真性の腱板損傷:後遺障害10級レベルの立証

 本件では可能性が極めて低いのですが、もし、事故受傷による棘上筋断裂であれば、肩の専門医の診断を乞います。肩関節の1/2制限など、本来、手術が適用される重度損傷です。

 秋葉事務所が指定した専門医のもと、すでにMRI撮影済みでも再度3.0テスラMRI検査、あるいはエコー検査を重ね、専門医の診断(書)と検査所見を完備します。

 それまで通院した小池クリニックの診断や、精度の低いMRIは、あくまで治療経過を辿るものとして補強的な医証へ下げます。そして、間違いのない10級、あるいは12級レベルの医証を固めてから弁護士につなぎます。

 具体的には、専門医の診断書とMRI・エコー画像に、治療経過としての診断書・MRIを揃え、説得力のある受傷機転の説明を加え、可動域制限を裏付けるリハビリ記録、手術を検討するカルテの記述など、あらゆる証拠を収集します。これは、ある意味、審査側をも助ける作業になるはずです。

 

陳旧性の腱板損傷:現実的戦略と回復努力

 被害者さんの受傷機転と直後の治療経緯から 、恐らく陳旧性の病変と予測できた場合。被害者さんのスポーツ歴、職歴を尋ね、確信を得たら、元々事故前から肩に変性があったと説明、枝野さんの理解を促します。

 ここでもし本当に肩関節の可動域に2分の1制限があったとしても、10級を主張すれば詐病者扱いになる場合があるのです。

 肩関節:外転80°の計測記録でも・・・最悪、「非該当」の結果が返ってきます。自賠責の怒りを買った結果です。可動域の数値通りに肩関節の障害とみてくれません。

 そんな、無謀な申請は敬遠させます。先日の説明通り、自賠責の視点を知っているからです。受傷後の肩関節の痛みから、あまり動かさずにいた為に関節拘縮が進んだ場合であれば、専門医へお連れして、理学療法を工夫して継続、可動域の回復へ向かわせます。お金を取ることだけが秋葉事務所の仕事ではありません。

 このように、被害者さんに現実的な等級認定・解決への理解と、回復への努力を促します。そして、次の③に進ませます。  

事故直後から肩の痛みが発症した場合・・後遺障害14級9号だけでも確保

 陳旧性損傷や年齢変性であっても、事故以前は何ともなく、事故後から痛みを発症するケースもあります。これはムチウチに同じく、引き金論(元々あった損傷が事故を契機に痛みを発症)として、医学的に説明がつきます。事故の衝撃でインピンジメント症候群を発症したケースも数件、経験しています。簡単に言うと、歳をとって棘上筋等のささくれが肩関節を動きを邪魔し、場合によっては関節部に石灰化が起き、中高年のいわゆる四十肩・五十肩の症状となります。これは経年性の内在的な病変ですが、運悪く、事故を契機に痛みを発することがあります。これを、自賠責は「外傷性の肩関節周囲炎が惹起された」とギリ推測、14級だけは認定してくれました。この件は、歩行中に車にはねられて肩を強打したケースでした。自動車搭乗中にコツンと追突されてでは・・一笑に付されます。この手の多くは、「頚肩腕症候群」と言って、頚部神経症状由来の肩の痛みが多くを占めます。可動域制限については、痛みから余計動かさなくなることで、関節拘縮が進行するケースが多いようです。  

 したがって、外傷性肩関節周囲炎にしろ、頚肩腕症にしろ、真面目にリハビリを継続し、適当な時期に症状固定、先生に診断書の記載をお願いします。ここで、過度な可動域制限の数値などは敬遠させます。できるだけ、肩の可動域は自助努力で回復させるべきです。すると、症状・治療の一貫性から、神経症状の14級9号認定の余地を残します。ややグレーながら、症状の一貫性と信憑性があれば、自賠責も鬼ではありません。     

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    今回3つのパターンを紹介しますが、⑴、⑵の先生に依頼すると残念な結果と迷走が待っています(弁護士名は仮名です)。   (1)交通事故経験の少ない弁護士:甘利先生

 患者の言う事と医者の診断書を信じすぎる傾向にあり。   (2)そこそこ経験がある弁護士:石原先生

 必要無い検査や画像鑑定を行い、結局は事故との因果関係を的確に立証できない傾向。    (3)秋葉事務所の場合

 多くの被害者さんは悲惨な結果になってから、やっとセカンドオピニオンで秋葉事務所に来ます。「相談が遅すぎて手遅れ」と、涙で枕を濡らすこともあります。    それでは、これらの顛末を追ってみましょう。  

肩腱板損傷の取り組み、2つの典型例と秋葉の対策

 ※「後遺障害が取れたら、またご連絡下さい」と言う弁護士は論外とします

 

(1)交通事故案件の経験少ない甘利弁護士の場合

 診断書を見て、「腱板損傷」を最初から丸ごと信じます。「肩関節の可動域制限が1/2ですので、後遺障害は10級10号が見込めます!」と息巻きます。今後、請求する慰謝料や逸失利益を計算して、「これは利益の大きな案件だ」と張り切ります。

 しかし、自賠責の等級は「非該当」、もしくは大サービスで「14級9号」となるはずです。腱板損傷で10級取り、3000万を超える慰謝料が貰えると、期待させた依頼者:枝野さんから散々責められて・・面目立たずに委任解除となります。または、引っ込みがつかなくなった甘利先生は、軽薄な診断書一枚を持って裁判に持ち込みますが、有効な立証などできようもなく青色吐息、画像所見は相手損保の顧問医の意見書から否定され、負けは必至となりました。毎度お馴染みですが、裁判所の和解案にすがり、「この辺で手を打つよう」必死に依頼者の説得にかかります。結局、低額の和解(実際はボロ負け)=最初から裁判の必要などない結果(獲得額)となります。

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 肩腱板損傷に関する相談、ご依頼をまんべんなく頂いております。早期からの相談であれば、等級認定を含めた対策を誤ることはありません。それは、弊所の実績ページの通り、あらゆるパターンを経験しているからです。

 一方、不慣れな事務所に依頼したばっかりに等級が付かず、迷走状態になっている被害者さんも多いものです。最近も某掲示板から直リンされた(?)のか、アクセスが多いので、その記事を加筆修正の上、再掲示します。

 今日から3回の元記事は専門家にも好評のようです。多くの方に参考となれば幸いです。そして、できれば、ご依頼もお待ちしています。  

医師の診断名は絶対ではない?

 交通事故で肩の痛みから腕が上がらず、肩関節の可動域制限が残った被害者さんの相談を100人程度、受けてきました。その中で、無事に機能障害、もしくは神経症状が認められた被害者さんは実績ページの通りです。    ⇒ 上肢(鎖骨・肩)の等級認定実績    しかしながら、一方で非該当や、肩関節の可動域制限がありながら神経症状の14級9号止まりの被害者さんが多数存在するのです。私達は初回相談の段階からMRI画像を確認していますので、等級はほぼ想定通りに収まります。したがって、早くから相談の被害者さんに関しては心配ありません。問題は画像所見の不明瞭な方の場合です。とくに、治療先で「事故との因果関係が不明瞭」ながらついた診断名に難儀しています。これが肩のケガの場合ですと、多くは以下の診断名になります。  

 肩腱板損傷(不全損傷 部分損傷)  

 肩腱板断裂(不全断裂 深層断裂)

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第9話:「肩関節亜脱臼による肩関節の動揺性をストレスXPで立証?」(秋葉が勝手につけかえたタイトル)  

 第9話も秋葉事務所の仕事と丸被りでした。前話で、転倒した甘春先生(本田つばさ さん)に対して、レントゲンに加え、頭部はCT検査、痛めた肩関節はMRI検査を行いました。その画像うを観た辻村先生(同僚の甘春先生に💗)は、MRIの矢状断から肩関節の亜脱臼と診断し、保存的治療で対処することを決めました。しかし、毎度のお約束で、五十嵐技師(子供の頃から甘春先生に💗)は、MRI画像からバンカート病変(※1)を疑い、ストレスXP(関節を引っ張って伸びた状態をレントゲンで撮る)もすべきではないか、その結果、損傷があれば(関節唇損傷・スラップ損傷※2)、肩関節の動揺性(関節が緩んでぐらぐらになってしまう)が後遺症として残らないよう、鏡視下手術をすべきと意見しました。それに対して辻村先生は、「技師が思いつきで言うな!(怒)」と拒否、読影判断をめぐる恋敵の対立となります(ヒロインの宿命ながら患者にとって迷惑な話)。   ※1 バンカート病変 ⇒ 肩関節 脱臼   ※2 関節唇損傷・スラップ損傷 ⇒ スラップとは関節唇の上部ことで、上腕骨が肩関節内で円滑に動くよう作用する軟骨です。これが、スポーツや事故での外力で、裂ける、剥がれる、あるいは骨ごと剥がれる(骨性バンカート病変)ことがあります。これらを総称してスラップ損傷と言います。肩関節脱臼の多くはバンカート脱臼かヒルサックス脱臼です。   ←関節唇(MRI・T1冠状断)

 結局、辻村先生はストレスXPをオーダー(撮影場面はなかったですが)、結果としてバンカート病変の診断から、関節鏡下手術(詳しく語られませんでしたが、手術場面から剥離した関節唇の縫合をしたと思われる)となりました。

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 交通事故を契機に、肩関節の不調を訴える被害者が後を絶ちません。むち打ち・腰痛の次に多い症状かもしれません。    多くの場合、むち打ちを契機とした、いわゆる頚肩腕症候群の範ちゅうに入ると思います。40~50代が圧倒的に多く、若年層はほとんどいません。中高年ともなれば、体が硬く、頚椎にも年齢変性がみられ、首から肩にかけて過緊張の状態になっています。交通事故外傷以前に、中高年の4人に1人は何等かの症状を持っていると言えます。

 さて、毎度、賠償問題となるのは、これらの症状が事故を原因とするものか否かです。保険会社は受傷の状況に不自然がなければ、およそ3か月の治療は容認します。しかし、それ以上となると・・「打撲・捻挫でいつまで通っているの(怒)」とは言いませんが、治療費打切りを切り出してきます。通常、打撲捻挫の類は消炎・鎮痛処置をすれば、1か月もすれば軽快するものです。3か月でも十分、それ以上は長過ぎると思うわけです。これは、単なる”保険会社の払い渋り”とは言えません。

 しかし、3か月でも症状が治まらない被害者さんは、確かに一定数存在します。さらに、その一定数からも大きく2つに分かれると思います。一つは、頚椎捻挫から頚部の神経症状が発症したタイプです。これは単なる捻挫を通り越して、上肢のしびれを代表に、様々な不定愁訴(頭痛や吐き気、肩の重だるさ、その他不調でなんだか調子悪い)が半年から数年続くことになります。肩関節も痛みから動かさないので、関節が拘縮し可動域制限が残る方も含みます。これを、「90°までしか肩が挙がらない! 肩腱板不全断裂ですから!」と、10級10号の診断書を提出したら・・自賠責保険の怒り(非該当)を買うこと必至です。絶対に10級を認めないと思います。    このような被害者さんは、痛みの継続をもって、後遺障害14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定を受け、その賠償金を得て、長期間の治療・リハビリに備えるべきと思います。この程度(と言っても200万円~)で手を打つべきなのです。治らないからと言って、いつまでも保険会社と戦争すべきではありません。この解決の流れを作ることが私達の仕事でもあります。    もう一つのケースは、事故受傷を契機に頚部や肩の痛みは当然として、肩にそれ程のダメージがないであろう受傷状況から、「どんどん肩が挙がらなくなった」人です。先の説明、神経症状の一環とも思えず、いわゆる四十肩・五十肩、老化による自然な肩関節周囲炎の症状そのままです。この場合、事故受傷により、その衝撃から発症してしまう不幸なケースもあれば、実は事故前から不調だった、あるいは事故後から拘縮が進むケースですから、ケガと言うより年齢変性・運動不足による疾病に近づきます。事故との因果関係について、保険会社は当然に否定します。肝心の医師も判断に困ります。それがわかるほど、現代の医学は進歩していません。そして、賠償問題に関わりたくないので、患者と距離を置きます(逃げ出します)。

 単なる打撲・捻挫、挫傷の類で、「肩が半分までしか挙がらなくなったのは事故のせいだ!」と保険会社と対峙しても、その争いは自賠責保険の後遺障害審査はもちろん、裁判でも負けると思います。骨折や脱臼、棘上筋断裂で手術でもしていれば別ですが、ズバリ、証拠がありません。その点、この問題をさらに複雑にするのが、医師の診断名です。半分も肩が挙がらないことのみをもって、「肩腱板断裂(損傷)」の診断を下してしまうのです。画像検査もなしに確定診断?は軽率に過ぎますが、そもそも町医者の先生に、MRI画像を正確に読影して頂くことなど高望みなのです。

   独り歩きを始めた診断名(診断書)ですが、賠償問題で保険会社と争う段階になれば、「肩腱板断裂」→「肩腱板不全断裂」→「肩腱板損傷の疑い」と、だんだん自信喪失、薄まっていきます。本来、慎重な医師であれば、予想的な診断名を口にしません。肩関節の専門医にコンサル(紹介)します。その専門医も安易に断定しません。問診・徒手検査を経て、MRIやエコー検査の画像を基に丁寧に診断を下します。そして、たいてい「年齢変性による肩関節の拘縮ですね」となりますが。    このように、中高年にとって、事故外傷と(年齢変性による)諸症状の切り分けこそ、交通事故解決の宿命と思います。私達は日夜、被害者さん・保険会社・医師の3者の交通整理をしているようなものです。    かく言う、私も肩の痛みに悩まされています。私には無縁と思っていた(根拠のない自信)五十肩になったのでしょうか? この件はまた、後日レポートしたいと思います。  

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 こんにちは、金澤です    今日は交通事故被害に遭われた方にも多い、鎖骨の骨折について記事にしていこうと思います。

 整骨院では、鎖骨に限らず骨折直後に来院してくることは殆どありません。あったとしても、おばあちゃんが「さっき転んでから手が痛いの」 →コーレスじゃないですか!

 おばあちゃんが「朝起きて息したら痛い」 →おばあちゃんは寝返りや咳するだけで肋骨がイってしまう。 等々です。

 肋骨は、整形にいっても何もする事はないですが、一応は整形に送ります。ですので、整骨院に来る方としては、半年前に骨折をして治ったけど、どこどこが痛い。など訴えて来院されます。そして本題の「鎖骨骨折後、せおうことになる痛み」。鎖骨というのは、沢山の筋肉が着きます。 一つの骨につく筋肉の数で言うと上位です。

・三角筋  ・僧帽筋  ・大胸筋  ・胸鎖乳突筋  ・鎖骨下筋

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 灰谷先生、大事無かったようですね。自殺未遂とまではいかないまでも、相当、精神的にまいっているようでしたけど。    冒頭、クラビクルバンドを装着して登場しました。 「それ、内側に着けるの!」と言われたシーンです。

  アマゾンでも、3000円位で買えます。

 クラビクルバンドとは・・・鎖骨骨折後、骨癒合まで胸を張るように姿勢を保持する必要があります。そのため、変形や転位を防ぐ(ほっておくと鎖骨の多くは上に出っ張る)ための固定具です。

 灰谷先生は鎖骨骨折で済んだのですね。すぐに仕事していた様子から、亀裂骨折(ひびが入った)程度かもしれません。軽傷でよかった・・雰囲気です。鎖骨骨折はちゃんとくっつきさえすれば、深刻な障害を残さないからでしょうか。手術の選択は、粉砕骨折などで保存療法では正常な癒合が望めないケースです。もしくは、癒合に長期間が見込まれるケースです。肩鎖靱帯・鳥口肩鎖靱帯の断裂を伴えば、折れた鎖骨が上に飛び上がったままになりますので、プレートやワイヤーでの固定術は必至となります。仮に、わずかな変形や転位が残っても、あえて手術で整復しません。鎖骨は肩関節の安定的な可動を助ける役目ですが、ある意味、鎖骨下の上腕神経などの内部組織を守ってくれるバンパーに思えます。  鎖骨骨折は交通事故外傷でも、打撲捻挫を除く骨折の中でも最多数の傷病名ではないでしょうか。弊所でもおよそ計算されるすべての等級認定の経験があります。再三ですが、少し復習しましょう。  

 左のレントゲンは鎖骨の骨幹部が折れて偽関節(結局、くっつかなかった)となったもの。右のレントゲンは肩鎖関節が脱臼したもの

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 最後は鎖骨の障害として最も多く、そしてもっとも見逃されるであろう14級9号「神経症状の残存」です。

 鎖骨の骨折は骨折の様態にもよりますが、手術でプレート固定することにより、変形のなく癒合する傾向です。また、折れた場所が骨幹部であれば、例外的なケースを除き、人体の機能上、肩の可動域制限は残らないはずです。主治医も障害が残るとの認識はありません。しかし多くの場合、「骨がくっついたから、完全に治った?」とはいかないはずです。普通に痛みや違和感は残るものです。

 わずかの症状でも見逃しません。秋葉事務所では、鎖骨骨折の全件に等級認定を果たしています。    【事案】

自転車で走行中、交差点で対抗右折の二輪車と衝突、転倒したもの。その際、右鎖骨の骨幹部(真ん中辺り)を骨折した。その11か月前も交通事故で右鎖骨の肩寄り(遠位端)を骨折して癒合したばかり。   【問題点】

11か月前の遠位端骨折は「非該当」となっていた。異議申立も検討したが、可動域は回復し、今回の骨折でプレート固定をしたため、今更感が漂う。仮に狙っても14級9号ならば、加重障害となるだけなので今回の事故で14級9号を取ることにした。 可動域制限や変形がなくとも、痛みや違和感はすぐに消えるものではない。数年苦しむのであれば、せめて14級9号を確保するのが私たちの仕事。   【立証ポイント】

一年後の抜釘を待ち、症状固定とした。癒合状態良く、変形も皆無、周辺靭帯も問題なし。それでも痛み、違和感を丁寧に説明した診断書を主治医に記載いただく。この辺の細やかな説明が14級9号認定の確率を高める。提出後、わずか3週間で認定いただいた。

ちなみに数年前には左の鎖骨も折っていた。私がいれば3回とも14級獲ってあげたのに・・・。      このシリーズは最後に続きを読む »

 シリーズ中、鎖骨の脱臼の程度を表す「Grade」が出てきます。まずは、以下の表でおさらいしましょう。

 肩鎖関節の脱臼は3段階(さらにひどい状態を含めた6段階もある)に分けられます。これをtossy分類とよびます。経験ではGradeⅡ以上のほとんどに外見上の変形が残ります。

 Grade Ⅰ  靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、明らかな脱臼はない。  Grade Ⅱ  肩鎖靱帯の損傷があり、亜脱臼位 を呈する。  Grade Ⅲ  肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、完全脱臼位を呈する。

  【事案】

自転車で走行中、左路側帯に駐車中の自動車が急発進し、右転回したために前方をふさがれて衝突。肩から路面に落ちた。GradeⅡ型の亜脱臼となり、クラビクルバンドで固定した。   【問題点】

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 粉砕開放骨折+上腕神経麻痺など、特別に重篤な骨折を除いては鎖骨の骨折、脱臼で肩関節の用廃(8級レベル)はないでしょう。現実的な最高等級は併合9級と思います。   【事案】

バイクで走行中、交差点で左方よりの自動車と出合頭衝突したもの。その際、鎖骨の肩側を脱臼した。肩鎖靭帯、烏口肩鎖靭帯の断裂を伴うGradeⅢ型の脱臼である。手術で鎖骨のプレート固定が必要となった。

【問題点】

弁護士から紹介を受け、脱臼の程度から変形と可動域制限を予想し、堂々と併合9級の獲得を宣言した。 しかし、主治医は非常に難しいタイプの医師で「障害は残らない」と断言、患者以外の者の関与を嫌った。ここではまともな後遺障害診断書は無理と判断し、近隣にあるリハビリ先の整形外科で、ROM測定、裸体の写真撮影を行い、診断書を仕上げた。

【立証ポイント】

靭帯断裂を伴う脱臼の場合、鎖骨の転位を避けるためにプレートは抜釘できない。したがって変形はかなり微妙であったが、添付した写真からわずかなピアノキーサイン(鎖骨が盛り上がる)を認めて頂いた。かなりギリギリの併合9級だが、受傷の程度から予断し、しかるべき医師に診断いただければ目標等級に届く。弁護士も依頼者もびっくりの結果であったが、調査事務所も私もしっかり見ていますので。

   このシリーズは最後に鎖骨の後遺障害一覧表を見て復習して下さい。  

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 このシリーズは実例(実績投稿)から、等級別に解説します。

 まずは可動域制限のケースから。本件は「鎖骨骨折後の癒合状態が良好であれば、そんなに曲がらなくなるわけないでしょ」と可動域制限を否定してきたケースです。しっかり画像読影を行い、放射線科の医師や専門医の見立てを仰がなければ見逃される例です。やはり画像読影を重視しない法律家には任せてはダメなのです。   【事案】

原付バイクで走行中、交差点で信号無視の自動車と出合頭衝突したもの。その際、鎖骨と肋骨を骨折した。   【問題点】

受傷初期から弁護士に依頼していた。この弁護士は物損の交渉をしてくれたもの、後遺障害は事前認定(相手の保険会社に丸投げ)の方針。リハビリの甲斐なく、腕が上がらない被害者を心配したご長男から相談が入る。しかし、委任している弁護士がいる以上、限定的なアドバイスしかできない。正式に当方に契約をスイッチしたが、時すでに遅く、結果は「骨癒合が得られている」と「非該当」の通知。   【立証ポイント】

まず、XPとMRI画像を精査した。確かに骨癒合に問題はないもの、仮骨形成(骨の癒合の際にみられる、新しくできた不完全な骨組織)が不自然に膨らんでいる。新たに3.0テスラのMRI検査を実施、仮骨部が「軟骨化嚢胞」となっていることを突き止める。これが拳上不能の原因かもしれない。しかし、主治医はこれを可動域制限の原因とは認めず、疼痛による運動制限からくる関節硬縮と判断した。原因究明のため、放射線科医の画像鑑定を行ったところ、「肩峰下滑液包に液体貯留、棘上筋、肩鎖靭帯にも輝度変化を認める。」とあり、鎖骨下嚢胞化構造と相まって肩腱板も含めた複合損傷が明らかとなった。これを基に異議申立てを行い、改めて可動域制限を認めて頂いた。

 このように、画像読影で医師の見解が分かれることが、しばしばあります。医師によっては「癒合良好」で済ましてしまいます。立証側もしっかり画像所見を検討し、しかるべき精査をしなければなりません。本件は早くから法律家が関与しながら、障害の原因追求と精査を怠ったために大変な苦労を強いられた例といえる。     このシリーズは最後に鎖骨の後遺障害一覧表を見て復習して下さい。

 

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 昨年から今年にかけて鎖骨の障害で未投稿がいくつかありましたので、総ざらいしようと思います。その前に鎖骨の障害で想定される等級を整理しましょう。

c_g_a_6 鎖骨骨折、肩鎖関節脱臼の診断名からは以下、表の通り。表のすべての認定経験がありますので、画像と診断書をご持参して相談会に参加されたら、認定等級をほぼ予断できます。

 この表、例外的なケースを除きますが、かなり参考になると思います。  

等級

症状・条件

画像所見

外見

14級続きを読む »

 最近、弁護士先生から寄せられた質問について、質疑応答。(内容は若干脚色しています)  

Q)肩甲骨を骨折した被害者さんですが、肩関節が脱臼し、もちろん整復はなされたのですが、以後も2度脱臼を起してしまい、肩関節に不安定性を残しています。この場合、後遺障害の認定は何級でどのように立証したらよいでしょうか?  

A) 不安定性と脱臼癖は程度の差と言えるかもしれません。

 イメージでは 不安定症 < 動揺性肩関節 < 脱臼ぐせ < 完全脱臼

 脱臼は大きく分けて2種、関節唇の損傷による前方脱臼(図1)であるバンカート病変、上腕骨の骨頭の損傷によるヒルサックス病変です(図2)。他には後方脱臼も外傷によって起きることあります。 バンカートxp続きを読む »

 最近鎖骨の脱臼、亜脱臼の相談が続いています。多くは胸鎖関節ではなく肩鎖関節の脱臼です。

今日の病院同行もGradeⅡの被害者さんです。まずこのGradeとは

 

 

分類

肩鎖関節の脱臼は3段階に分けられます。これをtossy分類とよびます。

Grade1 靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、明らかな脱臼はない。 Grade2 肩鎖靱帯の損傷があり、亜脱臼位 を呈する。 Grade3 肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、完全脱臼位を呈する。

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 「肩関節が半分以下しか挙がらなくなった」=10級10号のつもりが、なぜか14級!に・・・分析してみましょう。関節可動域制限の神髄へ接近します。  

段落

本 文

解 説

結 論

自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。  結果は最初に書かれます。

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 待つこと2か月、Cさんのもとに自賠責保険の等級認定表が届きました。ずばり、昨日の解答です。では、実際の文章を見てみましょう。   <結 論>

 自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。   <理 由>

 左肩腱板損傷に伴う左肩関節の機能障害につきましては、提出の画像上、棘上筋に高信号が認められますが、後遺障害診断書に記載されているような高度の可動域制限を生じるものと捉え難く、しかしながら疼痛や治療状況等も勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断いたします。     これを見て、Cさんはひっくり返りました。「ええっ!α先生は10級が獲れるって言ったじゃないですか!なんで14級なんですか!」    Cさんに責められたα先生も面目を潰され、「おかしい!これは自賠責保険の横暴な判断です、異議申し立てしましょう!」と息巻いています。     このようなやり取りをよく目にします。しかし、一方では10級が認められる被害者さんもいるわけで・・・。  

ある被害者Dさん(43才 女性 主婦)のケース

 Dさんは買い物の帰り自転車で走行中、交差点で一時停止無視の自動車に衝突され、転倒、救急車で搬送されました。レントゲンを撮ったところ、鎖骨の遠位端(肩関節と接する部分)が折れていました。担当した医師は「整復するには手術が一番ですが、手術痕が残るでしょう。」と判断しました。しかし、傷を残したくないDさんの希望が強い為、医師はクラビクルバンドで固定し、適時XP(レントゲン)で骨の癒着具合を観察していきました。    その後、主治医は適切な治療とリハビリを続けましたが、Dさんは左腕が半分までしか挙がりません。右肩に比べ、見た目でわかる程、痩せて筋肉が落ちています。Dさんは9カ月リハビリを続けましたが、完全回復を諦めて症状固定することを考えていた矢先、秋葉事務所を紹介されました。    秋葉のアドバイスは・・・「可動域が2分の1になっただけで、簡単に10級は認めてくれませんよ。可動域制限は骨折や靭帯・軟骨損傷の部位・程度、そして骨折後の癒合具合の良し悪しや変形・転位の有無、靭帯損傷の回復具合から判断されます。それらの前提から矛盾のない、納得できる可動域制限なら認めます。    まず全XPを精査します。とくに、受傷直後と症状固定時期が重要ですが、すべての画像提出は必須です。さらに、いくつかの医証を補強します。MRI検査を追加し、肩腱板、肩鎖靭帯の損傷などを解明し、診断名として診断書に記載していただきます。そして筋萎縮の程度も追記、外貌写真も添付しましょう」と続けました。      肝心の関節可動域は屈曲100°、外転80° です。(内転、伸展、内旋、外旋も計測しました)    以上βさんの指示に従い、自賠責の申請を行いました。・・・結果は以下に全文掲載します。   

<結 論>

 自賠法施行令別表第二第10級10号に該当するものと判断します。  

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ある被害者Cさん(49才 男性 会社員)のケース

 Cさんは原付バイクで通勤中、並走の右折車の巻き込みにより、左肩から転倒しました。レントゲンを撮ったところ、幸い骨折等はありませんでしたが、左肩と左膝の打撲でしばらく通院となりました

 リハビリを続けていますが、3か月経っても左肩の痛みが治まらず、左腕が半分位しか挙がりません。主治医に訴えたところ、「肩腱板を痛めているかもしれないねぇ・・・まぁリハビリを続けてみましょう」と困り顔です。

 そしてそのまま6か月目、相手の保険会社も「打撲・捻挫なんだから・・・そろそろ治りませんか?」と治療費の打ち切りを迫ってきました。しかし、相変わらず痛みが残っていて腕は挙がりません。

 Cさんは不安になり、ネットで検索した後遺障害申請専門を謳う行政書士α先生に相談しました。そのα先生は、「肩腱板を痛めているのならMRIを撮って器質的損傷を明らかにすることです」と力説し、先ほどの主治医の協力のもと、MRIを実施しました。

 結果、「T2にて棘上筋に高信号、棘上筋損傷」との所見を得ました。

 そして、肩関節の可動域 屈曲90° 外転85° の測定結果を診断書に記載しました。

 α行政書士は得意満面、「これで腱板損傷が立証できました。関節の可動域が2分の1以下に制限されていますので、〇級〇号が獲れますよ!」と予想しました。    さて皆さんも一緒に考えて下さい。Cさんは何級が取れたのでしょうか?    ヒント→ 肩の後遺障害 2    答えは明日(つづく)   

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 肩の後遺障害、その基本解説は本日の6回目で一旦終了します。最後に、肩と言っても腕の骨、上腕骨の肩関節部分を取り上げます。   6、上腕骨近位端骨折   ■ 治療

 上腕骨近位端は4つの部位に分かれており、①上腕骨頭 ②小結節 ③大結節 ④骨幹部です。

 大結節には棘上筋腱部が付着しており、棘上筋が切れたり延びたりすると、肩関節の機能障害となります(肩の後遺障害2~3 参照)。小結節には、肩甲下筋腱部が付着しています。

 上腕骨近位=肩関節部が折れてしまうと、脱臼を伴うことが多く、骨折の部位、骨片(折れて転位した骨)の状態によって治療法が分かれます。軽度で転位がない場合、ハンギングキャスト(キブス包帯)、機能的装具で固定します。

 関節内の骨折は、骨膜性仮骨(※)が期待できないので、転位(ズレ)がひどいと、骨頭壊死といった怖い症状が続きます。したがって横骨折、粉砕骨折、開放骨折では手術による整復が必要です。     骨幹部(上腕部分)の骨折は橈骨神経麻痺を残す可能性もあります。   ※ 骨膜性仮骨・・・骨折部に新しい骨組織が作られて自然修復していきます。これが関節内の骨折では上手く機能しないので深刻なのです。    ■ 後遺障害

 やはり、運動制限を残すことが多く、可動域制限、あるいは動揺性によって、12級6号、10級10号の選択となります。     ここから先は「腕の後遺障害」に続きます。   

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 かつての代理店時代ですが、自動車保険(バイク)のお客さんが、高速道路で車へ追突する事故を起こしました。ケガは鎖骨骨折です。幸い命に別条なく、骨がくっつきさえすれば大丈夫と思っていました。その時は後遺障害についての知識が浅く、損保の研修でも「プレート固定等の手術が進歩しており、鎖骨骨折は後遺障害にならな」と、教わっていたような気がします。

 しかし癒合部分の鎖骨が盛りあがってしまい、それが外見上からも確認できます。結果的に鎖骨の変形癒合で12級6号が認定されました。「後遺障害の審査は厳しいものなので、審査の結果に期待しないで下さい」と、このお客様に説明していましたが、割とすんなり12級5号の認定となって、ホッとした事が思い出されます。

 鎖骨は、胸鎖乳突筋により上方に引っ張られているため、骨折すると骨折部内側が上方へズレやすいのです。プレートやワイヤーで固定する手術がとられますが、完全に元通りに修復されず、変形を残しやすい骨といえます。   5、鎖骨骨折・脱臼   1、鎖骨遠位端骨折   (骨折部分の呼び方) 

・遠位端 ・・・ 心臓から遠い部分。鎖骨の場合、肩よりの方。 

・近位端 ・・・ 心臓に近い部分。鎖骨の場合、首よりの方。

・骨幹部 ・・・ 骨の中心部分。    ひびが入った程度では保存療法。しかし鳥口鎖骨靭帯損傷を伴う場合、手術が必要となります。そして肩の可動域に制限が残りやすくなります。

 注意が必要なケースは関節内骨折です。肩鎖骨節(鎖骨と肩関節の結合部)にひびが入るケースで、レントゲンでも見逃されやすい部分です。自然癒合せず関節症変化となると決定的に可動制限が残ります。

※ 肩鎖骨節・・・鎖骨と肩関節の結合部。鎖骨は肩甲骨の肩峰と鳥口突起に挟まれ、肩鎖靭帯、鳥口鎖骨靭帯で結合されています。   2、鎖骨骨幹部骨折

 冒頭の例のあるとおり、上方へ転位(ズレる)しやすく、ひどいと骨折部が皮を突き破り、飛び出す(開放骨折)こともあります。その為、手術による整復が後の癒合具合を左右します。また神経血管損傷も伴うケースもあり、上腕神経叢麻痺のチェックも必要です。

 プレート固定で鎖骨の転位(ズレてくっつく)や、変形(癒合部が盛り上がるなど、曲がるなどの変形)を防ぎます。高齢者の場合、手術を敬遠しますので、変形が残り易いと言えます。

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