秋田県のクマ出没数は例年を大きく上回り、毎日のようにニュースとなっています。行政側は駆除を最優先に進めざるを得ない状態です。そこで、行政側が抱える問題は、「クマさんを殺すな!」との苦情電話です。
役所の皆さんのご負担は相当なもので、日常業務が手につかないほど時間を取られています。多くは建設的な意見ではなく、ほとんど感情的なクレームだそうです。クレームを言う人の深層心理を考えると、本人は正義に則ったつもりが、実は単なる憂さ晴らしでは・・との分析を目にします。苦情者のほとんどは、近隣に熊が出没する住民ではなく、県外含め遠くの住人だそうです。ある意味、何らリスクのない部外者による、他人事の意見と言えます。結局、解決に寄与する方策などなく、職員の疲弊だけが残ると思います。
交通事故の場合、保険会社に対するクレームの多くは事故相手となる被害者でしょうか。この点、純粋に当事者の意見となります。被害者意識からか、保険会社に対して怒りをぶつける人が少なくありません。ご相談にいらした被害者さんから、保険会社に対する不満をよく伺います。そして、本社に苦情電話をして、「担当者を交代させた」と得意気におっしゃいます。確かに、クレームを受けての担当交代は多いものです。
保険会社にしてみれば、うるさい被害者を落ち着かせる為に、口調が柔らかな物わかりの良い年配者に代わって対処します。これで被害者の溜飲が下がれば安いものです。実は、最初は被害者の要求をけん制する為に強硬姿勢とし、反発が強ければ柔らかい対応へと、シナリオに沿って対応しているに過ぎません。では、担当者交代を含め、クレームが功を奏することがあるのでしょうか?
検証すると、やはりトータルの賠償金支払いが劇的に上がるわけではありません。例えば、通院交通費の場合、最初はタクシー代をまったく認めない強硬な対応から、代わった担当者がやや認めることで、被害者に満足感を与えます。しかし、最終的には慰謝料など他項目を減らして帳尻を合わせます。多くの被害者は保険会社の解決までの全体的な計算など知らず、目の前の請求で騒いでいるだけです。保険会社と対峙する被害者さんこそ、この保険会社の組織対応と賠償金の計算内容・内訳を知るべきと思います。 かつて保険会社勤務の時、担当していたお客様が当て逃げの被害に遭いました。警察の実況見分中に加害者が戻ってはきました。後日、私から加害者に対し、加入保険会社を訪ねる電話をすると、加害者の母親が電話にでましたが、逆切れ気味で話がかみ合わず、任意保険の加入がはっきりしません。私も若かったこともあり、強い口調となりました。その後、その母は本社に秋葉に対するクレーム電話を入れたようです。ある朝、その件で支社長から「なんか、秋葉にクレームが入ったぞ」と声をかけられました。「すみません」と事情の説明を始めると、支社長は途中で遮り、「どうせ、こいつがアホなんだろ」と、叱責なくこの件は終わりました。組織の内部では、こんなものです。 苦情は、総じて建設的なご指摘や貴重なご意見は少なく、感情論であったり、単なる憂さ晴らしが多いようです。秋田県の職員さん達は大変かと思います。一方、ある意味、当事者で正当な苦情者となる交通事故被害者さんも、実は保険会社の掌で踊らされているだけかもしれません。





