山梨県韮崎まで被害者さんとの打ち合わせに。久々の山梨出張だが、このまま中央線を下れば、信州松本です。ここから先は、いくつもの選択肢があるのです。選んだ湯は待望の白骨温泉、その遠さからも今まで来たことがなかった未湯(みとう)の地でした。
 
 昨年の大雨の影響から上高地線が一部不通、松本駅から振替バス→上高地線→バスと乗り換えを重ねましたが、苦労してたどり着いたお湯は期待を超えるものでした。
 
 炭酸+カルシウム、そして硫化水素(≒硫黄)、前者が湧き出した時に炭酸ガスが水中から逃げ、分解して炭酸カルシウムとなり白く濁る。さらに、空気に触れた硫化水素が酸化して白濁する。これらダブル漂白効果で、パールのような深い白色になるのです。

 硫黄泉では珍しく中性のpH値から飲泉も可能、香は硫黄の香ばしさを残すも、癖のない味は焼酎で割っても飲めそう。舌と鼻孔を通じ、体の中と外から湯が浸み込みます。浴槽の縁に重なるカルシウム分の固形物がまるでトルコのパムッカレのように美しく、野鳥の鳴き声と雪どけの軋み音が静寂にアクセントを加え、絹衣に包まれるようなベルベットな浴感・・ここは五感すべてを満たしてくれる場なのです。
 
 能書きはこれくらいで、その薄青さを帯びたシルキーな湯面をご覧下さい。
 

 この日、宿泊客は私一人。終始、湯舟を独り占めでご満悦。もぅ、お湯に溶け込んでしまいたい。
  
 ワンちゃんが宿泊客の出迎えと見送りに従事。温泉宿のワンちゃんネコちゃんは立派な従業員なのです。


 
 帰路は列車から右手に南アルプスの稜線を辿り、富士山を仰いで・・いつしか眠りに落ちました。