ここ数年、交通事故業界で一種のブームと言えるのは、「画像鑑定」ではないでしょうか。

 私の経験から言いますと、画像読影は医師の力量に大きな差があります。手術を行っている専門医なら、切る前に人体の中身をレントゲンやCT、MRIでわかっていないと困りますので、執刀医は力量ありと見ます。しかし、総合的な整形外科医や個人開業医は、読影力の差がすさまじく、レントゲン画像ならまだしも、CT、MRIはお手上げだと、正直に言われる先生がおりました。そこで、放射線科医という、読影の専門医が望まれるようになったのです。とくにアメリカでは、診断医は画像読影を放射線科医に丸投げするのが普通とまで言われています。アメリカは医療過誤に対してシビアなので、医師も読影判断の正誤に対して慎重なのだと思います。

 日本でも遠隔読影、つまり、医師が遠隔地の放射線科医に読影を任すスタイルが広がりつつあります。今後、読影専門の医師の活躍は広がりそうです。その一環ではないですが、交通事故を扱う弁護士や行政書士が依頼者の障害立証のため、画像鑑定書を放射線科医に依頼する、新しいビジネスが一部で活気を帯びているのです。
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 弊事務所でも、以前から複数の医師に画像読影を依頼し意見を求める、場合によっては意見書や鑑定書を記載頂くなど、障害の立証に数多くの助力を頂いておりました。一部の被害者は画像所見が見出せず、訴える症状を認めてもらえない事態に陥ります。そこで、医師の鑑定は非常に有難いものとなります。しかし、やはり弊害が起こるものです。それは、特定の事務所から、同じ放射線科医の鑑定書が、毎月、何件も提出されてくることです。

 自賠責保険の調査事務所は毎年、6万件前後もの後遺障害審査を行っています。その内、特に異議申立で、毎度毎度、同じ読影医の鑑定書が付されていると・・自賠責はどのように思うでしょうか?

 これは画像鑑定書に限らず、後遺障害診断書にも言えます。特定の医師の書く診断書が急増すると・・誰かが裏で関与しているのでは?と自賠責・調査事務所は考えます。つまり、不自然に集中した同一医師の書く診断書は、疑いの目が向けられるのです。その医師に毎度、診断書や鑑定書を依頼している背後関係(特定の弁護士等)を調査事務所は直ちに把握します。保険会社にいた私は、普通にそう考えています。

 鑑定費用を頂く医師にとって、依頼する弁護士等は御得意さんです。毎度、被害者寄りの、調子のよい所見が上がってきます。それを調査事務所は承知しているのです。これでは、フェアな鑑定にはならず、長い目で見れば、被害者救済は遠のくばかりです。本来、医師は中立的な見地から所見を診断すべきです。鑑定依頼者の顔色をうかがい、鑑定代金を念頭に仕事をしていないことを祈るばかりです。

 その点、私達は医師に頼る前に、一次的に画像を観ます。そこで、素人ながら、ある程度の所見や疑問を掴んでから、読影医と打合せをします。この作業の過程で、どうしても所見の見出せないものは、はっきり「ダメ」と言います。当たり前ですが、所見がなければ「所見なし」と依頼者にはっきり診断を下すべきなのです。被害者さんの症状を十分に吟味せず、「弁護士費用特約があるから、ダメもとで鑑定しましょう」、そして「なんとなく(苦し紛れ?)所見ありと書かれた鑑定書が上がりました」・・この姿勢、プロセスには疑問を感じています。

 私達は何より、医師の中立性について、常に気を使っています。つまり、特定の医師に偏った診断を仰ぐことを抑制しています。そこで、日々の勉強、読影の鍛錬が生きてくるのです。自信のある所見、そして、依頼者の症状の真偽を十分に検討した案件のみ、医師の意見を求めるようにしています。
 
 軽々しく、頻繁に、診断書や鑑定書を医師に依頼しないことが、医師の診断の信憑性を担保するのです。
 
 医師が「お金を貰って、弁護士の片棒を担ぐ」ようなことがあってはならないのです。また、そのような疑いの目を向けられては、画像所見が得られず苦しんでいる被害者は浮かばれません、
 
 最近の相談会でも、参加される被害者さんから、他事務所の指揮で得た鑑定書を目にするようになりました。そこに毎度おなじみの鑑定医の名を見て、苦笑しています。交通事故業界の鑑定ブーム、困ったものです。
 

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