高次脳機能障害の皆様へ

 目次

1.重度後遺障害の対応について

(1)後遺障害の立証では

1)全件、治療先で医師面談

2)全件で専門医を紹介、

3)専門医のセカンドオピニオン、意見書

(2)弁護士による解決では

1)弁護士による二次被害

2)弁護士、得意とする専門分野

3)交通事故に特化した弁護士とは

2.高次脳機能障害とは?

(1)高次脳機能障害者に特有な症状・行動

1)病識の欠如

2)遂行機能障害

3)記憶障害

4)失語症

5)半側空間無視

6)地誌的障害

7)失行症

8)失認症

9)注意障害・行動や情緒の障害

(2)高次脳機能障害が認定される3つの要件

1)頭部外傷後の意識障害所見

2)傷病名

3)画像所見

(3)被害者とその家族が直面する問題

1)治療先で、適切な診断と治療が受けられない。

2)後遺障害の重さが正当に評価されない?

①こんな面倒な立証作業を被害者の家族だけで、やりきることができるのか?

②現在の治療先で大丈夫なのか?

3)介護料が認められにくい?

(4)高次脳機能障害 秋葉事務所とチーム110の実績

(5)弁護士に求められること?

Q1 裁判所における損保の主張について、過失割合と介護料

Q2 裁判、和解と判決の違い?

Q3 歩行中の自転車との交通事故、自転車同士の交通事故?

Q4 自動車なのに、自賠責保険が免除?

Q5 裁判所に高次脳の等級認定を求める?

Q6 特定の地方裁判所には、交通事故の専門部がある?

Q7 損保の尾行や隠し撮り

Q8 事故当時、無職で家事従事者の逸失利益は?

※交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言

Q9 賃金センサス31歳では?

Q10 過失事案、任意一括の拒否?

Q11 全国対応と費用の問題?

Q12 セカンドオピニオンの重要性?

Q13 高齢者の高次脳?紛争処理センターにおける示談の斡旋?

Q14. 画像所見がなく、意識障害も認められないとき?

Q15. 高校生・大学生の逸失利益?

Q16 障害者自立支援法に基づく公的介護?

Q17 症状は、いずれ改善する?

Q18 介護にレスパイト?

Q19 将来の介護料のまとめ?

※中枢性尿崩症(ちゅうすうせいにょうほうしょう)

Q20 女性の働く権利?

Q21 子どもの高次脳について?

※幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方法について

Q22 事故による自殺と因果関係?

Q23 自賠責保険非該当を裁判で5級2号に?

Q24 減収なしで逸失利益を否定?

Q25 修行期間中の年収と逸失利益?

Q26 職場復帰と労働能力喪失率?

Q27 個人事業主の年収?

Q28 被害者に病識がない?

Q29 独り暮らしでも、家事従事者?

Q30 高次脳裁判の原点、懲罰的慰謝料、初めての画期的な判決?

Q31 非接触事故でびまん性脳損傷?

Q32 ひき逃げと無保険?

Q33 過失が80%もあるのに裁判?

1.重度後遺障害の対応について

重度後遺障害に苦しんでおられる被害者に対して、秋葉事務所は、2方向から対応しています。

1つは、間違いのない後遺障害等級を実現することです。

2つ目は、連携弁護士による訴訟をメインとした損害賠償請求で地裁基準を実現することです。

(1)後遺障害の立証では?

秋葉事務所は、以下の傷病名を重度後遺障害と捉え、独自のサポートをしています。

①高次脳機能障害

②遷延性意識障害

③横断型脊髄損傷、中心性頚髄損傷

④上腕神経叢麻痺

⑤内臓損傷を伴う骨盤骨折

1)全件、被害者とともに、すべての治療先に出向いて医師面談を実行しています。

これは、秋葉事務所の特徴の一つです

重度後遺障害で、被害者、そのご家族が最も困惑されるのは、自賠責保険の後遺障害認定です。

とりわけ、高次脳機能障害では、神経心理学的なアプローチ、中心性頚髄損傷や上腕神経叢麻痺では、運動機能の立証が非常に難しく、作業に失敗し、適切な認定を受けられないときは、それが上位等級であればあるほど、損害賠償面で、深刻な事態に陥ります。

秋葉事務所は、治療先同行や専門医とのネットワークにより、適正な後遺障害等級を実現しています。

「病院に診断書を書いてもらって下さい?」「早く保険会社に提出して下さい?」

法律事務所のサジェッション、指示、命令は、サポートではなく、これでは、なにも前に進みません。

秋葉事務所は、被害者に寄り添い、治療先に赴き、医師面談をして、立証作業を繰り返しており、これこそが、被害者にとって有用で、頼もしいサポートになっているのです。

 

2)全件で専門医を紹介、その治療先に同行して検査を受け、後遺障害の立証を実行しています。

これも、秋葉事務所ならではの徹底した現場主義です。

被害者は、意識も朦朧で、自ら、治療先を選ぶことができません。

重傷交通事故では、事故現場からその地域の基幹病院に救急搬送され、緊急オペの実施、その後はICUで管理、第一次的な救命を完了すると一般病棟に移動となり、程なく退院となります。

多くは二次救命先にリハビリ目的で再入院し、そこを退院後も、通院リハビリを続けます。

 

生命の危機を脱した後は、後遺障害を申請して一定の時期に解決としなければなりません。

ここでつまずくと、「はじめ良くても、終わりがドボン!」 で最悪の結末を迎えるのです。

 

基幹病院の役割は救命であり、立証のための検査設備やスタッフを揃えていることはありません。

例外なく多忙で、被害者の後遺障害の立証には、無関心で非協力的です。

そして、リハビリ目的で入通院した治療先で立証ができるかは、その治療先の取り組み次第です。

 

どの治療先を選択して、どんな検査を受け、いつ、後遺障害を申請するのか?

さて、ここからが、秋葉事務所の出番です。17年間の被害者救済活動を誇る交通事故110番とタイアップしたことにより、全国規模で専門医とのネットワークを構築しています。

 

退院後は、専門医を紹介します。もちろん、その治療先に同行して適切な検査を受け、後遺障害の立証を実行しています。

 

3)必要に応じて、専門医のセカンドオピニオン、意見書を添付しています。

これも、秋葉事務所にお任せ下さい。

例えば、高次脳機能障害では、入口部分の認定要件として、以下の3つが求められています。

①頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること、

②高次脳機能障害が想定される傷病名が確定診断されていること、

③上記の傷病名について、XP・CT・MRIで画像所見が得られていること、

上記の要件を満たしていれば、申請上、なんの問題もありませんが、意識障害所見や、症状固定時の画像所見がやや甘いことは、頻繁に発生しています。

これらを放置しておくと、それを理由として、認定等級は薄められるのです。

 

そんなときは、診断書、診療報酬明細書、カルテ、画像などを提供し、専門医に、立証が不十分な甘い部分を医学的に解明する意見書の作成、また、専門医の診察を受け、セカンドオピニオンとして、診断書を回収し、後遺障害診断書に添付することで、補強をしています。

 

長年にわたる、専門医とのネットワークがあればこその得意技です。

すでに認定済みの等級に不満をお持ちの被害者にとっては、有効な一撃となります。

 

なんども繰り返しますが、全件、治療先同行を実現しているのは、秋葉事務所の特徴の一つです。

 

他の法律事務所は、ああしなさい? こうしなさい? とささやく、サジェッションばかりで、治療先同行など、なんのノウハウも有しておらず、行っていません。

本音は、「等級が決まってから、相談してくださいね?」 なのです。

 

(2)弁護士による解決では?

 

1)弁護士による二次被害とは?

以前から、セカンドオピニオンを求めて、秋葉事務所のフリーダイアル0120-04-1951での相談や、交通事故無料相談会に参加される被害者で賑わっています。

 

すでに信頼関係が揺らぎ、依頼の弁護士に対する疑問や不安が渦巻いているのですが、多くの被害者が、その思いを委任している弁護士に伝えることができないで、悩んでいます。

 

このまま委任し続けて、プロである筈の弁護士から不満足な解決案しか示されないときは、それは被害者にとって、取り返しのつかない深刻な二次被害となるのです。

秋葉事務所は、交通事故に特化した弁護士と連携しています。

現在の進行状況に不安を感じておられる被害者、そのご家族は、二次被害を防止する必要からも、フリーダイアル相談、0120-04-1951もしくは、交通事故無料相談会に参加、セカンドオピニオンを求めてください。

 

2)弁護士だって、得意とする専門分野があります?

例えば、病院ですが、子どものインフルエンザなら小児科、母の腰部痛なら整形外科を受診します。

乳ガンの検診なら乳腺内科、肺ガンの治療であれば呼吸器外科、また脳腫瘍なら脳神経外科、心筋梗塞なら心臓外科というように、大切な命を守るために、専門の医師を頼るのは常識的な選択です。

 

この理屈は、弁護士選びにも、そのまま通用するのです。

法律事務所には、○○科の区分けはなく、ホームページを拝見する限り、相当幅広い分野に精通しているようにも受け取ることができます。

 

しかし、法律の専門家であっても、あらゆる事件に精通しているのではありません。病院選びとまったく同じで、交通事故では、交通事故外傷と後遺障害に精通した専門家を選択しなければなりません。

 

3)本当に交通事故に特化した弁護士とは?

先にも一端を説明していますが、インターネットで、交通事故/解決/専門弁護士と入力すると、正に、雨後のタケノコのごとく、非常に多くの法律事務所が表示されます。実は、その中には、経験の少ない事務所もあり、どれが本当に正しいのかで迷い、悩むことになります。

 

さて、医師でも弁護士でも、詰まるところは経験則が豊富であることが、専門家としての証です。

 

後遺障害が予想される交通事故外傷には、315種類もの傷病名が存在しています。

それらのすべてに精通して、法廷で立証するには、1年間に100件を超える交通事故の解決件数、つまり、このような経験則を3年間は、続けなければなりません。

1年間に10件前後の受任では、いつまで経っても、専門家とは呼べず、専門家にもなれないはずです。

 

重傷後遺障害では、多くは訴訟による解決となります。

和解はともかくとして、判決が確定したときは、実績=判例となって残ります。

本人が獲得した判例を実績として掲載している法律事務所で、経験則を有していれば、本物です。

これらの実績は、損保との交渉にも力を発揮し、示談交渉においても、裁判所の基準と同レベルの高額な損害賠償金を実現することにつながるのです。

 

秋葉事務所の交通事故無料相談会には、連携弁護士が加しています。

弁護士に質問され、その力量を評価してください。

経験則の豊富で専門性の高い弁護士は、秋葉事務所が責任をもって紹介しています。

 

2.高次脳機能障害とは?

交通事故による頭部外傷、水難事故や下腿骨の骨折に伴う肺脂肪塞栓による低酸素脳症、その他、外傷性のくも膜下出血、脳梗塞や心筋梗塞などによって脳に損傷を受けたときに発症する後遺障害は、高次脳機能障害と呼ばれています。

頭部冠状断のイラスト

頭部外傷の治療は終了しているのに、

「事故の前とは、人格がまるで変わり、すぐに激昂して暴力をふるうようになった?」

「記憶力に障害があり、さっき話したばかりの内容をもう忘れている?」

「2つ以上のことを、同時に処理することができない?」

このような異常を感じたときは、速やかに専門病院で診断を受けなければなりません。

 

高次脳機能障害と診断されたときは、まず最初に、秋葉事務所と専門医の協力による立証活動、そして交通事故に特化した弁護士による損害賠償交渉が不可欠となります。

 

事故から早期に、治療先に対応をお願いしなければならないことが、数多くあります。

フリーダイアル0120-04-1951による電話相談、あるいは交通事故無料相談会に参加してください。

 

(1)経験則に基づく、高次脳機能障害者に特有な症状や行動

 

1)病識の欠如?

被害者本人に病識のないこと、つまり、ご本人は、自分は正常であると認識していることが、高次脳機能障害の最大の特徴であり、外見から、障害の深刻さを発見することが極めて困難です。

さらに、事故前と事故後の生活レベルの差を比較立証する作業は、相当な困難を伴います。

 

2)遂行機能障害 左右の前頭葉の損傷?

生活をする上で必要な情報を整理、計画して処理していく一連の作業が困難になります。

遂行機能障害では、PLAN=計画、DO=実行、SEE=確認が、困難な状態となります。

 

※指示されたことは、なんとか取りかかるが、自分から、積極的には、なにもしない、

※「食器を洗って!」 と指示すると、食器は洗うのですが、洗った食器を水切りかごに入れ、布巾で拭いて食器棚に戻すことはできない、つまり、2つ以上のことを同時におこなうことができない

※ガラス窓を拭くように指示すると、隣のガラス窓に移ることなく、一貫して同じガラス窓を拭き続ける、

※作業ミスや勘違いが連続する、

 

3)記憶障害 側頭葉の左右内側の損傷?

※5分前に話した内容を忘れるなど、短期記憶力に著しい障害がある。

※買い物を頼んでも、必要なものを買い忘れてしまう。

※物忘れを防ぐためにメモをしていても、メモの存在自体を忘れてしまう。

※約束した日時を記憶できない。

※あちこちに物を置き忘れ、いつも捜し回っている。

※日付・曜日・時間が理解できない。

 

4)失語症?

非流暢性失語 前頭葉左側の損傷?

流暢性失語と聴覚失認 側頭葉左側の損傷?

※うまく話すことができない。

※同じ言葉を何度も繰返す。

※簡単な単語が出てこない、本が読めない。

※相手の話やテレビで放映している内容は理解できているようでも、自分の意思表示はできない。

※話していることが相手に思うように伝わらず、何回も繰り返さなければならない。

※こちらの話しは正しく理解しているようであるが、返事が言葉、文章になっておらず、会話が不成立。

※鈴や時計の音を聞かせても、なんの音か?理解できない。

聴覚失認とは、聴力は保たれているものの、語音の区別ができない障害です。

 

5)半側空間無視(はんそくくうかんむし) 頭頂葉右側の損傷?

自分が意識して見ている空間の片側、多くの例で、左側を見落とす障害です。

※食事の際に左側の食べ物を食べ残す。

※ドアを開いて、通過するときに、左側をぶつける。

※車椅子や歩いて廊下を移動していて、だんだん右側に寄っていくなどの状態。

 

6)地誌的障害 側頭葉右側の損傷?

※自宅近くの商店街に出かけても、道が分からなくなり、一人で自宅に戻れない。

※近所の見取り図を描くように指示してもできない。

※いつも出かける近所のスーパーにたどり着けず、また自宅に帰ってくることもできない。

※地図を描いて渡しても、これを見ながら探すことができない。

※右折もしくは左折した途端、自分がいる場所が分からなくなる。

 

7)失行症 頭頂葉の損傷?

今までできていた行動ができなくなることを失行症、

今まで認識できていたものが、認識できなくなることを失認症といいます、

※手足は普通に動かすことができるのに、意図した動作や指示された動作がどうしてもできない状態となり、靴の紐が結べない、箸を使って食事ができなくなります。

※リハビリで作業療法を指示されても、動作が緩慢で、なにをやらせるにも大変な時間がかかります。

 

8)視覚失認と相貌失認 後頭葉の損傷?

失認とは、認知識別能力の障害のことで、具体的には、触覚失認、聴覚失認、視覚失認、身体失認、病態失認の5つに分類することができます。

失認症とは、今まで認識できていたことが、認識できなくなることです。

 

9)その他の障害、注意障害・行動や情緒の障害=社会的行動障害?

損傷を受けた部位と障害には、一定の因果関係が認められているのですが、これらの障害は頭部の特定の部位の障害ではなく、広範囲な領域にわたる損傷によって起ると考えられています。

 

※対人関係がうまくいかない、良好に維持することができない。

※失語症との関わりがありますが、意思の疎通がうまくできない。

※羞恥心がなくなり、暑ければ、他人の前でも、平気で裸になってしまう。

※こだわりが強く、情緒が不安定で、突然、暴力的になる。

※必要のないものを大量に購入する。

※カッターで手首を切るなどの、自傷行為、

※外傷性てんかん発作、

※手や足を無意味にパタパタ動かし、止めることができない、常動運動に陥る。

※嗅覚の脱失、

※排尿・排便障害、

 

(2)高次脳機能障害が認定される3つの要件?

 

1)頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること、

当初の意識障害(反昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態、JCSが3~2桁、GCS、12点以下が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害、JCSが1桁、GCSが13~14点が少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例でなければなりません。

 

2)以下の傷病名が確定診断されていること、

脳挫傷、びまん性軸策損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳室出血、水難事故、骨折後の脂肪塞栓で呼吸障害を発症、脳に供給される酸素が激減した低酸素脳症も、これに該当します。

 

3)XP・CT・MRIでダメージの痕跡が確認できること、

①XPでは、頭蓋骨骨折とそれに伴う脳損傷を確認できます。

 

②CTは、主に水平断画像を確認、連続した画像により脳委縮の確認が容易です。

 

③MRIの撮像法であるDWIでは、外傷、特に軽微な脳挫傷の診断、軸索損傷の診断に対しCTや従来のMRIで確認できなかった脳損傷を証明することができます。

急性期の落ち着いた段階(受傷2~3日日)でMRIを撮影し、客観的な証拠を捉えることができるので、

外傷、特に軽微な脳挫傷の診断、軸索損傷の診断に対し、DWIはT2、T1、FLAIR、CTと比較して圧倒的に有効です。

 

④受傷後の早期に、DWI撮影が実施されていないときは、MRIの撮影法であるSWI=T2*(スター)検査を受けなければなりません。

SWIの利点は、造影剤を使わずに静脈を映し出せるということと、微細な出血、ヘム鉄に反応するので、受傷から時間が経過していても、点状出血や脳委縮など、病変部を確認することができます。

 

入院中、もしくは退院後であっても、受傷から間もないときに、高次脳機能障害が予想される先の症状が見られたときは、家族が十分にチェックし、メモを作成して、その内容を治療先の医師に伝え、高次脳機能障害の可能性を確認してもらうことが大切です。

後遺障害の審査・判断では、受傷から間もない段階で、医師が高次脳機能障害を確認しているのか、あるいは、そうでないのかが、とても重要なポイントとなっています。

 

4)想定される4つのパターン

 

意識障害 傷病名 画像所見 高次脳機能障害
1
2 ×
3 ×
4 × × × ×

 

1であれば、高次脳機能障害の立証に、苦労はありません。

2でも、なんとか頑張って立証に漕ぎ着けます。

3となれば、高次脳機能障害の認定は非常に困難となります。

4は論外で、高次脳機能障害として審査されることはなく、非該当です。

軽度脳損傷、MTBIは4に該当し、高次脳機能障害として評価されていません。

 

(3)高次脳機能障害の被害者とその家族が直面する問題

 

1)治療先で、適切な診断と治療が受けられない?

この問題が圧倒的です。

意識もうろうで救急搬送された被害者は、治療先を選べません。

治療先の優劣は、たまたまの偶然です。

そして、高次脳機能障害の診断となれば、医師であっても、専門的な医学知識が必要となります。

被害者の多くは、外見的には、健常者と同じように見えるため、高次脳機能障害について十分な知識や理解のない医師では、症状を見逃して放置することになり、適切な診断どころではありません。

 

急性期を過ぎると治療が打ち切られ、リハビリも受けられないで放逐されることも珍しくありません。

日本では、現在も、高次脳機能障害に対して十分な理解のない治療先が圧倒的に多いのです。

 

急性期を脱すれば、立証のできる治療先の選択が、被害者にとって、最重要の課題です。

そんなときは、信頼できる専門医とのネットワークを形成している、フリーダイアル0120-04-1951による電話相談、交通事故無料相談会に参加してください。

 

2)後遺障害の重さが正当に評価されない?

これは、立証ができていないことを意味していますが、2つの原因が想定されます。

 

①こんな面倒な立証作業を被害者の家族だけで、やりきることができるのか?

 

まず、医師に作成をお願いする書類が、3つもあります。

①頭部外傷後の意識障害についての所見

②後遺障害診断書

③神経系統の障害に関する医学的所見

④嗅覚の脱失や半側空間無視などが認められときは、耳鼻咽喉科、眼科で追加検査を受ける必要があり、主治医には紹介状の作成と、持ち帰った検査結果を後遺障害診断書に記載することをお願いしなければなりません。

 

医師が作成するものと言ってしまえば、それまでのことですが、では、医師に全面的におんぶに抱っこでいいのか? そんなに簡単なことではありません。

 

日常の異常を医学的に立証するには、神経心理学的検査を受け、その結果を、神経系統の障害に関する医学的所見に記載を受けるのですが、神経心理学的検査は19種類もあるのです。

検査は主として言語聴覚士が担当するのですが、治療先に配置されているか?

実際の障害を立証する的確な検査が実施されているか?

このような検証ご家族に求めても・・・やはり、専門家のフォローが望まれます。

 

⑤日常生活状況報告

これは、被害者の家族が作成するものですが、被害者の問題点を以下の4つに分類して、A4版、2、3枚でまとめることになり、かなりな構成力と文章力が必要となります。

 

ⅰ意思疎通能力=記銘・記憶力、認知力、言語力

ⅱ問題解決能力=理解力、判断能力

ⅲ遂行能力=作業負荷に対する持続力・持久能力

ⅳ社会行動能力=社会適合性、協調性

 

日頃、作文などしたこともない? それでは、どうあがいても、報告書の作成は不可能です。

これまでも、被害者の家族の協力を得て作成してきたのですが、ほとんどは、最初からやり直しで、完璧なものを見た事がありません。

 

こんなに高度で専門的なことを素人である家族に強制することが、そもそも、困難なのです。

 

②現在の治療先で大丈夫なのか?

先にも解説していますが、高次脳機能障害となると、多数の治療先で腰が引けているのです。

基幹病院は、救命第一ですから、後遺障害の立証など、無関心で、知らん顔です。

毎日、救急車やドクターヘリで重篤な新患が搬送されており、とても忙しくて対応できないのです。

 

高次脳機能障害に理解の乏しい、一般の脳神経外科病院であれば、後遺障害の立証に必要な設備やスタッフが整備されておらず、そもそも、立証ができないので、アウトです。

 

しかし、それであっても、秋葉事務所は、主たる治療先を大切にしています。

立証できる病院は、複数を確保しているのですが、主たる治療先の医師から紹介状を取りつけ、検査受診し、検査結果を持ち帰って、その治療先で後遺障害診断を受けることを目標としています。

 

どうしてか? それが最も自然な流れと考えるからです。

等級を審査する調査事務所、賠償請求の判決を下す裁判所などは、不自然さを嫌う傾向です。

仙台でリハビリ治療なら、検査は千葉で受けても、後遺障害診断は元に戻るのが好ましいのです。

いつだって、非常識、不自然は、排除すること、安楽に流されてはならないのです。

このメソッドなら、被害者、治療先、損保、調査事務所と軋轢を生じる懸念はありません。

おそらく、こんなところに配慮しているのは、年間病院同行数が300を超える事務所たる所以です。

 

要するに、自然、常識的、正しい立証で、必要書類を回収することが、私達の仕事なのです。

いずれにしても、スタッフが、全件で、被害者に同行してすべての治療先で医師面談を繰り返しています。

専門医とも連携し、間違いのない後遺障害等級の立証に全力を傾注しています。

損害賠償請求の前段階から、すでに、戦いは始まっています。

 

3)介護料が認められにくい?

遷延意識障害では、常時介護の状態であり、それは大変ですが、おむつの交換、身体の清拭、体位の変換は、介護者の計画で進めることができます。

 

ところが、被害者自身で自由に動き回ることのできる高次脳機能障害では、すべて被害者の状況に合わせることになり、随時介護と呼ばれていますが、介護者には、大変な心労と緊張が伴うのです。

 

ところが、2級以下の高次脳機能障害となると、損保は、必要なときに介護する随時介護で事が足りるのではありませんかと、毎回、決まって短絡な主張をしてくるのです。

 

こんな主張に対しては、被害者の大変な介護状況を40分程度のビデオにまとめて提出しています。

見て確認できるビデオ画像は、文章による説明よりも説得力を持つことがあります。

もちろん、事故前と事故後の生々しい変化、日常生活の困難さを詳細に立証し、介護者の精神的負担や介護に必要な労力を緻密に主張しています。

それらの努力で、等級的には随時介護であっても、常時介護が認められたこともあります。

高次脳機能障害では、3級、5級であっても、緻密な立証を行うことで、介護料が認められています。

 

緻密な立証を放棄して諦めたのでは、苦しみが残るだけで、なにも生まれません。

ご家族が頭部外傷で救急搬送され、将来、高次脳機能障害が予想されるときは、できるだけ早く、フリーダイアル0120-04-1951で相談してください。

フリーダイアルで概要をつかめたら、交通事故無料相談会に参加してください。

 

遠方の被害者でもスタッフを派遣しています。高次脳機能障害では、全国対応をしています。

 

(4)高次脳機能障害 秋葉事務所と全国のチーム110の実績

高次脳機能障害の相談は、実績・経験則から選択してください。

 

現在、ネットでは、多くの弁護士が、「高次脳機能障害の専門家?」 を標榜しています。

しかし、交通事故における高次脳の等級認定数は、およそ年間3000件に過ぎないのです。

バリバリ活動している弁護士を2万5000人と仮定しても、0.12件となりますが、高次脳の全件が弁護士対応されているのではなく、実際の受任率は、もっともっと低いのです。

つまり、10年に1件あるなしの経験則で専門家とはとても言えません。

 

さて、私達の最大のオリジナリティは、以下の5つのポイントです。

① 全件、被害者と家族に同行して、治療先に出向き、主治医との面談を繰り返していることです。

② 高次脳を立証できる治療先も確保しており、そちらにも同行してサポートを続けます。

③ 日常生活状況報告など、必要な書類も、責任をもって作成しています。

④ 労災など他の保険給付においても、被害者の家族に同行して最後まで、サポートを続けます。

⑤ 等級認定後は、連携している弁護士を紹介、損害賠償を引き継いでいます。

 

これが実行できるのは、日本においては、わずかの事務所に限られています。

重度後遺障害では、各地の連携事務所と協力、全国対応をしています。その実績は以下の通りです。


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(5)弁護士に求められること?

ここまでは、後遺障害等級の獲得や具体的な立証方法、実績などについて熱く説明してきました。

秋葉事務所の主たる事業ですから、ここが大事と、熱くなるのは当然のことです。

さて、交通事故の解決で、弁護士に求められる資質は、以下の3つです。

①問題を正確に理解するための幅広い知識と経験則

②依頼人から問題点を引き出す対話力、

③勝訴に導く創造力と構成力

後遺障害等級が認定されても、それを正しく損害賠償に反映させるのは弁護士の力量であり、訴訟においては、損保側の主張に対して1つ1つ緻密に立証し、具体的に反論することで、裁判官の心証を形成していかなければなりません。

損保は、なにを主張しても構いませんが、立証責任はすべて被害者側に求められているのです。

 

弁護士であれば、誰にでもできる? そんなに簡単なことではありません。

ここからは弁護士による高次脳の立証のポイントを経験則や過去の判例を引用して解説を進めます。

 

Q1 裁判所における損保の主張について、過失割合と介護料

Q2 裁判、和解と判決の違い?

Q3 歩行中の自転車との交通事故、自転車同士の交通事故?

Q4 自動車なのに、自賠責保険が免除?

Q5 裁判所に高次脳の等級認定を求める?

Q6 特定の地方裁判所には、交通事故の専門部がある?

Q7 損保の尾行や隠し撮り

Q8 事故当時、無職で家事従事者の逸失利益は?

※交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言

Q9 賃金センサス31歳では?

Q10 過失事案、任意一括の拒否?

Q11 全国対応と費用の問題?

Q12 セカンドオピニオンの重要性?

Q13 高齢者の高次脳?紛争処理センターにおける示談の斡旋?

Q14. 画像所見がなく、意識障害も認められないとき?

Q15. 高校生・大学生の逸失利益?

Q16 障害者自立支援法に基づく公的介護?

Q17 症状は、いずれ改善する?

Q18 介護にレスパイト?

Q19 将来の介護料のまとめ?

※中枢性尿崩症(ちゅうすうせいにょうほうしょう)

Q20 女性の働く権利?

Q21 子どもの高次脳について?

※幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方法について

Q22 事故による自殺と因果関係?

Q23 自賠責保険非該当を裁判で5級2号に?

Q24 減収なしで逸失利益を否定?

Q25 修行期間中の年収と逸失利益?

Q26 職場復帰と労働能力喪失率?

Q27 個人事業主の年収?

Q28 被害者に病識がない?

Q29 独り暮らしでも、家事従事者?

Q30 高次脳裁判の原点、懲罰的慰謝料、初めての画期的な判決?

Q31 非接触事故でびまん性脳損傷?

Q32 ひき逃げと無保険?

Q33 過失が80%もあるのに裁判?

 

高次脳の経験則を有している連携弁護士に取材しました。

 

Q1. 裁判所における損保の主張についてお教えください?

 

A 代表的なものを2つ挙げます。

1つは、高次脳に限りませんが、被害者に不利となる過失割合を強く押しつけてくることです。

 

高次脳など、重傷事故では、被害者は事故現場から救急搬送され、実況見分に立ち合えません。

その後、意識を回復しても、事故前後の状況については記憶を失っており、なにも説明できません。

したがって、実況見分調書は、加害者の供述を基礎として作成され、過失割合が判断されています。

損保は、これらを深く検証することなく、基本過失割合を強く押しつけてくる傾向です。

したがって、原告側弁護士としては、過失割合を見過ごすことはできません。
まず、検察庁から、刑事記録を取りつけ、実況見分調書、交通事故現場見取図を緻密に検証します。
そして加害者の供述に虚偽や矛盾が感じられるときは、1年後の同じ月日、時間帯に事故現場に立ち、交通量、走行している車両の速度や交通動態などを見分し、供述の合理性を徹底的に検証します。

交通事故現場に立つと、実況見分の弱点、加害者の嘘が見えてくることがあります。

確信に至ったときは、事故現場の状況を動画撮影し、証拠として提出しています。

 

また、過失割合では、目撃者の証言は、なによりの決め手となります。

2010年名古屋地裁では、弁護士が、事故現場に情報提供を呼びかける張り紙や看板を設置したところ、幸いにも目撃者が名乗り出て、被害者が青信号で横断中であったことを証言しました。

その弁護士は、直後に、この事実を警察に通報し、目撃者の実況見分を実施してもらい、裁判では、証人尋問を行って、0:100の逆転判決を獲得しています。
弁護士として、見習うべき積極的な立証活動と称賛しています。
A もう1つは、介護料は、定型的な対応で、高次脳1級、2級以外では、全否定してくることです。

 

自賠責保険後遺障害等級別表Ⅰ 介護を要する後遺障害
等級 内容
1 1神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの。

2胸腹部臓器に著しい障害を残し、常に介護を要するもの。

2 1神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの。

2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの。

 

自賠法では、別表Ⅰで介護を要する後遺障害等級を規定しています。

それによると、寝たきり状態の1級1号のみが、常に介護を要するものであり、2級1号となると、ときどき見守る随時介護で十分となり、3級以下では、介護の必要性がスルーされています。

 

将来の介護料・その他の損害の任意保険支払基準
項目 等級 内容
計算式 (月額の介護料×12カ月)×要介護期間に対応するライプニッツ係数
 

 

月額介護料

後遺障害別等級表Ⅰの1級 入院、自宅介護にかかわらず月額13万円とする。

ただし、家屋改造などにより、介護の程度が改善されるときは、減額の可否を判断する。

後遺障害別等級表Ⅰの2級Ⅱの1、2級と3級3・4号※ 月額6万50000円とする。
 

 

 

介護期間

後遺障害別等級表Ⅰの1級 医師の診断、裁判の動向などを勘案して、症状固定時の年齢に対応する平均余命年数の範囲内で、妥当な介護期間を認定する。
後遺障害別等級表Ⅰの2級Ⅱの1、2級と3級3・4号※ 障害の態様、機能回復の可能性、生活に対する順応性などについての医師の診断、裁判の動向などを勘案して、妥当な介護期間を認定する。

※後遺障害別等級表Ⅰの2級および等級表Ⅱの1、2級と3級3・4号に該当する被害者で、かつ、真に介護を要すると認められるときと記載されています。

 

これに対し、損保の基準では、自賠責保険の後遺障害等級表に基づき、Ⅰの1級は、月額13万円、Ⅱの1、2級、3級3号と4号については、真に介護を要すると認められるときに限り、月額6万5000円を支払うと規定しています。

 

ところが、裁判所は自賠法の常時介護や随時介護の規定は、無視しています。

あくまでも、現実はどうなのか? このことを重視しているのです。

したがって、高次脳では、介護の緻密な立証と獲得は弁護士の力量と評価されているのです。

 

原告側の弁護士が、介護の実態を具体的に立証すれば、2級1号であっても常時介護を認め、3級3号や5級2号でも、介護料は認定されています。

判例などを検証していきます。

 

1)高次脳2級 大阪高裁・2009年 判決 

将来介護料は、日額8000円

自転車で下り坂の青信号交差点を横断中、対向右折の自動車の衝突を受け、高次脳で2級1号が認定された28歳、無職、家事手伝いの女性に対して、物忘れや自発性の低下の他、家族に暴力をふるう、自殺未遂をするなど、人格障害による他害行為や、自殺願望、社会的迷惑行為などの異常行動が著しく現れ、投薬で抑制していたものの、常に看視=監視や声掛けを欠かすことのできない状況を弁護士が細かく立証を行っています。

裁判所は、自賠責保険のルールでは随時介護であるのに、常時介護レベルの介護日額8000円を認定、将来介護料として5470万円、損害総額1億2510万円を判決しています。

 

これが損保のレベルであれば、介護の必要性を理解させても月額6万5000円に過ぎません。

月額6万5000円が弁護士の力量で24万円となったのです。

 

2)高次脳1級 東京地裁・2007年 判決 

職業介護人による常時介護料 日額1万8,000円

青信号でT字型交差点の横断歩道を横断歩行中、右折の自動車が衝突、頭部外傷、外傷性脳動脈解離、脳梗塞などで左上肢機能麻痺と体幹機能麻痺を伴う高次脳機能障害1級1号が認定された、自営業の手伝いと家事を切り盛りしていた50歳の女性に対して、弁護士は、介護の程度と日常生活動作の1つ1つを検証し、

①理解力の低下が最も重篤で、意味不明の言葉を口走ることがあること、

②放置しておくと、車椅子からの転落やガスの付け放しがあり危険であること、

③指示をしないと服薬や通院など必要なことをなにもしようとしないことなどから、

被害者の障害は重く、着替え・食事・トイレ・入浴など、日常生活の全てに介護が必要であると証拠を添えて主張し、職業人介護による常時介護料を請求しました。

 

裁判所は、訴えの内容を精査し、被害者が、日常生活において、常に行動を看視し、指示、声かけをする介護者の存在を欠かすことができない状態と認定、その上で、日常の介護から外れ、事業復帰を希望する夫や、就業や学業をしている子ども4人の主張をくみ、職業介護人による常時介護料 日額1万8,000円、合計、9600万円を認定しています。

 

この女性は、1級1号ですが、寝たきりではありません。

損保は、寝たきりでないことをあげつらい、随時介護6万5000円を主張していました。

 

3)高次脳2級 東京地裁・2010年 和解 

職業介護日額1万5000円、家族介護日額8000円

これは、ご子息から相談があり、サポートをした事案です。

国道を4トントラックで直進中、資材置き場から飛び出したクレーン車が激突、クレーンの先端部が助手席に突き刺さり、助手席に同乗中の女性は即死、運転者も左眼球破裂、頭蓋骨陥没骨折、びまん性軸索損傷で高次脳2級が認定された劣悪、悲惨な事故でした。

 

実は、夫婦は15年以上前に離婚しており、息子は父親と別れ、母親と生活していました。

母親がガンで亡くなり、その後、息子は結婚、乳飲み子が誕生したばかりで、警察から連絡があり、父の消息やこの事故のことを知ったのですが、息子は、妻を説得し、父親を引き取ることにしたのです。

54歳の父親は退院後、息子夫婦のもとに引き取られたのですが、左眼球破裂で眼球は摘出されており、顔面の醜状瘢痕も7級レベルで、暗がりで現れるとドキッとする風貌となっています。

ところが、高次脳の影響か、左目に義眼を入れることを拒み、家庭内では暴言が絶えず、息子には暴力が目立ち、トラブルが絶えない状態で、若い夫婦は離婚の危機に瀕していました。

 

弁護士は、これらの状況を息子夫婦から聴き取り、日常の介護や被害者への見守りの大変さを陳述書にまとめ、乳飲み子がいる現状では、職業介護人の導入もやむを得ないと主張しました。

結果、240日は職業介護で日額1万5000円、残りの125日は家族介護で日額8000円と、2級としては、高額の将来介護料が認められました。

 

事故から2年6カ月で和解が成立したのですが、8%の調整金が認められ、依頼者の弁護士費用を吸収することができ、先の父親の引取状況も考慮され、400万円の近親者慰謝料が認められました。

 

この事故発生状況でも、損保は裁判で15%の過失相殺と介護料0円を主張しています。

 

4)高次脳3級 横浜地裁・2010年 和解 

将来介護料は日額6,000円

原付バイクで優先道路を直進中、一時停止を無視した無保険車と衝突したもので、37歳の男性には、高次脳で3級、他に聴力障害、嗅覚脱失、咀嚼障害を残しました。

事故後、被害者の人格が大きく変わり、易怒性が強く、両親に対して暴言を繰り返し、我慢ができないときは暴力に発展することが頻繁でした。

そこで家族の日常の苦労を、詳しい陳述書にまとめると共に、実際に壊された物や暴力による痣などの写真を提出して明確に立証した結果、裁判所は日額6,000円の将来介護料を認めてくれました。

 

原告の原付に付保されていた無保険車傷害特約から回収しました。

 

5)大阪地裁・2007年 判決 

母親が67歳まで、平日は日額8000円、休日は日額6000円、67歳以降、日額8,000円

深夜、片側一車線の直線道路を自転車で走行中の18歳男性、専門学校生が、後方からの普通乗用車に追突され、外傷性脳内出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折などで、高次脳2級が認定されています。

本件事故により開頭手術・低体温療法などを受けていた被害者は意識レベルが低下していたのですが、ヘルパー職を退職し、息子のために献身的な介護を続けた母親のお陰げで、2年後には、作業所に通って軽作業がこなせるまでに回復を遂げました。

作業所では、軽作業をこなし、デイサービス施設では、リハビリを兼ねてボランティアスタッフとして働き、休み時間には、複雑なテレビゲームに興じるなどしており、医師やリハビリに関わった言語聴覚士らの中には、障害の程度が軽いと誤解を受け、そうした診断に基づくカルテの記載も認められました。

 

これらの外形的な事実から、損保は、以下の主張を展開した。

①自転車が無灯火で、反対車線を走行していたため、被害者側にも10%の過失があること、

②労働能力喪失率は、障害の程度が軽いので、2級であっても100%ではないこと、

③高次脳2級であっても、日常生活は健常者と遜色がなく、介護の必要性は認められないこと、

 

しかし、まだらな状態の障害は厳然と残っており、

①声かけや監視がないと予定通りの行動ができないこと、

②目的地まで1人では移動できない状況であったこと、

弁護士は、見守りや付添いの必要性、またてんかん発作予防の投薬管理などについて、日常動作の1つ1つを立証するとともに、母親が元のヘルパー職に戻り、自立した生計を営むには、職業介護の導入が必要であるとして、将来介護料を請求したのです。

結果、判決では、労働能力喪失率を100%と認め、母親が67歳になるまでの平日は、日額8000円、休日は、日額6000円、母親が67歳以降は、日額8,000円の将来介護料、総額5200万円を含む損害賠償額1億8500万円が認定されました。

 

6)高次脳3級 東京地裁・2008年 和解 

将来介護料は日額2000円

自動二輪車で直進中、対向右折車の衝突を受け、高次脳で3級、併合2級が認定された26歳・男性・会社員ですが、なんとか自立を促そうとした親の方針により、事故後の7年間、一人住まいを続けたのですが、そのことで、死にたいと漏らすようになり、母親が毎日通いでの介護を強いられていました。

損保は、7年間の一人住まいの事実から、以下の3つを主張しました。

①一人で生活ができるのだから、労働能力喪失率は100%ではないこと、

②半自立の状態であり、障害等級は3級ではなく5級とすべきこと、

③将来介護料は不要であること、

 

弁護士は、専門医に診断を求め、現実的には社会人としての自立は無理であり、高次脳の等級は3級で労働能力喪失率も100%であることを緻密に立証しています。

さらに、一人暮らしを解消させ、本格的なリハビリを受けながら、本人の障害の実態に合う生活スタイルに変更させてから、損害賠償の請求訴訟に取り組みました。

結果、裁判所は1日2,000円の将来介護料を認めています。

 

7)高次脳5級 東京地裁・2013年 判決 

将来介護料は日額2000円

4車線道路の第3車線をバイクで走行中、第4車線を走行中の相手自動車の急な車線変更により、接触を受け転倒で12級13号が認定された28歳、建設業に従事する男性は、事故後、仕事に復帰できない状態が続いていました。

高次脳の治療経験に乏しい医師が、事故直後から担当したことで、被害者は必要な検査や十分な診断が受けられておらず、立証不足により高次脳の認定は自賠責では認められていません。

担当弁護士は、緻密に被害者や家族の意見を聞き取り、陳述書を作成しています。

また、専門医に意見書の作成を依頼し、その上で、本人尋問を行いました。

その結果、裁判所は脳挫傷による高次脳として5級2号が相当であると認定しました。

将来介護料については、日額3,000円を請求したところ、裁判所は2,000円を認めています。

 

8)高次脳5級 さいたま地裁・2011年 和解 

将来介護料は日額2000円

53歳、女性・主婦が横断歩道を歩行中、右折自動車の衝突を受けたもので、脳挫傷による高次脳7級、嗅覚脱失12級で併合6級が認定されていました。

面談により、この被害者には見守り介護が不可欠で、夫が介護をしなければ基本的な生活が維持できないことが判明したので、高次脳の専門医の診察と検査を受けて、自賠責保険に異議申立を行い、高次脳5級で併合4級となり、訴訟を提起しました。

 

弁護士は、裁判では日常生活における夫の介護の労苦や見守りによって減収した収入を、陳述書などで緻密に立証した結果、裁判所は、5級でありながら日額2,000円の将来介護料を認めています。

 

9)高次脳5級 東京地裁・2011年 和解 

将来介護料は日額3000円

38歳男性会社員の運転する大型バイクが片側2車線の青信号交差点を直進中、渋滞側車線から車と車の間をぬって対向右折した自動車の衝突を受けたもので、高次脳として5級が認定されています。

 

弁護士は、本件の被害者には、自発性の低下や記憶障害などが認められ、見守り、監視、声掛けの介護が必要であるとして、妻の陳述書を提出した上で、本人の証人尋問を行いました。

結果、裁判所は、将来の介護料として日額3,000円を認めました。

 

10)高次脳5級 東京地裁・2010年 和解 

将来介護料は日額5000円

信号機のないT字路を横断中、直進中の自動車の衝突を受けた10歳の女子小学生は、高次脳で7級が認定されていました。

この少女には、軽度な失語と同時に2つ以上のことができない遂行機能障害、記憶障害が認められたため、専門医を受診、神経心理学検査などでそれらを立証して自賠責保険に対し異議申立を行ったところ、高次脳で5級が認定され、その結果で民事裁判を提起することになりました。

 

損保は、以下の3つを主張したのですが、

①飛び出をした少女に30%の過失割合が認められること、

②高次脳5級に将来介護料は必要ないこと、

③逸失利益の基礎となる収入は、女子平均賃金であること、

 

弁護士は、損保の主張する30%の過失割合について、刑事記録を精査した上で、相手方の著しい前方不注視や合理性のない無理な主張を指摘して反論、裁判所は、弁護士の主張を受け容れ、被害者の過失を15%に減額修正しました。

将来介護料については、5級であっても見守りが必要なことについて母親の陳述書で詳しく立証したところ、裁判所は、近親者介護料として日額5000円を認定しました。

基礎収入については、将来の可能性が裁判所でも認められ、男女平均賃金480万円で算出されることとなり、15%の過失相殺後に自賠責保険を含んで9000万円の高額な賠償金となりました。

 

コメント

以上の判例などから分かるように、民事裁判においては、緻密な立証が求められているのです。

 

弁護士の資質は、以下の3つで決まるのですが、

①問題を正確に理解するための幅広い知識と経験則、

②依頼人から問題点を引き出す対話力、

③勝訴に導く創造力と構成力、

 

残念ながら経験のない弁護士は、殆どが、介護の実態を明らかにすることなく、赤本から過去の高額判例を引用して高額な介護料を単に請求しているのです。

当然に裁判では、問答無用、斬り捨て御免で、低額な介護料しか認定されていません。

 

後にも詳しく述べていますが、家族が仕事に就いているときは、1年間の土日・祝日、95日間を家族介護、270日間は、職業介護人による介護として、細かく介護料を請求することになります。

 

一般的には、家族介護125日、職業介護240日となるのですが、レスパイト=家族介護者にも休息が必要であり、国民の休日プラス土・日を基本に、30日間を介護者の休息日として請求しています。

 

家族介護でも、母親が67歳までは家族介護で、67歳以降は職業介護で請求することになります。

上記にレスパイトの概念を導入して請求することは、もはや常識となっています。

 

Q2 損害賠償請求訴訟ですが、判決と和解の違いを教えてください?

A 判決では、事故日起算で単利5%の遅延損害金と平均的には判決額の10%に相当する弁護士費用が認容されています。

 

ところが、和解であっても、請求すれば、上記に該当する和解調整金が認められることがあります。

原告の主張に沿った内容で、かつ、調整金が認容されるなら、和解でも、なんら問題はありません。

 

1)高次脳2級 水戸地裁・2012年 和解

調整金として、1200万円が付加される。

2)高次脳2級 横浜地裁・2012年 和解

調整金として、1910万円が付加される。

3)高次脳2級 東京地裁・2012年 和解

調整金として、2800万円が付加される。

4)高次脳3級、併合1級 東京地裁・2012年 和解

調整金として、3150万円が付加される。

5)高次脳5級、併合4級 さいたま地裁・2011年 和解 

調整金として、1850万円が付加される。

 

被害者が高齢であるときや被害者が迅速な解決を希望されるときは、紛争処理センターでの解決を選択することもあります。

ただし、紛争処理センターにおける示談の斡旋では、調整金は認められません。

 

訴訟提起であっても、

①和解に応じるのか?

②判決の獲得まで頑張るのか?

③地裁判決を不服として高裁に控訴するのか?

④高齢者なので、紛争処理センターで示談の斡旋を求めるのか?

 

さまざまな選択肢が考えられます。

 

Q3 歩行中の自転車との交通事故、自転車同士の交通事故の対応はどうしておられますか?

 

A 加害者が自転車となると、自賠責保険がありません。

1年を経過しても、被害者はどこに後遺障害の申請をして解決することができるのか?悩んでいます。

 

原告が加入の身傷害保険があるときは、そちらに請求することができますが、原告や家族が自動車を保有していないときは、この手法は成立しません。

加害者が個人賠償責任保険に加入しているときは、その保険屋さんを通じて申請することになりますが、果たして、公明正大な審査がなされているのか? 一抹の不安を残します。

 

当法律事務所では、裁判所で等級認定を受けることを前提としており、裁判所における議論に耐えられる立証を秋葉事務所に求めています。私達は、高次脳に対する医学的な知識を有し、かつ専門医とのネットワークも形成しています。

これまでは、高次脳に詳しい専門医の紹介と同行による診察、検査の実施で後遺障害診断書などの作成に至るまでサポートを受け、具体的な等級を明示して裁判で好結果を上げています。

 

高次脳2級 東京地裁・2011年 和解

パートの仕事をしている72歳女性が路側帯を歩行中、新聞配達中の自転車が衝突 脳挫傷で療養中であったが、被害者の家族は、相手が自転車なので損害賠償を受けられないと悩んでいました。

しかしながら、この新聞販売店は、1億円の個人賠償責任保険に加入していることが分かったので、そこで、弁護士は、脳外傷の専門医を紹介して後遺障害診断書の作成までをフォローしています。

自賠責であれば2級相当の高次脳があることを緻密に立証し、裁判所は、2級相当を認定しました。

将来の介護料については、家族の陳述などで日額3,500円が認められ、調整金も1000万円付加されたので、7000万円、72歳の女性としては、高額の賠償額を実現しています。

 

損保の火災新種課※が対応している個人賠償責任保険に後遺障害の認定を一任することなく、立証資料を添えて裁判所に等級認定を求めることで、成功した例です。

 

※私が加入している個人賠償責任保険は、保険金が無制限で、示談交渉サービスがついています。

しかし、多くの個人賠償責任保険は、損保の火災新種課が対応するのですが、自動車保険と違って、示談交渉に慣れておらず、後遺障害の知識も有していません。

ここに等級認定を一任しても、裏切られることが多いのです。

 

コメント

自転車を利用する機会のある人は、逆に、自分自身や家族がこうした事故の加害者になるリスクがあることをよく認識した上で、個人賠償責任保険に加入しておかなければなりません。

 

自賠責保険のない自転車事故では、後遺障害等級認定の困難さがつきまといます。

等級の検討に手間取っているときは、秋葉事務所であれば、専門医を紹介して同行受診しています。

できるだけ早く、0120-04-1951で相談してください。

フリーダイアルで概要をつかめたら、交通事故無料相談会に参加してください。

もちろん、セカンドオピニオンを求めることで、構いません。

 

遠方の被害者であれば、仲間であるチーム110のスタッフを派遣しています。

高次脳機能障害では、全国対応をしています。

 

Q4.自動車なのに、自賠責保険が免除?

A 自転車の他には、原付で多発し、自動車でもある自賠切れと加害者=自衛隊車両があります。

自賠切れは、ほとんどで任意保険にも加入しておらず、被害者が自動車を保有し、自動車保険に加入しているときは、人身傷害保険と対人保険に自動担保されている無保険車傷害保険に請求することになりますが、被害者が自動車を保有していないときは、お気の毒ですが、泣き寝入りとなります。

 

では、自衛隊車両について説明しておきます。

自賠法10条と自動車損害賠償保障法施行令1条の2により、国連軍、アメリカ軍、自衛隊の自動車は、自賠責保険の加入が免除されています。

なぜ? いざ戦争となれば、軍隊は、橋を破壊する、民間の土地に砲台を築く、駐車中の自動車や民家を戦車で破壊するなど、防衛上必要な措置となれば、なんでも許されているのです。

つまり、本来、彼等の存在は、自賠責保険を超越しているのです。

 

では、自衛隊車両との交通事故となると、自賠責保険に加入しておらず、適用はありません。

自賠責保険が適用されないときの救済措置である政府保障事業も適用されません。

実際の例を紹介しておきます。

 

高次脳5級、併合4級 東京地裁・2009年 和解

6歳と4歳、姉妹の2人乗り自転車と自衛隊の人員輸送用バスが衝突し、6歳の長女は死亡しました。4歳の次女は、頭蓋骨骨折、脳挫傷の重傷です。

 

死亡した長女については、自賠責保険なら無条件で3000万円のところ、どうしてか、1800万円で示談が成立しています。

 

高次脳の後遺障害を残した次女については、11級の後遺障害を残したとする自衛隊側の一方的な診断結果をもとに、850万円という低額な示談金額が示され、すでに事故受傷から13年が経過し、次女についても、和解の寸前まで話が進んでいたのです。

 

担当の弁護士は、専門医の診断で、高次脳で5級2号、複視で13級2号、併合4級を立証し、東京地裁で国家賠償請求訴訟を提起、2009年に自衛隊の提示額の5倍に相当する4200万円と40%の和解調整金※を支払う内容で和解が成立しています。

 

※和解調整金

遅延損害金と弁護士費用を合計したものです。

 

秋葉のコメント

加害者が、日本国、親方日の丸であっても、全面的に信用することはできません。

日本国が被害者に忖度するなんてことは、あり得ないのです。

 

日本国の言いなりで押し込まれることなく、納得できないときは、できるだけ早く、フリーダイアル0120-04-1951で相談してください。

フリーダイアルで概要をつかめたら、交通事故無料相談会に参加してください。

もちろん、セカンドオピニオンを求めることで、構いません。

 

Q5 裁判で後遺障害等級を認定してもらうことってできるのでしょうか?

A 裁判官といえども、交通事故・後遺障害の専門家ではありません。

後遺障害等級の審査では、一元的には自賠責調査事務所が管理しており、そこで認定された等級にしたがうのが、裁判官の平均的なスタンスであって、裁判での認定は嫌う傾向にあります。

 

しかし、先例のように自賠責調査事務所で認定できないものや、損保の自社認定で疑義のあるもの、自賠責調査事務所の判断が、非該当や明らかに間違った認定をしているにもかかわらず、それでも異議申立が否定されているなんて不条理も現実には発生しているのです。

 

嫌われてはいても、裁判所に等級認定を求める事案は少なからずあるということです。

 

1)高次脳5級2号、東京地裁・2013年

自賠責保険非該当が高次脳5級に

2)高次脳7級 名古屋地裁・2012年

画像所見がなく、非該当が高次脳7級、併合6級に

3)高次脳5級2号、千葉地裁・2011年

自賠責保険では、脳挫傷による右耳難聴その他で併合10級を裁判で高次脳5級、併合4級に

4)高次脳2級、東京地裁・2011年

自転車事故で自賠責保険なし、裁判で高次脳2級に

5)高次脳5級、併合4級、東京地裁・2009年

自賠責保険の加入が免除されている自衛隊車両との事故、11級の主張を併合4級に

 

こんなときに求められるのは、裁判官の疑問を解消し、被告側の反論を封じ込める完璧な立証です。

当事務所では、チーム110に立証サポートを依頼しています。

 

Q6.特定の地方裁判所には、交通事故の専門部があると聞いたのですが?

 

A 東京地裁民事第27部、大阪地裁民事第15部、名古屋地裁民事第3部は、全国の地方裁判所の中で交通事故による損害賠償請求訴訟を専門的に取り扱う部であり、交通事故の裁判や実務において指導的立場にあり、交通事故の解決では、共同提言を行い、指針を発表しています。

 

ちなみに、平成26年度の全国における交通事故の訴訟件数は1万3500件ですが、東京地裁民事第27部は1400件、10.37%の事件解決をしています。

 

横浜地裁民事第6部は集中部であり、交通事故事件は、第6部に回されます。

しかし、民事第6部は交通事故事件のみを担当しているのではなく、多の事件も扱っています。

専門ではないけれども、集中的に交通事故を扱うので、専門部制と呼ばれています。

 

Q7 高次脳でも、尾行や隠し撮りが行われ、裁判に不利な証拠として提出されると聞きましたが?

A 被告側、損保の尾行調査や隠し撮りは、古典的なスタイルです。

実際には、高次脳の被害者がスーパーの果物売り場でリンゴを選んで買い求めていた映像で、「この被害者は、美味しいリンゴを選び出す能力を有している?」 こんな主張がなされたこともあります。

 

この被害者には、右下腿に麻痺があり、右足を引きずるように歩くことや、重度な失語症があって、ほとんど会話が成立することはないのですが、提出されたのはリンゴを比べて選び出している画像のみで、損保に不利となる映像はすべてカットされている、実に不愉快極まるものでした。

このときは、それらを主張し、損保の主張を退けました。

 

高次脳2級、斜視などで併合2級、横浜地裁・2005年 判決

信号機のない交差点を原付バイクで直進中、左方から直進の乗用車と衝突、高次脳2級、斜視などで併合2級が認定された19歳の男子アルバイトに対して、損保は、

①将来の介護料は、随時介護であり、日額3,000円程度が妥当であること、

②逸失利益の基礎収入は、被害者がアルバイトだったため相応に下げるべきであること、

などを主張したのですが、担当の弁護士は、高次脳の被害者に対する見守り監視などの大変さを細かく訴え、家族介護としては、日額8,000円×125日、職業介護では、日額1万2000円×240日を主張した結果、裁判所は、日額1万円×365日×余命年数の将来介護料を認めました。

 

慰謝料では、損保が依頼した調査会社が2週間にわたって被害者を尾行調査し、撮影が禁止されている保護施設内で隠し撮りなどを行った悪質な行為に対し、裁判官は、社会通念上許容される限度を超えた不相当な行為と厳しく糾弾し、併合2級の後遺障害としては異例に高額な、本人慰謝料2400万円、近親者の慰謝料300万円を支払えと判決しています。

逸失利益も、当時、被害者は大学進学を目指してアルバイト中であったことを主張し、逸失利益の基礎収入として、賃金センサスの男子全年齢)が採用されました。

 

今後は、当法律事務所としても、尾行や隠し撮りなどの事実が明らかなときは、これらにより被った被害をシッカリと主張していく方針を立てています。

 

Q8 事故当時、無職で家事手伝いの逸失利益・基礎収入は?

 

長女、24歳ですが、大学を卒業後、銀行に勤務していました。

ところが、母親が末期の乳ガンと診断され、自宅療養を切望しました。

長女は銀行を退社し、実家に戻って母親の介護を続けました。

母親は、2年後に亡くなったのですが、その直後、自転車で青信号交差点を横断中に対向右折車の衝突を受け、脳挫傷、びまん性軸索損傷の傷病名で2級1号の後遺障害が認定されました。

 

本件の解決ですが、長女の逸失利益の基礎となる収入、介護料などについてお教えください?

A 基礎収入ですが、損保は、事故当時、無職であることを理由に、せいぜい18歳の年齢別・男女別平均給与額、16万9600円×12カ月=203万5200円と主張してくると予想しています。

 

私は、H11-10に行われた東京・名古屋・大阪地裁の共同提言※に基づき、H27年賃金センサス・女性・全年齢平均賃金の372万7100円を基礎年収として請求します。

 

銀行を休職し母親の介護を続けていたときは、女性の学歴別平均賃金454万6500円で請求します。

 

※交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言

1)交通事故による逸失利益の算定において、原則として、幼児、生徒、学生、専業主婦および比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金または学歴平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められるときは、基礎収入を全年齢平均賃金または学歴別平均賃金によることとし、それ以外の者については、事故前の実収入額によることとする。

 

2)交通事故による逸失利益の算定における中間利息の控除方法については、特段の事情のない限り、年5%の割合によるライプニッツ方式を採用する。

 

3)上記の運用は、特段の事情のない限り、交通事故の発生時点や提訴時点の前後を問わず、平成12年1月1日以降に口頭弁論を終結した事件ついて、同日から実施する。

平成11年11月22日

 

コメント

訴訟では、生涯を通じて全年齢平均賃金または学歴平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が問題となり、協議することになります。

本件の被害者は、

①症状固定時24歳で同提言に該当すること、

②母親の乳ガン末期療養のため原告が勤務先を退職して介護や家事をせざるをえなかったことなど、やむを得ない事情で無職であったことを説明するとともに、

母親の介護を終了した原告が、なにを目指していたのか?

それを実現するために、どのような学習をしていたのか?

これらについて、家族から聴き取り、細かく主張して、請求額の認定を求めていくことになります。

 

介護料については、損保は、決まって、高次脳2級1号=随時介護=将来介護料日額2000円、つまり、ときどき見守り程度の介護をしていれば、事が足りるとの定式を当てはめてきます。

 

これらに対しては、被害者の障害状況や介護の負担の程度に応じて、注意、看視、声かけ等の常時介護が必要かどうか、実際に検証していくことが必要であり、重要です。

 

2級1号であっても、常時介護の必要性を考慮して、日額8,000円を認めた判例も存在しています。

 

高次脳機能障害者全てに該当する課題ですが、介護料の請求では、等級に関係なく、介護の実態と問題点を細かく立証していかなければなりません。

 

高次脳2級、大阪高裁・2009年

事故当時、無職で家事手伝いの28歳女性が、自転車で下り坂の青信号交差点を横断中、対向右折の自動車の衝突を受け、脳挫傷による高次脳で2級が認定されました。

この女性には、物忘れや自発性の低下のほか、家族に暴力を振るう、自殺未遂をするなど、人格障害による他害行為や、自殺願望、社会的迷惑行為などの異常行動が著しく現れ、投薬で抑制していたものの、常に看視=監視と声掛けを欠かすことができない状態で、家族は崩壊寸前の状態でした。

 

本件の問題点

①被害者は大学を卒業した後、一度は公務員の職に就いていたが、その後退職し、自己実現のためにアルバイトや契約社員として働きながら勉強を重ねていたのですが、事故当時は、病気療養中の家族にかわって家事をする必要があったため、無職だった。

②こうした状況につき、一審の京都地裁判決は逸失利益の基礎収入を女性平均賃金の70%、4100万円、将来の介護料については、薬物で症状を抑制し、施設入所前提の日額5,000円、3400万円という認定であり、担当弁護士は、逸失利益と将来の介護料について地裁判決の事実認定を是正させるべく控訴しています。

 

①将来介護料について、弁護士は、投薬により他害行為・自害行為は収まっているものの、薬で本人の意志を抑制した状態で施設や病院に入所させることは、自己決定権を抑制し、憲法上の幸福追求権や居住・移転の自由を侵害するものだと主張しました。

 

②基礎収入については、若年者の逸失利益について裁判所の共同提言がなされており、本件被害者は症状固定時29歳で同提言に該当すること、さらに自己実現のためにアルバイトなどをしながら勉強する時間を割いていたこと、家族が病気療養のため原告が家事をせざるをえなかったことなど、やむを得ない事情で無職であったことを細かくこまかく主張しています。

③その結果、高裁は

自宅介護を前提に介護日額として8000円、5470万円、

基礎収入については、女子平均賃金年額350万円を適用し、5900万円、

総損害額1億4540万円、5%の過失相殺と既払いを控除して1億2,510万円、近親者慰謝料として510万円を支払えと判決しました。

結果として、損害賠償額は一審判決の1.5倍にアップし、さらに、約6年分、30%の延滞利息が別途追加されたのです。

 

コメント

損保が画一的に想定している、高次脳2級なら随時介護、見守り介護なら日額2000円で十分でしょうか?

このような定式に拘ることなく、被害者の障害状況や介護の負担の程度に応じて、注意、看視、声掛けなどの常時介護が必要かどうか、常に検討しなければなりません。

本件は2級でありながら、日額8,000円の高額判決を獲得しています。

 

一審の京都地裁は、将来の介護料について、薬物で症状を抑制し、施設入所前提の日額5,000円、としていますが、担当弁護士は、大阪高裁に控訴し、薬で本人の意志を抑制し、施設や病院に入所させることは、自己決定権を抑制し、憲法上の幸福追求権や居住・移転の自由を侵害するものだと主張して、自宅介護を前提に、介護料を請求しています。

これこそが、勝訴に導く弁護士の創造力と構成力です。

 

Q9 賃金センサス31歳では?

 

高次脳7級4号、紛争処理センター本部・2009年 示談の斡旋

31歳で、実際の収入が平均賃金を下回っている、

 

建設現場監督の31歳男性がバイクで交差点を青信号で直進中、対向右折車と衝突したもので、高次脳として7級4号が認定されています。

事前認定で7級4号が認定され、損保からは、2400万円の損害賠償額が提示されていました。

本件は、依頼人が迅速な解決を希望されていたので、紛争処理センターでの解決を選択しました。

 

損保側の主張は、以下の通りです。

①被害者にも15%の過失が認められること、

②逸失利益は、被害者は事故時に31歳であり、実収入で計算すべきであること、

③後遺障害慰謝料については、半額の500万円が妥当であること、

 

過失割合について、弁護士は刑事記録の矛盾点を指摘し、10%に引き下げることができました。

 

事故当時31歳の被害者の年収は、男性の平均賃金より150万円低い404万円でした。

30歳以下では、東京・大阪・名古屋地裁の提言にもあるように、将来の可能性と賃金上昇も予想されるところから、賃金センサスを適用することに争いはありません。

しかし、僅か1歳ですが、31歳となると、そこをどう判断すべきかが問題とされるのです。

本件では、同期入社の同僚、同じ職種の先輩社員などの給与明細から、一定の年月を経過するとベースアップがなされ、賃金センサスの年収に近づく事実を掴んで立証しました。

紛争処理センターは、賃金センサスを適用することで、示談の斡旋を行いました。

 

後遺障害慰謝料についても、500万円は明らかな根拠に乏しく、裁判基準の1000万円を主張、当然のことですが、1000万円が認められました。

高次脳7級4号、過失10%で、自賠責保険を含んで5600万円、当初の損保側の提示額、2400万円の1.9倍の損害賠償額が実現できました。

 

コメント

先の、東京・大阪・名古屋地裁の共同提言は、比較的若年の被害者とは、おおむね30歳未満と規定されているのですが、では、31歳ではどうなるの?

30歳未満では、ほぼ自動的に全年齢平均賃金が適用されるのですが、さすがに31歳となると、生涯を通じて全年齢平均賃金または学歴平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められることを立証しなければならず、弁護士の力量が試されているのです。

 

なんども繰り返していますが、弁護士の資質は、以下の3つです。

①問題を正確に理解するための幅広い知識と経験則

②依頼人から問題点を引き出す対話力、

③勝訴に導く創造力と構成力

創造力と構成力に乏しく、経験則の少ない弁護士では、主張以前に、これでは負けてしまうと消極的な対応に明け暮れるのです。

そんな弁護士に依頼すれば、平均賃金より150万円低い404万円で、逸失利益が計算されます。

404万円×56%×16.547=3743万5000円、

554万円×56%×16.547=5133万5000円、

弁護士の能力次第で、損害賠償額に1390万円の差が生じるのです。

 

高次脳における損害賠償では、被害者はその後の人生を決定づけられます。

弁護士選びは、慎重でありたいものです。

 

Q10 過失事案、任意一括の拒否?

17歳の長男、高校2年生ですが、通学途上の幹線道路を自転車に乗って斜め横断し、右方からのトラックに跳ね飛ばされました。

脳挫傷、頭蓋骨陥没骨折、急性硬膜下血腫で開頭術を受け、ICUに入院中です。

相手の加入する損保よりは、被害者の過失が55%であり、任意一括対応ができないとして放置されたままの状態ですが、家族としては、どう対応すればいいのでしょうか?

 

A 自宅に自動車があり、自動車保険に加入されているときは、保険証券の裏面を確認してください。

人身傷害保険に加入のときは、当面の治療費などを人身傷害保険に請求できることがあります。

判断ができないときは、保険証券の表裏を送信してください。

確認の上、10分以内で、請求の可否について回答します。

 

高次脳2級、山口地裁・2011年 和解

自転車で通学途上の16歳男子高校生が、道路を斜め横断し、右方からの車に跳ね飛ばされ、高次脳2級が認定されました。

本件では、被害者に40%の過失が想定されたため、父親が加入している自動車保険の人身傷害保険から1億円、自賠責保険から3000万円を先行取得した直後に、民事裁判を提起しています。

 

高次脳2級で、実際には介護に大変な手間がかかることを丁寧に立証し、裁判所は、職業介護として日額2万円、家族介護8,000円を認定しました。

過失は40%であったものの、人身傷害保険から過失分の1億円を填補し、さらに相手損保からの損害賠償金として1億2100万円と近親者慰謝料として240万円、自賠責保険金3000万円、総額2億5340万円で和解することができたものです。

裁判所が認定した総損害額は2億5900万円であり、ほぼ満額の支払いを受けたことになりました。

 

コメント

①人身傷害保険の扱いは、損保により異なります。

本件では、東京海上日動の人身傷害保険であったので、人身傷害保険から先行取得し、裁判所には、訴訟基準差額説を求めたものです。

 

この仕組みを知らない弁護士が、先に民事訴訟を提起し、判決後に40%の過失相殺分を東京海上に請求していれば、回収できたのは1億円ではなく、せいぜい5000万円となります。

東京海上日動、日新火災、eデザイン、共栄火災、全労済、あいおいニッセイ同和、沖縄の大同火災の

7社は、先行取得でないと、地裁基準を実現することができません。

ところが、損保ジャパン日本興亜、セゾン火災、そんぽ24、楽天損保、セコム、ソニーの6社であれば、判決取得後に請求しても1億円が支払われます。

 

三井住友、三井ダイレクト、AIG、JA共済、アクサ、チューリッヒ、SBIの8社となると、あとでも先でも、支払いとなると、

①とりあえず、当社と協議しましょう?

②協議、調停でも納得できないなら、当社と裁判しましょう?

やたらに面倒で、もう、お話になりません。

 

本件は、弁護士の資質の1つである、幅広い保険約款の知識と経験則が生かされた例です。

 

A自動車を保有していないときは、人身傷害保険の適用は不可能ですが、火災保険に付帯の傷害保険、学校単位で加入している高校生総合保険などに請求することができるかも知れません。

急ぎ、手元の保険証券を確認することです。

当面の治療費などは、治療先に健康保険の適用を願い出て、節約することになります。

 

受傷から1年後に症状固定とし、被告加入の自賠責保険に委任請求による被害者請求とします。

 

等級が認定され、自賠責保険から保険金が振り込まれた後に、相手の損保と協議することになりますが、先の例、2級1号であれば、逸失利益の基礎収入と随時の介護料を恣意的に低く見積もり、過失相殺を実施すれば、自賠責保険からの3000万円を超えないレベルの賠償額が提示されます。

残念ながら、これが損保の常識なのです。

 

詰まるところは、弁護士に委任して地裁に損害賠償請求訴訟を立ち上げることになります。

弁護士が逸失利益の基礎収入や介護料などの立証に成功すれば、既払い金と自賠責保険金を控除して1億2400万円を手にすることができます。

 

人身傷害保険の適用がなく、1億円は泣くことになりますが、損保の常識に押し切られれば、3000万円ですから、もっと大泣きすることになります。

 

Q11.全国対応と費用の問題?

 

A 仲間のチーム110では、高次脳については、全国対応しています。

東京、名古屋、大阪のチーム110が後遺障害の立証を担当し、その後は、連携の経験則を有する弁護士が訴訟対応としています。

 

遠方の弁護士に依頼するとなると、交通費や日当の負担を心配される被害者が多いのですが、交通費で50万円を超えることは、まずありません。

さらに、経験則を有する弁護士が着目し、立証に成功すれば、3倍、5倍の損害賠償額の引き上げは、もはや常識となっており、自信をもって全国対応をしているのです。

 

些末な経費に拘るのではなく、正しい解決をすることが目標なのです。

できるだけ早く、フリーダイアル0120-04-1941で相談してください。

フリーダイアルで概要をつかめたら、交通事故無料相談会に参加してください。

もちろん、セカンドオピニオンを求めることで、構いません。

 

Q12.セカンドオピニオンの重要性?

高次脳5級、併合4級 さいたま地裁・2011年 和解

主婦の53歳女性が横断歩道を歩行中、対向右折車に跳ね飛ばされたもので、高次脳で7級、嗅覚脱失で12級、併合6級が認定されていました。

 

委任している弁護士からは、損保の提示額は6000万円であり、現実に夫が担当している介護については、障害等級が7級であり、将来の介護料は発生しないと説明を受けました。

この方針に納得することができず、セカンドオピニオンを求めて、新たな弁護士に相談したのです。

 

被害者は当初、高次脳7級と認定されていたのですが、夫もこの等級に不満を感じていたので、弁護士は、本人と面談の上、夫や家族からも話を聞いたところ、この被害者には見守り介護が不可欠であり、夫が世話をしなければ基本的な日常生活が営めない状況であることが分かりました。

そこで、高次脳の専門医を紹介、診察を受け、神経心理学的検査を追加し、異議申立を実施、高次脳は7級から5急に上昇し、併合4級となりました。

 

裁判では、日常生活における夫の介護の労苦や見守りによって減収した収入を、陳述書等で緻密に立証することで、裁判所は、日額2,000円の将来介護料、1850万円の調整金も認めました。

 

コメント

医療では、患者が他の医師にセカンドオピニオンを求めることは、通常の常識となっています。

交通事故訴訟で弁護士を選ぶときも、それと同じだと考えてください。

弁護士会でもセカンドオピニオンを求めることは禁止していません。

特に無料相談会はその名の通り、無料です。

 

①認定等級に対する不満?

※自賠責保険調査事務所に対して異議申立を行うのか?

※裁判で上位等級の認定を求めるのか?

 

②依頼している弁護士の進め方に対する不安?

※依頼者の要望を聞いてくれない?

※損害賠償額のみが異常に高く、根拠に乏しい?

 

Q13 .高齢者の高次脳?

 

A 損保は、70歳以上の高齢者で、所得が低く、過失が20%以上のときは、介護料を否定することで、総損害額を自賠責の範囲内に押し込み、自賠責を超えては損害が発生しないと主張する傾向です。

1)74歳男性、高次脳2級、水戸地裁・2012年 和解

農家の74歳男性が横断歩道のない道路を横断中、左方から走行中の自動車に跳ね飛ばされ、 高次脳で2級が認定され、自賠責保険から3000万円の保険金が振り込まれました。

 

損保の主張は、以下の3つ、つまり0回答でした。

①被害者にも20%の過失割合が認められること、

②高齢で、収入が少なく自賠責保険金を超える損害は発生しないこと、

③現況から、将来介護料の必要性はなく、したがって住宅の改造費も必要ないこと、

 

弁護士は、被害者と家族に面談し、被害者には常時介護の必要性が明らかなことを確認し、そこで、民事裁判において、家族が仕事に就いているため、職業介護人が必要であることを主張、裁判所は高次脳2級に対して常時介護を認め、症状固定後3年間は1週間に8万6000円、その後8年間は1週間に11万6000円の将来介護料を認定しました。

過失割合についても20%が10%に下がり、住宅改修費用は610万円、慰謝料では、1級以上に相当する2970万円が認められました。

損保よりは、自賠責の3000万円で終わりと回答された事案でしたが、結果として1260万円の調整金を含む7500万円が上乗せされ、74歳の高次脳被害者としては異例の1億500万円という賠償金を受け取ることができました。

 

コメント

損保が主張する、「高齢者、所得が低く、過失もあるので自賠責保険の範囲内?」

つまり0回答は、昔から繰り返されている古典的な示談の手口です。

したがって、安易な0回答に屈して、早々に示談に応じることは禁物です。

 

低い提示に納得できないとき、介護の必要性があるときは、できるだけ早く、フリーダイアル0120-04-1941で相談してください。

フリーダイアルで概要をつかめたら、交通事故無料相談会に参加してください。

もちろん、セカンドオピニオンを求めることで、構いません。

 

2)82歳女性、高次脳2級1号 紛争処理センター・ 2012年

80歳女性が横断歩道を歩行中、同方向から左折してきた自動車に跳ね飛ばされたもので、脳挫傷などにより高次脳2級が認定されています。

一般に、高次脳2級は、見守りだけの随時介護と判断されることが多いのですが、本件被害者では、高齢もあって、日常生活全般において、声かけ、見守り、介助などを必要としていました。

しかし家庭における仕事の事情があって、自宅での在宅介護は不可能な状況にありました。

 

損保の主張は、例によって、自賠責保険金2370万円のみで、追加分は0回答でした。

家族は施設介護を考えており、将来の介護料について交渉したが、高次脳2級であれば、随時介護であり、1カ月6万5000円が限度との回答がなされていました。

 

本件では、被害者の症状固定時の年齢が82歳と高齢であり、体力的にも時間的にも訴訟に耐えられないことが予想されたので、弁護士は、訴訟ではなく、スピーディーな解決を図るため、あえて紛争処理センターに示談斡旋の申立を行いました。

 

弁護士は、被害者の実情と在宅介護が不可能であることを陳述書で緻密に立証したことで、紛争処理センターの嘱託弁護士は、平均余命期間92歳までの全期間における介護施設介護料、月額42万円、おむつなどの介護消耗品、さらに慰謝料も合わせ、自賠責保険金を除いて4270万円の損害賠償が認められました。

 

コメント

財団法人交通事故紛争処理センターは、嘱託弁護士が対応し、地方裁判所支払基準を適用して示談の斡旋を行う機関で、高等裁判所がある全国の8カ所に設置されています。

弁護士が緻密な立証を行えば、地裁基準で損害賠償額を実現することができます。

ただし、遅延損害金や弁護士費用に該当する和解調整金の支払いはありません。

 

本件では、申立から僅か4カ月間で解決することができました。

①高齢者で、体力的にも時間的にも訴訟に耐えられないことが予想されるとき、

②家族が訴訟ではなく、スピーディーな解決を希望するときは、

紛争処理センターにおける解決も視野に入れなければなりません。

 

Q14 画像所見がなく、意識障害も認められないとき?

 

24歳女性、高次脳7級、併合6級、名古屋地裁・2012年 判決

24歳会社員の女性が、友人の運転するバイクの後部座席に同乗中、対向右折車の衝突を受けたもので、バイクの運転者は即死しています。

被害者は、左手関節機能障害で12級6号、その他の障害を加えて併合11級の認定を受けていましたが、高次脳については、画像所見が得られないこと、意識障害所見もないことを理由として、非該当とされ、前任の弁護士は2回も異議申立を行いましたが却下され、お手上げ状態でした。

 

新たな弁護士に交代したのですが、すでに、事故から7年が経過していました。

すでに、異議申立は2回も却下されており、自賠責保険に対してさらなる申立を断念、裁判所で等級の認定を目指すとした弁護士は、刑事記録と看護記録に着目しました。

刑事記録の交通事故現場見取図では、被害者が事故の衝撃で14メートルも跳ね飛ばされたことが記載されており、それを裏付けるように、被害者には、顔面を含む多発外傷、歯牙脱臼などの傷病名があり、頭部と顔面部に強いダメージを受けたことが予想されるものでした。

さらに、カルテの看護記録には、意識喪失ではないものの、低レベルの意識障害が少なくとも1カ月間は続いたと思われる、看護師と被害者のやりとりの記載がありました。

 

現状の被害者には、人格変化や軽度の失語があり、家族や他人とのコミュニケーション能力が低下しており、それらを明らかにするために専門医を受診、神経心理学的検査を受けました。

裁判では、カルテ分析と専門医の診断書、神経心理学的検査のデータ、専門医の意見書を提出、高次脳を否定する損保側医師の意見書に対抗しました。

結果、裁判所は、本件交通事故と高次脳の因果関係を認め、7級、併合6級を認定しました。

7910万円の損害賠償額約7,910万円の賠償に加え、事故から9年8カ月を経過した遅延損害金として3570万円が支払われました。

 

入り口の3原則

高次脳機能障害と判定されるには、以下の3要件を満たさなければなりません。

①頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること、

②頭部外傷の傷病名が確定診断されていること、

③XP・CT・MRIでダメージの痕跡が確認できること、

 

想定される4つのパターン

意識障害 傷病名 画像所見 高次脳機能障害
1
2 ×
3 ×
4 × × × ×

1であれば、高次脳機能障害の立証に、苦労はありません。

2でも、なんとか頑張って立証に漕ぎ着けます。

3となれば、高次脳機能障害の認定は極めて困難となります。

4は論外で、高次脳機能障害として審査されることはなく、非該当です。

軽度脳損傷、MTBIは4に該当し、高次脳機能障害として評価されていません。

 

本件では、①意識障害所見と③画像所見が立証されておらず、高次脳の障害を残しているものの、事故から7年も経過していて、ほぼ絶望的な状況でした。

 

かねてより、弁護士に求められる資質として、以下の3つを掲げていますが、

①問題を正確に理解するための幅広い知識と経験則

②依頼人から問題点を引き出す対話力、

③勝訴に導く創造力と構成力

本件では、刑事記録や看護記録に着目するなど、担当された弁護士の鋭い感性、高いセンスに敬服しています。

 

一般論として、人命救助を最優先する救命救急の現場では、まず、出血を伴う外傷の治療が優先され、生命にさほど影響しない軽度な脳外傷は放置気味で、結果として高次脳が見逃されることも少なくない現状があります。

 

これらの現状にキレて、治療先に感情を爆発させる被害者や家族もおられます。

そうなると、治療先は敵性証人となり、今後の協力が一切、期待できなくなります。

 

そうなる前に、できるだけ早く、フリーダイアル0120-04-1951で相談してください。

フリーダイアルで概要をつかめたら、交通事故無料相談会に参加してください。

 

もちろん、セカンドオピニオンを求めることで、構いません。

 

Q15 .高校生・大学生の逸失利益?

 

1)高次脳3級、併合1級、東京地裁・2012年 和解

18歳、男性の高校3年生が、自転車で青信号の横断歩道を横断中、信号を無視した自動車の衝突を受けたもので、高次脳で3級3号、右眼の失明で8級1号、併合1級が認定されています。

損保の主張は、以下の2つですが、

①大学に進学しておらず、大卒平均賃金で逸失利益をカウントすべきではないこと、

②高次脳の3級に介護の必要性は認められないこと、

 

弁護士は、本件被害者は、事故後の後遺障害で大学進学を断念したが、事故前に学内推薦を受け、校長面接も行っており、事故がなければ数カ月後には大学進学がほぼ確定していたと主張、裁判所は、損保の主張を退け、大卒平均賃金を基礎収入として逸失利益を認定しました。

 

介護費用については、母親の陳述書などで介護の困難さを緻密に立証することで、将来介護料日額5,000円が認められました。

高次脳3級、右眼失明の被害者に対して、裁判所は3200万円の慰謝料を認めました。

これは、遷延性意識障害の1級と同じレベルになります。

和解調整金も3150万円となり、1億8000万円の損害賠償額となりました。

 

2)高次脳7級、東京地裁・2011年 和解

薬学部に通学する男子、大学2年生が原付バイクで信号機のないT字型交差点を直進中、右方から右折におよんだ相手自動車と出合い頭衝突し、高次脳で7級4号が認定されました。

 

被害者は、薬学部に通う大学2年生で、将来は薬剤師を目指し順調に単位を取得していたのですが、本件事故受傷で、7級4号の高次脳を残し、学習能力と意欲の低下が顕著で、症状固定時には大学4年に進級していたものの、実習の際にはケアレスミスを続発させており、将来、薬剤師という人命を預かる専門職に実際に就くことは困難であることが確実な状況でした。

そこで、弁護士は、薬剤師としての就労が困難であることを丁寧に立証・主張しました。

裁判所は、その主張を取り入れ、22~67歳までの全期間について、大卒の平均賃金を基礎収入とすることを認め、総損害額として7000万円を認定しました。

損保は、ヘルメット着用が不適切で、右直事故の基本的過失が被害者にあるとして50%の過失相殺を主張していたのですが、却下されることを予想して30%に減額する旨の和解提案をしています。

最終的に、裁判所は被害者の過失を20%として和解の提案を行いました。

 

コメント

上記の2つの裁判例でも明らかなように、損保側は、過失は常に被害者に多目、逸失利益の基礎収入では、根拠なく減額して少な目を仕掛けてきます。

 

世間の常識では、そんなバカな! で一刀両断ですが、裁判では、そんな常識は通用しないのです。

裁判は証拠主義ですから、弁護士としては、これらの1つ1つに緻密な立証を行って反論し、裁判官に対して被害者に有利な心証を形成していかなければならないことになります。

そうなると、訴訟では、被害者側の弁護士の方に、圧倒的な負荷が掛かっているのです。

 

損保の主張に対しては、冷静に証拠を積み上げて反論する弁護士を選択しなければなりません。

 

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Q16  障害者自立支援法に基づく公的介護?

高次脳2級、横浜地裁・2010年 和解

34歳の女性会社員が交差点の横断歩道を青信号で横断歩行中、対向右折車に跳ね飛ばされ、高次脳2級が認定されています。

 

受任の時点で、すでに高次脳2級が認定されていたが、弁護士が、被害者の日常や介護の実情などについて聴き取りをしたところ、実際は1級に等しい重度の障害であることが明らかになりました。

そこで、家族の詳細な陳述書をまとめ、ビデオ撮影なども実施して、重度障害を立証したことで、裁判所は、職業介護人として、日額1万5000円、土日祝日は家族介護で日額8000円、総計9400万円の将来介護料を認定しました。

 

損保側からは、公的介護制度を適用すれば、月額4万円の介護料で足りるとの主張がなされたが、

 

①被害者は青信号で横断歩行中の事故であり、なんらの過失も認められないこと、

②それであっても、介護方法の選択を損保側に強制されなければならないのか?

③週5日、自宅には、職業介護人と事理弁識に障害を残す被害者のみであること、

④公的介護制度では、介護人を固定、特定することが困難と言われていること、

⑤マスコミでも取り上げられている不測の事態が生じたときは、誰が責任を持つのか?

④さらに、平均余命までの長期間にわたって制度が存続するかどうかが不確定であること、

 

以上を強く主張することで、裁判所は、損保側の主張を排除しています。

 

コメント

「障害者自立支援法に基づく公的介護を適用すれば、介護費用は1カ月4万円に抑えられる?」

この損保側の主張も、世間の常識とは、大きくかけ離れています。

 

母には、なんら不注意なく、誰のせいで、こんなことになったのか?

公的介護なら月4万円? なぜ一方的に決められてしまうのか?

そもそも、なんで保険屋さんに、そんなことを強制されなければならいのか?

公的介護で、暴力が振るわれる? 家の物がなくなる?

マスコミ報道の事件が起きたら、保険屋さんが、これからも責任とるでしょうか?

 

したがって、被害者側と損保の示談交渉で、こんなことが持ち出されたら、暴力沙汰も覚悟しなければなりません。

そうであっても、裁判では、弁護士が冷静に証拠を積み上げ、1つ1つ反論していくことになります。

 

もう1つの示唆は、高次脳の2級1号について、将来介護料はいくら? この争点です。

損保は、2級であれば見守るだけの随時介護で足りると考えていますから、真に介護が必要であると立証されたときでも、日額2200円、月額6万5000円で十分と考えています。

 

寝たきりの常時介護では、おむつの交換、2時間ごとの体位変換、身体の清拭が介護の中心的なメニューとなりますが、2日に一度は入浴などもあり、これはこれで大変な作業ですが、介護者が事前に計画を立てて、ある程度合理的に進めることができます。

 

ところが、着替え・歯磨き洗顔・食事・入浴の介助や、その後の見守り、看視、声掛け、指示となると、就寝中を除いて、常に、被害者にピッタリと寄り添わなければならず、すべて被害者のペースに合わせることで、介護者には、大きなストレスが掛かります。

したがって、2級という等級に重きを置くのではなく、被害者と家族の実情を正確に把握し、陳述書にまとめ、必要があれば、ビデオ撮影を行って、緻密に立証しなければなりません。

 

実際の立証は、文章で流すほど簡単ではありません。

 

Q17 症状は、いずれ改善する?

 

高次脳1級、横浜地裁・2009年 判決 

68歳男性の会社経営者が原付バイクで直進中、後方からトラックの追突を受けたもので、高次脳で1級が認定されています。

 

①原付バイクにふらつき走行があったので、被害者の過失は30%以上であること、

②確定申告上の収入は、130万円であり、実収入を基礎収入とすべきであること、

③将来介護料は、将来、症状は改善するはずなので、日額8000円で十分であること、

上記の3つは、損保側の主張ですが、③は、根拠も示されておらず、不当主張と思われるものです。

 

過失割合については、原告のふらつきを否定する証拠に乏しく、追突であり過失はないと主張するも、裁判所は、原告に20%の過失割合を認めました。

所得は、税務上、妻や家族に振り分けて申告していた実態があったため、弁護士は、振り分けた所得のすべてが、原告の収入であることを立証し、裁判所は、年齢平均の370万円を認めました。

 

事故後、車椅子生活を余儀なくされた被害者には、高次脳の影響で激しい人格変化があり、日常の介助と介護は、奥様やご家族にとって、非常に困難を伴うものでした。

弁護士は、その困難な状況を家族から聴き取り、陳述書で立証しました。

その結果、裁判所は加害者側の反論を退け、職業介護として、日額2万3000円、土日・祝日の家族介護として、日額8000円を認定しました。

近親者慰謝料400万円、遅延損害金は2500万円、最終損害賠償額は1億1500万円となりました。

 

コメント

もう、なんでもありの世界なのです。

しかし、不当な損保の主張に対して、弁護士は、冷静に、生真面目に証拠を揃えて反論を続けました。

結果、原告の主張が認められ、68歳でも、1億1500万円の高額賠償が実現できたのです。

 

Q18 介護にレスパイト?

 

1)高次脳2級、千葉地裁・2010年 和解

20歳の女子大生が、交差点の横断歩道を歩行中、右方からの自動車に跳ね飛ばされたもので、高次脳として2級1号が認定されています。

事故後、被害者は、開頭術後の頭蓋形成術や顔面の醜状痕の形成術もあり、複数回のオペを繰り返したが、退院後は、意欲の低下、精神的な落ち込みもあり、自殺願望が強く現れていました。

このため、家族は片時も目を離すことができず、大変辛い状況での介護が続いていました。

 

損保は、将来介護料について、被害者の母親は専業主婦なので、67歳までは職業介護人をつけずに計算すべきであると主張したのですが、本件を担当した弁護士は、母親も休息する時間を確保するべきであること、つまり、専業主婦であったとしても、レスパイト※が必要だという主張を行いました。

 

※レスパイト

レスパイト、respiteは小休止を意味しています。

レスパイト‐ケア、respite careとは、介護の必要な高齢者や障害者のいる家族へのさまざまな支援で、家族が介護から解放される時間を作り、心身疲労や共倒れなどを防止することが目的で、デイサービスやショートステイなどのサービスを指しています。

日本では1976年に、心身障害児(者)短期入所事業の名称で、ショートステイとして始まりました。

当初は、ケアを担っている家族の病気や事故、冠婚葬祭などの社会的な事由に利用要件が限定されていましたが、現在は介護疲れといった私的事由でも利用できるようになっています。

 

その結果、裁判所は将来介護料として、1週間の内5日は、母親の介護として日額6000円、残りの2日は、職業介護人、日額1万5000円を認め、総額7300万円の将来介護料を認定しました。

 

逸失利益について損保側は、例によって被害者は事故当時、未就労の大学生であり、基礎収入は大卒女性平均賃金を採用すべきではないと主張しましたが、当然に退けられ、基礎収入は大卒女性平均賃金が採用され、近親者慰謝料600万円、3200万円の調整金を加えて、最終金額1億8000万円の和解解決が実現しました。

 

2)高次脳1級、福岡地裁・2011年 和解

58歳男性が、自動車を運転して信号待ち停車中にトラックが追突し、前方に押し出され、交差点内を走行中の自動車に衝突したもので、高次脳と身体麻痺などで1級1号が認定されました。

 

被害者の長男は、事故で1級障害を負った父親を自宅で介護するため、家を新築し、その一部を介護用に改造しようという計画を立てており、弁護士が相談を受けたときは、マンションを転売し、土地はすでに購入済みの段階でした。

そこで、弁護士は、介護用に改造した部分の立証を緻密に行い、裁判所は、住宅改造費として1300万円を認定しました。

 

裁判所は、将来介護料について、以下の2つを認定しました。

①年間270日間は、職業介護料として日額2万2000円、

②土日、祝日の年間95日間は、家族介護として日額8000円、

 

職業介護と家族介護では、これまでは、240日と125日に分けることが基本でしたが、弁護士は、家族介護者にも休息が必要であるとして、レスパイトを主張したところ、裁判所は、土日プラス祝日をベースに、30日間を介護者の休息日として、この間の職業介護を認めました。

 

コメント

憲法の要請では、介護する側にも人生があり、例え、母親、専業主婦であっても、1人の人間として休息や充電期間は不可欠であるとされています。

本件を担当した弁護士は、交通事故訴訟において、率先して介護者のレスパイトの必要性を主張し続けてこられ、その結果、裁判所も多くの判例でレスパイトを取り入れるようになっています。

 

Q19 将来の介護料のまとめ?

 

(1)介護料は、等級で決まるものではなく、被害者の支障の実態で決まります?

介助・介護メータ

 

日常の生活 3

介助・介護

2

看視・声掛け

1

見守り

0

自立

着替え 3 2 1 0
歯磨き・洗顔 3 2 1 0
食事 3 2 1 0
トイレ 3 2 1 0
入浴 3 2 1 0
服薬 3 2 1 0
1)遂行機能障害 3 2 1 0
2)記憶障害 3 2 1 0
3)失語 3 2 1 0
4)半側空間無視 3 2 1 0
5)地誌的障害 3 2 1 0
6)失行 3 2 1 0
7)失認 3 2 1 0
8)社会的行動障害 3 2 1 0
9)てんかん発作 3 2 1 0
10)尿崩症※ 3 2 1 0
合計

介助・介護メータによる介護レベルの判定

 

スコア 介護レベル
① 18点以上 認定等級に関係なく、常時介護の必要な状態です。
② 10~17点 看視・声掛け、見守りが必要となる重度な介護が必要な状態です。
③ 5~9点 中程度の介護となります。
④ 1~4点 見守りを中心とした軽度な介護となります。
⑤ 0点 介助・介護を必要としないのは、すべてが自立しているときに限られます。

 

例えば、着替えでは、整理タンスから必要な下着を自分でピックアップして着替え、着替えた下着を風呂場の洗濯籠に入れることができれば、自立していることになります。

言わなければ、着替えようとしないのであれば2、手伝わなければ、着替えもできないは3となります。

 

上・下肢に麻痺を残していて、着替え、歯磨き・洗顔、食事、トイレ、入浴すべてに介助が必要なときは、常時介護が必要となります。

 

服薬も、食後、テーブル近くの薬箱から自分で薬を出して内服していれば自立ですが、指摘しない限り内服をしないとなると、看視・声掛けの2となります。

外傷性てんかん、尿崩症では、内服を遵守しなければならず、見守りも神経質でなければなりません。

 

1)~8)の高次脳特有の症状は、支障やエピソードを細かくチェックし、立証することで、具体的な介護料の請求につなげていくのですが、3)失語、8)社会的行動障害の内、人格障害は、ビデオによる立証が便利、かつ、有用となります。

 

高次脳の認定等級が、2級1号、3級3号であっても、スコアが18点以上であれば、その詳細を立証することによって、常時介護料を請求することになります。

 

5級2号であっても、日常生活における支障を立証することで、裁判所は、日額1000円、2000円、3000円、5000円の介護料を認定しています。

上記の介助・介護スコアを利用して、個々の被害者の具体的な支障を立証してください。

 

1)遂行機能障害

2もしくは1に該当します。

生活をする上で必要な情報を整理、計画して処理していく一連の作業が困難になります。

遂行機能障害では、PLAN=計画、DO=実行、SEE=確認が、困難な状態となります。

○指示されたことは、取り掛かるが、自分から、積極的には、なにもしない。

 

例えば、食器を洗って! と指示すると、食器は洗いますが、洗った食器を水切り籠に入れ、布巾で拭いて食器棚に戻すことはできない、つまり、2つ以上のことを同時におこなうことができません。

 

例えば、窓を拭くように指示すると、隣の窓に移ることなく、一貫して同じガラス窓を拭き続ける。

 

○看視・見守り・必要な声掛けがないと、作業ミスや勘違いが連続します。

 

2)記憶障害

レベルによって、3、2、1に該当します。

○5分前に話した内容を忘れるなど、短期記憶力に著しい障害がある。

○買い物を頼んでも、必要なものを買い忘れてしまう。

○物忘れを防ぐためにメモをしていても、メモの存在自体を忘れてしまう。

○約束した日時を記憶できない。

○あちこちに物を置き忘れ、いつも捜し回っている。

○日付・曜日・時間が理解できない。

 

3)失語

レベルによって、3もしくは2に該当します。

○うまく話すことができない。

○同じ言葉を何度も繰返す。

○簡単な単語が出てこない、本が読めない。

○相手の話やテレビで放映している内容は理解できているようでも、自分の意思表示はできない。

○話していることが相手に思うように伝わらず、なん回も繰り返さなければならない。

○こちらの話しは正しく理解しているようであるが、返事が言葉、文章にならず、会話が成立しない。

○鈴や時計の音を聞かせても、なんの音か?理解できない。

聴覚失認とは、聴力は保たれているものの、語音の区別ができない障害です。

 

4)半側空間無視

2もしくは1に該当します。

自分が意識して見ている空間の片側、多くの例で、左側を見落とす障害です。

○食事の際に左側の食べ物を食べ残す。

○ドアを開いて、通過するときに、左側をぶつける。

○車椅子や歩いて廊下を移動していて、だんだん右側に寄っていくなどの状態。

 

5)地誌的障害 

3に該当します。

○自宅近くの商店街に出かけても、道が分からなくなり、一人で自宅に戻れない。

○近所の見取り図を描くように指示してもできない。

○いつも出かける近所のスーパーにたどり着けず、また自宅に帰ってくることもできない。

○地図を描いて渡しても、これを見ながら探すことができない。

○右折もしくは左折した途端、自分がいる場所が分からなくなる。

 

6)失行症

3もしくは2に該当します。

今までできていた行動ができなくなることを失行症といいます。

○手足は普通に動かすことができるのに、意図した動作や指示された動作がどうしてもできない状態となり、靴の紐が結べない、ブラシで髪を梳かす、箸を使って食事ができなくなります。

○リハビリで作業療法を指示されても、動作が緩慢で、なにをやらせるにも大変な時間がかかります。

 

7)失認

3もしくは2に該当します。

失認とは、認知識別能力の障害のことで、具体的には、触覚失認、聴覚失認、視覚失認、身体失認、病態失認の5つに分類することができます。

失認症とは、今まで認識できていたことが、認識できなくなることです。

 

8)社会的行動障害

レベルによって、3もしくは2に該当します。

○対人関係がうまくいかない、良好に維持することができない。

○失語症との関わりがありますが、意思の疎通がうまくできない。

○羞恥心がなくなり、暑ければ、他人の前でも、平気で裸になってしまう。

○易怒性 突然キレて怒り出す。

○人格障害ですが、こだわりが強く、情緒が不安定で、突然、暴力的で他害行為におよぶ。

○お米や醤油、トイレットペーパーなど、自宅にストックされているのに、毎回、大量に購入する。

○カッターで手首を切るなどの、自傷行為、自殺願望。

○理解力の低下が深刻で、意味不明の言葉を口走る。

○手や足を無意味にパタパタ動かし、止めることができない、常動運動に陥る。

○嗅覚の脱失、やかんの空だき、初期の火災に気がつかない。

○排尿・排便障害、

 

9)てんかん発作

3に該当します。

1日に2ないし3回の抗痙攣剤の内服を遵守する必要があり、さらに、抗痙攣剤を内服していても、1カ月に不定期に1、2回の痙攣発作を繰り返しているときは、一人の外出はできません。

 

10)尿崩症

3もしくは2に該当します。

頭部外傷を原因とする中枢性尿崩症では、1日、朝晩の2回、抗利尿ホルモン作用のあるデスモプレシンを点鼻しなければなりません。

これを怠ると、脱水症状により、死に至ることがあります。

 

(2)職業介護と家族介護、そしてレスパイトの導入?

①家族介護と職業介護?

介護する家族が仕事に就いているときは、職業介護人に介護をお願いしなければなりませんが、土日、祝日は家族介護であり、職業介護240日と家族介護125日は、常に2本立てとなっていました。

 

事故当時、専業主婦であっても、近い将来に就労を計画しているときは、その蓋然性が立証できれば、職業介護人の導入が認められています。

 

②介護料?

職業介護人の介護は、地域によってサービスの内容や料金に差があります。

地元の介護サービスを調査し、被害者の支障の状態から、介護サービスの内容を精査して、業者を選定することになります。

 

裁判では、損保側は、症状はいずれ改善するとか、公的介護制度を適用すれば、月額4万円の介護料で足りるなどの乱暴な主張をしてきます。

当然に、どうして、その業者を選んだのかも議論されることになるのです。

 

「原告には、対人関係を良好に維持できない、意思の疎通がうまくできない、羞恥心がなくなり、暑ければ、他人の前でも、平気で裸になること、突然キレて怒り出す易怒性、こだわりが強く、情緒が不安定で、突然、暴力的で他害行為におよぶ人格障害が見られ、それらを理解して、温厚で包容力のある、いつも決まった職業介護人に介護をお願いする必要があったので、ここを選びました。」

など、キッパリと選択した理由を説明しなければなりません。

料金が高いので、良いサービスが受けられると思いました? これでは、笑いものになります。

きめ細かく、配慮しなければなりません。

 

②介護者にレスパイトを?

平成22年以降、介護する側にも人生があり、例え、母親、専業主婦であっても、1人の人間として休息や充電期間は不可欠であるとして、裁判においても、介護人の休息を求める事例が増えてきました。

レスパイトとは、小休止を意味する言葉です。

介護人にも、レスパイトが必要であるとの議論が始まったのです。

その結果、裁判所は将来介護料として、家族介護100%であっても、1週間の内5日は、母親の介護、残りの2日は、職業介護人の導入を認めたのです。

 

もう1つのパターンは、職業介護と家族介護の組み合わせですが、年間270日間は、職業介護料、土日、祝日の年間95日間は、家族介護を認めています。

従来は、職業介護240日と家族介護125日に分けることが基本でしたが、家族介護者にも休息が必要であるとして、レスパイトを主張、裁判所は、土日プラス祝日をベースに30日間を介護者の休息日として、この間の職業介護を認めました。

 

今後、弁護士は、高次脳における将来介護料では、家族介護にレスパイトの概念を取り入れて請求しなければなりません。

 

※中枢性尿崩症(ちゅうすうせいにょうほうしょう)

 

脳の下垂体の後葉からは、抗利尿ホルモン、バソプレシンが分泌され、腎臓に働きかけて水分の再吸収を行い、排泄する尿量を減らしつつ、体内の水分を調節しています。

ところが、頭部外傷、頭蓋底骨折やびまん性軸索損傷により、脳内の下垂体に伝わる神経系を損傷すると、抗利尿ホルモンの分泌が減少し、水分再吸収が行われず、尿を排出し続ける状態となります。

多尿により、喉が乾き、水分を多量に欲する尿崩症が起こるのです。

抗利尿ホルモンの分泌の低下を原因とする尿崩症は、中枢性尿崩症と呼ばれています。

 

検査による立証

泌尿器科で、1日の尿量の測定、尿の濃度を調べる尿浸透圧、血中浸透圧の検査を行ないます。

続いて、水制限試験、水分をまったく摂取しないで尿量、尿浸透圧を調べる試験を行ないます。

また、抗利尿ホルモンを注射して尿量が増加するかどうかも調べます。

1日の尿量が5ℓ以上あり、尿浸透圧が低く、血中浸透圧が高いと尿崩症と確定診断されます。

 

水分をまったく摂取しない状態で尿量が減少すれば、それは精神的な疾患で多飲多尿になったものであり、心因性尿崩症と診断されます。

水分をまったく摂取しない状態でも尿量が減少せず、抗利尿ホルモンを注射すれば尿量が減るときは、中枢性尿崩症であり、尿量が減少しなければ腎性尿崩症と診断されます。

 

治療法

抗利尿ホルモン作用のあるデスモプレシンを付属のチューブで鼻腔内に投与します。。

デスモプレシン点鼻液

 

効果は30分内に現われ、6時間以上続くので、朝起きたときと夜寝る前に用います。

中枢性尿崩症では、脱水症を防止するためにデスモプレシンの点鼻を一生続けることになります。

腎性尿崩症では、水分を十分に摂取することが大切で、逆に、心因性尿崩症では、水分を摂取し過ぎないよう注意しなければなりません。

 

尿崩症における後遺障害のキモ

 

泌尿器科で、1日の尿量の測定、尿の濃度を調べる尿浸透圧、血中浸透圧の検査を行ないます。

1日の尿量が5ℓ以上あり、尿浸透圧が低く、血中浸透圧が高いと尿崩症と確定診断されます。

 

確定診断がなされたときは、11級相当が認定されます。

 

Q20 女性の働く権利?

 

1)高次脳1級、千葉地裁・2004年、判決

女性の働く権利は、憲法で保障されている、

 

19歳女性が、原付バイクを運転して交差点を直進中、対向右折の大型貨物車と衝突したもので、高次脳1級1号と右片麻痺の障害を残しました。

 

被害者には、事故当時1歳の弟がおり、母親は仕事を一時やめて子育てに専念していたが、弟が保育園に入る年齢になれば、元の外資系証券会社の仕事に復帰する予定でした。

 

損保側は、例によって、母親による介護を前提として将来介護料を算出すべきであって、本件では、職業介護人は不要であること、将来の介護雑費も高額過ぎるとの主張をしてきましたが、本件を担当した弁護士は、憲法第13条、14条、25条に明示されている女性の働く権利と母親の職場復帰への思いをシッカリと主張したところ、裁判官は、介護者である母親が就労する機会を損なわないよう、結果的に以下のパターンで将来介護料を認定しました。

 

介護の期間 介護の内容と介護料
①被害者の弟が6歳になるまでの5年間 家族介護で日額8000円
②被害者の弟が7歳から23年間 (家族介護+職業介護)÷2=日額1万800円
③母親が70歳以降の34年間 職業介護 日額1万3600円

 

将来の介護雑費、800万円については、すでに消費しているおむつ代などの消耗品の使用実績に介護ベッド、車椅子などの耐用年数から割り出した買い替え費用を合算したものであり、高額過ぎるとの損保側の主張は排除されました。

過失割合の10%を相殺して、住宅改造費の600万円、遅延損害金の2150万円も認められ、総額2億5000万円の高額判決となりました。

 

コメント

損保側に言わせれば、家族介護なら、高くても日額8000円前後で済みますが、職業介護人となると、高い地域では、日額1万8000円を覚悟しなければなりません。

事故当時、専業主婦であれば、当然のように、母親による介護を前提として将来介護料を算出すべきと主張してきます。

ところが、専業主婦だったから、女性だからといって、被害を受けた子どもや家族の介護に一生涯、専念しなければならない? そんな決まりはありません。

本件では、憲法論が展開され、女性の権利がシッカリと主張されたことにより、裁判所もそれを全面的に認め、母親が将来職場に復帰した後の職業介護を認めたという画期的な判決です。

 

2)高次脳1級、前橋地裁・2004年、判決

事故前から、母親は有職者である、

 

路外の施設に入ろうとしたA自動車と対向直進中のB自動車が出合い頭衝突し、A車に同乗中の19歳男性、大学1年生が、高次脳と四肢体幹麻痺で1級の後遺障害を残したものである。

 

被害者の母親は、パートの塾講師をしており、週に2日は職業介護人の助けが必要であったが、損保側は、将来の介護料は、母親が家族介護をすれば事が足りるので、職業介護人の必要はなく、被害者は事故当時大学生で、卒業できなかったため、逸失利益の基礎収入は大卒平均より下げるべき、また、住宅改造費のうち、バリアフリー化によって家族が受ける利益分を控除すべきであると主張しました。

 

事故以前、塾でパートの講師をしていた母親は、今後も自らが備えている知識や技術を生かした仕事に就き、生徒との触れ合いを通して自己実現を図りたいと考えていた。

そこで、本件を担当した弁護士は、母親の考えを丁寧に説明して、家族介護と職業介護の併用が必要であると主張しました。

結果、裁判所は、母親が67歳になるまでは、日額1万1500円の職業介護を認定しました。

 

逸失利益については、被害者は事故当時、大学1年生でしたが、交友関係や就学状況から、事故がなければ順調に卒業し就業できていたであろうという高度な蓋然性があったことから、年間680万円の大卒平均賃金を基礎収入とする逸失利益、1億900万円を主張、裁判所は、これを認定しました。

 

住宅改造費については、改修工事全体の金額、2200万円の内、被害者の介護生活に必要なバリアフリー化部分1000万円のみを請求したのですが、損保側からは、バリアフリー化により家族が受ける利益分を控除すべきとの反論がなされました。

裁判所は、バリアフリー化により家族が受ける利益は、副次的なものに過ぎないと判示して1000万円を認定しました。

 

損保側の強引な主張は、ことごとく退けられ、後遺症慰謝料は、本人2800万円、家族600万円の合計3400万円が認定され、1200万円の遅延損害金を含めて2億4700万円の高額判決となりました。

 

コメント

先の事案と異なり、本件では、事故前から母親は、パートの塾の講師をしています。

そうであっても、損保側は、パートをやめれば、母親の家族介護で事が足りると主張しています。

被害者が大学を卒業できなくなったのは、本件事故による高次脳と四肢体幹麻痺を原因としていますが、そうであっても、大学を卒業していないとして、大卒平均賃金を基礎収入とすべきでないと主張しているのです。

住宅改造費では、被害者の介護生活に必要なバリアフリー化部分1000万円のみを請求したのですが、バリアフリー化により家族が受ける利益分を控除すべきとの主張を押し通してきました。

本件を担当した弁護士は、大学1年で事故に遭い、高次脳と四肢体幹麻痺で、残る生涯を台無しとしてしまった被害者とその家族の無念さを主張すると共に、各費目に対して緻密な立証を行いました。

その結果、大変高額な賠償が実現できた好事例と思われます。

 

Q21 子どもの高次脳について?

1)高次脳2級、東京地裁・2012年 和解

支援学校・母親の送迎・母親・教員の陳述書

 

8歳、小学校3年の男児が住宅街道路を横断中、右方から走行してきた加害車両に跳ね飛ばされたもので、高次脳2級1号が認定されています。

 

実際の障害は、相当に重く、元の小学校に復学することができず、母親は、家庭での介護のほか、支援学校に通学させるため片道1時間以上かけて送迎をしていました。

 

それであっても、損保側は、高次脳2級では、家族の見守り程度の介護で済むので、介護料は日額3000円で十分と主張しています。

元々の損保基準では、月額6万5000円であり、月額9万円は大盤振る舞いをしたことになります。

 

これに対して、担当の弁護士は、被害者の状態、介護の実態を明らかにして、母親が67歳になるまでは、家族介護として日額6000円、67歳以降は、職業介護として日額1万5000円が必要であると主張し、裁判所は、これを認定しています。

支援学校への送迎交通費700万円、慰謝料については、本人分として2370万円、両親に対して600万円、和解調整金2860万円も認定され、総額1億7000万円が支払われました。

 

2)高次脳3級、併合2級、広島地裁・2009年 和解

子どもの高次脳専門病院・対人保険金1億5000万円

 

父親が運転する大型貨物車に幼児・男の子が同乗中、後方から走行の大型貨物に追突を受けたもので、事故後13年を経過して高次脳で3級3号、複視で12級、併合2級が認定されました。

 

治療は、事故直後から継続されていましたが、小学校に上がっても改善が得られず、地方の主治医は、子どもの高次脳機能障害の知識がなく、結果として放置されていた事案です。

 

相談を受けた弁護士は、現在、被害者が居住している北九州地区で子どもの高次脳の診断ができる専門病院を探したのですが、残念ながら、どの治療先も、子どもは対象外で、受診が不可能でした。

そこで、遠方ですが、首都圏の子どもの障害を専門としている治療先に誘導し、専門医を受診、必要な神経心理学的検査が実施された結果、自賠責調査事務所は、高次脳3級3号を認定しました。

 

相手車は、対人保険金1億5000万円の加入であり、総損害額1億8900万円に届きません。

そこで、加害者には、調停を申し立て、損保からは、1億5000万円の支払いを受けました。

その余の損害賠償は、加害者の勤務先である運送会社を訴えることとしました。

裁判所における協議で、運送会社は1500万円を自社で負担することを提案してきました。

対人保険から1億5000万円、自賠責保険から2400万円、運送会社から1500万円で、総損害額1億8900万円に届いたので、和解による解決となりました。

 

13年間の付添介護料2400万円、将来の介護料5200万円は、上記の総損害額に含まれています。

 

3)高次脳1級、さいたま地裁・2009年 和解

市役所の支援介護人・主治医の意見書・両親、教員、介護人の陳述書

 

9歳、小学校4年生の男児が、信号機のない横断歩道を歩行中、普通乗用車に跳ね飛ばされたもので、高次脳として1級1号が認定されています。

被害者は事故後、市役所が提供した介護人付きで、なんとか小学校に通学していました。

 

横断歩道を歩行中であるのに、損保側は10%の過失相殺を主張してきました。

当然ながら、裁判所は、これを却下しています。

さらに、子どもは障害を負っていても回復する見込みが大きいので、将来介護料は少なくてよいと主張したのですが、担当の弁護士は、回復は困難という担当医の意見書に加えて、両親の陳述書、学校の教師、市役所の介護人から、いかに介護が大変であるかという陳述書を回収し、介護の必要性を丁寧に立証したところ、裁判所は、弁護士が請求している将来の介護料、職業介護は日額1万8000円、家族介護は日額1万円を認定しました。

 

住宅改造費は1000万円、後遺障害慰謝料は、本人分が3000万円、両親が900万円、和解調整金3600万円、既払い金を控除しても2億6000万円が支払われました。

 

4)高次脳3級3号、宇都宮地裁・2008年、和解

子どもの高次脳専門病院・特殊支援学校・専門医の意見書

 

7歳、小学校2年生の男児が自転車で横断歩道を走行中、赤信号を無視した乗用車に跳ね飛ばされたもので、専門の治療先で検査立証を行い、高次脳で3級3号が認定されています。

 

加害者は実刑判決で収監されているのですが、損保側の主張は、以下の傍若無人なものでした。

①男児の認定されるべき等級は、3級ではなく、5級相当と思われる?

②普通学級に通学しており、将来介護料は必要ない?

もっとも、3級が認定されているので、仮に認めるとしても将来介護料は日額800円が妥当である?

③子供は将来的に回復するため、逸失利益も100%でなく70%で十分である。

 

担当の弁護士は、少し遠方ではありましたが、子どもの高次脳の立証に実績のある専門病院を紹介し、専門医の診断により、後遺障害診断書をまとめ、自賠責保険に申請しました。

結果、3級3号が認定され、損害賠償請求訴訟を提起する流れとなりました。

 

「なんとか、普通学級を卒業させたい!」 父親の強い望みがあり、被害者は、普通学級に通学していたのですが、授業についてゆくのが困難な状況があったこと、事故による障害のため、学校内でいじめなどの問題も発生していたことから、専門医の診断と進言を受け入れて、裁判の途中で特殊支援学校に転校しました。

 

弁護士は、専門医から適切な意見書を得て、男児の障害の程度について緻密な立証を行った上で、将来介護料を日額4000円、母親が67歳以降は6000円が必要であると主張しました。

裁判所は損保側の反論をすべて却下し、弁護士が積算した請求額をほぼ認めるかたちで和解を成立させることができたものです。

 

5)高次脳5級2号、東京地裁・2010年 和解

女児の逸失利益の基礎収入に、賃金センサス・全年齢の全労働者平均賃金を適用

 

10歳、小学校4年生の女児が信号機のないT字路を横断中、右方からの直進自動車に跳ね飛ばされ、高次脳5級2号が認定されています。

 

当初は7級4号の認定であり、損保は、7級に基づき、自賠責保険1051万円を含んで1700万円の損害賠償額を提示していました。

しかし、等級、損害賠償額のいずれにも納得できないご両親は、弁護士に相談したのです。

 

弁護士は、子どもの高次脳に特化している治療先を紹介、追加的に神経心理学的テストを受け、専門医の作成した新たな後遺障害診断書を回収、自賠責保険に対して異議申立を行った結果、上位等級5級2号が認定されたので、民事訴訟を提起しました。

 

損保側の主張は、以下の3つです。

①事故発生状況から、飛び出をした女児に30%の過失割合が認められること、

②高次脳5級2号に将来の介護料は発生しないこと。

③逸失利益は、女子の平均賃金を用いるのが相当、

 

弁護士は、刑事記録を精査し、相手の前方不注視や無理な主張を指摘して反論、認めたとしても15%が限度と主張したところ、裁判所は、女児の過失を15%と認定しました。

 

将来介護料については、5級であっても見守りが必要であることを、母親の陳述書で詳しく立証し、裁判所は、近親者介護料として日額5000円を認めました。

女児の逸失利益では、弁護士は、将来の可能性を考慮すると、男女平均賃金480万円を基礎収入とすることが妥当であると主張し、裁判所は、これを追認しました。

結果、15%の過失を相殺しても、自賠責保険を含んで9000万円の損害賠償額を実現できました。

 

コメント

子どもの高次脳について5例を紹介しました。

 

1)最適な治療先について?

成長期にある子どもの高次脳機能障害では、小児科が対応していますが、障害の程度を立証することが大変難しく、高度な専門医でなければ、ほぼ、お手上げ状態となります。

そして、医療が手薄な地方では、子どもの高次脳を診断してもらうことは困難な現状があります。

 

それらの事情から、秋葉事務所も、多くは国立成育医療研究センターを頼ることになります。

これまでに多くの被害者の神経心理学的検査などをお願いしており、実績を挙げています。

(2017年8月の弁護士を対象とした研修会では、こちらの先生に、「子どもの高次脳機能障害について」の講演をお願いしました。)

 

治療先の小児科から紹介状を取りつけ、予約センターで予約の上、総合診療部を受診します。

その後、脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科などを回り、紹介を得て発達評価センターで検査を受けることになります。

 

発達評価センターでは、高次脳機能評価や認知機能評価、全般発達・全般知能の評価、運動機能評価、感覚機能評価、言語評価、パーソナリティに関する評価などを行っています。

 

2)子どもの高次脳、症状固定の時期?

わが子の交通事故では、多くの親は、さらなる回復を強く期待して、症状固定を遅らせ、後遺障害の適正な診断を受ける機会を逸する傾向が認められます。

 

確かに、わが子の障害を認めてしまうのは、苦渋の決断ではありますが、早い段階から専門医による適切な診断を受け、立証作業に入り、医療上の援助を受けることは、子どもにとっても良い結果を得ることができるのです。

 

3)実際の立証では?

成長期の子どもでは、神経心理学的テストの数も少なく、高次脳機能障害のレベルを定量的に評価することが大変困難です。

秋葉事務所では、両親や支援学校の関係者などから、日常生活や学校生活の困難さについて緻密な聞き取りを行い、介護の大変さを陳述書にして立証しています。

 

5歳の男児では、4歳の妹、妹の友達と遊ぶ様子をビデオ撮影し、遊びの中から、異常行動を立証したのですが、これは、先の治療先の専門医より助言をいただいて実施しました。

 

4)損保側の主張?

被害者が成長期の子どもでは、多くの損保は、「子どもは回復する見込みが大きい?」 特段の根拠もなく、そのように主張して、将来介護料や住宅改造費などを大幅に減額してきます。

 

両親は、回復する見込みに期待を抱くのですが、損害賠償上は現実を見極め、実態を積み上げて立証、主張していかなければなりません。

ご両親のご理解が得るまで時間がかかりますが、専門医の協力を得て、冷静な見通しを説明してもらうことにより、問題解決を果たしています。

 

5)義務教育終了までの年少女子の逸失利益、基礎収入?

東京・大阪・名古屋地裁の民事交通部は、幼児・生徒・学生の基礎収入については、原則として、賃金センサスの全産業計・企業規模計・学歴計・男女別全年齢平均賃金を適用すると提言しています。

 

現在も、逸失利益における男女間の格差は先送りとされているのですが、年少女子の死亡逸失利益に限っては、基礎収入を男女計の全労働者平均賃金とし、生活費控除率を45%とすることで調整する方式が定着しつつあります。

 

後遺障害逸失利益については、男女間格差が放置されたままの状態ですが、H14-5-31、大阪地裁は、併合8級が認定された小学校2年生の女児の後遺障害逸失利益について、基礎収入に平成11年賃金センサス・学歴計全年齢の全労働者平均賃金を適用しています。

 

本件事故においても、弁護士は、10歳、小学校4年生の女児の逸失利益で、基礎収入を男女計の全労働者平均賃金を適用して算出し、裁判所は、これを認定しています。

東京・大阪・名古屋地裁の共同提言では、男女間格差の問題は先送りで確定していませんが、弁護士がシッカリ主張して請求することで、男女計の全労働者平均賃金は認められているのです。

 

H27年賃金センサス
基礎年収額 3地裁共同提言 3級3号 男女間格差
男女計 489万2300円 先送り 6016万2000円 ▲719万円
男子学歴計 547万7000円 6735万2000円
女子学歴計 372万7100円 4583万3000円 ▲2151万9000円

 

後遺障害逸失利益の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

被害者:10歳の男児と女児、後遺障害等級:3級3号、労働能力喪失率:100%、

労働能力喪失期間:18~67歳まで49年間、

49年間に対応するライプニッツ係数の計算は、

10~67歳までの57年に対応するライプニッツ係数は18.7605

10~18歳までの8年のライプニッツ係数は6.4632

よって、18.7605-6.4632=12.2973

 

逸失利益の計算式
男女計 489万2300円×100%×12.2973=6016万2000円
男子学歴計 547万7000円×100%×12.2973=6735万2000円
女子学歴計 372万7100円×100%×12.2973=4583万3000円

10歳女児退き粗収入を男女計にすると逸失利益は、6016万2000円となり、男子学歴計と比較すると719万円少ないが、女子学歴計との比較では、1432万9000円多いことになります。

 

Q 年少女子とは、何歳までを言うのでしょうか?

 

A 以下、2つの理由から、義務教育終了までは、この方式を採用することで定着しています。

 

①.高校進学に伴い、将来の進路や職業選択について、ある程度具体化するので、あらゆる職種に就く可能性を前提とした全労働者平均賃金を使う根拠が薄れること、

 

②.高校生では、同年代で既に就職している者もいて、それとのバランスを欠くこと、

 

ただし、高校女子にも全労働者平均賃金を用いた判例もあり、生活費控除率をなん%にするかもあわせて、個別具体的に検討・立証していくことになります。

 

6)ともかく、早期に相談を?

これまでの訴えの効果なのか?

最近では、比較的早期に無料相談会に参加される傾向です。

子どもの高次脳では、6カ月を経過すれば、立証作業に取り掛かっています。

 

できるだけ早く、フリーダイアル0120-04-1951で相談してください。

フリーダイアルで概要をつかめたら、交通事故無料相談会に参加してください。

 

無料相談会には、連携弁護士が参加しています。損害賠償における問題点は、面談して直接相談することをお勧めします。

 

もちろん、まずはセカンドオピニオンを求めることで構いません。

 

幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方法について

 

1)3地裁民事交通部の共同提言

1999年11月、東京・大阪・名古屋の三地裁民事交通部の共同提言による指針を発表しています。

①基礎収入は、原則として、賃金センサスの全産業計・企業規模計・学歴計・男女別全年齢平均賃金とし、ライプニッツ方式で中間利息を控除する方式で算定すること、

②被害者が大学進学を確実視されるときは、大卒の平均賃金の適用ができること、

 

2)男女間格差の問題

男女間格差の問題について、三地裁共同提言では、是正の必要性およびその可否について多くの検討すべき要素があり、直ちに解決することは困難として先送りしています。

 

3)年少女子の死亡逸失利益の算定

H13-3-8、東京地裁判決

河辺義典裁判長は、女子小学生の交通事故死の逸失利益について、従来の女性労働者の平均賃金を適用して算定する方法では、性の違いで差別する側面があり、男女平等の理念に照らして適当でないとして、男女を含めた全労働者の平均賃金で算出することで額を引き上げる判決を示しました。

 

H12-7に奈良地裁葛城支部でも同様の判決があるのですが、全国の見直しには至っておらず、今回の河辺義典判事は交通事故訴訟を専門にあつかう東京地裁民事第27部に所属しており、今回の審理は3人の裁判官の合議で結論を導き出しています。

 

この判例の影響を受けてと予想されるのですが、男女間格差の解消のため、年少女子の死亡逸失利益の算定においては、基礎収入を男女計の全労働者平均賃金とし、生活費控除率を45%とすることで調整する方式が定着しています。

死亡逸失利益の算定に用いる生活費控除率は、男女差別を意識して、独身・主婦・幼児を含む女性は30%、独身・幼児を含む男性は50%と基準化されているのですが、年少女子で基礎収入に全労働者平均賃金を使うときは、男子を上回ることのないように、45%に調整されています。

 

しかしながら、後遺障害逸失利益については、男女間格差の問題が残されたままです。

 

4)新しい判例

H14-5-31、大阪地裁判決 

右第4・5足趾喪失、右第1・3足趾の機能障害、右足荷重困難、歩行時の疼痛などで併合8級の認定を受けた小学校2年生の女児に対して、大阪地方裁判所は、逸失利益算定の基礎収入として、平成11年賃金センサス・学歴計全年齢の全労働者平均賃金を使用し、496万7100円、労働能力喪失率45%、喪失期間を49年間と算定し、2374万4029円を認めました。

 

裁判所は、賃金センサスは、現在就労する労働者の収入に関する限り、現実の労働市場における男女間の賃金格差等の実態を反映したものということができるけれども、就労開始までに相当な期間のある年少者の場合に、これをそのまま当てはめることは、将来の社会状況や労働環境等の変化を無視することになり、交通事故被害者の内、特に年少女子に対し、公平さを欠く結果となりかねない。

 

なぜなら、今日では、雇用機会均等法の施行や労働基準法における女性保護規定の撤廃、あるいは男女共同参画社会基本法の施行など、女性の労働環境を取り巻く法制度がある程度整備され、それに伴って女性の職域、就労形態等が大きく変化しつつあるということができ、現実社会において、男性と同等かそれ以上の能力を発揮し、男性並みの賃金を取得している女性は決して珍しい存在ではなくなってきているからである。

 

本件について検討すると、原告の症状固定時の賃金センサスにおいて、男子労働者の平均賃金と女子労働者のそれとでは、年収にして217万0400円の開きがあるところ、原告が本件事故当時においては6歳、症状固定時には未だ7歳で、小学校2年生に在籍中であり、就労を開始するものと一応見込まれる18歳の年齢に達するまでには約11年間を要し、前記のような社会状況等の変化を踏まえれば、同女が将来男性並みに働き、男性並みの収入を得られる蓋然性は相当程度認められるというべきで

あるから、女子平均賃金をもって基礎収入とするのは損害の公平な分担という見地からして相当であるとはいいがたく、むしろ、年少者の職域や就労形態の多様な可能性を考慮すれば、全労働者の平均賃金をもって逸失利益算定の基礎収入とするのが相当というべきであると判示しています。

 

Q22 事故による自殺と因果関係?

行方不明の文字を消去してください。

高次脳5級、東京高裁・2003年 判決

54歳・女性が自転車で交差点を横断中、対向右折のワゴン車に跳ね飛ばされ、高次脳機能障害の障害を負ったのですが、被害者は、事故から1年2カ月後に自殺しています。

 

加害者側の損保は、事故と自殺の因果関係は認められないとして、被害者死亡による遺族に対する保険金の支払いを拒否していました。

 

本件を担当した弁護士は、診断書、診療報酬明細書、カルテや看護記録を収集し、家族からは、被害者の生前の状態を細かく聴き取り、高次脳の専門医に、

 

①被害者の生前の状態から高次脳機能障害であると認定できるか?

②認定できるとして、なん級のレベルなのか?

 

上記の2つの分析を求め、後に、意見書として回収しました。

 

裁判では、

①まず高次脳機能障害に自殺願望があることを文献上も明らかにするとともに、

②先の意見書から、被害者の高次脳が5級2号であったと主張しました。

結果、裁判所は高次脳と自殺との因果関係を認め、80%、5900万円を支払えと判決しました。

 

交通事故の被害者がその後自殺した場合、加害者側の損保が、事故と死亡との因果関係を認めることはほとんどなく、仮に、これを認めたとしても、せいぜい30%程度がこれまでの上限でした。

今回、因果関係を80%も認めたのは、画期的な判決であり、当時、ネットでも注目されました。

 

最近では、医学論文において、事故で高次脳を負った被害者に、自殺願望が強く現れることが、明らかにされています。

今後、弁護士は、損保の主張に屈することなく、事故と自殺の因果関係について、丁寧な立証を行って、主張しなければなりません。

 

コメント

本件で注目するところは、自殺後に、家族から被害者の状態を聴き取り、書証を収集して、専門医から意見書の回収を行って、裁判所に5級2号を認定させた、本件弁護士の剛腕です。とてもじゃありませんが、並みの弁護士に、できることではありません。

 

もう1つの疑問です。

交通事故では、本件事故と因果関係の認められない疾病などで、被害者が死亡したときは、生きているものとして損害賠償請求ができることになっています。

嘘? 決してフェイクではなく、なんども経験しています。

「事故と関係なく死んでしまえば、なにもかも終わりにされる?」 遺族は、こんなトラウマにおののいているのですが、因果関係のない死亡では、通常の後遺障害事案として損害の積算が行われます。

ただし、高次脳では、将来の介護料を請求することはできません。

将来もなにも、被害者が亡くなっているからです。

さて、自殺もそれに該当するのか、調べても記載がなく、自信がありませんが、仮に死亡として扱うのであれば、因果関係が否定された方が、高額賠償につながることがあるのです。

 

損害の費目 事故との因果関係が× 事故との因果関係が○
慰謝料 149万円 149万円
後遺障害慰謝料 1400万円 死亡慰謝料 2400万円
休業損害 372万7000円 372万7000円
逸失利益 2765万8000円 1936万1000円
葬儀料 0円 150万円
小計 4687万5000円 5007万8000円
認定額 4687万5000円 80% 4006万2400円

議論を単純化して比較するため、以下の前提条件で積算しています。

入院2カ月・通院8カ月で1年後に症状固定、1年後に自殺、

休業損害と逸失利益の基礎収入は、女性の全年齢平均により372万7100円

就労可能年数13年・ライプニッツ係数9.3936、死亡による生活費の控除率30%

 

ポイントは、逸失利益です。

生活費の控除率
家族状況 地方裁判所基準 任意保険基準
一家の支柱で被扶養者1人では 40% 40%
一家の支柱で被扶養者2人以上では 30% 35%
一家の支柱で被扶養者が3人以上では、 30% 30%
女性(独身・主婦・幼児を含む) 30% 被扶養者が0 50%
男性(独身・幼児を含む) 50% 被扶養者が0 50%

後遺障害事案では、生活費の控除はなされませんが、死亡事案では、30~50%の生活費率が、逸失利益から控除されます。

 

Q23 自賠責保険非該当を裁判で5級2号に?

 

高次脳5級2号、東京地裁・2013年 判決

28歳仮枠大工の運転するバイクが4車線道路の第3車線を走行中、第4車線を走行中の相手自動車の急激な車線変更で接触され転倒したもので、自賠責保険では12級13号が認定されたものの、仮枠大工には復帰できない状態が続いていました。

 

高次脳が否定されたのは、最初に救急搬送された治療先の脳神経外科医が高次脳機能障害の経験則に乏しく、画像所見で脳挫傷が確認されているものの、意識障害所見は放置されており、その証明が治療先のカルテからできなかったことを理由としています。

 

弁護士の指示で、専門医を受診し、神経心理学的テストでIQの著しい低下、遂行機能障害や記憶障害を具体的に立証し、意識障害所見は、入院後の被害者の状態を家族や恋人から聴き取って補強し、異議申立を行いましたが、自賠責保険は、高次脳を否定しました。

弁護士は、やむなく関係資料を法廷に証拠提出し、専門医に意見書の作成を依頼し、事故後に結婚した奥様と本人の尋問も行いました。

 

この結果、裁判所は、脳挫傷による高次脳機能障害として5級2号、将来の介護料についても、家族介護で日額2000円を認定しました。

判決で確定した損害額は、なんと、1億950万円でした。

 

コメント

この被害者には、強烈な思い出があります。

事故当時、恋人だった女性と事故後に結婚したのですが、男の子2人に恵まれました。

無料相談会に参加するたびに、子どもの数が増えており、それを私達に見せに連れて来るのです。

まるで「野生のエルザ」です。

秋葉は高次脳の立証と並行して、交通事故が解決するまでとの条件で生活保護申請のサポートを行い、家族は、生活保護で暮らしていたのですが、その頃に東北大震災が起こり、福島の原発がメルトダウンしたのです。

東海地震で浜岡原発がメルトダウンすると東京は死の町となると吹き込んだ私の知らない宗教家に影響され、訴訟提起の直前に、家族全員が忽然と東京から消え失せたのです。

弁護士と秋葉、方々所在を探し回ったのですが、行方が知れません。

 

とうとう、弁護士も辞任することになり、放り投げたも同然だったのですが、紹介元の方から携帯電話かけたら、なんと、反応があったのです。

弁護士と秋葉が毎日のように電話をしていたのですが、一度も出ることはなかったのですが・・

「今、どこにいるの?」

「熊本の阿蘇山の麓です。」

「そこで、なにをしているの?」

「お世話になっているおじさんと一緒に農業をしています。」

色々なやりとりがあったのですが、ともかく、奥様のお母さんにお願いして、熊本空港まで迎えに行ってもらって、被害者家族は、なんとか、東京に戻ったのです。弁護士にも、急いで連絡を入れ、辞任を踏みとどまってもらいました。

高次脳では、被害者に白と黒の思い込みがあって、白と思っている人なら普通に話すのですが、黒では知らん顔、目も合わせないことがあります。

このときは、理由は不明ですが、私が白、弁護士と秋葉は真っ黒の扱いでした。弁護士事務所で打ち合わせをしても、被害者は弁護士と目を合わせません。やんちゃな男の子2人は、机の下に潜って、弁護士の革靴を奪い取って大騒ぎをしています。

現在は、家族揃って、長野県に移住し、地元の農家の支援を受けて無農薬米の栽培をしています。

交通事故無料相談会を甲府で開催したときは、家族揃って、挨拶に来てくれました。長野の田舎に引っ込んで、子どものアトピーが治ったと、エルザの父親らしく誇らしげでした。

 

自賠責への異議申立で、高次脳が非該当であったのに、裁判で5級2号が認定されるという珍しい事案でしたが、初め悪くても、終わり良しで、なんと言っても、連携弁護士の剛腕に頭が下がりました。

 

Q24 減収なしで逸失利益を否定?

 

高次脳7級4号、脊柱の奇形8級2号、併合5級、東京地裁・2011年 和解

公共団体に勤務し、みなし公務員である25歳・男性がバイクで停止中に、相手車の衝突を受けたもので、高次脳で7級4号、脊柱の奇形で8級2号、併合5級が認定されています。

 

損保側は、事故後、復職しており、収入減もないので、逸失利益の積算は必要なしと主張しました。

確かに収入減がないときは、裁判であっても逸失利益が認められることは困難ですが、

担当の弁護士は、

①そもそも専門性が非常に高い職場であること、

②事故後は、勤務先と仲間の厚意で雇用が維持されているに過ぎないこと、

③今後は、公益法人改革の流れで雇用の安定は保障できないこと、

④高次脳により、理解力の低下、地図を読めないなど、日常生活で重大な支障があること、

⑤本人の努力もあって、現在の地位が維持されていること、

⑥脊柱の奇形・変形により疲れやすく、事故前の業務内容には戻れていないこと、

勤務先の陳述書などを提出して、より具体的に、上記を主張した結果、裁判所は、7級相当の逸失利益、5280万円を認定しました。

和解調整金500万円を含め、7500万円の解決となりました。

 

コメント

損保との示談交渉では、逸失利益が等級に相当するかたちで反映されないことが大半です。

本件のように、事故後に減収がなく、とりわけ、高次脳や脊柱の奇形・変形など、目に見えない、目立たない障害では、その傾向が明らかです。

今回も、損保側は、自賠責を超えては逸失利益を認めないと主張してきました。

 

しかし、ここで怯むのではなく、この先将来まで見据えてしっかりと主張し、立証することで、逸失利益も認められ、大きな増額につながることもあるのです。

 

早々に諦めて、弱気な発言を繰り返す弁護士先生では困ります。

 

※みなし公務員

公務員とは異なりますが、業務の性質上、法令により公務に従事する職員とみなされ、刑法その他の罰則の適用などについて公務員に準じる取り扱いを受ける者を言います。

駐車違反を確認している駐車監視員のおじさんも、みなし公務員です。

3000円を渡して、「おっちゃん、お願い見逃して?」 は、収賄罪で捕まります。

 

Q25 修行期間中の年収と逸失利益?

 

高次脳3級3号、東京地裁・2010年 和解

30歳、会社員の男性が、バイクを運転して優先道路を走行中、左方の狭路から飛び出した相手車に跳ね飛ばされ、高次脳3級3号、左下肢短縮障害を併合して1級の後遺障害を負ったものである。

被害者は大学卒業後、一般企業に就職し、大卒平均賃金程度を得ていたものの、事故の約5年前に会社勤めを辞め、有名な蕎麦店で将来の独立を前提に修行を積んでいた。

 

しかし、本件事故による高次脳の影響で人格が変わり、周囲の人に激しい暴力を振るう、また自殺未遂を起こすなど、介護している両親は大変な思いを強いられていました。

 

損保側は、損保の基準では、自賠責保険の後遺障害等級表に基づき、3級3号では、真に介護を要すると認められるときに限り、月額6万5000円を支払うと規定しているのですが、高次脳でも3級3号であれば、高額な将来介護料を必要としないことや、逸失利益の計算は、平均賃金ではなく、事故当時の実収入を基礎収入にすべきであると主張しています。

 

担当の弁護士は、事故後に被害者の人格が変貌したことについて、家族による詳細な陳述書によって、日々の介護の大変さを立証しました。

そうした努力が結実し、裁判所は、日額7000円の高額な将来介護料を認定しました。

逸失利益の基礎収入についても、確かに、事故当時の年収は修行中でもあり、平均賃金を下回った水準でしたが、修行中であった蕎麦店の協力を得て、修行を終えて独立した後の収入状況なども丁寧に立証して反論しています。

結果、裁判所は、事故当時の収入水準を大きく上回る、男子平均賃金を基礎収入として認定しました。3級でありながら、自賠責の保険金を含んで2億円という高額な損害賠償が実現しました。

 

コメント

高次脳機能障害は、外からは見えにくい後遺障害です。

したがって、家族から、実情をシッカリと聴き取り、それを陳述書にまとめることで、裁判所に本人の症状と介護の苦労を認識してもらうことが不可欠なのです。

残念なことに、この努力を怠っている? どう立証していいかが分からない?

弁護士先生も大変に苦慮しているのです。

逸失利益の基礎収入でも、雇い主の協力を得て立証したことで、男子平均賃金を実現しています。

 

高次脳の被害者と家族は、残りの人生をすべて弁護士に預けて戦いに挑んでいるのです。

それを裏切るようなことでは、弁護士の職責を果たしたとは言えません。

弁護士の能力次第で、被害者の人生が左右されてしまいます。

 

Q26 職場復帰と労働能力喪失率

 

1)高次脳7級4号、横浜地裁・2010年 和解

35歳・会社員男性が、ジョギングをしながら通勤中、信号のない交差点を一時停止側から横断しようとしたところ、右方からの普通貨物車が衝突したもので、高次脳機能障害7級が認定されています。

被害者は事故後、なんとか職場復帰を果たしていました。

①職場復帰を果たし仕事を継続しているので、7級ではなく9級相当が妥当である?

②したがって、労働能力喪失率は、もっと低く見積もるべきである?

例によって、損保側の主張です。

「よくも、こんな非道で根拠に乏しい滅茶苦茶な主張がまかり通るものだ!」

これが通常の常識ですが、裁判となると、立証責任は、被害者の弁護士側にあるのです。

損保側には、立証責任がないので、上記のように、言いたい放題がまかり通っているのです。

ですから、被害者側の弁護士選びは、慎重でなければならないのです。

 

担当の弁護士は、被害者とその家族、さらに職場の同僚や上司から詳しく聴き取りを行いました。

①本人は職場復帰したものの、自宅に仕事を持ち帰るなど従来の30~40%増し労働をし、雇用を維持するために相当の努力をしていること、

②それでも、仕事の評価はかなり低下していること、

③職場は、事故の事情をくんで寛大な理解を示してくれていること、

 

弁護士は、これらの厳しい現実を本人と家族の陳述書によって詳細に立証しています。

裁判所は、それらの主張を全面的に認定し、和解案には、「労働能力喪失率を低く認定することには慎重であるべきであろうと思われる。」 つまり、原告の高次脳が就労に影響していることの具体的な文言が明記され、7級での逸失利益が認められ、5000万円の高額な逸失利益を含む、計6800万円の損害賠償額が実現しました。

 

2)高次脳7級4号、名古屋地裁・2011年 和解

24歳、引っ越し会社の運転手をしている男性が、自動車を運転し、矢印信号にしたがって右折中に、信号無視の対向車の出合い頭衝突を受けたもので、高次脳として7級が認定されていました。

損保側の主張は、事故後も仕事に復帰しており、労働能力喪失率は7級の56%ではなく、40%程度でよいというものでした。

 

担当弁護士は、就労復帰の状態を調査し、

①被害者は引っ越し会社の運転者であったが、事故後は、同僚の配慮や協力を得ながら、助手として、なんとか仕事を続けているものであること、

②無欠勤など、本人の努力によって、収入は30%程度の減収にとどまっていたこと、

③高次脳の影響から、ドライバーに復職できないこと、

 

被害者、勤務先の上司、同僚の陳述書をまとめ、上記の3点を主張しました。

この結果、裁判所は、7級に見合う労働能力喪失率56%を認定しました。

 

コメント

自賠責保険の7級4号には、「神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの、つまり、一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの、」 と規定しています。

「タバコ屋の店番程度しかできないものが、7級4号です。」

このように説明されています

 

常識的に考えても、労働能力が、一般人の2分の1以下に低下していれば、高次脳を負った多くの被害者は、職場復帰を果たしたとしても、大変な苦労を強いられており、周囲も迷惑しています。

 

ところが、損保側は、「もっと仕事ができるはずだ?」 と主張し、減額を迫ってくることが多いのです。

キーポイントは、本人の努力と勤務先の理解、そして同僚の援助・協力を陳述書などで、具体的に説明し、現実の過酷さを立証することです。

もちろん、復職している点に付け込んだ損保側の一方的な主張に、屈してはなりません。

 

被害者側の立証では、本人、家族に加え、職場の上司・同僚の陳述書が必要となります。

手抜きでは、立証に成功しません。

 

Q27 個人事業主の年収?

 

高次脳7級、併合6級、横浜地裁・2009年 判決

 

 

44歳、デザイナーの女性が大型バイクで直進中、路外に右折した対向自動車の衝突を受け、高次脳で7級4号、味覚・嗅覚の脱失が12級相当、視野障害で13級、併合6級が認定されました。

被害者は、財団法人交通事故紛争処理センターに示談の斡旋を求め、協議したのですが、7000万円の斡旋額に納得することができず、弁護士に相談したものです。

 

損保側は、逸失利益の基礎収入について、事故発生年に870万円の年収であったが、事故の前年は700万円、前々年が690万円であり、870万円を採用すべきではないこと、

労働能力喪失率は、6級では67%であるが、仕事的には、高次脳だけを反映すべきであり、7級の56%を採用すべきであることなどを主張しています。

 

本件を担当した弁護士は、基礎収入について、被害者の仕事にかける熱意や能力と、この間、増収となった具体的な内容を具体的に立証して反論しました。

裁判所は、その主張を認め、逸失利益、休業損害いずれも、年収870万円を基礎とすべきとし、労働能力喪失率についても視野障害を評価して67%とすべきと認定しました。

 

損保側の主張は、ことごとく却下され、損害賠償額は1億3600万円となり、財団法人交通事故紛争処理センターの提示額7000万円のほぼ倍額が実現できました。
本件のポイント

個人事業主では、景気などの影響を受けやすく、所得に上下が認められる傾向です。

事故前3年間の平均を求めるのは、一見すると公平な評定とも思われますが、担当弁護士は、これに納得することはなく、どうして増収となっているかに迫っています。

被害者の事故前の仕事の内容から、能力と企画が評価されて増収となっているときは、その傾向が翌年も続くと予想されるからで、ここが、並みの弁護士と違うところです。

 

つぎに、財団法人交通事故紛争処理センターです。紛争処理センターでは、嘱託弁護士が無料で対応し、赤本基準で示談の斡旋を行っており、正に、被害者にとっては駆け込み寺の存在です。

しかし、紛争処理センターであっても、被害者には、交渉力が求められているのです。

嘱託弁護士とは、被害者さん依頼の、あなたの利益を代表する弁護士ではないのです。

さらに、嘱託弁護士の当たり外れもあります。

紛争処理センターにおける解決は、決して、万能ではないのです。

  

Q28 被害者に病識がない?

高次脳2級1号、横浜地裁・2010年 和解

友人の運転する自動車の助手席に同乗中の21歳、アルバイトの男性ですが、友人がハンドル操作を誤って路外の電柱に激突、頭部にダメージを負ったもので、高次脳で2級1号が認定されました。

 

被害者は、事故後、人格変化の影響で暴力を振るうなど生活能力をなくしており、仕事を辞めて介護に当たっていた母親や家族の見守りや介護に大きな負担が生じていたが、被害者に病識はなく、なんでも自分でできると思い込んでおり、治療先の医師にも、そのように話し、明るく振る舞っていました。

 

損保側の主張は、事故時にシートベルトを着用していなかった被害者に10%の過失があること、被害者には、それなりの生活能力を有しており、高額な将来介護料の必要性はないことの2点でした。

 

裁判所は、事故時の写真などからシートベルトをしていなかったことだけで、2級1号の後遺障害に結びつかないとして、過失相殺は5%が相当と判示しました。

もっとも、過失相殺分は、人身傷害保険から回収ができています。

 

肝心の将来介護料について、弁護士は、主治医に面談、日常の介護の大変さを具体的に説明するとともに、高次脳機能障害では、本人に病識のないことが多く、実際には、まったくできないことも、できたように話してしまうことが十分ありうることを説明し、後日、主治医に文書照会を行っています。

裁判所には、主治医に対する文書照会を提出すると共に、母親の証人尋問により、被害者の事故後の実態を丁寧に立証しています。

被害者の母親には、就労せざるを得ない経済的事情があり、復職の道を開ける必要から、このことも家族の状況や事情を具体的に立証しました。

 

結果、裁判所は、事故前にはフルタイムで就労していた母親の復職を前提とし、年間240日は職業介護人日額1万4000円、年間125日は家族介護日額8000円、さらに、母親67歳以降では、365日の職業介護日額1万4000円を認定しました。

 

損保側の提示額の2倍以上となる2倍を上回る2億5700万円の損害賠償が実現できました。

 

コメント

①NPO法人の交通事故相談に、時間通りに訪問した被害者が、相談員に、今の民主党政権はなっていないなどの政治論争を仕掛けるありさまで、どんな質問にも淀みなく回答し、それで、相談者さんのどこが高次脳なのか? 相談員も悩んだのですが、その後の立証で2級1号が認定されました。

②両親と同居する温厚で無口な被害者でしたが、自宅では、ワニに噛まれたと救急車を要請するなど、たびたび、家族を困らせており、その後の立証で3級3号が認定されたこともあります。

ムチウチでは、今にも死にそうな訴えが目立つこともありますが、高次脳の被害者は、第三者である私や主治医、言語聴覚士のスタッフには、つとめて冷静に対応し(その辺のプライド・判断力は維持されているようです)、決して、弱味を見せないのです。

これを見過ごしておくと、完成した後遺障害診断書で正しい等級を獲得することは不可能となります。

 

裁判となっても、周囲の補強証拠を固めておかないと、本人尋問で心証形成に大失敗することが予想されるのです。

 

Q29 独り暮らしでも、家事従事者?

 

高次脳3級3号、宇都宮地裁・東京高裁・最高裁・2003年

78歳、高齢の女性が、日没後、交通量の少ない片側二車線道路を横断歩行中、貨物トラックに跳ね飛ばされ、高次脳3級3号、歩行困難などで併合2級が認定されています。

 

損保側の主張は、以下の3つでした。

①信号無視をした被害者側に60%の過失あり。

②高次脳は3級3号であり、将来の介護料は必要がないこと、

③独り暮らしの家事従事者に、休業損害は必要のないこと、

 

一審の宇都宮地裁では、加害者の一方的な供述や、調書の目撃証言が採用され、被害者が赤信号で横断したと認定され、被害者の過失は60%と判断されていました。

 

本件では、信号が何色? これが、過失割合の認定において大きな争点となっていました。

二審の東京高裁では、一審で採用されたであいまいな目撃証言を徹底検証するとともに、目撃者の証人尋問を実施し、事故時、加害者が少なくとも黄色の信号で侵入したことを立証することができました。

さらに、加害者が10カ月近くも無保険の貨物車を乗り回していたことを察知、悪質な運転者の証言には信用性がないことを指摘したところ、東京高裁は、歩行者の過失を15%と認定しました。

 

将来の介護費用は、週5日、8万円の職業介護と日額6000円の家族介護が、平均余命の10年分として3700万円が認定されました。

 

被害者は独り暮らしではあったが、別居中の娘の家に通って家事の手伝いをしていました。

これらの日常生活もしっかりと把握した上で、細かい立証を行ったことで、最高裁では、娘の家事を手伝っている家事従事者として、休業損害が、逸失利益は、平均余命の半分の5年間について、65歳以上平均賃金100%が認められ、後遺障害慰謝料は2級に相当する2400万円、総損害額8200万円が実現しました。

 

コメント

自賠責保険は、他人のために家事をしている事実があれば、家事従事者として、通院実日数×5700円の休業損害を認めています。

家事従事者としての規定であり、男女の区別はなされていません。

俗に、主婦の休業損害と呼ばれていますが、主夫だって、問題はないのです。

地方裁判所支払基準となれば、年収372万7100円で評価され、日額では、1万0200円となります。

 

余談ですが、東京地裁民事27部は、シングルマザーについては、内助の功が認められないとして、主婦の休業損害を認定しない傾向です。

シングルマザーは家計を担う”お父さん”扱いなのです。今時、「内助の功」なんて死語と思っていたのですが・・・理屈は通っているでしょうか。

 

独り暮らしで78歳の高齢者ですが、娘の家に通って家事手伝いをしていました。

ここに目をつけて、休業損害や逸失利益を認めさせたのですから、弁護士としての資質のすべてを完璧に兼ね備えています。

①問題を正確に理解するための幅広い知識と経験則

②依頼人から問題点を引き出す対話力、

③勝訴に導く創造力と構成力

この弁護士の剛腕には、頭が下がります。

 

Q30 高次脳裁判の原点、懲罰的慰謝料、初めての画期的な判決?

 

高次脳2級1号、青森地裁・2001年 判決

60歳、農業に従事し、主婦でもある女性が、原付バイクを運転し、交差点手前を車線変更中のところ、これを追い越そうとした軽トラックが衝突し、高次脳で2級1号、視野障害で2級相当、併合1級が認定されました。

被害者は青森県で農業に従事しながら、主婦業もこなし、姑と夫を介護していました。

 

損保側の主張は、以下の3つで理不尽なものでした。

①青森県の平均賃金は、全国平均に比して20~30%低く、逸失利益もそれに合わせるべき、

②事故の過失は被害者の方に80%と認められること、

③将来介護料は、2級の随時介護であり、家族介護日額5000円もあれば十分であること、

 

本件を担当した弁護士は、事故前の被害者の就労実態を詳しく説明して、逸失利益については、全国平均を採用すべきと主張しました。

これに対して裁判所は、被害者は、家業に主体となって取り組んでいる他、障害を有する夫と姑の介護も一人で担当し、さらに、家事一切を自ら切り盛りしていることが認められるところから、全国平均賃金を採用すべきと判示しました。

 

都道府県別平均年収

ランキング 都道府県 平均年収 ランキング 都道府県 平均年収
1 東京 580 25 富山 424
2 神奈川 525 26 山口 420
3 愛知 518 27 福井 416
4 大阪 498 28 石川 415
5 滋賀 484 29 福島 407
6 京都 474 30 徳島 405
7 兵庫 474 31 北海道 400
8 静岡 468 32 愛媛 398
9 埼玉 468 33 新潟 397
10 千葉 465 34 熊本 386
11 茨城 461 35 大分 380
12 三重 460 36 鳥取 379
13 栃木 454 37 長崎 378
14 奈良 446 38 島根 377
15 広島 446 39 鹿児島 370
16 福岡 443 40 高知 366
17 群馬 441 41 山形 366
18 岡山 440 42 佐賀 362
19 山梨 436 43 青森 352
20 香川 434 44 岩手 350
21 岐阜 432 45 秋田 348
22 和歌山 430 46 宮崎 347
23 長野 429 47 沖縄 333
24 宮城 429 全国平均 469

 

被害者の過失割合については、本人の訴えなどから、加害者が主張の事故態様を検証し直し、被害者の進路変更が主たる事故原因ではなく、加害者の強引な追い越しが本件事故を誘発したと主張、裁判所は、それを認め、被害者過失は5%が相当であると判示しました。

 

慰謝料は、加害者供述する事故発生状況が虚偽であったことが問題とされ、懲罰的慰謝料の意味で、4000万円が認定、住宅改造費は、バリアフリー化と床暖房設備で700万円が認められました。

介護者は被害者の娘と息子でしたが、2人とも就労しており、弁護士は、職業介護人の必要性を主張し、裁判所は、弁護士の主張を認め、平日の240日は、職業介護日額1万5000円、休・祝日の125日は、家族介護日額6000円、合計で3900万円の将来介護料が認定されました。

損保側の提示額は2600万円、判決では5倍の1億2600万円の損害賠償額が実現しました。

 

コメント

この弁護士が、高次脳機能障害など重傷事案に特化して行かれたのは、この事件が切っ掛けとなったのではないかと、話を聞いて、感慨深く感じました。

日本における高次脳機能障害裁判のメルクマールとなる判決です。

 

Q31 非接触事故でびまん性脳損傷?

 

高次脳1級1号、2010年、名古屋地裁・2010年 和解

黄色信号で交差点に進入した自動車が、対向右折バイクと衝突、そのはずみで飛ばされたバイクをとっさに避けようとして、横断歩道上に立っていた歩行者、73歳女性が転倒し、びまん性脳損傷等による高次脳機能障害1級1号、右半身麻痺の障害を残しました。

 

損保側は、非接触事故であり、転倒した過失は被害者側にあって、加害者に責任は認められないと主張したのですが、弁護士は、非接触といえども、被害者が転倒した原因は明らかに第一事故を起こした加害者にあると主張、裁判所は、因果関係ありと判断し、加害者に賠償義務があると判示しました。

 

被害者は、後遺障害のため、独り暮らしが続けられなくなり、遠方に住む長女が引き取って介護をすることになったのですが、弁護士は、それらの事情もしっかりと把握し、緻密な立証を行った結果、職業介護として日額1万8000円、家族介護として日額3000円、総額5700万円の将来介護料が認められ、後遺障害慰謝料2800万円、近親者慰謝料300万円、損害総額1億0900万円の高額賠償を実現することができました。

 

コメント

非接触という特殊な事案であり、相手の損保から因果関係がないとして支払いを拒まれると、被害者側としてはお手上げ状態となります。

本件でも、家族は複数の弁護士に相談をしていたのですが、消極的な回答に悩んでいました。

最後にたどり着いたのが、本件の弁護士であり、結果、過失を逆転させ、和解が実現しました。

担当弁護士の、問題を正確に理解するための幅広い知識と経験則、勝訴に導く創造力と構成力二は、頭が下がります。

 

Q32 ひき逃げと無保険?

1)高次脳1級1号、東京地裁・2008年 和解

主婦兼パートの65歳女性の運転する乗用車が交差点を直進中、赤信号無視の自動車が衝突、頚椎骨折による四肢麻痺、外傷性くも膜下出血などの高次脳で1級1号が認定されました。

寝たきりの要介護状態です。

 

本件事故は、ひき逃げ犯がまだ逮捕されておらず、加害者の自賠責保険と任意保険に損害賠償を請求することができない状態でした。

政府の保障事業から4000万円が支払われたのですが、将来介護費用などを積算すると、十分な賠償額ではなく、そこで、被害者自身の乗用車に自動担保されている無保険車傷害特約に対して、保険金請求訴訟を提起したのです。

 

弁護士は、裁判において、なんの過失もない被害者が、ひき逃げ事故に遭った無念さを強調し、障害の重さ、そして夫や子供たちによる家族介護の苦労を緻密に立証しています。

 

その結果、裁判所は、弁護士の請求に応じ、将来介護料は日額2万円、後遺症慰謝料3000万円、住宅改造940万円、合計1億3600万円を認定、和解が成立しています。

 

2)高次脳3級3号、横浜地裁・2010年 和解

37歳、男性会社員が原付バイクで優先道路を進行中、一時停止の標識がある右方の道路から出てきた自動車の衝突を受け、高次脳で3級3号、聴力障害、嗅覚脱失、咀嚼障害を残しました。

 

加害者は任意保険未加入の無保険であり、資力にも乏しかったので、被害者側の自動車保険の無保険車傷害特約に請求することになりました。

 

損保の主張は、以下の2つです。

①被害者側にも速度違反で25%の過失割合が認められること、

②逸失利益・基礎収入は、被害者の事故直前の収入が低いので、平均賃金を使うべきではないこと、

 

過失割合について、弁護士は、実況見分記録を詳細に検討して工学的な視点から矛盾を指摘、加えて、事故の直前直後の状況を把握していた目撃者からの情報を入手、その上、事故現場の状況を動画で撮影して証拠提出するなど、加害者の供述の不合理性を検証し、この事故は被害者にとって回避しようがなかったということを立証しています。

裁判所は、弁護士の主張を認め、被害者の過失は0と判断しました。

 

被害者は高次脳3級3号の認定であったが、事故後、人格が大きく変わり、両親に対して暴言や暴力を振るうことがしばしば見られたので、家族の日常の苦労を、詳しい陳述書にまとめ、実際に壊された物や暴力を振るわれた痣などの写真を提出することによって明確に立証した結果、将来介護料として日額6000円が認定されました。

本件では被害者の事故直前の収入が低く、将来賃金の算出についても議論となりましたが、結果的に男子平均賃金の80%が基礎収入として認められました。

 

コメント

事故直後、被害者の夫は、複数の弁護士事務所に電話相談をしたのですが、いずれも、「ひき逃げではねえ・・」 の反応で、政府の保障事業に対する被害者請求のアドバイスもなく、無保険車傷害特約に至っては、触れられることもなかったのです。

 

ひき逃げや無保険車との事故では、政府保障事業に請求すれば、自賠責保険と同額の補償を受けることができますが、それは、あくまでも最低限の賠償がなされたに過ぎず、決定的に不足しています。

 

無保険車傷害特約は、1976年1月から、すべての保険屋さんの対人賠償保険に特約として自動担保されています。

①加害者がひき逃げで不明、もしくは任意の自動車保険に未加入であること、

②自動車保険に加入している被害者が死亡または後遺障害を残したとき、

③無保険自動車との交通事故であれば、自動車保険に加入のあなた、配偶者、同居の親族、大学進学などで自宅を離れている別居の未婚の子に適用されます。

④歩行中、自転車やバイクで走行中の交通事故受傷であっても、適用されます。

⑤独り暮らしでも、未婚であれば、実家の車の無保険車傷害特約の適用がなされます。

⑤保険金は2億円で、被害者の不注意は、過失相殺されます。

損保ジャパン日本興亜、セゾン、セコム、ソニー損保の4社は、保険金が無制限となっています。

 

ところが、事故後に損保に相談しても、ハッキリ適用しますから安心してくださいとは言わないのです。

40年以上も前から、使えるとも、使えないとも、口を濁して、逃げに掛かるのです。

そこが、無保険車傷害保険の問題点で、やっと使えることが判明しても、損保の基準で精算されたのでは、損害賠償額が低過ぎて、お話にならないのです。

 

損保は教えてくれないのですが、加害者に対する損害賠償請求訴訟を提起し、確定した判決額もしくは和解額は、無保険車傷害特約から、全額が支払われる可能性があることを承知しておかなければなりません。現在は約款が改定し、判決・和解額ではなく、保険会社基準を限度と決められています。しかし、それでも約款を曲げて、ほとんど判決・和解額を支払ったケースがありました(令和1年7月)。

 

Q33 過失が80%もあるのに裁判?

 

高次脳5級2号、併合4級、前橋地裁・2009年 和解

19歳、会社員男性が、普通乗用車を運転中、信号機のない交差点で普通貨物車と出合い頭衝突し、

高次脳で7級4号、右眼の調節障害で12級、併合6級が認定されていました。

実際の症状はもっと重度なもので、専門医を紹介して受診、異議申立を行い、高次脳で5級2号、併合4級が認定されています。

本件事故では、被害者側に一時停止の標示があり、基本過失割合は80:20となり、自賠責保険も減額される重過失事案でした。

損保側は、被害者過失が大であり、任意一括の対応も行わず、無責を主張しています。

弁護士は、すでに事故から8年が経過しており、実際の症状を積み上げて立証し、遅延損害金を考慮すれば、なんとか1000万円に届くとの見通しを立てたのです。

 

損保は、訴訟を提起した途端、従来の主張を否定し、相手車は運転者の所有車ではなく、第三者の所有する自動車であって、許諾性がないので任意保険は使えないとする無責の主張を展開したのです。

これでは、裁判官の心証は悪くなります。

弁護士は、法廷外で損保に強く抗議、損保もその非を認めることになりました。

立証は被害者側にあるとしても、なんでも主張すれば良いのではありません。

 

裁判所は高次脳5級2号に対して、将来介護料、日額1500円を認定しました。

過失相殺前の総損害額は1億4600万円となり、併合4級では評価できるものでした。

最終的には、過失相殺が行われ、1000万円で和解が成立しています。

 

コメント

被害者過失大、ましてや自賠責保険の重過失減額となると、多くの弁護士の腰は引けてしまいます。

したがって、被害者としても請求を諦めてしまうことがほとんどです。

 

本件の弁護士は、重過失事案であることを知った上で、それでも将来介護料の請求と和解調整金で1000万円に届くと判断し、受任しています。

本来の損害額は、1億4600万円ですから、0:100では、弁護士費用も1400万円にはなります。

立証作業は、過失の大小に関係なく、手間の掛かるものです。

それでも、果敢に挑戦された弁護士の熱意に驚きを感じ、高次脳の締めくくりとして紹介しました。

 

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