高齢者の高次脳機能障害・・・それが軽傷であれば、事故後の諸症状は「歳のせい」にされがちです。この点、ご家族がシビアに観察を続け、事故前後の変化を探していく必要があります。なぜなら、1回5~10分の診察が2~3回の主治医に微妙な障害の判断など不可能だからです。

 また、自賠責保険は、「元々の認知症や高齢による衰えを、事故の障害から差し引く」加重障害が大好きです。もちろん、障害の公平な判定の為に欠かせないルールです。それが、障害の実像に迫る場合もありますが、反対に余計な詮索となることもあります。今回は後者を予断、調査事務所の要請に対し、丁寧に回答を続けていきました。

経験がものを言います
 

9級10号:高次脳機能障害(80代女性・埼玉県)

【事案】

交差点の横断歩道を横断中、後方よりの右折車に跳ねられ受傷。くも膜下出血、急性硬膜下血腫の診断であったが、意識障害はなく、脳内出血は軽微で済んた。予後も保存療法で、特段の問題は生じなかった。

【問題点】

事故後から、以前より言葉がでずらい、忘れっぽい、ぼーっとする、疲れやすい(易疲労性)などはあったが、概ね深刻な障害はみられなかった。それでも、ご家族に丁寧に観察を続けて頂き、絞り出すように症状をまとめ、それらを主治医に示して診断書をまとめて頂いた。

また、毎度のことだが、症状は高齢者なので歳相応の衰えとも判断される。とくに、自賠責は事故前の状態を執拗に調べてきた。元々の衰えを事故の症状から差し引く、加重障害の判定を予定しているようだった。半年で症状固定、素早く申請したが、やはり、介護認定の開示の要請がきた。
 
【立証ポイント】

急ぎ、要支援となった介護保険の認定資料を開示して提出した。認定まで6か月かかったが、無事に加重障害で差し引かれることなく、9級の判定となった。

結果的には、”高齢者の後遺症に対して、事故受傷と関係のない衰えの関与を排除した” 慎重な審査だったと評価できる。