自賠責保険の後遺障害審査は他の補償制度に比べ、実にシビアです。なぜなら、患者さんの症状、診断書の内容を判定する以前に、「交通事故のケガが原因でそのような症状になったのか」を審査します。つまり、因果関係を検討します。

 今日は基本に戻って「因果関係」について説明します。概念的な話からしましょう。
 

 因果関係とは・・・

 
1 二つ以上のものの間に原因と結果の関係があること。
 
2 犯罪や不法行為などをした者が法律上負担すべき責任の根拠の一つとして、ある行為と結果との間に存在していると認められるつながり。
 
 それでは、
 

 因果とは・・・

 
1 原因と結果。また、その関係。
 
 2 仏語。前に行った善悪の行為が、それに対応した結果となって現れるとする考え。特に、前世あるいは過去の悪業 (あくごう) の報いとして現在の不幸があるとする考え。「親の因果が子に報い」

 <国語辞典から>
 
 交通事故の衝撃でケガをして、その結果、後遺症が残った場合、事故受傷と後遺症に因果関係がなければ、自賠責保険の後遺障害認定等級はありません。労災や障害年金等、他の補償制度でも前提は同じですが、現在の症状の評価について、割とやさしいものです。およそ診断書の記載通りに認定されます。自賠責保険も被害者救済という公的側面がありますので、過失減額については甘く、被害者に70%以上の責任がない限り、減額なく100%支払われます。この点は救済的です。しかし、障害の程度を評価することは別です。診断書通りではない判断は珍しくありません。診断書以前の前提として、事故受傷と後遺症の関連性、つまり、因果関係が厳しく問われることになります。

 例えば、交通事故で手首を捻挫し、その後遺障害申請に対し、「その事故の衝撃で痛めたのか?」について、因果関係を疑います。骨折の場合は、それなりの衝撃があったことからその疑いはぐっと下がります。しかし、打撲や捻挫は原則治るケガです。打撲・捻挫の腫れが引けば、画像上、人体が破壊された様子はほとんど残りません。だからこそ、何ヶ月も「痛い」と主張しても、後遺障害の等級認定に際し、シビアに因果関係を検討するのです。

 では、骨折はないが靭帯を痛めた場合はどうでしょう。これも、画像上、靭帯損傷の明確な所見が要求されます。加えて、以前から患っていた既往症の可能性や、加齢の影響から、内在的な要素(つまり、ケガではなく病気的なもの)があったのかを検証します。人間、長い間生きていますと、そりゃ骨も変形しますし、軟骨も磨り減りますし、靭帯もささくれてきます。その部位を仕事やスポーツで酷使すれば、相応の劣化があって当然です。

 長い年月、工場の作業で手首を酷使していた場合、手関節の骨や靭帯に変性があったとします。事故までなんら不具合はなかったのですが、事故から痛みを発症した場合の審査はどうでしょう? 労災の審査では、事故の影響がすべてではないと感じつつも、まぁ症状をそのまま等級にしてくれます。認定の際に顧問医の診断がありますので、その点、信用はある程度担保されていると言えます。

 一方、自賠責は醜状痕など一部の例外を除き文章審査です。患者を診ることはありません。だからと言って、主治医の書いた診断書だけで判断せず、長年の作業で手関節に骨変形や、軟骨が磨り減っていた場合の影響を考慮します。受傷以来訴える「痛み」に一貫性と信憑性があれば、14級9号「局部に神経症状を残すもの」と認定する余地はあります。しかし、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」として判定する場合は、誰がみても明確な神経を圧迫する画像や検査数値が条件です。また、手関節の曲がりが悪くなった12級6号「上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として判定するには、”事故受傷で”器質的変化が生じた事を証明する画像や検査数値を必要とします。

 いくら診断書に症状が克明に書かれようと、すべて事故のせいと判断されないことがあるのです。「払う言われのないものは払わない」、これは保険会社の姿勢であり、”つぐなう”立場の加害者の権利でもあるわけです。このような構図から、因果関係を巡り、被害者vs保険会社の戦いに発展することになります。
 毎度登場、テレサ10
 交通事故に限らず、たいていの被害者は被害者感情から症状を大げさに言いがちです。これは人情的に無理もありません。また、最悪例として、詐病(嘘のケガ)を装う被害者も残念ながら存在します。人を疑う社会は嫌なものですが、自らの障害=損害を立証する責任は被害者自身にあります。法治国家で保険会社との戦いに勝つには、自ら損害を証明する必要があるのです。

 因果を証明するもの、それはエビデンス(証拠)に他なりません。証拠を確保する為、被害者に専門医の診断や検査など、どうしても自助努力が必要となります。座したまま、誰かが自動的に助けてくれるなど、そのような幸運はそうありません。

 私達は、被害者さん達と”因果関係の証明”と言う、厳しい戦いに明け暮れる毎日です。
 

 

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