高次脳機能障害により引き起こされる様々な後遺症、どの部分に焦点を当てるか? 立証計画を作成するにあたって、心がけていることです。

 すべての症状を余すところなく、完璧に主張することが基本ですが、本件の場合、とくに労働能力の低下に注目しました。日常生活の障害は睡眠障害と味覚障害が主訴ですが、これらは等級を引き上げる要素としては弱いものでした。一方、職場では極端に疲れやすく、段取りも悪く、慣れた工程すら忘れて覚えられません。簡単な片付けや掃除ならまだしも、まったく仕事にならないのです。

 これでは、サラリーマンの場合は当然「クビ」になりますが、家族経営の自営業者の場合、解雇にならず、勤め続けます。それは当然に家族だからです。しかし、後の賠償交渉で、「復職できていますね」と相手損保から指摘されるのはしゃくなわけです。そこで、労働能力の全廃と言わないまでも、専門職への復帰不能はもちろん、業務が相当限定される5級2号を目指す必要がありました。一見、7級の症状でしたが、なんとか一つ繰り上げた次第です。

毎回、ギリギリの勝負です  

5級2号:高次脳機能障害(40代男性・神奈川県)

【事案】

バイクで信号のない交差点に進入したところ、自動車と出会い頭衝突。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折の診断が下された。

【問題点】

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【事案】

バイクで信号のない交差点に進入したところ、自動車と出会い頭衝突。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折の診断が下された。

【問題点】

本件は依頼者側の過失が大きく、相手から一括支払いを拒否されていた為、ご家族が自賠責に120万円を求償すると同時に労災を申請しており、支払いや書類等が複雑になりつつあった。また、高次脳機能障害認定の3要件の一つである「意識障害」がやや弱かった為、審査の入口ではねられる危険も十分であった。

【立証ポイント】

すぐに病院同行し、主治医と面談。高次脳機能障害に多少の理解はあるものの、どのような検査立証が必要か、また、その検査設備についても心もとなく、全ての検査を別病院で実施する方針となった。

書類作成作業では、ご家族からより具体的なエピソードを伺った。特に仕事面では、専門職である仕事の工程から、どのようなことを頭の中で組み立てていくか、各工程からどのような工夫が必要か、そして、出来ない理由は等々、具体的にお聞きした。そのエピソードをもとに「易疲労性」、「遂行機能障害」を明らかにする文章が出来上がった。 仕事面は別として、ご本人が一番困られていることは「不眠」と「味覚障害」であったが、この2つは直接後遺障害等級に結びつかなかった。人間にとって最も重要である「睡眠」と「食事」の楽しみを日常生活から奪われたご本人のことを考えると、想像を絶する苦悩があったに違いない。脳障害から、様々な症状を引き起こすことを目の当たりにした案件であった。

(平成30年6月)  

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