指の後遺障害は足も手も軽視されがちです。指に骨折や靭帯損傷があっても、後遺症診断で可動域が計測されないことは珍しくありません。また、手術をするような重篤な症状が無ければ、多少曲がっていてもそのままです。子供の頃に球技で突き指し、曲がりが悪い・やや曲がったままなど、若干の障害を残している方がおりました。突き指を軽視し、その後の処置が悪かったのでしょう。

 深刻度の低いマイナーな障害であっても、しっかり金銭賠償につなげなければなりません。頻度の低い、些細な障害こそ圧倒的に経験の差がでます。指の障害然り、秋葉事務所が抜きんでている分野でもあります。本件で「小指の思い出」がまた一つ増えました。
 
小指を噛まれたことはありません
 

14級9号:第5指基節骨 剥離骨折(50代女性・埼玉県)

【事案】

信号のない交差点を原付バイクで走行中、右方より一時停止せずに進入してきた自動車に衝突され、負傷した。ドクターヘリも出動したが、救急車にて総合病院に運ばれた。
 
【問題点】

既に後遺障害診断書が完成した段階でのご相談であったが、後遺障害診断書上、指の可動域は「用廃」の13級6号を逃す中途半端な回復値に。せめて「痛み」による神経症状は・・自覚症状欄にまったく記載がなかった。

このままでは何の等級もつかない。本件は受傷直後にPIP関節が脱臼しており、骨片は癒合も症状固定時にはDIP関節が軽度の屈曲拘縮(※)を起こしていた。残る画像はレントゲンが数枚のみ。実際、ご本人は健側と比べても腫れが引いておらず難儀していた。

※ 曲げることはできるが、伸ばすことはできない(曲がったまま)
 
【立証ポイント】

拘縮の原因を精査するため、治療先に同行し、専門医への紹介状を取り付けた。専門外来を受診し、CTを撮影したところ、脱臼後の整復が真っすぐになっておらず、靭帯の損傷・動揺性が指摘された。しかし、健側も多少の動揺性があるため、元々の体質も影響している可能性が高いらしく、手術を望まないのであれば、MRI検査まで必要はないとの見解となった。

その日撮影した画像とともに、具体的な困窮点を別紙にまとめて自覚症状を補強し、速やかに被害者請求を実施したところ、最低限の14級9号(神経症状)には届いた。

本件は症状固定時期が遅すぎたことや、すぐに専門医の意見を仰がなかったことが上位等級を取り漏らす結果になった。指の障害に経験豊富な弊所が早期から準備すれば、「13級:1手の小指の用を廃したもの」、あるいは「14級7号:1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」を狙う案件であった。

事故後、周囲に相談も有効な策は得られず・・相談の遅れが惜しい。被害者にとって「専門家を見抜く目」が求められる時代となった。