新コーナー「保険の百科事典」の編集にて、過去記事のブラッシュアップを進めています。その中で、14年前の記事、「異議申立について」(自賠責保険・後遺障害の再請求)を大幅に改変しました。秋葉事務所の姿勢もより明確に説明し直しています。
一度申請して出た結果には、それなりの重みがあります。できれば、初回申請で遺漏なく書類を揃えて提出すべきです。ところが、保険会社が教えてくれる必要書類は最低限のもので、医学的に要求される検査や書類など、なんら指示はありません。そして、医師も何が必要なのか、知らされていません。治療者の立場からの診断書記載に留まります。したがって、不完全な申請となることは普通なのです。
また、「むち打ち、頚椎捻挫」などの場合は、「初回では等級はくれないな・・2度目で認定の覚悟」の申請もあります。とにかく、後遺障害申請は奥が深いものです。弊所でも再申請の50%は認定をとっていますが、毎度、大変な手間暇となります。改めて、14年前の意見展開を令和Va.でUPします。
異議申立てについては、等級変更の可能性のある件だけをお引き受けします。
弊所&連携弁護士は仕事の基本を、「受傷から解決までを間違いなく案内する船頭たるべし」としているからです。「駄目元で再申請したい」、「気持ちの整理の為に、もう一度申請したい」・・そのような動機だけでの受任に対し、ご依頼者の貴重なお金と時間を頂くことが忍びないからです。
中には、どうしても異議申立(再請求)をやらざるを得ない、お気の毒な被害者さんが存在します。限定的ですが、お引き受けすることもあります。最初からお任せいただければベターなのですが、相手保険会社任せ、あるいはご自身で動いた結果、つまづいた・・厳しい状態からのスタートを覚悟しなければなりません。
また他の選択肢として、異議申立てに積極的な事務所、完全成功報酬制で着手金0円(等級が変わらなければ0円)の事務所もあるようですから、そちらをご検討いただいた方が良いと思います。お金だけ取られて同じ結果は目も当てられません。
さて、今年数件の異議申立て、再異議申立て、自賠責紛争機構への異議申立てといくつか手がけました。およそ50%は成功していますが、再請求が不調となった件については、「なぜ、認められなかったのか?」を分析します。失敗の原因を浮き彫りにしましょう。
<異議申立てが不調となる理由>
1.非該当、もしくは認定された等級の理由書を読んでいない。
自賠責保険調査事務所は必ず「理由」を明示しています。自賠法16条の4および5 (最下段参照)で決められているからです。ですから、その理由に対しての反論が必要です。それなのに、「なぜ私のケガが○級なのか! 非該当はおかしいのではないでしょうか! 審査に納得がいきません、どうしてなんでしょうか?」・・・単に怒っている、愚痴をいっていっている、文句を言っている、再質問を繰り返している文章が目立ちます。認定されない理由に対しての感情論に終始、的確な反証をしていません。これでは再審査になりません。
2. 矛先がずれている
自賠責調査事務所は後遺障害等級の判定・認定をする機関です。であるのに、加害者に対してや、今まで担当してきた任意保険会社の対応について切々と恨み言を書くケースです。確かに怒り心頭なのはわかりますが、異議の申立ては、あくまで後遺障害等級の認定内容についてのはずです。任意保険会社の対応云々は関係ありません。さらに現行の保険制度・医療制度批判まで、つらつらと持論が展開されます。もう自分の障害を立証したいのか、社会正義のために立ち会上がったのか、さっぱりわかりません。当然に調査事務所は内容を審議せずに「異議申立 却下!」です。
3. 新しい証拠がない
すでに提出した画像や診断書で判定された結果なので、同じものを提出して「もっとよく見てよ!」と申立てをしても、たいていは空しい結果となります。新しい主張は、新しい診断・所見・検査結果の提出、初回申請でもれた画像や診断書・意見書を補充する必要があります。それでこそ、再度の審査が必要と判断されるのです。同じことの主張を繰り返しても時間の無駄です。
異議申立てによる上位等級の認定率ですが、この数年の平均は5~10%程度です。この厳しい壁を超えるには、誰が見ても納得の事実、経緯、何より医学的な証拠が必要です。調査事務所の審査も人間である以上、間違いを犯す時があります。単純な審査ミスがないわけではありませんが、多くは「よく審査されているなぁ」と感心することの方が多いのです。
自賠責法の条文から、以下のように定められています。
<自賠法 書面の交付>
16条4-1 請求時の書面の交付
保険会社は、保険金の請求があったときは、遅滞なく支払基準の概要・保険金支払い手続きの概要・自賠・共済紛争処理機構の概要を記載した書面を交付しなければならない。
16条4-2 支払時の書面の交付
保険会社は、保険金等の支払を行ったときは、遅滞なく、事故年月日・傷害・後遺障害・死亡による損害ごとの支払金額、後遺障害に該当するときは、該当する等級と判断理由等を記載した書面を交付しなければならない。
16条4-3 支払を行わないときの書面交付
保険会社は、保険金を支払わないときは、遅滞なく、事故状況の概要・無責と判断したときは、その理由、事故により損害が発生していないと判断したときは、その理由、悪意免責と判断したときは、その理由等を記載した書面を交付しなければならない。
16条5-1 書面による説明
保険会社は、書面を交付した後に、被害者から書面による説明を求められたときには、30日以内に書面により説明しなければならない。