今日から頭部外傷をシリーズで掘り下げます。まずは、脳損傷に結び付く、頭蓋骨骨折から。
 

A :陥没骨折  B:線状骨折(亀裂骨折)

 

 頭蓋骨は、身体の他の部位の骨が関節を形成したり、重力に対して体を支えたりしているのとは違って、脳を格納し、脳を守る容器としての役割を果たしています。頭蓋骨骨折は、見過ごすことのできない外傷ですが、すべてが重症化するのでもありません。

 ポイントは、頭蓋骨骨折に伴って、脳損傷を発症しているかどうかにあります。頭蓋骨骨折の衝撃で、脳損傷をきたすことも多発していますが、損傷に至らないこともあり得ます。逆に、頭蓋骨骨折がないときでも、びまん性軸索損傷などの重篤な後遺障害を残すことがあります。ここに立証側の着眼点を置くべきでしょう。

 頭蓋骨骨折には、以下の3つの病態があります。

 ① 線状骨折 ・・・文字通り骨にひびが入る。≒亀裂骨折。

 ② 陥没骨折 ・・・頭蓋骨が内側に凹んでいる骨折

 ③ 頭蓋底骨折 ・・・頭蓋骨の底辺部の骨折
 
 今回は①と②を解説します。 ③ 頭蓋底骨折は、頭部外傷 ⑤ 頭蓋底骨折 Ⅰにて集中解説します。
 
① 頭蓋骨線状骨折

 直接的な衝撃で、頭蓋骨に線状のひびが入った状態です。亀裂骨折との診断名を目にすることもあります。頭蓋骨は、脳を守る格納容器であり、線状骨折そのものが、手術の対象になることはありません。しかし、線状骨折するほどの衝撃を受れば、脳に対する影響が大きく問題視されるのです。XP撮影で線状骨折が診断されたときは、頭部CT検査が行われ、脳損傷の有無が確認されています。

 また、深刻な脳障害に至らずとも、頭痛やめまい、諸々の神経症状が残存することがあります。
 
 線状骨折からめまいを発症した実例 👉 12級13号:頭部外傷後めまい(50代男性・東京都)
 
② 頭蓋骨陥没骨折

 頭部に対する直接的な打撃で、頭蓋骨が内側に陥没する骨折で、線状骨折に比較して重症です。頭蓋骨陥没骨折では、頭蓋骨の内側に髄膜に包まれた脳が存在しており、陥没のレベルに応じて脳に直接に圧迫や損傷を受けます。XP撮影で陥没骨折と診断されたときは、頭部CT検査で脳損傷・脳出血の有無が確認されています。

 内側に陥没した頭蓋骨が、脳に圧迫や損傷を与えているときは、以下のガイドラインにより、陥没骨折整復術が行われます。

○ 1cm以上の陥没

○ 前額部など、審美的に容認しがたい頭蓋骨変形が認められるとき、

○ 硬膜の静脈や静脈洞を圧迫しているとき、

 骨片が3つ以上に分かれると、粉砕骨折と診断されます。


 
 陥没骨折の多くは脳損傷を伴いますが、高次脳機能障害障害となった一例
 👉 3級3号:高次脳機能障害(70代女性・埼玉県)
  
 陥没骨折、粉砕骨折で、頭皮が破れ、骨折部と外界が繋がっている開放性陥没骨折では、12~24時間以内に適切な処置をしないと、感染症の危険性が増大します。
 
 被害者がお子様、あるいは成人であっても、傷病名に頭蓋骨陥没骨折がないとき、事故後の意識障害も軽度であるときは、過剰な心配をすることもありません。治療は、抗痙攣剤の内服と3、6カ月ごとの脳波検査によるチェックが続けられます。
 
・将来、外傷性てんかん発作を発症する可能性があること、

・脳波の安定が得られるまでは、抗痙攣剤を内服し続けなければならないこと、

・この内服が、なん年続くのかは、不明であること、

・内服していても、てんかん発作を起こす可能性のあること、

・抗痙攣剤の内服を続けている期間は、妊娠を避けなければならないこと、
  
 小児科、あるいは脳神経外科の主治医は、予防的に起こりうる可能性のすべてを説明します。今までの経験から、脳に器質的損傷がないケースでのてんかん発作はありませんでした。
  
 次回 👉 頭部外傷 ② 外傷性てんかん
 
 つづく