金融ビックバン以降この20年、保険会社の統廃合(業界ではこの言い方を使いませんが)に並行して、各保険会社は1人親方の代理店をまとめることに腐心してきました。地域の大型代理店に吸収・合併していく流れが第一です。次いで、保険会社の直轄代理店に組み入れも推進しています。それらの管理下に置く事によって、契約落ち(他社へ切り替え)を防ぐことができます。後継者がいない場合は尚更です。代理店主が引退しても契約だけは残したい。
おかげで、代理店の数は半分どころか1/3まで減らすことに成功した会社があります。販売網のスリム化に成功したと言えます。一方、保険会社も統合で数が減ったのですから、余った各地域の支社を減らすことができます。同時に、支社での事務作業の多くを占める契約の計上作業、これを大型化した代理店へ移譲し、これまた余った社員を代理店に出向させる流れも作りました。これで、親会社である保険会社は事務と経費を大幅に削減、経営効率は上々なのです。
一方、大型化によって、保有保険料の増加と手数料率の維持となった代理店ですが、代わりに人件費・店舗などの経費がどっと圧し掛かってきました。(吸収された)売り上げの悪い代理店を抱えることになります。また、保険会社からの出向社員の人件費がかさみます。それも、なぜか30代後半~の独身女性社員が多い。保険会社の支社は20代新人の女性社員ばかりと対照的です(なんでだろう?)。また、孫請け扱いの代理店を正社員化せよとの要請が強まりつつあります。吸収された代理店は自営業者なので、その社会保険料の負担はなかったはずが、正社員化すると人件費がおよそ2割増しに!。そして、究極的には、将来の保険料率の引き下げ(代理店収入はその分減ります)が予想、いえ、準備されています。大型化したからと言って代理店の苦難は続くのです。
これで親会社である保険会社は収支バランスを整え、経営上健全化を保ち、無事に生き残ります。10年後、平成~令和における業界の歴史となって振り返ることになります。結局、負担は下へ下へ・・・代理店はじめ下請け会社は、親会社が生き残るための犠牲となってしまうのです。
高度経済成長、右肩上がりの経済、人口増大・・この時代は、「いかに代理店を増やすか」が最大目標、代理店増加=契約増加だったのです。保険会社社員は頭を下げて整備工場、不動産屋さん、一定規模の企業に看板を掛けてもらったのです(つまり、代理店委託契約をお願いする営業)。時代が変わって、今や「代理店を減らせ!」なのです。代理店は新規契約はまだしも、更改契約や顧客管理などの業務は、管理システムを監視する役割に変貌したと言えます。もうすぐ一億総端末社会です。つまり、全世代スマホを持ち、ほとんどの手続きは自身のスマホで完了してしまう世の中です。将来的に、それもそう遠くない先、代理店・営業社員は現在の1/4で十分との試算がたっているのです。
すると、あぶれた人達は単なる犠牲で終わるのでしょうか。古今東西、古い産業が衰退すると同時に新しい仕事も創生されていくものです。これからは、損保の知識を生かした、新たな挑戦分野を見つけ、見出すことが大事ではないでしょうか。常に世の中は動いているのです。安泰は10年続けば御の字です。新しい挑戦に臆していてはいけません。損保ジャパンも介護事業に乗り出しましたよね。
とまぁ、経済本のように教科書じみたことを並べましたが、人間、そんなに器用ではありません。旧知の損保マン達をみると、悪戦苦闘の毎日です。先行きも決して明るいものではありません。それは、代理店の若手に表れています。一番のルーキーさんはたいてい30代40代が普通です。20代は絶滅危惧種、それだけ、業界自体が歳をとっているのです。それでも代理店の皆さまへは頑張ってもらいたいと思います。お客さま一人一人は保険会社ではなく、代理店さんの顔をみているのです。私達も微力ながら援護します。業界の行く末を見つつ、お客様を守っていきたいと思っています。