばす働き

※ 短母指伸筋腱 親指を広げる働き   ◆ ド・ケルバン病 = 狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)

 右手首の腱鞘炎で代表的なものは、ド・ケルバン病です。ド・ケルバン病は、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が、腱が通過する腱鞘で狭窄された状態です。腱鞘、腱が走行するトンネルが炎症し、トンネルの空間が狭められて腱の滑走が妨げられるのです。

 症状は、手首の腫れ、痺れ、多少の熱感があり、親指を動かすときに痛みが生じ、物を掴んだり持ち上げたりすることが困難になります。親指を酷使した結果、腱や腱鞘への負担から発症します。妊婦や出産後、更年期の女性に多くみられます。スポーツでは、テニスをしている人に多いと報告されています。1985年に狭窄性腱鞘炎を報告したスイスの医師、フリッツ・ド・ケルヴァンの名前から付けられました。

 ↑ 親指を曲げ、グー状態で小指側に手首を曲げると激痛が走るフィンケルシュタインテストにより診断されています。   続きを読む »

 手の障害をシリーズしますが、まず、手の構造と働きを説明します。    手や指は、叩く、擦る、物をつかむ、握る役割を果たしていますが、複雑な人間のからだの中でも特に繊細な構造となっています。手や指には繊細な知覚があり、様々な情報を脳との間でやり取りしています。

 複雑な構造をした骨・関節、それを取り巻く筋肉や腱、神経、血管がぎっしりと凝縮されているため、ほんの小さな怪我でも、日常生活や仕事上で、大きな支障が出現することが予想されるのです。

 指先から下に、末節骨、中節骨、基節骨、中手骨と呼ばれますが、親指には、中節骨がありません。中手骨の下に位置するのは手根骨で、遠位手根列には、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨が、近位手根列には、舟状骨、月状骨、三角骨が配列されています。

 手根骨のうち豆状骨は尺側手根屈筋腱の中にある種子骨です。具体的には、橈骨と尺骨および8つの手根骨で構成される手関節、指には24の関節など多数の関節を有しており、手の骨は、8つの手根骨、5つの中手骨、5つの基節骨、4つの中節骨、5つの末節骨の合計27本の骨で構成されています。   ※ 種子骨(種子骨障害)

 種子骨は、植物の種子のような丸い形をしている骨で、手や足の骨に多くみられます。腱や靭帯を円滑に動かす役割や、骨と腱の摩擦を抑え、腱が外れる(腱の脱臼)を防ぐ役割があります。    さらに、手関節の尺側には、TFCC=三角線維軟骨複合体が存在し、手首の骨を支え、手首の外側の衝撃吸収作用の役割をしています。

   次回 ⇒ 腱鞘炎  

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(1)病態

 足指の基節骨、末節骨が黒ずんで見えますが、これがSudeck骨萎縮です。

 ズディック骨萎縮は、XPでは、関節軟骨や骨質が保たれたまま高度な骨萎縮が認められます。受傷後、比較的短期間の内に関節部の疼痛、関節の拘縮、血行障害を訴え、皮膚に特有の光沢を示します。この特有の光沢を、医学的には浮腫状の腫脹と呼んでいます。

 XPで著しい骨萎縮が認められ、手関節、下腿部、踵骨の骨折に好発しています。骨梁も骨皮質も薄く、スカスカに写し出されるのです。このことを、医学では、関節を中心に帯状脱灰現象を認めると言います。    (2)治療

 治療は局所の理学療法、痛みを緩和する目的でステロイド剤の内服、血行障害等自律神経障害の緩和を目的とした交感神経節ブロック、交感神経節切断が行われます。つまり、難治性の疾患です。普通の整形外科での治療は難しく、専門外来を受診する必要があります。CRPS(Complex regional pain syndrome=複合性局所疼痛症候群)と判断されるものは、その専門外来になります。最近では「痛みの外来」などと称している院も多いようです。

 実際に「痛みの外来」での診療に立ち会ったことがあります。医師は、患部のエコー画像を観ながら、患部に注射をします。薬剤は、痛み止め薬、キシロカインなどの麻酔薬を調合、症状の経過を見ながら工夫して調合しているようです。   ◆ ズディック骨委縮とCRPS

 ズディック骨委縮の状態に陥った患者さんの多くは、すでにCRPSを発症しています。神経性疼痛の最悪例で、その原因は完全に解明されていないと言えます。交通事故外傷後に発症し、その治療が長期化することから、常に賠償問題に発展します。    詳しくは 👉 CRPSについて 概論と近況    (3)後遺障害のポイント

 骨折に起因した難治性疼痛は、CRPS TypeⅡ、カウザルギー(最近はこの診断名を使わない傾向です)が後遺障害等級の対象となります。関節の可動域に影響するケースもありますが、機能障害としての認定は大変に高いハードルになります。やはり、画像所見、つまり、骨が痩せた画像が決め手となります。画像上、明瞭であれば「局部に頑固な神経症状を残すもの」=12級13号が検討されます。画像が曖昧、そもそも骨折等が無い場合は、症状の一貫性から「局部に神経症状を残すもの」=14級9号が残ります。

 ズディック骨委縮を伴うCRPSなどの場合、症状の深刻度から、労災では「神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」=第9級の7の2や、それ以上の等級が認定された例もあります。しかし、対自賠責保険・対任意保険なると・・9級以上は訴訟で勝ち取るしかないようです。    次回 ⇒ 手の障害に進みます   

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(1)病態

 尺骨神経が、ギヨン管というトンネルの中で絞扼・圧迫されているものです。尺骨神経は、頚椎から上腕の内側を走行し、肘の内側を下降し、手首周辺で、有鈎骨の鈎と豆状骨で構成されるギヨン管の中を通過します。

 有鈎骨骨折は、薬指と小指の中間、下方にある手根骨の1つで、手のひら側に、突起=鉤が存在する特異な骨です。交通事故では、バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で、右手に多く発症しています。自転車、バイクから転倒する際に、手をつくことでも発症しています。

   手のひら側のCT画像ですが、突起=鉤が骨折しているのが確認できます。有鈎骨の骨折により、ギヨン管症候群を発症します。   続きを読む »

 ショーファー骨折 = 橈骨茎状突起骨折(とうこつけいじょうとっきこっせつ)

  (1)病態

 ショーファー骨折とは、橈骨茎状突起部の手関節内骨折であり、運転手骨折とも呼ばれています。交通事故では、運転手がハンドルを握った状態で骨折することが多く、この別名がついています。自転車で横断中、自動車との衝突で、手のひらをついて転倒したときにも、この骨折が起こります。

 手関節において背屈・橈屈の強制で起こり、茎状突起が舟状骨と衝突します。よって、舟状骨骨折も視野に入れて治療が行われています。

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