今年、保険関係者向けのセミナーで取り上げている、労災シリーズ。そのプロロローグをUPします。結論編は、後日の研修会の報告と一緒にUPします。
 
(1) 労災請求の実際

 被害者が労働基準局に申請(届出)さえすれば、労災の適用可否の審査を経て、労災は支給されます。ところが、多くの被害者は、「会社が労災支給を決定する」呪縛にかかっています。また、社長も「労災使用の権限は俺だ!」と、本気で思っている節があります。ほとんどの会社は、積極的に労災を使わせない傾向なのです。

 また、あえて労災を請求しない、従業員側の事情も存在します。会社側が労災使用に対して難色を示せば、強く言えないのが使われている側の立場です。もちろん、労災の申請書には会社の証明が必要です。それは、確かに第一の関門かもしれませんが、実は、会社に署名を拒否されても大丈夫なのです。会社欄は空欄のまま、「会社がダメと言っていますが、お願いします」と言って、さっさと労基に提出すればよいのです。

 その後、労基から会社に(行政指導まではいかないまでも、なぜ、労災を拒むのかと)電話がいきます。つまり、これは会社を辞める覚悟を伴った非常手段です。やはり、労災制度の利用は簡単ではないのかもしれません。

 また、中小企業では、日雇い労働者まで、すべて労災加入しているとは言いがたく、無労災で人を雇っている企業も未だに存在します。建築業では、孫請けとなる1人親方向けに、「特別加入制度」があります。しかし、全員が加入しているわけではありません。


 
(2) 事後適用(事故後適用)

 労災未加入を貫く、悪質な企業には罰則がありますが、重大事故の場合は、事後適用(事故が起きてからの労災加入でも適用してくれる)で救済を図ります。

 事業主(会社・個人事業主)が故意または、重大な過失により労災保険の加入手続きをしていない期間中に労災事故が起き、労災保険から給付が行われた場合、事業主は最大2年間遡った労働保険料及び追徴金と以下の費用を徴収されます。

1、  労働保険の加入手続きについて行政機関等から加入勧奨や指導を受けていた場合

→ 事業主が故意に手続きを行わなかったと認定され、保険給付額の100%を徴収

2、 1以外で労働保険の適用事業所となってから1年を経過していた場合

→ 事業主が重大な過失により手続きを行わなかったと認定され、保険給付額の40%を徴収


 
 さらに、二つのポイント
 
〇 退職後でも労災申請をすることは可能です。
 
〇 支給中に退職となっても、労災支給は継続します。
 
 会社が労災使用を拒否している場合、ご相談くだされば私がなんとかしますが、第三者(弁護士はもちろん、士業者)などを介入させれば、それこそ労使間の関係悪化は決定的なものとなります。結局、ケガをした本人が忖度、労災を諦めることが少なくありません。

 このように、労災は労働者保護として光輝くものながら、その使用に関しては、ある種の闇が潜んでいるように思います。
 
 秋葉事務所の結論 ⇒ 本日、労災と自賠責の併用について、セミナーで結論