労災請求に関する事務は社労士の専権事項とされています。ただし、交通事故など賠償事故が絡む場合、書類は複雑を極めます。かつて、その事務について、有償でやってくれる社労士先生を探しましたが、手を挙げる先生が少なく、消極的な印象を持ちました。やはり、交通事故などは専門外の知識が多く、苦手意識もあるのかと思いました。

 直接、複数の社労士先生に消極的な理由を聞いてみました。煩雑かつ専門外であることも一因ですが、何と言っても、労災請求が対会社の構図になるからだそうです。確かに、業務災害でのケガは会社の管理上の責任が問われます。すると、労使間の争いに発展する可能性があります。社労士が会社の顧問であれば、会社と被災者の間で、微妙な立場になります。それでも、労災間が穏便な関係であれば、問題なくその会社の社労士先生が助けてくれることになります。会社から顧問料を貰っている社労士先生にとって、それが仕事だからです。

 仕事と言っても、その労災請求業務に対して、特別に手数料を設定している場合は別として、毎月定額の顧問料だけならば、余分に煩雑な仕事が増えることになります。これは、社労士先生にとって歓迎できることではありません。さらに、労使間の対立に発展すれば、社労士費用を払っているのは会社であって、社員(被災者)ではありませんから、社労士先生がどちらの味方になるか明白です。ある社労士先生は、労災請求の代理業務は(会社との)利益相反になりかねないので、「原則、やらない」とまで言い切りました。
 
 このような事情から、労災の請求者(被災者)は、会社と切り離して、被災者の味方となってくれる先生を探すのに一苦労するのです。弁護士に頼るにしても、労災請求事務に精通している先生は稀有です。また、障害給付など、後遺症に絡む請求には、高度な知識、ノウハウが必要です。つまり、必然的に秋葉事務所に相談が舞い込むことになります。そこで、社労士法に抵触しない範囲で医療調査のお手伝いをしています。書類作成等、社労士法に抵触する場合は、弁護士の委託を受けて進めています。

 本来、専門であるはずの社労士先生の活躍を期待したい分野ですが・・「社労士は被災者ではなく、会社の味方」、これが、弊所と社労士との連携が進まない理由です。被災者・被害者の為の専門事務所は少ないのです。