高齢者が転んで入院すれば、即に認知症を発症するか症状が進行します。脚を骨折すれば二度と歩けなくなる、これはむしろ普通のことです。しかし、これが交通事故によるものなら、認知症や寝たきりの責任をすべて加害者に求めることができるのでしょうか?  

 二次的な障害の発症・進行は、”間接損害”と呼ばれ、常に賠償上の難しい問題となっています。交通事故によって直接破壊された部位でなければ、また、直接の原因がなければ、その後遺症は自賠責保険の認定基準から外れます。すべての障害を、老若男女・十把一絡げで判定する自賠責保険の限界を感じるところです。自賠責は良くも悪くも平等、個別具体的な事情は後の賠償交渉で決着するしかありません。

 本件は、受傷初期からそのような事情をご依頼者に説明、症状固定をいたずらに伸ばすことなく、骨癒合をみて8か月目にしました。年齢と骨折箇所から、早期の症状固定と言えます。      秋葉は内孫、おばあちゃん子でしたから・・   11級9号:中足骨・基節骨骨折(90代女性・栃木県)   【事案】

道路を横断中、自動車の衝突を受けたもの。骨折箇所は、上肢は左上腕骨骨幹部、下肢の脛骨・腓骨は骨幹部、右肋骨、左骨盤、右足趾は母指・基節骨、第2~5中足骨。加えて頭部・顔面の打撲。   【問題点】

足趾(足指)を除いては、骨折箇所が関節に直接影響を及ぼさない所ばかり。上肢・下肢は骨幹部で、予後の癒合は良好。また、肋骨と骨盤(恥座骨)も癒合さえすれば、深刻な障害は残らない。しかし、高齢者である。上肢は肩関節、下肢は足関節の拘縮が進み、可動域制限が残存した。

続きを読む »