山梨♨シリーズ、この夏、未湯多い南アルプスを攻めました。
 
 今年の酷暑には、ぬる湯が一番、1時間も浸かっていられるからです。まず、県南屈指のぬる湯、下部温泉の染み通るようなアルカリ性単純泉、一瞬冷たさを感じますが、PH8.4の滑らかな湯がほのかに体温を保ちます。何より、古湯坊 源泉館さんは足元湧出! 生まれたての泉との接触は、地球との一体感を生むものです。(写真はHPから転載させて頂きました)


 
 さて、今回の南アルプス最大の目的地に移ります。下部温泉から一日に数本の県営バスで1時間10分揺られながら、早川沿いをダムまで遡上、そのどん詰まりにある奈良田集落に到着します。ダム湖を見下ろす斜面に、温泉界でもその泉質が軒並み最高評価とされる、奈良田温泉・白根館が鎮座しています。(写真はダム湖)


 
 元々、「日本秘湯を守る会」に所属する宿泊施設だったのですが、数年前より、立ち寄り湯になっていました。休日の訪問でしたが、他の湯客は2名ほど。奈良田温泉の玄関は、登山客しか下りないバス停ですし、その交通の不便さから、マニアでなければここまで来ないのでしょう。経営陣も宿泊施設の維持が困難だったのかもしれません。
 
 さて、その泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉です。しかし、ただの硫黄泉ではありません。香しい硫黄香は十分ながら、アルカリ性で「ぬるっぬるっのとろっとろ」、完全に化粧水の域を超えています。また、色彩も美しく、この日はダム湖より碧いエメラルドグリーンでした。


 
 この湯の3大特徴は、触感:しっとりトロトロ香:硫黄視覚:色変化と、温泉五感の3つで高レベルを達成しています。まるで、主役級が3人揃ったドラマです。
 
 ドラマと言えば、この夏、TBSが尋常ない予算に、しつこい位番宣を繰り返した「VIVANT」。先日、最終回を迎えましたが、奈良田の湯は、まさに「VIVANT」なのです。
 
 透明 → 白濁 → グリーンと変化するカメレオン泉色は、まるで堺 雅人さん。多彩な人格を演じ分ける堺さんなのです。本ドラマでも、半沢 直樹か小美門 研介か、様々なキャラが入り組んだ多重人格のようでした。
 
 そして、野性味半端ない硫黄臭と硫化水素による肌への刺激は、まさに阿部 寛さん。湯に浸かって、思わずにやけ顔に。まるで、阿部さんの”無精ひげ+にやけ顔”が憑依、テルマエ・ロマエに出演している錯覚を覚えました。平たい顔族で良かった。
 
 この湯を最も重厚たらしめ、高級感を演出する「浴感」こそ、ドラマを大作映画に変貌させる役所 広司さんの役目でした。単なる硫黄泉をアカデミー賞に引き上げる圧倒的な存在感こそ、役所さんなのです。湯上りのボス(缶コーヒー)は美味かった。
 
 「主役級3人の競演」、奈良田温泉・白根館をこう評しましょう。
 
 まだまだ、山梨には隠れた名湯・秘湯が控えます。ドラマは終わっても、未湯踏破の旅は終わりません。