長年、交通事故業界、それも被害者様のご相談を担当していますと、本当に助けるべき被害者なのか迷うことがあります。相手保険会社の塩対応、あるいは横暴な対応に憤慨して、時には相手側に弁護士を入れられた被害者さんが、救済を求めて相談にいらっしゃいます。もちろん、丁寧に拝聴した上で、対応策を検討します。しかし、時には、道徳的に助けられないケースもあります。

 立場上、被害者様の窮状を救うことが前提です。弁護士のみならず私共も、被害者様の言い分を信じる事からスタートすべきです。それが士業者としての基本だと思います。しかし、残念ながら被害者の中には不道徳な方も含まれています。例えば、事実と違う損害を訴える不正請求、嘘の症状を装う詐病、暴力的な言動・態度をする方も含まれます。このような不道徳が明らかである場合、ご依頼を受けることはできません。職業倫理として当然なことです。

 ただし、問題ある依頼者か否か、容易にわからないことの方が多いと思います。神経質になり最初から疑ってかかる姿勢、これも職業倫理に反するものですが、盲目的にご依頼を引き受ける事も罪なのです。不正な請求者を擁護する事務所は、保険会社から悪徳のレッテルを張られます。それこそ、今後にわたって正当な被害を訴える被害者さんを受任しても、「あの何でも引き受ける事務所の依頼者」として色眼鏡、疑られてしまう結果になるのです。

 ご相談を受けて、訴えの正当性を検討するに悩ましいことは多々あります。これも士業事務所の宿命と思っています。