キーンベック病 = 月状骨軟化症(げつじょうこつなんかしょう)

(1)病態

 キーンベック病は、月状骨無腐性壊死・月状骨軟化症とも呼ばれており、外傷後だけでなく、振動ドリル等で手を酷使する人、大工、農林漁業などで、手をよく使う人にも発症しています。

 月状骨は、周囲が軟骨に囲まれており、血行に乏しく、容易に壊死するのです。交通事故では、前腕骨、橈骨、尺骨の脱臼や骨折により、2つの骨のバランスが崩れ、手関節内で月状骨にかかる圧力が強くなり、二次的障害として発症しています。

 また、月状骨の不顕性骨折を見落としたことで、キーンベック病を発症することも予想されます。症状は、手首の疼痛、痛みを原因とした手関節の可動域制限、握力の低下です。月状骨が潰れる外傷で、初期では、血行不良により、XPやMRIで月状骨の輝度変化が出現します。末期には、無腐性壊死となり、潰れて扁平化します。

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 昨日の続きです。事件の顛末と、高次脳機能障害以外の認定、3部位を紹介します。    人身傷害へ裁判基準の慰謝料・逸失利益を回収するため、裁判前提で進めてきましたが・・ご本人が復職されて回復が進んでいること、労災で高次脳機能障害がほとんど認められなかったことで、訴訟上、後遺障害等級の維持が危ぶまれます。裁判での実質審議を避けるか、チャレンジするか・・ご本人・ご家族、弁護士と慎重に協議を重ねました。そして、人身傷害の低い基準ながら、その支払いで矛を収めることが得策と判断しました。    自賠責保険は早々と3カ月で認定を取りましたが、労災・障害給付の申請と続く審査請求、人身傷害の提示待ち・・・これらで2年近く徒過しました。長期間の苦しい戦いでした。    難しいコントロールとなりました    高次脳機能障害以外の主な認定結果は以下の通りです。    12級5号:肩鎖関節脱臼   11級7号:第2頚椎骨折   14級相当:嗅覚障害  

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 他の自動車からの積載物、あるいは家屋や施設からの落下物による交通事故も少なくありません。たいては、加害者となる者に賠償保険がありますが、ない場合もあります。その場合、賠償請求は簡単ではありません。弁護士の助力が求められます。

 また、それ以前の問題として、損害調査を徹底しなければなりません。本件の場合、その診断名は、橈骨遠位端骨折と尺骨茎状突起骨折でした。後者は秋葉事務所の得意な傷病名ですから、適切な診断書と画像所見を揃えて進めました。    ☞ 上肢の後遺障害 ㉛ 尺骨茎状突起骨折    相手が保険会社でない場合、その支払い能力に疑問が生じますが、そこそこの企業であれば、顧問弁護士がおりますので、交渉は可能と思います。   相手がまともな会社なら、丁寧に立証すれば話は進みます。  

企業への賠償 12級8号:尺骨茎状突起骨折(50代男性・神奈川県)

【事案】

二輪車で走行中、左斜面の敷地から落下物があり、その衝突を受けて受傷。どうやら前腕が折れたよう。敷地の持ち主は警察が調べてくれたそうで、その会社に対して賠償請求することになった。   【問題点】

その企業は、真正面から責任を認めないようだが、治療費含めわずかな賠償には応じてくれるよう。しかし、その額がほとんどお見舞い金程度・・みかねたご親戚が秋葉を紹介下さった。交通事故として、弁護士と共にしっかり解決の道筋をつけなければなりません。   【立証ポイント】

賠償金の多寡、その根幹を握るものは後遺障害に他なりません。まず、折れた橈骨の状態を確認、プレート固定後の癒合状態は良好であることから、「14級9号に落ちるか・・」と思ったが、尺骨の茎状突起が折れて骨片化していることに気づいた。

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 切断肢では、その立証作業はありません。診断書に「下肢の切断」の記載で十分です。問われる点は、膝上か膝下かで、4級・5級に分かれます。それ以外は、その他の後遺障害を漏らさず、認定させることでしょうか。本件の場合、最終的に併合3級となりました。切断肢4級に対し、複数あった他部位の認定による併合は限界に達しており、それらの立証努力はそれ程重要ではなかったようです。   お気の毒なケガでしたが、救いはご本人が前向きなことでしょうか・・   4級相当:1下肢欠損 + 股関節機能障害   10級7号:第2中手骨 骨幹部骨折   12級6号:橈尺骨 粉砕骨折    

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 三角・月状骨間 解離 (さんかく・げつじょうこつかん かいり)

(1)病態

 ↑ 図の通り、三角・月状骨間の靭帯が断裂して発症します。

 手関節の疼痛、可動域制限などがあり、月状骨と三角骨のある尺側部分に圧痛点が見られます。XPの舟状・月状骨角は20°以下で手根掌屈変形が認められます。XP、手関節正面像では、月状骨三角骨間での両骨間に間隙が存在します。月状・三角骨 開離は、前回の舟状・月状骨 開離に次いで高頻度に発生するものです。両骨間の靭帯が過伸展、あるいは断裂した状態なので、手根靱帯損傷(LT靱帯開離)とも言われます。    続きを読む »

 舟状・月状骨間 解離 (しゅうじょう げつじょうこつかん かいり)

(1)病態

 ↑ 図の通り、舟状・月状骨間靭帯が舟状骨の靭帯付着部で断裂して発症します。

 舟状・月状骨角は、正常では30~60°ですが、70°以上となると手根背屈変形、舟状・月状骨間解離となり、XP手関節正面像では、舟状骨と月状骨の間が2mm以上の間隙が認められます。   (2)治療

 治療は、受傷後の早期では、手根骨の配列を整復、Kワイヤーで6週間、その後装具を6週間装着することになり、このレベルでも、職場復帰には、6ヶ月を要します。受傷後かなり経過しているときは、舟状骨を周囲の手根骨と固定する手術が実施されます。   続きを読む »

 月状骨脱臼 (げつじょうこつだっきゅう)

(1)病態

 手首の付け根の骨は、8個の小さな手根骨で構成されています。これらの手根骨は2列に並んでおり、1列目は親指側から、舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨、2列目は、大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨と呼びます。これらの手根骨はお互いに関節を作って接しており、複雑な靭帯で結合されています。

 月状骨は、右手の背側では、舟状骨の右隣、有鈎骨の下部に位置しています。手根骨の脱臼では月状骨が圧倒的多数で、月状骨周囲脱臼と呼びます。手のひらをついて転倒した際に、月状骨が、有頭骨と橈骨の間に挟まれてはじき出されるように、手のひら側に転位・脱臼します。月状骨と橈骨の位置関係は正常ですが、月状骨とその他の手根骨との関係が異常となって背側に転位するもので、しばしば見逃されるので、注意しなければなりません。

 月状骨周辺の橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折を伴うこともあります。   (2)治療

 疼痛、運動制限、圧痛、腫脹を発症し、脱臼した月状骨が手根管圧迫や突出したときは、手根管症候群を生じることがあります。単純XPの側面画像で、月状骨が90°回転しているのが分かります。

 徒手整復が治療の中心ですが、整復できないケースや、再発予防・手根管症候群予防の必要から、手術を選択し、靭帯の縫合なども実施されています。近年、手根不安定症の発症を防止する観点から、手根骨間の徒手整復経皮的ピンニング(切開をしないで徒手で転位した手根骨を整復し、皮膚の外からワイヤーで固定する方法)や観血的靭帯縫合(切開手術で転位した手根骨を整復し、ワイヤーで固定、損傷した靭帯を縫合する方法)が積極的に実施されています。   (3)後遺障害のポイント 

Ⅰ.

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舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)

(1)病態

 舟状骨(しゅうじょうこつ)は親指のつけ根に存在しています。転んで手のひらを強くつくと、手関節を構成する手根骨の1つ、舟状骨が骨折することがあります。交通事故では、自転車とバイクの運転者に多く起こります。経験上、手根骨では一番骨折の多い骨と思っています。

 舟状骨骨折の症状は、手関節を動かすと痛みが強く、手のひらの親指側を押すと痛みが出現することで、握力は低下します。 続きを読む »

有頭骨骨折(ゆうとうこつこっせつ)

(1)病態

 有頭骨とは、中指の中手骨の真下にある手根骨の1つで、右手では有鈎骨の左横に位置しています。交通事故では、転倒した際に手をつく、あるいは、直接の打撲で骨折することが多く、自転車やバイクの事故で多く損傷する場所です。有頭骨の骨折では、手首の可動域制限と運動時の疼痛を残すことが予想されます。

 手根骨は8つの骨で構成されていますが、交通事故では、舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨、有鉤骨、有頭骨で骨折が多発しています。これらの複数が骨折・脱臼していることもあります。被害者の方から激痛の訴えがなされることは少なく、平面画像のXPでは確認しにくいことが特徴です。すべての手根骨に言えますが、立体的にぐるっと観る事ができるCTが有用です。出来るだけ早期にCT検査が望まれます。   (2)治療

 骨折部が亀裂程度では、保存的に癒合を待つことになります。骨折部が離開してしまうと、当然に癒合に時間がかかります。その場合、手術となりますが、2本のスクリュー(headless compression screwなど)にて固定します。骨の欠損部が大きい場合、自家骨移植を行った上で固定します。   (3)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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 有鈎骨骨折(ゆうこうこつこっせつ)

(1)病態

 鉤骨折(こうこっせつ)とも呼ばれ、右手では、薬指と小指の中間、下方にある手根骨の1つで、手のひら側に、突起=鉤が存在する特異な骨です。交通事故では、バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で、右手に多く発症しています。自転車、バイクから転倒する際に、手をつくことでも発症しています。交通事故以外では、ラケットやバット、ゴルフのグリップを振ることで、有鈎骨骨折が発生しています。

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(1)病態

 腱鞘炎は、タイピングなどの事務作業で、限度を超えて上肢を酷使した場合、発症する・・と広く知られています。交通事故のように一度の衝撃で発症することは、通常ありません。稀に、骨折や打撲・捻挫の予後、二次的な発症となるかもしれません。少し踏み込んで解説します。まず、前腕~手関節の構造から、

※ 腱鞘 腱が通るトンネル

※ 長母指外転筋腱 親指を伸ばす働き

※ 短母指伸筋腱 親指を広げる働き   ◆ ド・ケルバン病 = 狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)

 右手首の腱鞘炎で代表的なものは、ド・ケルバン病です。ド・ケルバン病は、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が、腱が通過する腱鞘で狭窄された状態です。腱鞘、腱が走行するトンネルが炎症し、トンネルの空間が狭められて腱の滑走が妨げられるのです。

 症状は、手首の腫れ、痺れ、多少の熱感があり、親指を動かすときに痛みが生じ、物を掴んだり持ち上げたりすることが困難になります。親指を酷使した結果、腱や腱鞘への負担から発症します。妊婦や出産後、更年期の女性に多くみられます。スポーツでは、テニスをしている人に多いと報告されています。1985年に狭窄性腱鞘炎を報告したスイスの医師、フリッツ・ド・ケルヴァンの名前から付けられました。

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 手の障害をシリーズしますが、まず、手の構造と働きを説明します。    手や指は、叩く、擦る、物をつかむ、握る役割を果たしていますが、複雑な人間のからだの中でも特に繊細な構造となっています。手や指には繊細な知覚があり、様々な情報を脳との間でやり取りしています。

 複雑な構造をした骨・関節、それを取り巻く筋肉や腱、神経、血管がぎっしりと凝縮されているため、ほんの小さな怪我でも、日常生活や仕事上で、大きな支障が出現することが予想されるのです。

 指先から下に、末節骨、中節骨、基節骨、中手骨と呼ばれますが、親指には、中節骨がありません。中手骨の下に位置するのは手根骨で、遠位手根列には、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨が、近位手根列には、舟状骨、月状骨、三角骨が配列されています。

 手根骨のうち豆状骨は尺側手根屈筋腱の中にある種子骨です。具体的には、橈骨と尺骨および8つの手根骨で構成される手関節、指には24の関節など多数の関節を有しており、手の骨は、8つの手根骨、5つの中手骨、5つの基節骨、4つの中節骨、5つの末節骨の合計27本の骨で構成されています。   ※ 種子骨(種子骨障害)

 種子骨は、植物の種子のような丸い形をしている骨で、手や足の骨に多くみられます。腱や靭帯を円滑に動かす役割や、骨と腱の摩擦を抑え、腱が外れる(腱の脱臼)を防ぐ役割があります。    さらに、手関節の尺側には、TFCC=三角線維軟骨複合体が存在し、手首の骨を支え、手首の外側の衝撃吸収作用の役割をしています。

   次回 ⇒ 腱鞘炎  

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(1)病態

 足指の基節骨、末節骨が黒ずんで見えますが、これがSudeck骨萎縮です。

 ズディック骨萎縮は、XPでは、関節軟骨や骨質が保たれたまま高度な骨萎縮が認められます。受傷後、比較的短期間の内に関節部の疼痛、関節の拘縮、血行障害を訴え、皮膚に特有の光沢を示します。この特有の光沢を、医学的には浮腫状の腫脹と呼んでいます。

 XPで著しい骨萎縮が認められ、手関節、下腿部、踵骨の骨折に好発しています。骨梁も骨皮質も薄く、スカスカに写し出されるのです。このことを、医学では、関節を中心に帯状脱灰現象を認めると言います。    (2)治療

 治療は局所の理学療法、痛みを緩和する目的でステロイド剤の内服、血行障害等自律神経障害の緩和を目的とした交感神経節ブロック、交感神経節切断が行われます。つまり、難治性の疾患です。普通の整形外科での治療は難しく、専門外来を受診する必要があります。CRPS(Complex regional pain syndrome=複合性局所疼痛症候群)と判断されるものは、その専門外来になります。最近では「痛みの外来」などと称している院も多いようです。

 実際に「痛みの外来」での診療に立ち会ったことがあります。医師は、患部のエコー画像を観ながら、患部に注射をします。薬剤は、痛み止め薬、キシロカインなどの麻酔薬を調合、症状の経過を見ながら工夫して調合しているようです。   ◆ ズディック骨委縮とCRPS

 ズディック骨委縮の状態に陥った患者さんの多くは、すでにCRPSを発症しています。神経性疼痛の最悪例で、その原因は完全に解明されていないと言えます。交通事故外傷後に発症し、その治療が長期化することから、常に賠償問題に発展します。    詳しくは 👉 CRPSについて 概論と近況    (3)後遺障害のポイント

 骨折に起因した難治性疼痛は、CRPS TypeⅡ、カウザルギー(最近はこの診断名を使わない傾向です)が後遺障害等級の対象となります。関節の可動域に影響するケースもありますが、機能障害としての認定は大変に高いハードルになります。やはり、画像所見、つまり、骨が痩せた画像が決め手となります。画像上、明瞭であれば「局部に頑固な神経症状を残すもの」=12級13号が検討されます。画像が曖昧、そもそも骨折等が無い場合は、症状の一貫性から「局部に神経症状を残すもの」=14級9号が残ります。

 ズディック骨委縮を伴うCRPSなどの場合、症状の深刻度から、労災では「神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」=第9級の7の2や、それ以上の等級が認定された例もあります。しかし、対自賠責保険・対任意保険なると・・9級以上は訴訟で勝ち取るしかないようです。    次回 ⇒ 手の障害に進みます   

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(1)病態

 尺骨神経が、ギヨン管というトンネルの中で絞扼・圧迫されているものです。尺骨神経は、頚椎から上腕の内側を走行し、肘の内側を下降し、手首周辺で、有鈎骨の鈎と豆状骨で構成されるギヨン管の中を通過します。

 有鈎骨骨折は、薬指と小指の中間、下方にある手根骨の1つで、手のひら側に、突起=鉤が存在する特異な骨です。交通事故では、バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で、右手に多く発症しています。自転車、バイクから転倒する際に、手をつくことでも発症しています。

   手のひら側のCT画像ですが、突起=鉤が骨折しているのが確認できます。有鈎骨の骨折により、ギヨン管症候群を発症します。 続きを読む »

 手根管症候群 (しゅこんかんしょうこうぐん)

  (1)病態

 正中神経は、手根関節、手首の関節の手のひら側のくぼみの辺りに存在する手根管靭帯などで形成された、手根管と呼ばれるトンネルを通り、支配する指に枝分かれします。

 手根管症候群とは、手根管が障害されたことによる正中神経麻痺です。手根管症候群の原因は種々ありますが、交通事故では、橈骨遠位端骨折、特にコーレス骨折、月状骨脱臼等により発症しています。フォルクマン拘縮でも、手根管症候群を発症しています。    正中神経麻痺 👉 上肢の後遺障害 ㉝ 正中神経麻痺    フォルクマン拘縮 👉 上肢の後遺障害 ⑯ フォルクマン拘縮    手の掌の関節部をゴムハンマーで叩くと示指・中指に痺れ、痛みが響きます。これを、チネルサイン陽性、チネル徴候を示す、と言います。

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 後骨間神経麻痺(こうこつかんしんけいまひ)

(1)病態

 橈骨神経は、肘から先を走行して、前腕部の各筋肉を支配しています。それらの筋肉は、全ての指を伸ばす、親指を外に広げるなどの働きをしているのです。後骨間神経は、肘部で橈骨神経から分岐し、フロセのアーケードという狭いトンネルに入ります。トンネルの中は、移動性がなく、絞扼、圧迫を受けやすくなっています。フロセのアーケードで後骨間神経が絞扼、圧迫を受けると、後骨間神経麻痺と診断されます。肘から下で、手指の伸展は不能でも、手関節の背屈は可能なのが後骨間神経麻痺です。

 後骨間神経麻痺は、下垂手と皮膚の感覚の障害のないことで、橈骨神経麻痺と鑑別できます。後骨間神経麻痺では、下垂指 = drop fingerとなりますが、皮膚の感覚障害はありません。下垂指は、手関節の背屈は可能ですが、手指の付け根の関節の伸展ができなくなり、指のみが下がった状態になり、後骨間神経麻痺は下垂手と感覚の障害のないことで診断できます。病院での確定診断には、筋電図、XP、MRI検査、エコー検査などが実施されています。

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 前骨間神経麻痺(ぜんこつかんしんけいまひ)   (1)病態

 前骨間神経は、肘部で正中神経から分岐したもので、親指と人差し指の第1関節を動かす筋肉を支配しています。この部位で損傷を受けると、傷病名は、前骨間神経麻痺と記載されています。

 前骨間神経麻痺では、親指と人差し指の第1関節の屈曲ができなくなります。親指と人差し指で○を作ると、親指と人差し指の第1関節が過伸展となり、○ではなく、涙のしずくに似た形となります。前骨間神経麻痺は、涙のしずくサインと、感覚障害のないことで診断できます。確定診断には、針筋電図検査、MRI検査などが必要となります。

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 尺骨神経麻痺 (しゃくこつしんけいまひ)

(1)病態

 尺骨神経は、腋の下から肘の内側を走行し、手首を越えて手先まで走行、この神経は薬指と小指の知覚と手指を動かす筋肉を支配しています。肘には尺骨神経溝と線維性腱膜で形成された肘部管があり、この中を尺骨神経が走行しています。

 交通事故により肘関節部の切創・肘部管症候群、上腕顆上骨折、上腕骨内上顆骨折、事故による変形性肘関節症、外反肘、手関節切創などが、尺骨神経麻痺の原因になると考えられています。   〇 薬指と小指が強烈に痺れる   〇 薬指と小指を完全に伸ばすことができない   〇 手の筋肉、骨間筋が萎縮、骨がうき出ている   〇 肘の内側部分を叩くと過敏なところがあり、小指へ響く痛みがある=チネルサイン    これらの症状があれば、尺骨神経麻痺を疑ってください。尺骨神経が圧迫を受けると、薬指と小指が痺れ、手に力が入りづらくなります。母指内転筋・小指外転筋・骨間筋が脱力し筋萎縮を起こします。この結果、手は「鷲手 = claw hand 変形」をきたすのです。

 尺骨神経は、薬指と小指の感覚を支配しているので、この部位に感覚障害が生じます。

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 橈骨神経麻痺(とうこつしんけいまひ)

(1)病態

 橈骨神経は頚椎から鎖骨の下を走行し、腋の下を通過して、上腕骨の外側をぐるりと回り、外側から前腕の筋肉、伸筋に通じています。橈骨神経は手の甲の皮膚感覚を伝える神経です。橈骨神経の障害が起こる部位は3つあり、腋の下、上腕骨中央部、前腕部です。交通事故では、上腕骨骨幹部骨折、上腕骨顆上骨折、モンテジア骨折等で発症、上腕中央部の麻痺が多いのが特徴です。

 症状としては、手の掌は何ともないのに手の甲が痺れます。特に、手の甲の親指・人差し指間が強烈に痺れるのです。手首を反らす筋肉が正常に働かないので、手関節の背屈ができなくなり、親指と人差し指で物をうまく握れなくなり、手は、「下垂手 = drop hand 変形)をきたします。

 橈骨神経の支配領域は、親指~薬指の手の甲側なので、この部位の感覚を失います。診断は、上記の症状による診断や、チネル徴候などのテストに加え、針筋電図も有効な検査です。患部を打腱器で叩き、その先の手や足に電気が走ったような痛みを発症するかどうかの神経学的検査法を、Tinel徴候、チネルサインと呼んでいます。

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 正中神経麻痺 (せいちゅうしんけいまひ)

(1)病態

 上肢には、腕神経叢から、正中神経、橈骨神経、尺骨神経、3本の末梢神経が走行しています。各々の神経の走行や支配領域は異なり、どの神経が障害されているかで、症状は異なります。腕神経叢からはじまった正中神経は、肘の前面を通り、手首のあたりで手根管の中を通過、それぞれ支配する指に枝分かれします。

 交通事故では、上腕骨顆上骨折で正中神経麻痺を、橈・尺骨の骨幹部骨折では、前骨間神経麻痺を、手関節の脱臼・骨折、手掌部の開放創では、手根管症候群を発症しています。同じ正中神経麻痺であっても、損傷を受けた部位で傷病名が変わることがあります。正中神経は前腕屈筋群と母指球を支配していますので、上腕骨顆上部でこの神経が麻痺すると、手は「猿手 = ape hand 状」に変形をきたします。

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