久々にシリーズ再開します。およそ、交通事故外傷に関する代表的な薬は網羅してきたはずです。交通事故外傷から離れますが、新シリーズでは国民のほとんどが直面する生活習慣病の薬を整理したいと思います。

 整形外科で処方されることはない薬ですが、痛み止めの処方の際に、その飲み合わせに禁忌する薬を把握する必要があります。また、普段服用している薬によって、整形外科の治療内容に影響を及ぼすこともあります。つまり、生活習慣病の薬や、その病態の知識は知っておくべきと思うのです。おなじみ、「薬の教科書(宝島社さま)」からの引用になります。(薬価は2016年当時です)  

糖尿病と交通事故外傷

 高血圧、高脂血症、高血糖・・・すでに病院で治療をしていない軽度の方を含めると、40歳以上の方の5人中4人が健康診断でこれらの指摘を受けます。これら予備軍の民さんは、食事の管理や運動で改善を目指していくことになります。それでも改善が進まない方は、薬に頼らざるを得ません。交通事故でケガをした際の投薬においては、お薬手帳を示し、医師・薬剤師から十分に注意を払って処方されます。    骨折した方の場合、糖尿病の治療中でインスリン注射を打っている方は、緊急性がなければ、手術を避ける傾向です。高血糖は手術の危険要因になります。また、骨折の癒合も遅い傾向が指摘されています。経験上、糖尿病の方の外傷は、全般的に治りが遅いと実感しています。そして、自覚症状がしばらくでない糖尿病でも、手足のしびれ、だるさ・倦怠感などがあり、頚部の神経症状と重なることがあります。交通事故外傷の治療では、やっかいな既往症と思っています。

 実は4年前、めちゃめちゃな食生活をしていた秋葉も高血糖に陥り、受診したことがありました。血糖値216mg、A1c9.9%、尿糖3+、完全な糖尿病の数値です。すぐさまメトグルコの服用となりました。この時、インスリン注射も経験しています。今までの生活を猛省し、食事の栄養バランスを徹底的に見直しました。幸い4カ月位ですべて正常値に戻り、空腹時血糖値を100未満、A1cは6.0未満として、現在もキープしています。

 実は、それ(改善)は珍しい事らしいのです。主治医の先生がこっそり教えてくれましたが、食事や運動など自己管理で改善する患者さんは20人に1人位、ほとんどが継続的に薬を処方、または再発を繰り返すそうです。元々の体質が要因である場合は仕方ないことですが、いかに生活習慣病にならないよう、自己管理を徹底することが難しいかを物語ります。20人中19人が治らずにずっと通ってくれる・・内科医は儲かっていいな、と思う次第です。     ① メトグルコ(大日本住友製薬)

   血糖値を下げるために肝臓での糖分の生成をおさえる    最初に定番のお薬です。高用量処方が保険適用で認められ、新規承認された糖尿病薬です。お値段も安い。

 血糖が、その量を調整するインスリンホルモンのはたらきを受けやすくなる効果があります。また、肝臓で糖分が作られるのをおさえ、筋肉や脂肪組織で糖を利用するのを促進し、腸管から糖を吸収するのをおさえるため血液中の糖分の量が減ります。特に、インスリンホルモンのはたらきが悪くなったり、分泌量が減少するなどの2型糖尿病に対して使用されます。また、血液中のコレステロールや中性脂肪の低減効果があり、体重の増加を助長しないので、肥満型の糖尿病患者によく処方されています。

 注意が必要な副作用に、乳酸アシドーシスがあります。現在は多くの国で販売中止のフェンフォルミンという成分で多く見られた副作用です。しかしこの系統の薬は、適切な医師の管理下で服用すると有用性が高いため再評価され販売しています。また、糖尿病薬全般に共通する、血糖値の下がりすぎによる低血糖症も起こることがありますが、糖尿病薬を服用している人には、薬局でブドウ糖を配布しているので、低血糖症の症状や対処法と合わせて入手しましょう。   ● 250mg(1錠) 10.2円   ● 有効成分 メトホルミン   ● ジェネリック

・ネルビス(三和化学研究所)

・メトホルミン塩酸塩「トーワ」(東和薬品)など  

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