高次脳の認定が続々届いています。ここで、今年上半期の4件を紹介します。
 

 いずれの依頼者さんも長いお付き合いになっています

 
 高次脳機能障害の評価・リハビリが出来る病院は限られています。地域ごとに拠点病院が存在しますが、そこに運よく担ぎ込まれる患者はいません。その拠点病院の役割は主にリハビリなので、急性期の治療、手術は地域の大きな病院となります。頭部や脳への受傷となれば、救急車も脳神経外科のある大病院に向かいます。

 しかし、その後、高次脳機能障害の立証を進める上で、急性期の病院が最大の障壁となることが往々にして起こります。急性期治療の目的は、命を助けることです。その後は回復期リハビリに移行します。仮に、半身麻痺や言語障害があれば、どんな医師での障害の存在を認識します。しかし、高次脳機能障害で起こる記憶障害や性格変化など、家族以外にははっきりわかりません。また、一連の症状は急性期治療を担当する医師のフィールド外であり、軽視されがちです。

 本件も主たる治療先の診断能力と無理解から大ピンチに陥りました。とりわけ、高齢者の障害立証は迷走します。等級は当たり前に認定されるわけではないのです。
 

別表Ⅰ 2級1号:高次脳機能障害(70代男性・神奈川県)

【事案】

デパートの屋上駐車場内を歩行中、前方不注意の自動車の衝突を受け、頭部を受傷した。主な診断名は、頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫、くも膜下出血。救急搬送後、脳出血への対処から地元で有名な大学病院に急ぎ転院した。

ご家族の説明では、見当識に混乱があり、記銘、注意機能の低下、易怒性がみられた。

【問題点】

治療先では、脳出血さえ止まれば、案の定、痴呆扱い。また、大学病院ながら、検査設備のない病院。

入院先のご本人と面談を実施、明らかに認知症ではなく、高次脳機能障害と判断できた。しかし、高齢者ゆえ、認知症との関与だけでなく、介護状態が年齢相応のものか事故外傷によるものか、この問題も常に付きまとう。それでも、主治医は高次脳機能障害への理解があり、他院で検査データを完備さえすれば、正しい評価をしていただけると踏んでいた。また、他の持病を診てもらっている以上、完全な転院とできない事情もあった。

ところが、症状固定が近づく頃、主治医が変わってしまい、交代した医師は痴呆症が強いとの認識。これでは正当な診断書は無理。主治医には診断書の記載を断ろうとしたが、診断書を書くと譲らない。仕方ないので、他院での神経心理学検査の結果を託し、十分な説明の上、仕上がりを待った。しかし、それから半年以上、未記載放置。ある意味、願ったりなので、医事課に正式に診断書記載を断り、次いで、検査を実施した病院に戻り、専門医による正確な診断書の記載となった。

これで、問題をクリアと思いきや、数日後、断ったはずの医師から診断書が届いた。しかも、内容は9級レベル!。こんなものは提出できない。当然に提出書類から外した。恐らく、長く治療してきた大学病院の診断書も要求されるだろうが・・。

【立証ポイント】

申請後、やはり、自賠責調査事務所から、「主たる治療先の診断書(神経系統の障害に関する医学的意見)」が必要との追加提出依頼がきた。これには、医師に手紙を書き、”記載を見送る”内容の回答書に署名頂いた。また、調査事務所へは、この病院の特殊性と本件の事情を説明する文章を送付、どうやら理解を得ることができた。この病院、何かと問題が生じるので、保険会社や審査機関も承知しているのかもしれない。

技術面では、本件被害者元来の頭脳明晰さと、障害による低下を切り分ける作業となった。WaisⅢでは言語性IQ100を超える成績ながら、動作性IQが言語性IQとの比較上、低い点に注目、読み書き・計算にはまったく衰えがないが、記銘力に明らかな低下があることを浮き彫りにした。ここで、三宅式記銘力検査、リバーミードが有効となった。その他、易怒性を主訴とした性格変化なども、以前から家族に克明な記録を促し、精密な文章を作成した。
申請から5ヵ月後、当方の主張した症状のほぼ全てが反映され、随時介護の2級とすることに成功した。

本件は主治医交代から当初の計画が狂い、病院と医師に振り回された。最初から転院させることが安全ではあるが、できれば、主たる治療先で医証を完備するに越した事はない。しかし、高次脳の経験乏しい医師に漫然と診断書を任せたら・・9級になったかもしれない。これからも、この大学病院に運び込まれる高次脳機能障害・患者が大変に心配です。
  

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