申請する段階まで調査を進めれば、たいてい認定等級が何級であるかはわかります。それは、高次脳機能障害の場合、ほとんど外したことはありません。ところが、本件は5級を想定して作業を進めてきたのですが3級の結果に。認定後は食い違った内容の精査となりました。なぜ、3級に押し上げることができたのか・・。

 また、認定後の問題もありました。今までは、すぐに保険金を振り込んできたものですが、今年から3級以上の精神面での障害は、後見人の設定が必要になったことです。ただし、裁判所の判定は「保佐人」に留まりますので、困ったことになったのです。そのようなイレギュラーはありましたが、これも対応して無事に支払いを受けました。

 残された課題は、認定予想を外した事への検証、新しいルールへの対策・・・つまり、弊所の仕事は結果オーライでは終わらないのです。   自身の過失が大きい事故で困っている被害者さんは多いはずです。  

3級3号:高次脳機能障害(70代男性・埼玉県)

【事案】

自転車で交差点に進入したところ、自動車に衝突される。頭部を強打し、軽度意識障害がある中で救急搬送され、脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、後頭骨骨折の診断が下された。   【問題点】

依頼者の過失が大きく、相手方保険会社からの一括対応が見込めなかったため、健康保険での治療が必須であった。過失や年齢のことも踏まえると、自賠責への請求で終わる可能性が極めて高く、救急搬送先からも早期の転院を迫られていた。   【立証ポイント】

事故2日後にご相談をいただき、今後のプランを説明。その後、弊所での面談を経て、入院先への訪問や医師面談を実施した。医師面談後、ご家族と2手に分かれ、1組はご本人と転院先へ、一方と弊所は市役所へ出向き、健康保険の手続きや破損したベンチ(市管理)の補償手続き等を済ませた。

高次脳機能障害の立証では、画像所見・診断名はクリアしていたが、意識障害が微妙なラインであった。しかし、性格変化や遂行能力、記憶力の低下等が出現していたため、国内最高峰の病院を紹介し、紆余曲折を経てなんとか受診できることとなった。検査の結果、知的機能が全般的に低下しており、中程度の高次脳機能障害であることは立証できたが、家族が一番困っている「幼児退行」については検査で立証することができない。そこで、日々の様子を写真や動画で残していただき、そのデータをUSBに収録し、添付資料として提出した。

こちらとしては、5級が認定されてくれれば勝利ラインと思っていたところ、自賠責窓口会社より「3級3号認定」の連絡があり、一同大喜びだったのだが、ここから思いもよらない事態が発生した。それは、自賠責の規定が変更となり、3級以上の認定では、後見人設定をしなければ自賠責保険金を送金することができないというものだった(事理弁識能力の問題であるため、脳に異常がなければ後見人は関係ないと思われる)。確かに中程度の高次脳機能障害ではあるものの、後見人を選定するほどの状態になく、裁判所の判断は「保佐人」とのこと。そこで、自賠責窓口の担当者に保佐人選定でも保険金を支払ってもらえるよう談判し、保佐人の手続きを進めることとなった。依頼人のご家族は、稀に見る優秀且つ円満だったため、保佐人設定の手続きはスムーズに終了し、保佐人からの再請求によって保険金がすんなり支払われた。

今回は依頼者の過失が大きいため、全てこちら側で行わなければならないという事態はあったものの、初動対応と早期の道筋作りによってご家族から大変感謝される解決となった。

 

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 高次脳機能障害は、周囲からはっきりわかる障害ではないことがあります。些細な能力低下はしばらく観察しなければわかりません。易怒性など性格変化、嗜好の変化、易疲労性などは、ケガをする前の患者に会っていなければ、事故前後の違いはわかりません。このような、前提がありますので、高次脳機能障害の専門医は、家族からの聴き取りなどを経過的に丁寧に行い、障害の診断・評価を進めます。

 しかし、脳外科のお医者さんは、脳血管障害やクモ膜下出血で倒れた患者さんを救うことが仕事です。したがって、脳の出血が止まり、普通に話して歩いている患者さんに対しては、「次は念のため3カ月後に画像を撮りましょう」と、経過観察になります。脳の器質的変化がない限り、障害はないと考えています。お忙しいのか、家族の訴えにも耳を貸しません。高次脳機能障害は、守備範囲を外れるものなのです。

 ところが、一緒に暮らしている家族は違います。退院して戻ってきたお父さんの変化を目の当たりにします。最初は、「大ケガだったからそのダメージのせいで・・」と、徐々に治る期待を持ちますが、お父さんの変化が半年~1年も続く場合、後遺症が残ったと判断して良いと思います。それでも、事故前のお父さんを知らない主医師は、「次は半年後、念のため来て下さい」と、ほとんど治療終了とされます。脳外科医のすべてに、高次脳機能障害の知識が必ずしも備わっていないことを実感します。    現在、担当している高次脳機能障害のご依頼者様から、まさにその例が出現しました。現在の医師に相談しても詮無きこと、さっさと転院させて、専門医に診てもらうよう段取りしました。案の定、専門医は本人に次いで、家族から症状・変化を聴き取り、追加のMRI検査と神経心理学検査の指示をしました。これで、障害の立証と認定のレールに乗せた感があります。他方、一体どれだけの高次脳機能障害の患者さんが見逃されるのか・・不安は尽きません。

 

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 高齢者や障害者、社会的弱者の方が交通事故に遭うと、あらゆる手続きにおいて助力が必要です。ただし、独居者となれば、助けてくれる人は限られます。それが、利害を異にする相手損保さんだった場合、考えるだけも怖いものです。もちろん、良心の元に、立場を超えて、同情的に対応してくれる担当者さんも存在すると思います。でも、本件では、それが幻想であることを痛感しました。

 やはり、立証責任は被害者側にあるのです。被害者が自ら動き、障害の証拠を突きつけるしかないのです。しかし、高次脳機能障害の被害者本人にとって、あまりにも荷が重すぎます。幸い、本件は秋葉まで相談が及びました。交通事故の被害者さんは、社会的弱者が多いのです。まだまだ、助けるべき立場の人がいると思います。声が届くよう、頑張るしかありません。   損保担当者さんに悪意はないと信じたい  

3級3号:高次脳機能障害(60代男性・静岡県)

【事案】

自転車で退勤途上、交差点で自動車と出合い頭衝突したもの。一早く労災治療となっていた。

診断名は、脳挫傷に加え、左頬骨、骨盤の寛骨臼など骨折した。身体の骨折は順調に癒合が進み、14級程度に回復する見込みである一方、高次脳機能障害は必至の件となった。   【問題点】

自転車側に一時停止があり、相当の過失減額から、賠償請求の余地は低い件であった。また、本件被害者さんは、元々の障害があり、1人暮らしの為、ご職場と遠方のご家族の協力が立証作業の生命線となった。

最大の問題は相手損保であった。治療費が労災であることから、相手損保の積極的な介入はないと思われたが、なんと、3か月で症状固定、後遺障害診断書を病院に記載させてしまった。確かに、ご家族はよくわからないままに同意書を差し出していたが、担当者の考え=「障害者は面倒だから早く終わらせよう」としたのか、単に高次脳機能障害の知識(通常、症状固定は1年後)が無かっただけか、いずれにしても、この担当者からすべて取り上げる必要がある。   【立証ポイント】

必要な検査も欠いたまま、わずか3か月後の後遺障害診断書など、破り捨てるしかない。この時点は、骨折の治療でぐったりしたまま退院したばかり、高次脳機能障害の症状が顕在化する前の状態なのです。しかしながら、そこは、丁重に「書類を補充してお返しします」と言って、相保の担当者に書類一式を返して頂いた。

その後、経過的に症状を観察、案の定、3か月後から情動障害を発露、幻聴や幻覚も加わり、以後、進行していった。ついには介護状態となり、施設入居を余儀なくされた。これこそ、高次脳機能障害の症状、そのクライマックスとなった。いつも通り、可能な検査を的を絞って実施、後遺障害診断書は新たに書き直し、すでに書かれた診断書も遡って修正を加えた。症状と事故前後の変化を職場から精密に聴き取り、9か月後、万全に提出書類を揃えた。

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 高齢者の高次脳機能障害・・・それが軽傷であれば、事故後の諸症状は「歳のせい」にされがちです。この点、ご家族がシビアに観察を続け、事故前後の変化を探していく必要があります。なぜなら、1回5~10分の診察が2~3回の主治医に微妙な障害の判断など不可能だからです。

 また、自賠責保険は、「元々の認知症や高齢による衰えを、事故の障害から差し引く」加重障害が大好きです。もちろん、障害の公平な判定の為に欠かせないルールです。それが、障害の実像に迫る場合もありますが、反対に余計な詮索となることもあります。今回は後者を予断、調査事務所の要請に対し、丁寧に回答を続けていきました。

経験がものを言います  

9級10号:高次脳機能障害(80代女性・埼玉県)

【事案】

交差点の横断歩道を横断中、後方よりの右折車に跳ねられ受傷。くも膜下出血、急性硬膜下血腫の診断であったが、意識障害はなく、脳内出血は軽微で済んた。予後も保存療法で、特段の問題は生じなかった。

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 新年、最初の実績投稿とは言え、認定自体は3年前でした。その後、訴訟で解決が昨年の暮れまで伸びましので、ようやくUPする次第です。

 本件は、一人で高次脳、脊髄損傷、上腕神経麻痺の3大障害が重なりました。秋葉にとって、まさに腕の見せどころでした。もちろん、自賠責保険では完全勝利の認定を引き出しました。最終的に、訴訟では実態上の賠償額に留まりましたが、自賠責で先勝することのアドバンテージは発揮できたと思います。訴訟中も弁護士と共に2年半、大変な作業量となりました。

 受傷からおよそ5年、ようやく長く厳しい戦いを終えました。今後、被害者さんとご家族の平穏な日々を願って止みません。

裁判でも弁護士を強力にサポート!  

5級2号:高次脳機能障害+脊髄損傷(50代男性・宮城県)

【事案】

バイクで交差点を直進中、対抗自動車が右折急転回してきた為、衝突してバイクから投げ出された。診断名は、クモ膜下出血、硬膜下血腫、脊髄損傷、顔面骨折、肋骨骨折、血気胸、大腿骨転子部骨折、脛骨・腓骨骨折、さらに右上腕神経引き抜き損傷となった。

当然に高次脳機能障害の懸念があるが、それより、数日後に脳梗塞が頻発され、その原因として椎骨動脈解離を起していた。緊急にコイル塞栓術で動脈解離を防いだが、脳障害が重度化され、左半盲も生じた。また、徐々に体力が回復する中、とくに短期記憶障害と易怒性が目立った。 脊髄損傷は最終的に右半身に麻痺を残すことになった。それ以上に右上腕の神経損傷から、右上肢の可動は完全に失われた。その他は顔面に線状痕が残った。   続きを読む »

 高次脳機能障害における記憶障害のほとんどは「短期記憶障害」です。短期記憶障害とは、今日の日付がわからない、同じ質問を繰り返すなど、直前のことが覚えられない記憶障害です。昔のことを忘れる長期記憶障害とは違います。「私は誰?ここはどこ?」、いわゆる記憶喪失は長期記憶障害の範疇になります。   ○ 長期記憶障害・・・一般的に知られていること(信号は赤で止まる)、当たり前のこと(日曜日は休み)を忘れる。また、自分が通った学校の名前や自分の職業、新婚旅行は何処に行ったかなど、名称や出来事を忘れてしまい、最終的には家族の名前や顔も忘れていくなどの症状がみられます。   ● 短期記憶障害・・・記憶を貯蔵する時間が数十秒から1分程度と短い期間のみ残る記憶を忘れること。さらに、新しいことを覚えにくく、具体的には、今日の日付が分からない、どこに物を置いたか忘れる(いつも探し物をしている)、何度も同じことを聞くなどの症状が見られます。    新しいことが覚えられない、これは正確に言うと記銘力の低下です。記銘力の低下は前向性健忘と重なります。この記銘力障害を短期記憶障害の一つとするか、区別するのか、多くの専門医との面談から、医師によって見解に多少のズレを感じています。高次脳機能障害の立証上、記憶障害の種類・傾向について、被害者を前にしっかり見定める必要があります。   ○ 逆向性健忘・・・障害を受けた時点より、以前の記憶が失われる。よく物語にでてくる記憶喪失の類です。ひどいと、自らの名前、家族も忘れてしまいます。脳外傷による、脳実質への器質的損傷の他、精神的ショックなどでも発症します。この場合は一過性の症状であることも多いようです。   ● 前向性健忘・・・障害を受けた時点より、以後の記憶が失われる。または、障害を受けた以降、数日・数分前の記憶が保てない。これは記銘力障害になります。これらは短期記憶障害の範疇になります。    さて、笑点でおなじみの円楽師匠、先日、脳梗塞から復帰しました。自らの記憶障害を説明しています。師匠の説明から、短期記憶障害、とくに記銘力の低下が読み取れます。

 以下、オリコンニュース様の記事より引用します。これからも円楽師匠のご活躍を祈っています。  

三遊亭円楽、高次脳機能障害を告白 短期記憶に障害も「昔覚えた落語は忘れてない」

 脳梗塞によりリハビリを続けている落語家の三遊亭円楽(72)が11日、東京・永田町の国立演芸場で行われた『8月中席』で高座復帰した。

 出番を終えた円楽が取材も受けた。現在の体調を問われると円楽は「体調はまぁまぁだけど、高次脳機能障害っていうのが。難しいのはよくわからないけど」と短期記憶障害があることを告白した。しかし、落語家として現役であり続ける。「ありがてぇなとおもったのは長期記憶で昔覚えた落語は忘れてないんだよ。それはスゴいなと思った。しゃべっていると、なんとかストーリーで出てくる」と感謝しながら「これなら、まだまだ。みっともない形でもやれる。スタッフも『みっともなくても構わないからやりましょう』と言ってくれる。しがみついてでも」と力強く語っていた。

 板付きで高座に上がった円楽の目には涙が。手ぬぐいで涙をぬぐいながら「みっともなくてもいいから死ぬまでやります」と話す。また「ICUから3度目の帰還」と冗談めかして語ると「みんな歌丸が悪い」と笑わせていた。

 先月19日に所属事務所の公式サイトで高座復帰を報告。「今後は、笑点へのVTR出演、ラジオ出演、紙媒体への出演等から始め、ゆくゆくは遠方への移動や本格的な高座復帰を目指してまいりたいと考えております」と説明し、「高座復帰の第一弾は、8月11日から始まります、国立演芸場の8月中席公演です。復帰と申しましても、満を持しての長講一席とはならず、短時間のよもやま話やごく短い落語から、少しずつ慣らして参ります。お客様におかれましては、どうか『リハビリを見てるんじゃねえ』とお怒りになりませんよう、何卒ご容赦を賜りたく存じます」と伝えていた。

 1月25日に脳梗塞のため入院した円楽は、5月20日に退院していたが、7月放送の日本テレビ系『笑点』(毎週日曜 後5:30)にVTR出演。同月には、五代目圓楽一門のイベント『三遊まつり』にも登場し、元気な姿を見せていた。 円楽は、11日のほか、14日、15日、20日も出演を予定している。  

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(4)MTBIのまとめ    脳外傷の画像所見がなくても、脳損傷はあり得るのか?    意識障害がなくても、脳損傷はあり得るのか?    これら2つの問題は、今もなお、明解な結論が出ていません。

 少なくとも自賠責保険の現状では、画像所見・意識障害がなければ、「脳損傷はない」と判断しています。先の高裁判決も、極めて限定的に、被害者救済の見地から判示したもので、今後、同様の裁判が積み上げられるとしても、「裁判上での認定が増加する」、とは思いません。したがって、「認定基準を変更する」など、しばらくは無いと思います。

 また、一時期のブーム(?)が去って、MTBIの被害者さんが激減しました。MTBIの診断を下す医師は、何故か数人の医師に集中しています。そのお一人が一線から退いたことも影響しているように思います。

 MTBIと診断された被害者さんの相談はそれこそ30人を越えますが、中でも、強烈な印象を受けた2例を紹介しておきます。   ◆ 某被害者団体のAさん

 道路を横断しようとしたとき、前を通り過ぎるタクシーと大腿部がかするように接触し、よろけて転倒、それに気づかないタクシーを怒鳴りながら、走って追いかけ、停車させたとのことです。このような事故発生状況ですが、数日を経過すると、めまい、頭痛、内臓疾患などの不定愁訴が出現し、やはり毎度お馴染みの医師からMTBIと診断されていました。

 明らかに元気そうです。なんでも被害者団体の役員も務めているそうで、自分の障害立証はさて置き、秋葉も団体に参与するよう熱心に勧めてきました。

 

◆ 無料相談会に参加されたBさん

 信号待ち停止中に追突にあった被害者さん、単なるむち打ちのはずが・・・事故受傷から2年を経過して、やはり特定の医師からMTBIと診断されています。医師の指示で受けた拡散テンソル画像で、脳の器質的損傷を立証できたとのことで、鼻息も荒かったのですが、私に言わせれば、その器質的損傷が本件事故に起因したものか、この肝心なポイントは立証できていないのです。

 保険会社にのみならず、方々の医師や弁護士にMTBI被害者と訴えかけますが、相手にされていませんでした。どの医師からも、心療内科の診察を受けるよう指示を受けたそうです。

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 頭部外傷の最後にどうしても触れておかねばならない傷病名です。10年前の弁護士向け研修のレジュメを追記修正の上、再度UPします。また、高次脳機能障害は専門カテゴリーにて取り上げる予定です。

最近、めっきり居なくなったけど・・      頭部に直接の衝撃が加わり、硬膜下・くも膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸索損傷などの脳損傷では、通常、6時間以上の昏睡を含む意識障害が生じ、CT・MRI画像においても、脳の器質的損傷を捉えることができ、これを頭部外傷後の高次脳機能障害と呼んでいます。

 高次脳機能障害については、この13年間におよそ140人の相談受けました。その内、受任して等級認定を得た件は60件に及びます。    高次脳の実績 👉 高次脳機能障害の相談は実績で選んで下さい    自賠責保険における高次脳機能障害の3要件から、以下のように整理できます。   続きを読む »

 寝落ち、皆様もご経験の”お酒を飲んで帰宅してバタンキュー”とは違います。前触れの無い、突然の寝落ちです。     (1)病態・症状    ナルコレプシー(Narcolepsy)とは、日中、突如として眠り込む、寝落ちする睡眠発作です。夢遊病、眠れない等、睡眠障害とは逆の症状です。以下に整理します。   ◆ 睡眠障害(パラソムニア)

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(5)後遺障害のポイント   1、めまい・平衡機能障害の原因である頭蓋骨骨折、とくに側頭骨骨折については、ターゲットCTの撮影で、三半規管や耳石の前庭系が損傷されたことを描出すること、つまり、画像所見が後遺障害の立証の第一歩です。   2、眼科での眼振検査は、画像所見の有無に関わらず、めまいの種別・状態を明らかにできます。   3、あとは、耳鼻咽喉科におけるロンベルグなどの検査で、障害のレベルを明らかにすれば完成です。

(Q)頭部外傷後のめまいについて?(交通事故110番に寄せられた相談例)

 私は21歳ですが、10/1の深夜、原付に乗っていたところ自動車との交通事故で受傷しました。医師の診断書には、外傷性くも膜下出血・脳挫傷・背挫傷とありました。幸い、出血量も少なく、1週間の入院で退院となりました。

 先日までは、支障や異常を感じることはなかったのですが、最近、頻繁にめまいが起きます。1、2分程度でおさまるめまいですが、頻度が高く、横になっているときでも起こります。やはり、ヤバイめまいでしょうか? 事故からまだ日が浅いので少々心配なところです。

 12/12に脳外科への再診が入っていますが、それ以前にでも病院に行くべきでしょうか?ご意見を聞かせてください。   (A)宮尾氏の回答

 ヤバイめまいかどうか? 私では分かりません。やはり、12/12を待たずに、脳外科を受診、めまい症状を訴えてください。脳外科がめまいを扱っていなければ、眼科もしくは耳鼻咽喉科の専門医が紹介されると考えます。専門医による赤外線眼球運動検査等を受け、めまい改善の治療を続けることです。 続きを読む »

 頭蓋骨の骨折も最後です。側頭骨骨折(迷路骨折)を解説します。軽度の亀裂骨折は未経験ですが、弊所の受任例では重傷例に連なりました。当然に緊急手術の対応です。脳実質への損傷もあり、高次脳機能障害も3級~5級の重度な障害を残しています。     (1)病態

 側頭骨は、下のイラストの青線で囲まれた部分、耳の周りにある骨で、脳を保護している頭蓋骨の一部です。側頭骨は、大きくは、上部の鱗状部と下部の錐体部の2つに分類されています。

 交通事故による直接の打撃では、耳介の上の部分、鱗状部の縦方向の亀裂骨折が多く、この部位の縦骨折では、大きな障害を残すことはありません。しかし、後頭部からの衝撃により、錐体部を横方向に骨折すると、内耳や顔面神経を損傷することになり、オペが実施されたとしても、治癒は困難であり、確実に後遺障害を残します。

 側頭骨骨折の内、骨折線が迷路骨包を横切るものは、迷路骨折とも呼ばれています。   (2)症状

 錐体部は、頭蓋の内側に入りこんでいて、中耳や内耳、顔面神経などを保護しています。錐体内部には、内耳・内耳道が走行しており、この部位を骨折すると、感音性難聴やめまいの症状が出現し、また、錐体部を構成する鼓室骨、錐体骨、乳様突起に囲まれた形で中耳があり、外耳道と耳管で外へ通じているのですが、耳小骨の離断や鼓膜の損傷・中耳腔ヘの出血により伝音性難聴をきたすことも十分に予想されます。聞こえが悪いときは、骨折が中耳におよんで、鼓膜が破れ、耳小骨が損傷していることが予想され、耳鳴り、めまいを合併していると、内耳も障害されていることを示唆しています。

 顔面神経は、脳を出てから側頭骨、耳骨の中を走行し、骨から外に出ると、耳下腺の中で眼、鼻、口と唇に向かう3つの枝に分かれて、それぞれの筋肉に分布しています。顔面神経麻痺は、通常、顔面のどちらか半分に起こります。

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(1)病態

 震盪とは、激しく揺れ動かすという意味で、脳震盪は回転加速度による衝撃により揺さぶられると生じると考えられています。画像で損傷部位が特定できない脳損傷は「びまん性」と定義されており、脳震盪は”脳損傷のない”軽度の病態と区別されています。

 交通事故では、歩行者や自転車と自動車の衝突の衝撃で、被害者が気絶したが、ほどなく、むっくり起き上がり、周りが安堵しているイメージです。軽度な脳損傷であっても、脳震盪を繰り返すと、将来、パンチドランカーのようなダメージが出てくることが明らかとなっており、受傷直後は、深刻に対応すべき傷病名です。

 フルフェイスのヘルメットでバイクを運転中、交差点で自動車と出合い頭衝突し、投げ出された被害者に、事故後のCTに画像所見は得られないものの、重篤な見当識障害、記憶障害などの高次脳機能障害が出現し、MRIのT2スターでびまん性軸索損傷、脳表面の広範囲の点状出血が確認され、後遺障害として2級1号が認定されたことも複数回経験しています。脳は、直接的な打撃でも損傷しますが、回転加速度による衝撃により揺さぶられることで損傷します。幼児を執拗に揺さぶって、急性硬膜下血腫で死亡させた幼児虐待例も新聞を騒がせています。脳は、揺さぶりの衝撃に弱いことを覚えておいてください。   (2)症状

 脳震盪では、頭部に加えられた衝撃により脳細胞が一時的に機能を停止したのか、あるいはその一部が損傷されるかして、一過性の意識障害を発症します。症状としては、受傷時の記憶喪失=健忘が起こるため、受傷当時のことを思い出せません。日付や場所、周囲の人のことが分からない見当識障害や意識消失が見られます。大半は、健忘だけが残り、その他の脳の機能異常は認められません。

(3)診断と治療

 6週間程度で脳神経伝達物質の代謝は正常化するので、経過観察だけで正常に回復します。頭痛や嘔吐があれば、安静、点滴、対症療法として鎮痛薬や吐き気止め薬などが処方されます。

 失われていた記憶の一部はもどりますが、怪我をしたときのことは思い出せないのが普通です。ただし、大部分で、その後に記憶障害が後遺症として残ることはありません。

 受傷時に意識障害があったときは、脳震盪が疑われます。頭をぶつけた子どもに対して、医師や看護師は、「すぐ大泣きましたか?」 と質問しています。これは、意識障害の有無を確認しているのです。すぐ泣いて、念のために撮影したCTで出血がなければ、脳震盪自体は心配ありません。

 交通事故で、脳震盪と診断されたが、休まずにラグビーの試合に出場、タックルを受けて気絶した?これは、大変危険で、最初の脳震盪の症状が残っている状態で、再度衝撃を受けたときは、セカンドインパクト症候群を発症し、死に至ることや重篤な後遺障害を残すことが報告されています。   ※セカンドインパクト症候群、SIC

 頭部に外傷や打撲などの衝撃を受け、脳震盪を発症した後、時間が経過しないうちに再び頭部に衝撃を受けることで発生する症状のことで、脳に損傷が生ずるリスクが高まり、より重篤な症状を呈することが報告されています。脳震盪のレベルは、①失神を伴わない軽度、②失神がしばらく続く中等度、③失神が比較的長く続く高度に分け、検証されています。  ① 軽度では、一過性の意識消失で、バランス感覚の消失や見当識障害などを伴い、②③中等度以上では、頭痛が持続し、四肢のしびれ感や吐き気のほか、健忘や記憶障害を伴うことがあります。  アメリカでは、中学の女子サッカー選手に多く脳震盪が見られることで、成人に比べて衝撃の大きいヘディングを10歳以下の選手に禁止することをアメリカサッカー協会が公表しています。また、ラグビー選手が脳震盪となったとき、3週間は試合に復帰せずに様子を見ることをアメリカ神経学会から勧告されています。日本においても、全日本柔道連盟が、脳震盪を起こした柔道選手に対し、2~4週間の練習休止を求めています。脳震盪を起こして頭痛や吐き気などが持続するときは、検査結果で異常が認められなくても、1週間は、安静にして経過観察をすべきです。   (4)後遺障害のポイント

 脳震盪では、2週間以上の安静、スポーツの禁止を守っていれば、後遺障害を残すことはありません。      次回は様々な障害が懸念される・・ ⇒ ⑤ 頭部外傷 頭蓋低骨折  

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 頭部外傷のシリーズにて、てんかんを集中的に取り下げています。脳を原因とするてんかんは「症候性てんかん」の診断名がつきます。交通事故による外的な破壊=高エネルギー外傷からも多くみられます。    最後にまとめ・総論と後遺障害について。 <総論は医療情報のトップサイト、メディカルノート様から引用しました>   (1) 概要

 症候性てんかんとは、腫瘍しゅようや脳出血、脳梗塞などの脳疾患が原因となり生じるてんかんのことを指します。てんかんは、脳の慢性的な病気のひとつであり、脳の神経細胞に異常な電気的興奮が起こることで、けいれんなどのさまざまな発作を繰り返す病気です。

 症候性てんかんは後天的に発症するものが多く、すべての年齢層で生じる可能性があります。特に、近年では高齢者の症候性てんかんが多くなっており、発作時の転倒による骨折などが問題となっています。   (2)原因

 症候性てんかんは、脳の異常によって生じます。小児の場合には、先天性の脳奇形や出産時の低酸素脳症、脳内出血などの障害が原因になり、成人の場合には、脳梗塞や脳内出血、くも膜下出血などの脳血管障害、腫瘍しゅようなどの脳の器質的な病気が原因となります。小児から高齢者まで共通する原因としては、頭部外傷や髄膜炎、脳炎などの感染症が挙げられます。

 これらが原因となって脳に障害が加わると、神経細胞が異常興奮を生じることがあります。その結果、けいれんなどてんかん特有の発作が引き起こされます。    (3)症状

 てんかんには、大脳半球の一部のみに電気的興奮が限局している部分てんかんと、両方の大脳半球に電気的興奮が生じている全般てんかんがあります。症候性てんかんは、部分てんかんがほとんどです。

 脳の異常がある部分によって、生じるてんかんも異なります。それぞれ側頭葉てんかん、前頭葉てんかん、頭頂葉てんかん、後頭葉てんかんと呼びます。側頭葉てんかんと前頭葉てんかんが多いとされています。

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   先の宮尾氏の実例、その詳細と顛末、そして教訓は以下の通りです。てんかんはそれなりに珍しく、相手損保も不慣れです。重傷例では、毎度のことですが、被害者さんは相手損保の対応に唯々諾々ではなく、よくよく考えて自ら判断し動く必要があります。   【宮尾氏の実例】外傷性てんかん2級1号

 この事故は、1995-3、大阪の郊外で発生しました。被害者は39歳の男性です。4トントラックの荷台から運転席後部のはしごを伝って道路に降りる際、通りかかった2トントラックのバックミラーに跳ね上げられ、頭部から路面に落下しました。

 加害者は後日に出頭しましたが、事故現場から逃走、いわゆるひき逃げ事故でした。傷病名は、脳挫傷・急性硬膜下血腫・頭蓋骨陥没骨折で、搬送先の病院でただちに開頭の上、骨片と血腫の除去、硬膜修復術を受けました。さらに、2カ月後に頭蓋骨形成術を行う極めつけの重篤でしたが、順調に回復し1995-6には退院までに漕ぎ着けました。

 通院で左半身不全麻痺の猛烈なリハビリ訓練中の1995-10、最初のてんかん発作を発症したのです。意識喪失・尿失禁を伴う大発作です。この直後から、大阪大学医学部付属病院脳神経外科に転院、再入院となりました。病院では脳神経外科と神経内科が共同で治療に当りましたが、この被害者は症状固定の1999-5までの5年間にわたって苦しみ続けました。

  私が彼を担当したのは、1998-12です。すでに事故から4年が経過していました。損保は、例によって休業損害の内払いを停止し、打ち切り攻勢です。治療は、労災保険の適用を受けていたので、私は労災保険の特別支給金の申請を急ぎました。12月中の支給は間に合いませんでしたが、翌年の1/末に振込みがなされました。特別支給金は、給与の20%に相当する金額です。損保から、休業損害の内払いを受けていても申請すれば支払われる労災保険独自の恩典なのです。しかし請求そのものは、2年で時効が成立するのです。

 この被害者ですが、97、98年分は支給を受けたのですが、95、96年分、金額にして168万円は、時効成立により棒に振ってしまったのです。入院直後に治療先で、「治療費を労災保険の扱いにしてほしい!」 と懇願したのは相手損保です。その手続きを担当したのは、損保から依頼を受けたリサーチ会社です。「知らなかった?」 と言えば、それまでのことですが、大変やるせなくなりました。

 もう一つあります。治療費は、初診の病院が労災保険の扱い、大阪大学医学部付属病院が健康保険の扱い、大阪大学医学部付属病院が指定した被害者の自宅近くの治療先はなんと自由診療の扱いです。どうして、そんなアホなことが?「転勤による担当者間の引き継ぎがうまく機能しなかった?」 相手損保の言い訳です。払わなくてもいい治療費を120万円も支払って、その後に20%の過失相殺を押し付けてきたのです。怒る気力も萎えてしまったのを、はっきりと覚えています。拒否したことは言うまでもありません。

 泥縄の損保でしたが、1999-5、被害者と家族の同意を得て、症状固定を選択しました。被害者も弁護士に依頼し、後遺障害部分について、被害者請求の委任請求を実施したのです。等級認定までに5カ月を要しましたが、結果、2級1号が認められました。自賠責保険で2590万円を受領したのです。

 この傷病の被害者の家族が気をつけなければならないのは、発作の回数にこだわるだけでなく、性格変化・人格低下について日常生活で十分なチェックをすることです。性格変化・人格低下は日常生活の中でよほど注意をしていないと見落としてしまうものなのです。私は仕事で、「小学校2年生程度の知能・情緒」と診断された、被害者の対応をなんども経験していますが、難しい政治や経済も普通に話し、どこから見てもごく普通の一般人が多いのです。なにかの決断に迫られたときに大きな段落に落ち込むとのことですが、分かりやすく表現すれば、なにから、なにまで小学校2年生ではないということです。

 先の被害者は受傷から症状固定までに5年を要しました。てんかん発作を多発しておりましたので、やむを得ないと判断されます。これほどの外傷性てんかんを経験したのは30年間でたったの1回だけですが、発作に至らないものはそれこそ無数に経験しています。一般的に外傷性てんかんの症状固定は遅れがちであるとの印象を強く持っています。特に子どもさんの交通事故では、8年間のフォローも珍しくありません。しかし等級認定基準を理解すれば、賠償上の打ち切りは、もう少し早く持っていくのがポイントです。

 つまり抗痙攣剤の内服は積極的な治療ではないのです。1カ月に1回程度の脳波検査と抗痙攣剤の内服を8年も続けたとしても、脳波が安定すれば、治癒したことになり、後遺障害部分の評価は0円になるのです。交通事故そのものは、加害者の不注意を原因として発生するものが大半です。しかしこうむった被害の回復は、被害者自身の力でつかみ取っていくものです。加害者や損保の対応に憤っているだけでは、何も前に進みはしないのです。私の持論ですが、ここのところは大変重要な示唆を含んでいるのです。

 先の被害者は、2001-5、示談金9000万円で円満解決となりました。自賠分と併せて1億1590万円となりました。これ以外に労災からは月額30万円の障害年金が支給されており、これは一生涯続きます。今後も治療を継続していくのですが、それは労災保険が負担してくれます。てんかん発作の爆弾を抱え、就労のめどは全く立っていませんが、家族4人が生活できる基盤だけは確保できました。      てんかんのまとめ・後遺障害 ⇒ 続きを読む »

 今日から頭部外傷をシリーズで掘り下げます。まずは、脳損傷に結び付く、頭蓋骨骨折から。  

A :陥没骨折  B:線状骨折(亀裂骨折)

 

 頭蓋骨は、身体の他の部位の骨が関節を形成したり、重力に対して体を支えたりしているのとは違って、脳を格納し、脳を守る容器としての役割を果たしています。頭蓋骨骨折は、見過ごすことのできない外傷ですが、すべてが重症化するのでもありません。

 ポイントは、頭蓋骨骨折に伴って、脳損傷を発症しているかどうかにあります。頭蓋骨骨折の衝撃で、脳損傷をきたすことも多発していますが、損傷に至らないこともあり得ます。逆に、頭蓋骨骨折がないときでも、びまん性軸索損傷などの重篤な後遺障害を残すことがあります。ここに立証側の着眼点を置くべきでしょう。

 頭蓋骨骨折には、以下の3つの病態があります。

 ① 線状骨折 ・・・文字通り骨にひびが入る。≒亀裂骨折。

 ② 陥没骨折 ・・・頭蓋骨が内側に凹んでいる骨折

 ③ 頭蓋底骨折 ・・・頭蓋骨の底辺部の骨折    今回は①と②を解説します。 ③ 頭蓋底骨折は、頭部外傷 ⑤ 頭蓋底骨折 Ⅰにて集中解説します。   ① 頭蓋骨線状骨折

 直接的な衝撃で、頭蓋骨に線状のひびが入った状態です。亀裂骨折との診断名を目にすることもあります。頭蓋骨は、脳を守る格納容器であり、線状骨折そのものが、手術の対象になることはありません。しかし、線状骨折するほどの衝撃を受れば、脳に対する影響が大きく問題視されるのです。XP撮影で線状骨折が診断されたときは、頭部CT検査が行われ、脳損傷の有無が確認されています。

 また、深刻な脳障害に至らずとも、頭痛やめまい、諸々の神経症状が残存することがあります。    線状骨折からめまいを発症した実例 👉 続きを読む »

 弊所は、平素から高次脳機能障害を見逃さないよう、頭部外傷のあった被害者さんをよく観察し、慎重に立証作業を進めています。しかし、頭部や脳にに外傷があったとしても、まったく症状がないこともあります。私達は丁寧に、障害が無かったことを確認するまでです。

 一方、審査側である自賠責保険は、平成12年に高次脳機能障害について、いくつか改定をしました。見逃されやすい障害であるからでしょうか、新システムの一環として、「疑わしい案件」については積極的に調査をすることにしました。今までも、頭部外傷の件に対して、数々高次脳審査の打診を受けてきました。「高次脳的な症状はないので、大丈夫ですよ。ご親切にどうも」と回答しています。本件でも数度に渡って打診がありました。

 このような、審査側からの調査打診・・他の障害ではみられません。神経系統の障害、とくに頭部外傷による高次脳機能障害はそれだけ、見逃されやすい障害なのだと思います。

こういうところに自賠責の親切心を感じます  

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(60代男性・埼玉県)

【事案】

自動車にて直進中、右方より信号無視で交差点内に進入してきた車に衝突され負傷。直後から頚腰部痛、両手の痺れ等、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

治療途中に慢性硬膜下血腫が見つかったため、その後のリハビリ頻度が減ってしまった。また、側頭部に裂傷があったが、髪の毛と耳で隠れてしまう箇所であるため、等級認定には結びつかない可能性が高かった。

【立証ポイント】

受傷初期から対応できたため、治療先を整骨院から整形外科に変更していただいた。通院先の医師との折衝や検査依頼等については、弊所のアドバイスに従い独力で進めた。事故から半年後に症状固定とし、スムーズに後遺障害申請が実施できた。

本件は、軽度の意識障害(JCS1桁・健忘もあったが、翌日には意識清明)があったため、自賠責調査事務所から再三にわたって、高次脳機能障害の審査が打診されたが、ご本人にそのような症状が全くなかったため、何度もお断りしてムチウチの審査に絞っていただいた。通院回数は少なかったが、事故態様が「大破」に分類される事案であり、軽度の意識障害もあったことから、何ら問題なく14級認定となった。  

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 久々の神経心理学検査シリーズ! 前記事 👉 高次脳機能障害の立証 3 <神経心理学検査>   佐藤が担当します!    先日、言語聴覚士の方と打合せする機会があったのですが、「高次脳機能障害では、どのような検査がどこまで必要なのか分からなかったので、最初は短時間でできるMMSEとFAB検査を実施しようと思っています。」と言われたことがありました。MMSEは認知症が疑われる患者や入院当初に比較的実施される検査なので、よく目にすると思います。そのため、今回はFAB検査について記載していきます。    FAB検査とは、Frontal Assessment Batteryの略で前頭葉機能検査のことを指します。Frontalは前頭葉、Assessmentは評価、Batteryは総合テストを意味しています。尚、FAB検査は6つの課題で構成されています。それでは順に見ていきましょう。   1.類似性

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 前シリーズもそうでしたが、マニアックな傷病名をどんどん採用、ドラマを盛り上げています。    第3話の患者は、脳腫瘍による相貌失認を抱える女性教師です。相貌失認(そうぼうしつにん)は珍しい症例で、医師を含め脳障害に関わる者でなければ知らないと思います。先日の業務日誌「軽くバズった記事」で、「1冊のメモ帳と相貌失認」の記事へのアクセスが急上昇したことを書きました。その理由はこれっだたのですね。恐らく、多くの視聴者が放送後、検索をしたのでしょう。ドラマは録画して数日後に観ましたので、今になって気づきました。     その記事 👉 1冊のメモ帳と相貌失認     相貌失認については上の記事をご覧下さい。交通事故外傷による脳損傷でこの症状をはっきり示した被害者さんは、かつて1件だけでした。それ以外は兆候があるも、記憶障害の範疇でした。「失認」とは、物体を識別する能力が低下又は失われることです。失認の多くは行動において問題が生じます。簡単に言うと、日常使っていた道具の操作が出来なくなるなど、「失行」につながる症状になります。ひどいとズボンの履き方すら迷ってしまうようです。  相貌とは人の顔や表情を指しますので、顔を識別できないことになります。その”程度”ですが、新しく会った人を覚えられない、知人の顔を忘れるなどは、記憶障害と重なります。失認との区別ですが、家族の顔すら忘れる、「怒っているか、笑っているか」相手の表情が読み取れなくなるなど、極端なケースは相貌失認を疑います。      相貌失認を取り上げたドラマ、映画はいくつかあるようです。注目はその映像化で、障害者からどのように観えているのか、色々と工夫しています。先のキムタクのドラマでは、奥さんや実子の顔を含め、人の顔がすべて仮面に見えていました。実際、このように見えているのかどうか、障害者じゃないと分からないでしょう。ラジエーションハウスでは、顔全体、顔の一部にもやもやしたモザイクをかける映像処理でした。これですと、人の区別や表情の読み取りが困難で、視聴者にとって、障害者の視点がわかり易かったと思います。 続きを読む »

 セカンドシーズンの放送が始まりました。遅ればせながら、録画にて視聴しました。第1回は主人公の五十嵐放射線技師がアメリから帰り、甘春病院に復院から始まります。しかし、病院の院長は灰島院長に代わっており、その経営合理化路線から、遠隔読影(※)に切り替えた為、放射線科医の甘春先生はじめ、かつての技師チームのほとんどが他院へ異動していた状態でした。

※ 遠隔読影・・・CTやMRIなどの医療画像を、通信ネットワークを利用して専門医がいる施設へ送信し、読影・画像診断を行うシステムです。 遠隔読影の導入により、放射線科常勤医がいない病院に、専門医による精度の高い検査結果を迅速に取得できます。アメリカではかなり一般的で、日本では医療過疎地域で拡大しています。

 前院長の大森先生も甘春病院に医師として復帰、その圧力(何故か灰島院長は大森先生に弱い)?により、かつてのチームが再結集することで1話が終了しました。注目は2話です。

 今回の患者はてんかんで苦しむ陸上選手の少年(走太)です。投薬でてんかん発作に対処していましたが、発作の頻度増加から、例によって五十嵐技師が検査を強く訴えます。そこで、2つの検査が実施されます。SPECT検査とファンクショナルMRI(fMRI)です。   スペクト・・・高次脳機能障害の立証 10 ~ 画像:スペクト

fMRI・・・続きを読む »

 今回は、8月31日に行われた自転車の女子個人ロードタイムトライアル(運動機能障害C1~C3)で金メダルを獲得した杉浦 佳子選手を特集したいと思います。因みにですが、杉浦選手は、夏冬を通じて日本パラリンピック史上最年長での金メダリストとなりました。本当におめでとうございます。    杉浦選手は、北里大学薬学部を卒業後、薬剤師として働きながら30代から趣味でトライアスロンを始め、自転車レースにも出場し始めたようです。しかしそこで悲劇が起こります。2016年4月に行われた静岡県修善寺でのロードレースにて転倒(目撃者によると、下り坂で他の選手と接触したため、ハンドルをとられ、前輪がロックされた状態で吹き飛んだようです。)し、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、複数個所(頭蓋骨や右肩)の粉砕骨折という大怪我を負ったのです。

 ご本人が答えたインタビューによると、「意識が戻ったときに目に飛び込んできた光景ははっきり覚えており、ICUから一般病棟に移る途中のエレベーターから出た週間に見えた白い壁。しかし、その映像はすぐに途切れてしまい、次の記憶は看護師さんに本を貸してほしいと言った場面でした。」とのことでした。その看護師さんが持ってきてくれたのは本ではなく雑誌だったらしいのですが、読んでみると漢字が全く読めなかったようです。医師には「高次脳機能障害」と診断され、当初はご家族の顔すら判別できず(相貌失認)、薬剤師として培った薬学の知識も失われたようです。一般の人でも知っているような「ロキソニン」ですら、何の薬か分からなくなっていたと仰っています。  脳の左側にダメージを負ったせいで右半身の一部に麻痺が残り、普段は歩くのに杖が欠かせない状態のようです。麻痺が残った状態で自転車の乗るということだけでもすごいことだと思いますが、記憶障害(どの程度かは分かりませんが、衝撃からいっても7級以上は認定されると思います。)があるにもかかわらず、世界の頂点に立ってしまうというところは驚きです。自転車競技に詳しい訳ではありませんが、杉浦選手が金メダルを獲得した「自転車・ロード女子タイムトライアル」は1周8キロのコースを2周し、そのタイムを争うというルールです。一人一人が等間隔を空けてスタートするため、自分との戦いという面が強いのかなと思います。そのため、16キロの間どこで全力を出すかなど戦略が求められますが、記憶障害+麻痺を抱えた選手が行うということは並大抵の努力ではできないと思います。

 高次脳機能障害の方は、傍から見ると(少し話しただけでは)、障害を負っているようには感じない方がほとんどです。しかし、ご本人やご家族、周りの方がどれだけ大変か、杉浦選手の活躍によって「高次脳機能障害」への理解が少しでも進む社会になることを望んでいます。  

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