自賠責保険と労災、それぞれの等級が食い違うことは、申請前にある程度の予想はしています。それを踏まえた賠償交渉への対策が望まれます。 実は、弁護士からの相談で多いものは、「自賠責が12級、労災が10級なので、異議申立で自賠責も10級になりませんか?」、逆に、「自賠責が7級、労災が9級、労災も審査請求で7級になりませんか?」等々です。もちろん、等級変更の可能性はあります。それは、申請書類に遺漏があったり、労災の顧問医が独断に過ぎたり、いわば、認定基準以外の問題と言えます。まれに、審査側のミスもありますが、極めて少ないものです。多くの場合、認定内容を分析しますと、「それぞれ(食い違いますが)正しいジャッジです」との回答が多くなります。それでも、依頼者さんの納得が得られず、自賠責に再請求、あるいは労災に審査請求を強いられ、その手間と(無駄な時間?)がかかるようです。
秋葉事務所では、そのような無駄を極力排除しています。それは、申請前に「自賠責は○級、労災は○級を予想します。理由は、それぞれ認定基準が違い、かくかくしかじか・・。」さらに、食い違った場合の対策を申請前から進めます。したがって、依頼者さんの困惑や怒りは昂じません。 それでは、最後に「食い違い対策」をまとめてておきます。相談中・依頼中の弁護士他に、私達のような見通しと策が無いと見たら・・早めに見切りをつけるべきと思います。簡単な問題ではないと思います。 (1) 等級の食い違いと賠償交渉の実際
任意保険の多くは、自賠責保険の等級から賠償金を計算します。裁判でも、賠償保険たる自賠責の等級をより参考にします。自賠責保険の認定結果はそれなりに重いのです。ただし、労災の低等級は、相手方の「(自賠責は7級だが)障害は労災に同じく9級では?」と言った反論の材料にされそうです・・・。
裁判では、被害者側がその反論に対する反論の主張を重ねて、まぁ自賠責の等級が優位に進むことが多いものです。つまり、労災の低等級はややマイナス印象から、何より相手の反論を呼ぶことになり、その反論潰しの面倒が生じると言えます。結果の多くは・・慰謝料は自賠責の等級を維持も、労災の低等級の影響以上に個別具体的な審議の結果から、逸失利益が減らされることが多いようです。
逆に、労災が優位等級の場合、被害者側は労災の認定等級をプッシュすることになります。結果は上記に同じく、自賠責の認定等級が有利です。しかし、裁判こそ”個別に具体的に”審議する場ですから、裁判官に対し「実際は自賠責等級を上回る障害である」と、しっかり主張します。決め手は、おそらく事故から数年経過しているであろう現在の症状、治療の継続実績や最新の検査結果など、基本通りに証拠を揃えます。単に「労災は○級でしたから!」程度の主張では、補強的な証拠に留まります。 (2) 自賠責保険の等級で勝ち逃げ?
裁判になると等級が下がりそうな件、相手保険会社が等級の判断を裁判に持ち込もうとする危ないケースがあります。前回の実例にもあったように、症状固定から劇的に回復が進んだケース、自賠責保険の基準が有利に反映し、実状より重いとみられてしまう認定等級などが挙げられます。つまり、裁判含め交渉次第で、自賠責保険の認定等級の維持が困難と思われる件です。この場合、先に保険会社と自賠責保険の等級を基に任意交渉を進め、(多少、妥協しますが)示談を済ませ、その後に労災の申請をかけました(労災・障害給付の時効は5年もあるので)。
「自賠責で勝ち過ぎた」などとは思いませんが、秋葉事務所ではこのパターンもしばしば・・連携弁護士と呼吸を合わせて進めています。高次脳機能障害に限らず、自賠責の認定等級が圧倒的に有利で、裁判の実質審議に耐えられないケース全般に採用する策です。
① ただし、先に示談する際の注意 👉 申請の順番が違うだけで!?(労災編)
② ↑ その解決策 👉 労災が適用できる場合の示談について
①と②の論点こそ重要です。これを知らない先生に任せると・・大損することになります。交通事故の保険請求・賠償請求とは・・本当に難しい論点ばかりですね。
※ なお、裁判になってしまうと、労災・障害給付への申請を急かされることになります。なぜなら、裁判官が賠償金の請求額を決定する上で、労災支給分を控除する必要があるからです。
(3) 人身傷害保険も検討する
もう一つの策です。自身の過失が半分近くあるような事故では、過失減額があります。ガチに相手と争うより、低い保険金額にはなりますが、自賠責保険の等級はそのままとなり、過失減額のない、人身傷害保険への請求で解決することもあります。計算上、有利であることから、過去何度か人身傷害で解決を図っています。
頼んだ弁護士先生には、あらゆる試算をして頂き、ベストな選択をする目が求められるのです。
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さらに、さらに、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、体の麻痺など5感まで、障害が及ぶこともあります。高次脳機能障害の患者さんは、脳外科のみならず、脳神経内科、リハビリ科、整形外科、耳鼻科、眼科、様々な科を受診・治療・検査となるのです。したがって、高次脳機能障害のご依頼では、複数の病院に同行して、各科の検査と評価をせっせと集めます。さらに、ご家族でしかわからない、事故前後の性格や嗜好の変化まで、しっかり文章にしなければなりません。これらを丁寧に集積してから審査に付す必要があるのです。
さて、本題に戻ります。労災の審査と比べてみましょう。
労災では顧問医の診察があります。もちろん、その診察に際し、診断書や画像も当然に提出され、事前・事後に認定等級の検討をします。先に述べたように、自賠責は画像所見でばっさり障害の有無を判断しますが、労災はその性質が”労働者への補償制度”であるところ、本人の訴えや顧問医の診断から、やや画像所見が不明瞭でも、顧問医の判断で認定しています。実際に手首の曲がりが悪いことを、顧問医が診察で確認、あるいは計測することもあります。自賠責は画像を観て「そのような高度な可動域制限が生じるものとは捉え難く・・・」とばっさり否定します。しかし、労災では診察から実状を考慮して頂けるようです。文章審査だけの自賠責と違い、温情を感じるところです。
では、その実例を列挙します。以下の診断名において、自賠責と労災は明暗を分けています。
【1】TFCC損傷の判断 ~ この診断名では、自賠責14級/労災12級は毎度のことです
特別支給金は1~14級まで定額、表を見た方が早いです 👉 
※ 任意保険の1~3級で額の大きい方(右側)は「父母、配偶者、子がいる場合」です。
◆ 近年の増額改定で一つ抜け出していた東海日動さんですが、今年から損Jがトップに・・
(この金額をみると、自賠責保険の(慰謝料+逸失利益=)限度額に近く・・別途に逸失利益を払わない方針でしょうか? 毎度、後遺障害の金額でもめるのです)。
また、高次脳機能障害の方でたまに目にするのは、被害者が目安となる1年が経っても動かず、先に相手保険会社から主治医に医療照会をされて、「後遺障害はない」との言質を取られて、大ピンチの状態からのスタートとなってしまうケースです。まず、保険会社に悪気はないと思います。スケジュール的に「1年後経ったので、そろそろ症状固定を進めるか」、と主治医に働きかけたに過ぎません。一方の医師ですが、軽度の高次脳機能障害は一見わからないものです。主治医ですら後遺症を詳細に把握できないことがあります。とくに急性期治療だけをした医師は、リハビリで転院した昔の患者への関心を失います。手術が成功し、命を助けて、後はリハビリ先へ、その医師の仕事は終わっているのです。転院後の症状の経過など追っていません。何より、完治を目指して治療に努めた医師こそ、後遺症など認めたくない感情も働くはずです。そのような時に、保険会社から医療照会がきた・・・被害者が後遺障害申請へ自ら動かず、保険会社に先を越された形ですが、これも全国で頻発していると思います。
結論、治療を遅滞なく改善に努め、速やかに後遺障害の認定を得て、賠償交渉へ進める、これらを計画的に進めることが被害者の王道と思います。その策定が難しいのであれば、できるだけ早く秋葉へご連絡頂ければと思います。作戦会議は早いに越したことはありません。
タイトルの通り「それは相手保険会社にやらせるべき」と考える被害者さんは、言わば加害者に任せて白紙委任していると言えます。どうしても、被害者意識から「何でもかんでも加害者が負うべき」と考えてしまうのでしょう。それは間違いです。自らの損害を明らかにして主張する=立証こそ、被害者の役目なのです。「立証責任は請求者にあり」、民法でもそうなっています。
被害者さん達にとっては酷なようですが、自ら診断書はじめ書類に責任を持つべきです。人任せではなく、せめて後遺障害診断書だけでも自分で取得し、内容を吟味すべきです。そして、後遺障害の審査に際しては、被害者請求の流れが望ましいと思います。
いつだって、人任せとは責任と権利の放棄と心得るべきです。





